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ジョージ・クリントン&PARLIAMENT/FUNKADELIC 来日記念特集~ヴィジュアル&アート面から紐解くPファンクの魅力

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 ジョージ・クリントン率いる2つのバンド、ファンカデリックとパーラメントを中心に、70年代から80年代にかけて単なる音楽ジャンルという枠を超える一大ムーブメントとなった“Pファンク”。ファンクやロックへの影響はもちろんのこと、80年代後半以降はヒップホップ・シーンへ果たした貢献度の大きさは計り知れない。一方で、Pファンクが一つのムーブメントと呼べるほどの地位を築いたのは、メッセージ性も含めた音楽の部分だけではなく、アルバムジャケットなどのビジュアル的な部分も重要なファクターとなっていたのは間違いない。そんな重要な要素であるビジュアル=アートの面からPファンクの魅力を探っていきたい。

誰もが認めるファンク界の最高峰、ジョージ・クリントン&PARLIAMENT/FUNKADELIC 来日記念特集>>>

 これまでファンカデリック、パーラメント、さらにジョージ・クリントンやブーツィー・コリンズといった主要メンバーのソロやPファンクから派生した様々なグループ、ユニットに到るまで、膨大な量の作品がリリースされてきた。それらの作品の中で、誰もがイメージするPファンクのビジュアル的な世界観を作り上げたのが、Pファンク・ファミリーの一員である、ペドロ・ベルとオーヴァートン・ロイドという二人のアーティストであった。

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 '73年リリースの『Cosmic Slop』から'81年リリースの『The Electric Spanking Of War Babies』までファンカデリックのアルバムのアートワークを全て担当し、さらにジョージ・クリントン『Computer Games』のジャケットなども手がけたペドロ・ベルは、Pファンク、特にファンカデリックのサイケデリックな部分を、独特なタッチのイラストによって表現してきた。ファンカデリックの代表作『One Nation Under A Groove』のジャケットも彼が手がけたものであるが、ジャケットの表紙から裏面、さらに見開き部分の全てに渡って、凄まじいまでの情報量を持つアートワークが投入され、アルバムのコンセプトが緻密に表現されている。

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 一方のオーヴァートン・ロイドは'77年リリースのパーラメント『Funkentelechy Vs. The Placebo Syndrome』に内封された8ページのコミックスによってPファンク・ファミリーとしての活動をスタート。彼が手がけたアートワークの中でも最も有名なのがパーラメント『Motor Booty Affair』であるが、ジャケットの見開き部分が、彼の描いた様々なキャラクターを使った組み立て式の飛び出す絵本のようになっており、単なるイラストレーターとしてではなく、アートディレクターとしての優れた手腕を発揮している。また、主にPファンク関連作のみを手がけてきたペドロ・ベルに対して、オーヴァートン・ロイドはザップ(ザップもPファンクとは近しい関係ではあるが)や、さらに90年代にはPファンクから多大な影響を受けたヒップホップ・グループの一つ、デジタル・アンダーグラウンドのジャケットも手がけている。

 ペドロ・ベルとオーヴァートン・ロイドが手がけたイラストがメインのアルバムジャケットに対して、写真をメインとしたジャケットもPファンクでは非常に強烈な印象の作品が多い。その筆頭と言えるのがファンカデリック『Maggot Brain』で、このアルバムジャケットはファンクだけでなく、ロックやジャズなど様々なジャンルのアーティストの作品を手がけてきた白人フォトグラファー、ジョエル・ブロッドスキーによるものだ。一方でPファンク・ファミリーの一員としてグループと共に活動してきたフォトグラファーもおり、その代表的な人物がアートディレクターとしてもクレジットされているディエム・ジョーンズである。彼が手がけた代表的な作品といえばファンカデリック『Uncle Jam Wants You』のジャケットだが、他にもバーニー・ウォーレル、ブーツィー・コリンズ、Pファンク・オールスターズなど、様々な作品に携わっている。

 また、彼ら以外にも様々な人たちがPファンク関連作のアートワークに関わっているが、Pファンクから派生した女性グループ、パーレットのデビューアルバム『Parlet』のジャケットをなんと、日本人イラストレーターの長岡秀星氏が手がけている。長岡秀星氏といえば、70年代半ばから80年代にかけてのアース・ウィンド&ファイアーのジャケットで非常に有名であるが、宇宙をテーマにした作風で知られる彼とPファンクとの相性の良さは言うまでもない。



 アルバムジャケット以外でビジュルアル面でのPファンクの世界観を強烈に印象付けたのものと言えば、衣装やセットを含めたファンカデリック/パーラメントのライヴだろう。特に'76年からその翌年にかけて行なわれた<P-Funk Earth Tour>は、Pファンクというムーブメントが最も活気を帯びていた時期でもあり、膨大な予算を注ぎ込んで作られたステージセットは今は伝説となっている。その様子はライヴアルバム『Live: P-Funk Earth Tour』のジャケットのアートワークに使われた多数の写真でも確認することが出来るが、ちなみにこのステージのために作られたアルミ製の宇宙船(Mothership)は、現在、ワシントンDCにあるスミソニアン博物館の国立アフリカン・アメリカン歴史文化博物館に収蔵されている。

 これまで名前の出てきたオーヴァートン・ロイド、ディエム・ジョーンズ、さらにジョージ・クリントン自身によるアート作品が展示されるアートショウ<The Mothership Returns To Tokyo / Parliament-Funkadelic Tribute Art Show>が、11月28日より渋谷のNOS ORGにて行なわれる(11月29日、30日にはオープニングレセプションも開催)。このアートショウは元々、今年夏にロサンゼルスにて行なわれた<The Mothership Returns / Parliament-Funkadelic Tribute Art Show>の東京版として企画されたもので、日米から合計40組のアーティストが参加し、彼らが制作したPファンクをテーマにしたアート作品が展示および販売される。

 このアートショウ<The Mothership Returns To Tokyo>にも参加するイラストレーター/ペインターの澁谷忠臣氏とフォトグラファーのcherry chill will氏の二人に、アーティストとしての視点でPファンクについて語ってもらった。

 

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ジョージ・クリントン「コンピューター・ゲームス」

コンピューター・ゲームス

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Disc01
  1. 01.ゲット・ドレスト
  2. 02.マンズ・ベスト・フレンド/ループジラ
  3. 03.ポット・シェアリング・トッツ
  4. 04.コンピューター・ゲームス
  5. 05.アトミック・ドッグ
  6. 06.フリー・オルタレイション
  7. 07.ワン・ファン・アット・ア・タイム

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