Special
傳田真央『Love for Sale』インタビュー
何があってもラブソングに拘り続けた18年間―――
皆さんが傳田真央とふれあう時間というのは、
愛についてふれあう時間であってほしい。
今から約18年前、MISIAや宇多田ヒカルの台頭によって生まれたR&Bブーム。その渦中にいながらして強烈な才能を放っていた傳田真央は、00年代後半のセツナ系(着うた)ブームの中でも、2011年の震災時においても、2017年現在まで一貫して「たかが恋、されど恋」とラブソングを歌い続けていきた。今回のインタビューでは、そんな彼女の生き様をフィーチャーしながら、4年ぶりの新アルバム『Love for Sale』に込めた想い、かの名曲「Happy Ever After」の今とも言える収録曲についても語ってもらった。
ラブソングを歌い続けた者が放つ「君の愛までは 売ってはいないよね」
--傳田真央さん、前作『セミダブル』以来4年ぶりのインタビューになります。
傳田真央:4年ぶり、オリンピックできちゃう(笑)。お久しぶりです。--デビュー時から取材させて頂いているので、出逢ってから約18年。
傳田真央:もうそんなに経つんですね。--その間、一貫してラブソングを歌い続けている傳田真央さん。今回のインタビューでは、その生き様を世に広めたいと思っているのですが、まず新作『Love for Sale』完成まで4年の歳月を費やした理由や流れを教えてもらえますか?
傳田真央:世界一周旅行に出ていたとかじゃなくて……--セレブ的な理由ではなかったんですね(笑)。
傳田真央:だとしたら逆に格好良かったかもしれない(笑)。前作『セミダブル』を作り終えて、わりとすぐに次の曲作りをスタートさせてはいたんですけど、その中でいろいろ拘り抜いているうちに4年経っちゃった! その間に自分の音楽スタイルを模索したりとか、自分の中での変化を求め出したり、ライブの面でもアコースティックライブを始めたりとか、いまさら人前でピアノを弾き始めたりとか、自分の目指している音楽の方向性が結構生まれ変わっていったんです。その中で「音源に落とし込むものはどんな音楽がいいんだろう?」って探し続けていたような4年間だったかな。--具体的には、どのような変遷を辿って『Love for Sale』に辿り着いたんですか?
傳田真央:ざっくり言えば、生楽器とのふれあい。それで大きく変わったんです。元々R&Bシンガーとしてデビューしてて、それはそれとしてずっと私の音楽性として在り続けると思うんですけど、ライブでピアノを弾き始めたり、アコースティックライブをしていく中で、音自体の中でも遊び始めたというか、自分で弾くことによって自分の旋律……自分の奏でたい和声も実現できるということに気付いてしまって。それも含めてサウンド自体でも傳田真央の世界を創りたいなと思って。それで最近やってるアコースティックな感じを音源にも盛り込めるように徐々になっていった感じですね。--それによって大きく変貌を遂げた曲もある?
傳田真央:ありますね。4年前『セミダブル』の直後に作っていた曲「愛逢い傘」も今回収録されているんですけど、当時はめっちゃEDMの曲として作っていて。でもそれが4年間の中で変化していって全然違う感じになっていたりとか。なので、今作『Love for Sale』は最初から「温かい感じにしよう!」と思って曲作りしていた訳ではなくて、作っていく中でちょっとずつちょっとずつこの形に近づいていった。--服装で例えると、最初はサイバー系の派手な格好をしていた子が……
傳田真央:気付いたら「ヴィンテージの服を着よう」ってなっていた(笑)。--この4年間で音楽自体に対する気持ちや心境の変化もありましたか?
傳田真央:前も自ら「大人女子」とか言ったりしていたんですけど、当時歌っていたラブソングにはまだまだ先があったと感じていて。アルバムを作りきった後って「やりきった」って自分では思ってるから『セミダブル』の後もそうだったんですけど、そこからライブをしていったら「あ、まだなんかある!」って気付いて。何かすごく新しいことがこれから出来そうな自分……っていう可能性を感じ始めて、でもそれをパッとすぐには音に出来なかったり、メロディーとか歌詞に出来ない時期もあったので、そういうときはすごく歯がゆい想いがあったり。あと、なんとなくうっすら見えてきた光というか「こういうことをやりたいんだよ」という想いを周りのスタッフのみんなに伝えていかなきゃいけない。っていうこともアーティストの大きな仕事としてあるので、そういうものをどんどん怖れずライブで出していってみる。--なるほど。
傳田真央:だからリハの3日前に書いた曲をライブでやっちゃったりとか、それを歌い続けていく中で毎回歌詞を変えたりしながらお客さんの反応も見て。それで反応が良いと「この曲は力があるかもね」ってスタッフも思ってくれるので、そういう工程の中で曲が出来上がっていく。ロックバンドみたいなスタンスというか、ストーリーでアルバムを作っていくことが初めてだったんで、ワクワクしながらも厳しい現実も受け止めたりしながら、そうやって4年かけて完成させたのが今回の『Love for Sale』なんです。--ラブソングを歌い続ける傳田真央としては、恋愛観の変化も楽曲に反映される訳じゃないですか。4年の中でそこの変化もありましたか?
傳田真央:あった。またひとつ大人の階段を上りました。4年経つとアラサーがアラフォーになるんですよ!--そうなりますよね(笑)。
傳田真央:心の中にはいつでも乙女心があるよう死守しようと思ってるんですけど、アラフォーになると女子会のトークテーマも変わってきて、恋バナとかだんだんしなくなってきてしまって!--「再び恋が出来るのかどうか?」という次元になってきますからね。
傳田真央:恋してても「それを言葉にすることが怖い」とかね。もしくは「恋しても結婚に繋がらない」「結婚に繋がらないと失敗と思われる」みたいな見栄の張り合いみたいな話も出てきて。それはまだ恋愛の話だからいいんですけど、気付いたら保険の話をしたりしてて「どう生き抜いていく、ウチら!」みたいな。--恋愛の前にどう生きていくかの話になるんですね(笑)。
傳田真央:その反動かもしれないんですけど、エグい、ヤバいドラマを観たりするようになったりとか、もしくはファンタジックな恋愛ドラマを観て、韓流の美しい男子に夢見ちゃったりとか、誰もがより極端になっていく(笑)。--僕もアラフォーなんですけど、この年齢になると「愛」とか「恋」とかだんだんストレートに語れなくなってくるじゃないですか。絶対に重く受け止められるし、仮に恋愛していても誤魔化すようになりますよね。
傳田真央:そうなの!「会いたい」とすらイタいんじゃないかと思って言えなくなったり、そういう可愛くなりきれない自分がいたりとか。でもそれが言えていたギャル時代よりも切実な寂しさがあったりする。なので、そういう言葉に出来ない部分は、今までとは違う角度から刺すことで補うようになる(笑)。そういう歌詞も今回書いてるんですけど。--ただ、アルバム全体の印象としては普遍的になってますよね。逆に聴き手の年齢や性別を選ばない感じになっていってる。
傳田真央:だんだんシンプルになっていってるのかもしれない。あと、恋愛するのにも体力がいるじゃないですか。でも私はラブソングを書いたり歌ったりしてるし、ライブも恋愛と同じようなイメージで臨んでいるから、今回は頑張らなくても聴ける、やさしくそばにいられるようなラブソングの皆さんを収録してるんです。--表題曲「Love for Sale」はまさに普遍的で、ラブソングを歌い続けてきた人の「愛までは売らないで」という想いも感じられてグッと来ました。
傳田真央:ありがとうございます。ただ、この曲のせいで4年かかったと言っても過言ではないというか(笑)、長い戦いがあったんですよ。ピアノも自分で弾いてるんですけど、ピアノのフレーズとかメロディーの部分が……ようやくこの形に辿り着いた。--「たくさんのものが あふれかえる街に 君の愛までは 売ってはいないよね」というフレーズにいろんな想いが込められていると思うんですけど、それこそ18年間にわたってラブソングを歌い続けてきた人が放つことに意味深さを感じます。
傳田真央「Love for Sale」 MUSIC VIDEO
--便利さが弊害になっているというか、それこそLINEで気軽に別れ話する世の中になっていたりする訳で……
傳田真央:そうなんですよね!- デビュー時の遠恋ソングに涙「将来の自分への手紙みたいになっていた」
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公演情報
SOFFet / 傳田真央
[1st]SOFFet リリース記念 『Love Letter Poetry』 LIVE 2017
[2nd]傳田真央 “Love for Sale” Live Tour 2017
ビルボードライブ大阪:2017/5/11(木)
1stステージ開場17:30 開演18:30 / 2ndステージ開場20:30 開演21:30
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
Love for Sale
2017/03/08 RELEASE
CRCP-40499 ¥ 2,852(税込)
Disc01
- 01.口紅
- 02.Love for Sale
- 03.たったひとつの夢
- 04.愛逢い傘
- 05.幸せの診断書 ~Check List~
- 06.卒業
- 07.大人の階段
- 08.一冊のラブストーリー
- 09.Bitter Sweet (’17 Piano session)
- 10.耳もとにいるよ…~Ring the bells~ (’17 Unplugged live)
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