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BOOM BOOM SATELLITES『19972016』インタビュー



BOOM BOOM SATELLITES 『19972016』 インタビュー

 川島くんと最後のレコーディングでしていたやり取りというのは、川島くんの一人暮らしの部屋で一緒にデモテープを作っていた頃と、感覚として変わらない。

 BOOM BOOM SATELLITESが駆け抜けた19年間=青春。ベスト盤『19972016』に込めた想い、完結を飾った『LAY YOUR HANDS ON ME』制作秘話、川島道行はどんなミュージシャンだったのか、中野雅之はどこへ向かうのか、直接話を伺った。音楽に人生のすべてを費やした2人のかけがえのない19年間、ぜひご覧頂きたい。

「神懸かってるな」と思いました。やっぱり面白い人だなって。

--BOOM BOOM SATELLITES名義としては最後のインタビューになると思うのですが、まず今回リリースされるベストアルバム『19972016』がどのような経緯で完成に至ったのか教えてください。

BOOM BOOM SATELLITES BEST ALBUM『19972016』SPOT
BOOM BOOM SATELLITES BEST ALBUM『19972016』SPOT

中野雅之:昨年6月に『LAY YOUR HANDS ON ME』をリリースして、ベストアルバム『19972016』の作業に入ったのが9月後半だったんですけど、いざやってみたら自分が思っていた以上に大変な仕事だったんです。最初は今年の1月リリースを予定していたものの「絶対に無理だな」と思って。単純に曲が多いので、やってもやっても終わらないし、自分でマスタリングしたんですけど、プロのエンジニアではないので手探りでやらなければいけなかった。あとはテープメディアのものだったり、媒体も様々だったので、古いコンピューターを引っ張り出したりもして……結果的に完成してリリースできるのがこのタイミングだったんです。

--BOOM BOOM SATELLITESの歴史を遡っていく作業でもあったと思うのですが、どんな感慨を持たれたりしましたか?

中野雅之:「よく頑張ってるな」って(笑)。あとは、あんまり古くなってなかった。新しいとか古いとか意識しないで聴けるようにマスタリングはしたんですけど、元々のマスターを聴いた段階でも全然「古い音楽だなぁ」とは思わなくて。それだけすごく気を遣って作っていたんだと思います。刹那的なシーンにいるので、その中でちゃんと残っていくものを作っていけるかどうか……というのはテーマにしていたから。それに『TO THE LOVELESS』(2010年リリースの7thアルバム)以降はトレンディなものとは線を引いていたので、古くなりようがなかった。

--19年間、様々な状況や想いから生み出してきた楽曲群になる訳ですが、一貫性みたいなものも感じることは出来ました?

中野雅之:一貫性は感じましたね。インストのブレイクビーツがあったり、バラードがあったり、音楽の縦割りのジャンルで言うと結構幅はあるんですよ。でもやっぱり「同じ人間が作っている音楽だな」って感じられる。……やっぱり音って何かを宿すんじゃないかな。そんな気がする。ブレイクビーツとかだと豊かな和声はない訳ですよ。で、感情的な、心の動きというのは、コードとかハーモニーとかメロディーで感受させるのが一般的だけど……それ以外にもあるんじゃないのかなって。あんまりハッキリとした理屈はないんですけど、そうじゃないと説明つかないことがある。

--簡単に言うと、意思とか想いみたいなもの?

中野雅之:そうですね。念みたいなもの。乱暴な言い方しか出来ないですけど、そういうものが宿るんじゃないかなって。初期とかだとサンプラーとDATで出来てるマスターだったりするんだけど、自分で手を動かして、自分の手でマスターを創るということは一貫してやってきてるんで「自分の手垢がついている」という言い方も出来る。他にも「意思が乗ってる」とかいろんな言い方が出来ると思うんですけど、少なくとも分業制で何かをやってないので。全部、内製志向で出来ている。なので“想いが乗る”とかは比較的起きやすいシチュエーションではあって。

--また、川島さん(川島道行/vo,g)の描いてきた詞世界と歌声が、BOOM BOOM SATELLITESの19年間をひとつの長編映画のように感じさせている部分もありますよね。

中野雅之:うん。とてもドラマティックな人生だったと思うので。……今となってはですけど、問題を抱えている体を持っている訳ですよ。長い時間。それによって育まれる考え方だったり、生きる姿勢だったりはあったと思う。ま、なかったらなかったで「どんな人生を過ごしたんだろうな?」っていうのも興味はありますけど、こうやって川島くんの人生が終わって「今まで何をして過ごしてきたのか」振り返ると、そういう運命とか宿命だったんだなって納得がいくことが多い。あんまり可哀想とかは思わないです。自分の体と自分の人生を全うしたんだとすごく感じます。

--BOOM BOOM SATELLITESの19年間をひとつの作品として捉えたとき、そうした川島さんの人生もあり、最後に『LAY YOUR HANDS ON ME』という表現で完結してみせたこのプロジェクトは、他に類を見ない作品になったと感じます。中野さんはどう思われますか?

BOOM BOOM SATELLITES 『LAY YOUR HANDS ON ME』Short Ver.
BOOM BOOM SATELLITES 『LAY YOUR HANDS ON ME』Short Ver.

中野雅之:それは「誇れるな」と思います。自分たちの最後を“在りたいように”表現して終わることってなかなか出来ないと思うので。最後にライブが出来なかったのは、川島くんは残念だったと思うし、ファンにとっても可哀想だったと思うけど、でもそれは仕方がない。よくやったんじゃないかな。

--『LAY YOUR HANDS ON ME』という表現で完結させたい想いは、中野さんの中にも強くあったんでしょうか?

中野雅之:『LAY YOUR HANDS ON ME』はすごく大慌てで創っていて。それは残された時間が少なかったから。そこで「どういう音楽にするか」考えたとき、自然とああいう形になりました。あのハードな状況の中で、やっぱり「希望が欲しい」っていうことと、受け入れたり「肯定的な姿勢でいたい」とか……いろんな願いがあって。僕がそれを川島くんに示してあげないといけなかったんですよね。自分の状況を自分で判断して自分で舵取りを正確にしていける状態じゃなかったんで。なので、僕が提案して、川島くんは無心というか、無意識で乗っかってくる感じだった。信頼してくれていたと思うんですけど、もうあんまり頭が回ってはいなかったから。

--そうした状態の川島さんから『LAY YOUR HANDS ON ME』のあの歌詞を提出されたときは、どんな気持ちになりました?

中野雅之:実は歌詞全体が出来上がるまでには物凄い時間を要したんですけど、あの「LAY YOUR HANDS ON ME」という歌い出しのフレーズは、いちばん最初に出てきてフィックスしていて。やっぱり感動しました。それは…………「そうなんだなぁ」と思ったし、やっぱりトドメ刺してくるなって。仮のメロディーがあったところに「歌詞をつけよう」となって、すぐ「LAY YOUR HANDS ON ME」というフレーズになったときは、ちょっと興奮しました。「まだ川島くんは出来るんだな」と思って……ま、そこからが大変だったんですけど。例えば、自分で帰りの支度とかも出来なくなっていたんで、何もかもが難しくなってたんです。だからリリックの書き直しとか「ここはok。ここもフィックス。この一行だけ書き直そう」と伝えるんですけど、次の日来ると全部書き換えてきちゃってて「川島くん、ここにしるし付けたじゃん」ってなる。それですごく苦しい作業を連日していたんですけど……よくやりきったなって思います。そんな状態なのにあんなにクリアーな方向性をバーン!と出してきたのは、ちょっと「神懸かってるな」と思いました。やっぱり面白い人だなって。

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19972007 -Remastered-

2017/03/01 RELEASE
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Disc01
  1. 01.KICK IT OUT
  2. 02.WHAT GOES ROUND COMES AROUND
  3. 03.LOOKING GLASS
  4. 04.PILL
  5. 05.MORNING AFTER
  6. 06.LIGHT MY FIRE
  7. 07.LET IT ALL COME DOWN
  8. 08.40-FORTY-
  9. 09.GIRL
  10. 10.MOMENT I COUNT
  11. 11.ON THE PAINTED DESERT
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