Special

デヴェンドラ・バンハート 日本愛溢れるプレイリスト&来日インタビュー



デヴェンドラ・バンハート インタビュー

 2000年代初頭に“フリー・フォーク・ムーヴメント”の一員として頭角を表わした、流浪のアウトサイダー=デヴェンドラ・バンハート。音楽以外にも、アーティスト、写真家としても活動し、個展を開くなど、その独特な感性と眼識は、ここ日本をはじめ世界中に多くのファンを持つ。最新作は、2013年に移籍した米名門レーベル<Nonesuch Records>からリリースした『エイプ・イン・ピンク・マーブル』。“架空のホテル”をイメージし制作された聴き応えに富んだ今作には、造詣が深い日本文化へのオマージュも多数あり、デヴェンドラ自身が手掛けたアルバム・カヴァーもインパクト大だ。

 ここでは、自ら選んだ【日本の雨/冬と田舎/ゴールデン・ボーイ通りでブギウギ】という日本愛に溢れるテーマに基づき選曲してくれた、こだわりのプレイリストとインタビューをお届けする。ちなみに、取材は米大統領選の直後、そしてデヴェンドラが敬愛するレナード・コーエンの訃報が流れた2016年11月、雨模様の日に行われた。

【日本の雨/冬と田舎/ゴールデン・ボーイ通りでブギウギ】
プレイリスト BY デヴェンドラ・バンハート

「このプレイリストは、日本の楽曲を中心に選んだ。長年、日本の音楽がすごく好きだから、日本に来ると必ずレコード屋に足を運ぶし、日本の曲を友達同士でシェアしたり、レコメンドしたりするんだ。じっくり選んだ曲たちだから、気に入ってくれるといいな。」――デヴェンドラ

01. 「TORNADO」 - 吉田美奈子

 これは、まさしくゴールデン・ボーイ通りでブギウギにピッタリ。シティ・ポップの定番だ。



02. 「Kotoba Maku (Kein Wort) 」 - ハウシュカ

 田舎へ徐々に近づいていってる感じ。ハウシュカは素晴らしい作曲家で、この曲は日本人のシンガーが歌ってる。



03. 「Japan」 - アンドレイ・デルガチョフ

 冬のイメージだね。インストゥルメンタルの曲で、静寂のパートが多い。雪がゆっくりと降っている情景が浮かぶ。

04. 「最後の手品」 - 佐藤博

 実は、今日ベスト盤を買ったばかり。後で聴くのがすごく楽しみなんだ。

05. 「しんしんしん」 - はっぴいえんど

 (雪が降る時の音でもあると聞いて)パーフェクト!これはブギウギと田舎が交じり合った感じ。カントリーやロック調のサウンドで、田舎でちょっとだけパーティーしたい時に聴くのに適してる。その上、冬にもあてはまることが分かった!




06. 「踊りなよ」 - ケン田村

 まさに、“クラッシック”。僕の大好きな曲の1つでもある。この曲は、1年ぐらいずっと頭から離れなかったんだ。冒頭は、キュートな感じで、TV番組のイントロ音楽ぽいでしょ?そこからこれだよ、最高だね(笑)。シティ・ポップ的なヴァイブもあるけど、澄んだ日に田舎で踊りたいときにもピッタリだね。

07. 「Yoko’s Eyes」 - ステファン・ミクス

 ドイツの作曲家で、彼のアルバムはすべて大好き。日本人女性の瞳を連想させる曲。

08. 「鉱夫の祈り」 - 高田 渡

 頭から離れない、哀しげな曲。昔ながらのフォーク調のプロテスト・ソング。彼がギター一本のみで歌うと本当にビューティフルで、気持ちを奮い立たせてくれる。

09. 「マリアンヌ」 - 金延幸子

 僕が世界一大好きミュージシャンの一人。最高。天国のようだよ。冬ではないけど、田舎というテーマに合うね。この曲は、この世で最も美しい曲の一つだと思う。聴くと泣けてくるんだ。

10. 「Ki」 - さかな

 この曲はすごくクール。バンドもすごくクールだね。

11. 「Microon II」 - 坂本龍一×ALVA NOTO

 この曲は傑作。美しい、アート的音楽の典型。本当に詩的なサウンド。坂本龍一が作る音楽は、どんなものも好きなんだ。毎日欠かさず聴いているごく少ないアーティストの一人だ。いつもは『Playing the Piano』から1曲を選ぶ。坂本らしいけど、僕が好きなサティや彼を形作るアーティストの影響が伺えるし、純粋に彼の音楽と触れ合うことができるから。彼の演奏は本当に独特で、それがダイレクトに伝わってくる。曲を選曲をしてほしいと言われると、必ず『Playing the Piano』から何か選ぶんだけど、今回はちょっと違うものを選んでみた。候補として、この曲か、『千のナイフ』からの曲が候補に挙がっていたんだ。



12. 「Treasure」 - ホープ・サンドヴァル・アンド・ザ・ウォーム・インベンションズ

 マジー・スターのホープと、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのコルム・オコーサクによるユニットで、この曲が収録された新作をすごく気に入ってる。今朝、ホテルの部屋から雨が降るのを眺めながら聴いていたら、すごく合うなと思って。アルバムに収録されているホープとカート・ヴァイルのデュエットもおススメだよ。



13. 「The Moon and the Abandoned Old Woman」 - イクエ・モリ

 これは本当に美しい、インストゥルメンタルの曲。アルバム・ジャケットも最高にクール。能とか歌舞伎を連想させるすごく日本的な要素に、少し電子音楽っぽい要素が混じった曲で、惹かれるね。日本の文化は、何に関しても間や空間の取り方がとても巧みだと思う。空間とサウンドの強弱。文化に広く行き渡っていて、建造物からも伺える。住居もそうだし、商業的な施設も。この意味深なタイトルもすごくいいよね。ちょっと村上(春樹)っぽいし、ジブリの作品っぽい感じもするから、映画のタイトルにもなりそう。自分の曲のタイトルも深い意味があるものもあれば、まったくそうじゃないものもある。すっと降りてくるときもあれば、すごく時間がかかるときもある。そういう時は、ギヴアップしちゃうこともあるんだ。

14. 「Improvisation 2」 - 古賀雅之

 日本の伝統的なフルート(尺八)奏者で、とてもビューティフル。この曲は毎日聴いてる。まさに田舎にピッタリな曲。

15. 「未来の子守唄」 - 坂本慎太郎

 すごくのどかな感じがするから、テーマの田舎にピッタリ。それでありつつ、都会っぽいヴァイブもあって不思議な感覚だね。プロダクションがすごくスマートで、的確だからかな。坂本慎太郎の曲はどれも好きで、「ナマで踊ろう」って言う曲なんかは、DJする時によくかけているんだ。




16. 「砂の女」 - 鈴木茂

 同タイトルの映画もあるよね。この(『バンドワゴン』の)アルバム・ジャケットを見てよ。ルックスもめちゃめちゃクールだ。彼の作品はもっと掘り下げなきゃと思ってるんだ。




17. 「prairie home suite - part 2」 - the sleeping beauty

 すごくビューティフルなインストゥルメンタルの曲。



18. 「ユーミン(Live)」 - シュガー・ベイブ

 これはライブ・バージョンなんだけど、すごくクールで、お気に入りなんだ。




19. 「ドリーム - 君去りし後」 - 渋谷毅

 この曲は、ジャズ・スタンダードで、鉄板。

20. 「美しい人」 - Takuro Kikuchi

 牧歌的な田舎っぽい感じ。曲が収録されているアルバムもビューティフルだ。




21. 「返事はいらない」 - 荒井由実

 やっと田舎から都会へ戻ってきた、と感じさせる、シティ・ポップ的なヴァイブを持ったJポップ・ナンバー。このちょっと小生意気なタイトルもいいよね。

22. 「Conversation」 - 細野晴臣

 これは2部構成になっていて、イントロがあるんだ。傑作中の傑作。僕が敬愛する細野晴臣が手掛けた映画『メゾン・ド・ヒミコ』のサントラに収録されている。まさに、このプレイリストのラストを飾るのにふさわしい曲だと思うよ。

「言葉がわかる場合は、詞をじっくりと聴く。稀に、詞があまり良くなくても、音楽自体や歌い方に惹かれる場合もある。たとえ100人が同じを詞を歌ったとしても、その中からガツンと響くものや涙が出るようなものはごく少数だ。それが平凡な言葉の場合もある。詞は家と同じで動かぬものだ。そこにどうやって、生気を与え、曲のエモーションを引き出すか、ということなんだ。日本語とか詞が理解できない場合は、さらに解釈が広がり、奥深く、豊かな体験になる。詞に捉われなくていいから。詞が素晴らしすぎて、音楽を圧倒してしまう場合もあるから。で、自分の解釈が定まったところで、翻訳することが多いね。」――デヴェンドラ

NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. ◎インタビュー◎
    レナード・コーエンの死と米大統領戦について
  3. Next >

デヴェンドラ・バンハート「エイプ・イン・ピンク・マーブル」

エイプ・イン・ピンク・マーブル

2016/10/19 RELEASE
WPCR-17503 ¥ 2,640(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.ミドル・ネームズ
  2. 02.グッド・タイム・チャーリー
  3. 03.ジョン・レンズ・ア・ハンド
  4. 04.マラ
  5. 05.ファンシー・マン
  6. 06.フィグ・イン・レザー
  7. 07.ライム・グリーンの服を着た台湾の婦人のテーマ
  8. 08.スーベニール
  9. 09.哀悼者の踊り
  10. 10.土曜日の夜
  11. 11.リンダ
  12. 12.幸運
  13. 13.祝祭
  14. 14.エヴィクション・パーティー (日本盤のみボーナス・トラック)

関連キーワード

TAG

関連商品

FLYING WIG
DEVENDRA BANHART「FLYING WIG」

2023/09/22

[CD]

¥2,640(税込)

エイプ・イン・ピンク・マーブル
デヴェンドラ・バンハート「エイプ・イン・ピンク・マーブル」

2016/10/19

[CD]

¥2,640(税込)

ホワット・ウィル・ウィー・ビー
デヴェンドラ・バンハート「ホワット・ウィル・ウィー・ビー」

2009/11/11

[CD]

¥2,703(税込)

ホワット・ウィル・ウィー・ビー
デヴェンドラ・バンハート「ホワット・ウィル・ウィー・ビー」

2009/11/11

[CD]

¥2,703(税込)

ニーノ・ロッホ
デヴェンドラ・バンハート「ニーノ・ロッホ」

2007/11/14

[CD]

¥2,703(税込)

リジョイシング・イン・ザ・ハンズ
デヴェンドラ・バンハート「リジョイシング・イン・ザ・ハンズ」

2007/11/14

[CD]

¥2,703(税込)