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「我を忘れるぐらい自信を持ちたい」― イジー・ビズ 初来日インタビュー



イジー・ビズ インタビュー

 サム・スミスやジェイミー・カラムのオープニング・アクトを経て、新人の登竜門【BBCサウンド・オブ・2016】や【ブリット・アワード批評家賞】にノミネートされ、大きな期待とともに『ア・モーメント・オブ・マッドネス』で2016年9月にデビューを果たした、UK発のシンガーソングライター、イジー・ビズ。エイミー・ワインハウスやアデルらの影響を語る彼女が、ハスキーで独創的な歌声と等身大のリリックとともに紡ぐレトロ・テイストなオーガニック・ポップは、本国をはじめ、ここ日本でも注目されつつあり、アルバムからのリード・トラック「White Tiger」は、Billboard JAPANの“Hot Overseas”洋楽チャートで1位をマークしている。そんな彼女が待望の初来日公演を2017年1年にビルボードライブで開催、公演前の彼女に話を訊いてみた。

どんな音楽をやりたい、っていうプランもなかった
実のところ、インディーぽい音楽が作りたかった

−−2016年は、イジーにとって実りの多い年だったと思いますが、振り返ってみてどうですか?

イジー・ビズ:本当に色々なことが起きて、素晴らしい年だった。様々な音楽フェスに出演したり、デビュー・アルバムをリリースしたり、ヘッドライン・ツアーを行ったりね。一番印象に残ってるのは、ベルギーの【Pukkelpop】と【Glastonbury】に出演したこと。

−−【Glastonbury】は初めて?

イジー:ううん、3度目。これまで出演した中で一番大きいパーク・ステージで演奏できて、すごくクールだった!

−−そして今回待望の初来日ですね。楽しみにしていることは?

イジー:昨日、ちょっと出かける時間があったから、ゲームセンターに行って太鼓のゲームをしたし、ダーツもやった。ご飯も美味しかった。どんな時間でも何かしらやることがあって、グレイト!すごく楽しい。まるで子供に戻ったよう。大阪に行くのも楽しみにしてて、この後のライブも待ちきれない。

−−今日は初の日本公演の上、2017年初のライブですね。

イジー:そう!すごくエキサイトしてる。いいショーになると思う。調子もいいし、初めての国でプレイするのはいつでもいい気分よ。

−−ステージには、クッションや紙のランタンを飾っていましたが、アットホームな雰囲気ですね。

イジー:うん。ぬくもりのある空間にしたいと思って。ショーの途中で、バンドメンバー共々、みんなで座って演奏する曲があるから、その時に快適なのもあるし。

−−キャンプファイアーを囲んで歌うのに近いヴァイヴですね。

イジー:本当にできたらいいんだけどね。心から居心地のいいライブにしたいの。

−−2016年11月にはホンネがビルボードライブに出演しました。彼らとはTwitterがきっかけで知り合ったそうですね。

イジー:そう。ライブが終わった後、ツアーバスでパーティーをしていたんだけど、その時にドラマーが彼らの曲をかけたのを聴いて虜になった。そこで彼らのTwitter宛に「ジャムらない?」ってメッセージを送ったら、快諾してくれた。その次の週に会って、一緒に曲を書いた。それが「Someone That Loves You」になったの。

−−曲のLate Night Versionもすごく良かったです。緩やかな感じで、2人の歌声も映えていて。

イジー:ありがとう~。嬉しい言葉。




−−彼らと行ったインタビューで、MURA MASA、Nao、ストームジー、ジャック・ガラットなど、今UKミュージックの波が来ているという話があったのですが、イジーが注目しているUKのアーティストはいますか?

イジー:ストームジーはすごくいい。アンダーソン・パークも好き。彼はUKのアーティストじゃないけど。【Pukklepop】に出演した時に、彼のライブを観たんだけど、本当に素晴らしかった。グッド・エネルギーに溢れていて。

−−いつか2人のコラボを期待したい所ですね。

イジー:私の方は、やる気満々よ。実現したらいいな(笑)。

−−今年飛躍しそうな注目のアーティストはいますか?昨日、【BBCサウンド・オブ・2017】が発表されたばかりですが。

イジー:Ray BLKが1位になったのよね。彼女は最高。彼女のことも好き。あとは、エラーニも。彼女は【BBCサウンド・オブ・2017】に選出されていなかったけれど、今後注目した方がいいアーティストの一人。

−−イジー自身、先日【BBCミュージック・アワーズ】で<BBCイントロドューシング・アワード>に輝きました。おめでとうございます。

イジー:そう!すごく嬉しかった。

−−トロフィーは自宅に飾ってるんですか?

イジー:え~っと。私の手元にないの。

−−え?どこに行っちゃったんですか?

イジー:終わった後、パーティーに行きたくて…あのトロフィー、すごく重いの。私が、あまり力持ちじゃないからかもしれないけど(笑)。で、重たすぎて持っていけなかったから、マネージャーに渡したまま。リマインドしてくれてありがとう。帰ったら、彼女から返してもらわなきゃ!

−−自分ではどういう部分が評価されたんだと思う?

イジー:う~ん。どこだろう。正直な話、音楽を作り始めた頃、ギタリストとよくジャムって、自分たちの経験に基づいた曲を書いていたけど、どんな音楽をやりたい、っていうプランもなかった。実のところ、インディーぽい音楽が作りたかった。

−−インディー・ロック?

イジー:そうね~、すごくロックではなく、ザ・クークスみたいな感じ。彼らみたいなサウンドを試みたんだけど、まったく違うものに仕上がった。私には、ああいう風な歌い方は向いてなかったみたい。で、自分がやっていることをみんなが“ソウル”呼び始めて、「ふ~ん、これってソウルなんだ。それも悪くないな」って思った。そこが評価されたのかもしれない。誰かの真似事をしていなかったところが。

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あまり何も考えずに音楽と向き合った方が、“真実”に基づいたものが生まれる

−−ちなみに、アワードでは「White Tiger」をアルバムと違うアレンジで歌ってましたよね。

イジー:うん。振り付けをプラスしてね。秘密を教えてあげる。実はもっとダンスする部分が多かったの。でも、カメラ・リハーサルをやったら、案外難しくて半分以上カットされた。私は、めちゃめちゃホッとしたけど(笑)。頭ではわかってるんだけど、実際にやってみると難しいものなのよね。




−−そもそも「White Tiger」でソウルとハウス・ミュージックを融合するアイデアはどこから来たんですか?

イジー:これも何気なくやったこと。この曲は、みんなとは違う誰か、私のことを誰よりも理解してくれている誰かについて。その人の前では、他の誰にも見せられない自分の弱い部分もさらけ出すことができる。だから、私にとってその人は“白い虎”なの。それについて書き始めて…ピアノのコードがちょっとハウスっぽいものだった。多分、曲を書いた人と一緒に当時ハウス・レイヴによく行ってたからだと思う。それが無意識に投影されたのかもしれない。

−−アルバム全体からもクラブ音楽の影響が伺えますしね。

イジー:少しね。ディスコっぽいヴァイヴがあるわよね。

−−最近はレイヴやクラブに行かなくなったんですか?

イジー:そうじゃないんだ。人生で何より好きなのがダンスすることだから。でも、今は忙しくなっちゃって…毎晩パーティーしてたら歌えなくなるから、自分が愛することと遊びはバランスしなきゃいけないの。

−−ロンドンでは、どこのクラブに行ってたんですか?

イジー:初めて行ったレイヴは、ファブリックよ。その当時は、今に比べて格段にクールだった。営業停止してて、再オープンしたじゃない?だから、今後どうなるのかな、と思って。

−−DJしたりは?

イジー:したことないな~。でも、誰かがやり方を教えてくれたら、トライしてみたいかな。やるんだったら、ちゃんとヴァイナルでやりたいから、それにはスキルが必要だし。



2017.1.8 IZZY BIZU @ BILLBOARD LIVE TOKYO


−−アルバム発売からおよそ半年経ちましたが、いま振り返ってどんなことを感じますか?

イジー:満足はしてる。でも、自分にとって今とは異なるフェーズって感じがする。2年前には曲をすべて書き上げていて、リリースを遅らせただけから。若い自分の姿ね。

−−その当時から大きく成長している?

イジー:劇的ではないけど、かなり変わってる。曲を書いたのは18~19歳ぐらいの時だから、今聞き返すと、何でこんなくだらないことを不満に思ってたんだろう。たいしたことじゃないじゃん、って。可笑しなものよ。まるで、自分の日記を読み返しているよう。今では信じられないけど、私、こんなこと言ってたんだ、とか。

−−これまで一緒に音楽を作ったことがない人と仕事をする際、自分をさらけ出すのは難しくなかったですか?

イジー:幸運にも、私が一緒に仕事をした人たちは経験が豊富で、他のアーティストともたくさん仕事をしているから、こういうパーソナルなことを聞くのに慣れていて、問題なかった。みんなすごくいい人たちで、家族や子供がいるから、そういうティーンならではの悩みにも理解があったの。

−−イジーは、ジャムりながら曲を書くことが多いそうですが、具体的にどのように曲を形にしていくのですか?

イジー:いつも偶発的で、ジャムするってこと自体も、別にセッティングしてない。リハーサルをしてる時にそうなることが多い。サウンド・エンジニアとかが何か不具合を直さなきゃいけない時に時間があると、飽きちゃうから。その場で“何か”が起こる場合もあるから、ずっと録音ボタンはオンのままにしてる。それを聞きかえして、これはクールだな、とか気に入ったメロディがあれば、それを再び演奏して、詞をのせていく感じ。あまり何も考えずに音楽と向き合った方が、“真実”に基づいたものが生まれると思う。とはいえ、ジャムったから、必ずいい曲が生まれるってわけじゃない、最悪な場合もある(笑)。その中から、いいものを組み合わせて曲を作っていくの。

−−経験が増すごとに、いい曲の率も増えていくと思いますし。

イジー:そうよね。それと、その時の自分のムードとエネルギーも大事。それが部屋にいる他の人たちのものと合致すること。

−−合うと、相乗効果が生まれる。

イジー:そう。クラブで酔っ払ってる時に、自分と同じぐらい酔っ払ってる人が感覚的に分かって、繋がりが生まれるのと似てる。言葉なしでも、理解しあえる、あの感覚(笑)。すごく心地よくて、最高よね。




−−アルバムに収録されている曲で、そんな体験から生まれた曲はありますか?

イジー:「White Tiger」はそうだし、「Mad Behaviour」もそう。そんな風に生まれた曲はいくつかある。でも、「これ、一体どうなっちゃってるの?」ってじっくり座って、考えなければならない曲もあった。「What Makes You Happy」なんかがそう。その時は働きづめで、めちゃめちゃ気が立ってた。だから、息を吸ってチルしなきゃ、って曲から、いつの間にか好意のある異性に気づいてもらいたい、という曲になっていた。彼に気づいてもらうためにあらゆることをしたけど、全然気づいてくれなかった。だから「あなたをハッピーにするのは何なの?」って。苛立ちから生まれた曲だけど、自分が伝えたいことに気づき解放された。

−−曲作りが、セラピー的な役割を果たすことは多いんですか?

イジー:時にはね。逆に生気をすべて吸い取られる場合もある。様々な感情が交差するから。翌日には、頭がすっきりしていい気分になるけど。

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    ビヨンセのように歌いたい、って思った時期さえあった
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どのシンガーの真似もできなくて、当時はもどかしかった
ビヨンセのように歌いたい、って思った時期さえあった

−−歌自体もとてもユニークですよね。「Glorious」ではラップみたいな歌い方をしたり、ジャズの影響も感じられます。

イジー:ハハハ。あの曲ではふざけてたの!その時、ラップにハマってたから。

−−今の歌い方にはどのようにたどり着いたんですか?

イジー:初めて人前で歌ったのは寄宿学校で、学校が始まって1週目に「全校集会で歌って」って言われたの。無論「ノー!」って答えた。

−−え、唐突に言われたんですか?

イジー:学園のオーナーがピアノを弾く人だったから、元々彼と一緒にジャムったりしてたの。彼が、私に内緒で校長先生に「彼女は歌える」って伝えたら、ある日校長室に呼ばれて…。「ヤバい、何かしでかしたんだ」と思ってたら、全校集会で歌って欲しいって言われた。「嫌だ」と答えたら、「ダメ」って言われて…彼女、なかなか恐い人だったから、渋々歌うハメになった。そして「Amazing Grace」を1000人以上の生徒の前で歌った。終わった後に、オーナーが「歌のレッスンを受けた方がいい。真面目にやってみた方がいい」って勧めてきた。私は、「OK、わかった」と答えてレッスンを受け始めたけど、すぐに飽きたから止めてしまった。そしてロンドンに来た時に、レッスンを再び受け始めた。テクニックは最悪だったけど、歌うことが好きだったから、レッスンを受け続け、ソングライティングを通じて自分のトーンを見つけ出した。

−−これが自分の“声”だ、と自覚したのは?

イジー:ロンドンのオールド・ストリートで行われたオープン・マイクで「Summertime」を歌った時。すごく一生懸命練習した。どんな風に歌おう、どんなシンガーのように歌おう、って悩んだけれど、どのシンガーの真似もできなくて、当時はもどかしかった。ビヨンセのように歌いたい、って思った時期さえあったけど、そんなのどう考えても無理、夢話(笑)。だから、必死に練習して、自分らしさを探求した。



2017.1.8 IZZY BIZU @ BILLBOARD LIVE TOKYO


−−では、今後の予定を教えて下さい。

イジー:この後、またヨーロッパ・ツアーをする予定。

−−ツアーするのは好き?

イジー:イエス!大概はね。今回のような感じだと好き。到着して、チルして、ディナーを食べに出かけて、あまり早い時間に起きなくてもよくて。朝5時に起きて、10時間移動して、ライブをするなんてこともあるから。ライブをするのは大好きだけど、移動がね…。前日に入って、じっくりディナーを食べる時間があれば満足よ。

−−次回作の構想は進んでいますか?

イジー:うん。でも、アルバムっていう風に考えるのは嫌。

−−いい曲を一つずつ書いていくのみ。

イジー:そう。それをどうにかして一つの作品にまとめる方が向いてる。

−−アーティストとしてのゴールや夢は?

イジー:ひたすら新しいことを経験していくこと。音楽以外のことでも。旅がしたい。南アメリカとかに行きたいな。そして様々な国の人々とジャムって、彼らの文化について学びたい。そうやって、曲を作り続けたいの。とにかく成長し続けたい。そして一番のゴールは、もっと自信をつけること。機嫌がいい時は、自然と自信が伴ってくる場合もあるけれど。揺るぎない基礎を持ちたい。世の中にはそれを持ち合わせた人がいるけれど、それは一晩で身に付いたわけじゃないと思う。コツコツ取り組んでいった成果。感情は排除し、我を忘れるぐらい自信を持ちたい。それが最大のゴール。




−−これまでのキャリアで、一番喜ばしかったのは?

イジー:成功は人によって違うけど、【MOBOアワード】で行ったアコースティック・パフォーマンスは心から気に入ってる。すごくシンプルで。この1年、素晴らしいことがたくさん起きた。フル・バンドでツアーして、派手な照明を取り入れたり。だからピアノの伴奏のみで、このパフォーマンスを行った時、まるで昔に戻ったようだった。プレッシャーもなく、とってもチルで。

−−ライブでも、そういう演出を行っていますしね。

イジー:そう、そういう瞬間を大切にしたい。フル・バンドで演奏するのは大好きだけど、アコースティックで演奏するは同じぐらい大好き。原点に戻った気がして。

−−では、最後にイジーがファンを公言するエイミー・ワインハウスによるお気に入りの曲を教えて下さい。

イジー:今現在だと、今朝聞いた「Addicted」。ファビュラスで、ユーモラスな曲だから。300回ぐらい聞いてるけど、今朝詞に関するある発見があって。でも、詳しくはここでは話せないな。とにかく、彼女がすごくスマートで、勇敢だ、と言いたいわ(笑)。


イジー・ビズ「ア・モーメント・オブ・マッドネス」

ア・モーメント・オブ・マッドネス

2016/09/07 RELEASE
SICP-4954 ¥ 2,420(税込)

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Disc01
  1. 01.ダイアモンド
  2. 02.ホワイト・タイガー
  3. 03.スキニー
  4. 04.ナイーヴ・ソウル
  5. 05.ギヴ・ミー・ラヴ
  6. 06.アダム & イヴ
  7. 07.ゴージャス
  8. 08.ロスト・パラダイス
  9. 09.グロリアス
  10. 10.ホワット・メイクス・ユー・ハッピー
  11. 11.マッド・ビヘイヴィアー
  12. 12.サークルズ
  13. 13.アイ・ノウ
  14. 14.フライ・ウィズ・ユア・アイズ・クローズド (UKデラックス盤ボーナス・トラック)
  15. 15.ハロー・クレイジー (UKデラックス盤ボーナス・トラック)
  16. 16.サムワン・ザット・ラヴズ・ユー (UKデラックス盤ボーナス・トラック)
  17. 17.ツリーズ & ファイア (UKデラックス盤ボーナス・トラック)
  18. 18.ホワイト・タイガー (Live) (日本盤ボーナス・トラック)
  19. 19.ギヴ・ミー・ラヴ (Live) (日本盤ボーナス・トラック)
  20. 20.マッド・ビヘイヴィアー (Live) (日本盤ボーナス・トラック)

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