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小室哲哉『JOBS#1』インタビュー(Billboard JAPAN×RakutenMusic/楽天ブックス)
小室哲哉、2017年春の音楽論。
日々めまぐるしく変化していく音楽を取り巻く環境。それをじっくりと見据えながら活動し続けている小室哲哉が、ソロアルバムの新シリーズ第1弾『JOBS#1』や新時代ガールズグループ・Def Willのトータルプロデュース、TM NETWORKの記念碑的コンピレーションアルバム『GET WILD SONG MAFIA』、さらにはアートの世界へのアプローチやテレビ番組での篠原涼子との再会等、トピックに事欠かないほど超精力的なアクションを繰り広げている2017年春。
今回のインタビューでは、それらひとつひとつのトピックについてはもちろん、今や音楽を聴くツールとして浸透したサブスクの可能性や、東京からの世界戦略などについてもガッツリ語ってくれた。新たな音楽の可能性、すべての話がそこに収束されていくスペシャルインタビュー。RakutenMusic/楽天ブックスで展開されているプレゼントキャンペーン(https://r10.to/rakuten_tk)とも合わせて、ぜひご覧頂きたい。
篠原涼子との再会~Def Willのトータルプロデュース
「自分が存在することに何の意味があるのか?」
--先日、テレビ番組で篠原涼子さんと20年ぶりに再会されていましたが、かつてプロデュースしていた彼女との再会はどんな気分でした?
小室哲哉:本当に久々だったので「遠くで心配してたんだよ」みたいな(笑)。元々は、初代・東京パフォーマンスドールのライブを原宿ルイードまで当時観に行ったりしていて、同じレコード会社だったので、TMN(TM NETWORK)の「Love Train」といういちばん売れたシングルのプロモーションビデオに「ちょっと出てよ」って出てもらってるんですよ。--「恋しさと せつなさと 心強さと」の前から共演されてるんですよね。
小室哲哉:彼女が17,8歳の頃かな。一緒に話しているとよくお父さんの話が出てきていて、僕はお会いしたことはないんだけど、なんだか家庭環境まで知っているぐらいの付き合いだったんですよね。で、すごく天然な女の子の元祖だと思うんですけど、そういう子だったので「幸せになってほしいな」ってずっと思っていたんですよ。結果、すごく幸せになっていて。--女優さんとして日本を代表するレベルになっているので、なかなか簡単ではないかもしれませんが、シンガーとしての彼女をよく知る人からしたらまた歌ってほしいですよね。
小室哲哉:意外と“篠原涼子 with t.komuro”の“with t.komuro”まで憶えてくれている人も多いみたいなんですよね。--そんな篠原涼子さんをプロデュースされていた時代から約20年。現在、小室さんは“Def Will(デフ・ウィル)”なるガールズグループをプロデュースされています。そもそも彼女たちを手掛けようと思った経緯を教えていただけますか?
小室哲哉:きっかけは「またじっくり本格的なプロデュースを始めたらどうですか?」と提案してもらって。以前はもうトータルプロデュース的な形はもういいかなとも思っていたんですけど、もしやるんだとしたら時間が経つとどんどんCDを売っていく環境は悪くなっていく一方だし、特に若い女の子たちは「ブレイクする」とか「バズる」とか人気者にする手段が「曲をヒットさせる」ということだけじゃなくなっていて、何をもって「上手くいった」と言われたり思われたりするのか。今すごく考え時だし、誰が何に憧れる形がいちばんベストなのか? 今見えにくくなっている。だからプロデュースと言っても、フォロワーを増やせるようにプロデュースするとか、良い曲を作るとかだけじゃなく、マネージメントとかエージェント的な仕事なのかもしれないなって。--それも含めてのプロデュース。
小室哲哉:今のところですけど、世界的に音楽プロデューサーというのは「良いトラックメイカー」ということになんとなくなっていて、でも日本の音楽プロデューサーはちょっと違う。服装やメイクといったビジュアルから、どんなダンスを踊るのか、どんな言動をしていくのか、そこまで含めてコントロールしていって、世の中に憧れられるような存在にしていく。今それを年齢の全然掛け離れたこのおじさんが出来るのかな?というところもあるんですけど(笑)、簡単ではないなと思ってます。--それこそ篠原涼子さんに当時していた規模のプロデュースですよね?
小室哲哉:彼女の場合は、彼女の名前をどう広げていくか。「この曲を歌っているのは彼女です」ということを分からせていく。曲のイメージが重なっていくよう「なんかこの曲歌ってそうだな」って思わせるようなところも含めたプロデュース。彼女のイメージ=彼女のマーケットを作っていかなきゃいけなかったんです。だから「恋しさと せつなさと 心強さと」が入ってるアルバム『Lady Generation ~淑女の世代~』のジャケットイメージも考えましたしね。僕も好きなジャケットなんですけど、実生活を持ってる女性像を彼女には求めたので、すごくリアリスティックというか、ドラマで言ったら先々の夢を見る少女の話ではなくて「明日生きていくには今日どうするか」そういう生々しいキャラクターをイメージ付けて、歌詞もそれを基本にして書いていく。--Def Willに対してもそういうイメージは湧いているんですか?
小室哲哉:まず本人たちの環境が「今日働かなかったから明日死んじゃうか?」と言ったらそんなことはないし、それはしょうがないことで「そうなれ」と言ってなるものでもないし(笑)、そういう意味では恵まれている。でも恵まれているんだったら「自分が存在することに何の意味があるのか?」「何か意味があるはずだよね」っていうことを自ら問いかける。ただ、今の本人たちだけで考えると月並みになっちゃう。「オシャレなおねえさんになって憧れられる存在になる」とか……それはそれでいいんですけど、もうちょっと高みを望んで、何かの縁で東京という場所に5人が集まっているので、東京発信の発想とか、東京を生きていく上でのしっかりとした自分の持ち方とか、アジアのトレンドであるとか、アジアのプライドであるとか。「日本」と言うと対抗意識を持たれるんだけど「東京」と言うと持たれなくなるので、東京発信にはしたいと思っていて。--なるほど。
小室哲哉:スキルが高いから「東京」というイメージではなくて、何かダメになったらリカバーできる。ファンションでリカバーする、言動でリカバーする、チームワークでリカバーする、東京はそういう強引なことが出来る街。そこに住んでいる若者が行動していく……というところまではイメージしてます。すでに「原宿」とか「渋谷」とかそういうトレンドはあるんですけど、もうちょっと広げてやっぱり「東京」から発信していくイメージにはしたいなって。なので、4ヶ国語、5ヶ国語喋れるグループなんですけど、基本的には東京のことを話していく、発信していく。--あらゆる言語で東京のことを発信していく。それもあってDef Willメンバーはグローバルな女の子が多いんですね。
小室哲哉:あと、日本は「単一民族」と言われてるんだけど、意外とそんなこともなくて。あらゆる国、あらゆる民族が集まっているというところも見せたかった。日本のアイドルグループはあれだけ集まってて日本人だらけ。でも都内を歩いててそんな場所はもう見かけないんで。どこを見てもあらゆる国の人が共存している。だからDef Willがそうなったのは自然だと思います。なんだかんだで日本の〆切として2020年というのがありますけど、その頃にはもっと自然発生的にそういったグループが生まれてるんじゃないかな。ちょっとしたきっかけで友達になってグループを組むとか、たくさんあると思う。- 90年代と今のプロデュース~サブスクを入口とした音楽ビジネスの流れ「プロモーションツールとして利用していくもの」
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:munemuranaoya
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