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GARNET CROW 『parallel universe』インタビュー
劇場版「名探偵コナン 天空(てんくう)の難破船(ロスト・シップ)」主題歌起用。初のオーケストラとのコンサート実現。ニューアルバム『parallel universe』は全曲今年に入って制作など、2010年はチャレンジ尽くしだったGARNET CROWより中村由利(vo,songwriting)と岡本仁志(guitar)が、その全てについて語ってくれました。恋愛成就率が異様に高いというライブについても言及していますので、ファンでなくともぜひチェックしてみてください!
命懸けで生んだ甲斐がありました
--『Over Drive』がシングル作品としては自己最高位のオリコンウィークリーランキング4位を獲得。これは素直に嬉しかったんじゃないですか?
中村由利:嬉しいです。劇場版「名探偵コナン 天空(てんくう)の難破船(ロスト・シップ)」主題歌ということで『Over Drive』は関わっている人の数が通常より多かったですから。映画サイドのスタッフもイメージ通りの作品が出来上がるまでギリギリまで待ってくれましたし、その人たちに恩返しが出来たかなって。観に来てくれたお客さんも含め、映画に携わった人すべてに捧げたい記録です。
--前回のインタビューで、中村さんの『Over Drive』制作における苦労話を散々聞かせてもらいましたが……。
中村由利:(笑)。
--最高位を史上稀に見る苦労をした楽曲で獲ったのが良いですよね。報われたというか。
中村由利:そうですね! 非常に難産でしたので、命懸けで生んだ甲斐がありました。これを落としたら後は無い。っていう状況まで追い込まれましたから(笑)。
--ちなみに中村さんは劇場版「名探偵コナン」を映画館へ観に行って『Over Drive』がどう響くのか確認したいと仰っていましたが、実際に行ったんですか?
中村由利:行きました。劇場で流れる『Over Drive』はアカペラから始まるんですけど、エンディングで自分の声が流れてくるのは「おっ!」ってなりますね。冒頭をアカペラにするのは映画スタッフの方からのリクエストだったんですよ。こっちは音楽を作ってるから、どうしてもイントロを付けたくなっちゃうんですけど。それで、実際に映画を観るまで「アカペラでちゃんと繋がるのかな? シラけたりしないのかな?」って引っ掛かっていたんです。でも実際に観てみたらストーリーと映像と歌が見事に一緒になってたんですよね。音楽が独立してるんじゃなくて、しっかりと組み込まれて流れていたから「あ、こういうことだったのか」って。新しい世界を、また別の芸術作品を見せて頂いた感覚がありました。
--そういう意味でも、映画主題歌はまた挑戦してみたい?
中村由利:…………。
岡本仁志:え~っ!? そこはもちろんイエスでしょ?
中村由利:本当に大変だったんで、ちょっと考えちゃいました(笑)。いや、でも機会があればぜひチャレンジしたいです。オファーは随時受け付けております!
--また、2010年はGARNET CROWにとってチャレンジの年だったのか、夏には東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団とのコンサート【GARNET CROW Symphonic Concert 2010 ~All Lovers~】を開催。こちらはどういう経緯で実現に至ったんですか?
中村由利:アレンジでストリングスを入れている曲がわりと多くて、オーケストラとのコンサートをやってみたいって常々言っていたんですけど、今回上手くタイミングが合いまして。指揮者の藤原いくろうさんとご一緒させて頂けると。念願叶って実現した感じですね。
--管弦楽団との音の調整とかって簡単ではないですよね?
岡本仁志:物凄く勉強になりました。指揮者を観ながらの演奏というものを初めて体験したので。いつもはクリックやドラム、ベースと、点でリズムをくれるものを頼りに演奏してるから、どれだけ普段ラクしているのかが分かりました。
中村由利:私たちはモニターで指揮者の動きを見ながら演奏していたんですけど、たまに指揮のタイミングが分からないときがあるんですよ。「どこが一拍目なんだろう? あ、ここは溜めだったか! 失礼しました」みたいな(笑)。心のリズムで指揮をされているので、ビートじゃないんですよ。
岡本仁志:波なんですよ。
中村由利:そう!感覚のフィーリングなんです。そういうのには馴れていなかったのでビックリしました。あとバイオリンとギターはどちらも弦なんですけど、音の立ち上がり方が違って。ギターはアタックが強いでしょ。だから同じタイミングで弾いても、音の出るタイミングが違うんですよ。
岡本仁志:「音が走ってる、走ってる」言われてましたよ(笑)。
Interviewer:平賀哲雄
楽園に入ったっきりでは浦島太郎になっちゃう
中村由利:そう聞こえちゃうんですよね。だから呼吸を合わせるのが難しかった。
岡本仁志:いつもはグルーヴを意識してるからね。
中村由利:いかに自分が恵まれた環境というか、ビートに馴れて歌っていたかが分かりました。それまでも歌心を持って歌っていたつもりなんですけど、そこをもっと意識しないとダメなんだと気付かされた。私の歌に対する姿勢はまだまだだったんだって。「私はテンポ通り歌ってますけど」では成り立たない世界でしたね。呼吸を皆さんと合わせてひとつの音世界を作るというのが如何に大変か分かったし、それと同時に「なんて素晴らしい世界なんだろう」「音楽ってこれだわ」って思いました。心と心のキャッチボールを意識させられたライブでしたね。
--他にもファンクラブイベントやメディア露出など忙しく動いていたと思うんですが、今回のアルバム『parallel universe』も『Over Drive』リリース以降のこの期間で詰めていたんですか?
中村由利:そうですね。このアルバムの曲は全部今年に入って書いたものなんですよ。ストックから抜き出してない。本当に結成10年目のGARNET CROWが詰まったアルバム。あと、今回は先程話した『Over Drive』の影響で生まれていった、新しいGARNET CROWの顔となる楽曲たち。それと『空に花火 ~orchestra session~』『The Crack-up』『strangers』といった切なさや儚さのある、今まで通りのGARNET CROWらしさを持った楽曲たち。ふたつのGARNET CROWの世界を自由に行き来している感じがあって。それもあって『parallel universe』っていうタイトルにしたんです。
--前回のインタビューで「GARNET CROWの曲は空を想起させる」と伝えさせて頂いたのですが、今作はいつも以上にその印象が強くて。で、それはサウンドやメロディのイメージだけじゃなく、歌詞を見てみると10曲中9曲に「空」という言葉が入っていて。
岡本仁志:(笑)。ありがとうございます。カウントしてくれたんですね。
--で、残り1曲『迷いの森』も「夕暮れ」「月明かり」という言葉が出てくる。
中村由利:AZUKI 七さんもそういう心境だったんでしょうね。デモが生まれた背景も、今年10年目というアニバーサリーイヤーで、ライブやイベントでファンの皆さんと直接コミュニケーション取れる機会をたくさん持てて、その中で勇気やパワーをすごくもらって。それを持ち帰った上で生み出したものばっかりだったから、自然と高揚感とか開放感が出ている。
--オープニングの『アオゾラ カナタ』からそれは顕著に感じました。
中村由利:開放感溢れる、爽やかなセツナポップ。明るさだけじゃなくて、甘酸っぱい青春ソング的な色合いもある。これは正に『Over Drive』と10周年の影響があって生まれた曲ですね。去年とかだったら書けなかっただろうし、今年だから書けた曲だと思います。
--あと、今作にはTVアニメ版『名探偵コナン』オープニングテーマにもなった『As the Dew』のアルバムバージョンが収録されています。今回、この曲をリアレンジして入れようと思ったのは?
中村由利:『As the Dew』を作ったときはわりと挑戦だったんですよ。どちらかと言うと、マニアックだと思われるかなって。アーバンでジャジィな曲なので。だから好きな人は好きだろうけど、そんなに大きなリアクションがある曲にはならないかもしれない、そう思ってたんですけど、意外とすごくウケが良かったんです。「こういう曲もみんな受け入れてくれるんだ、アリなんだ」と思った。それだったらアルバムにも、もうちょっと華やかなアレンジをして入れようかっていう話になりまして。ファンの皆さんのおかげでアルバムバージョンが出来た曲ですね。
--そこから『Over Drive』に繋がっていく流れは『名探偵コナン』ファンからしてもニヤっとさせられることと思います。この曲順は意図的に?
中村由利:新しい楽園の入り口、新しいGARNET CROWの玄関として『アオゾラ カナタ』から入って頂いて、その後に『As the Dew』で私たちのテクニカルな部分に触れて頂いて、そこからもう一度“welcome to parallel universe!”みたいな感じにしたかったんです。で、この年の象徴的な曲である『Over Drive』を3曲目に置くことにしました。
--『空に花火 ~orchestra session~』。こちらはどんなレコーディングになりましたか?
中村由利:これは【GARNET CROW Symphonic Concert 2010 ~All Lovers~】の際にオーケストラの音を録らせて頂いたんです。だからよりロマンティックでドラマティックな曲になったんじゃないかな。冬のキラキラした街の雰囲気にもすごくピッタリ。クリスマスのイルミネーションがこの曲にある花火の儚さみたいなモノとリンクすると思うので、皆さんにはぜひこの季節に聴いてもらいたいです。歌っててもすごく感動して泣けちゃう曲。
--そして、アルバムのラストを飾る『今日と明日と』。この曲も弱さを知る者の強さを感じさせますね。実際にはどんなイメージや想いから生まれたんでしょうか?
中村由利:これもすごく余韻を大事にしようと思って。歌や音が鳴ってないところの行間にすごく引きづられる曲になりましたね。映画で言うところのエンドロールみたいな。“parallel universe”という楽園から現実に戻っていくイメージの曲ですね。『迷いの森』が現実から楽園へ向かう狭間なら『今日と明日と』は楽園から現実へ向かう狭間。やっぱり楽園に入ったっきりでは浦島太郎になっちゃうので(笑)。
Interviewer:平賀哲雄
“婚活シート”を作りたいぐらいなんですよ!
--そんなドラマティックでカラフルで胸を打つ曲も多数収録されたアルバム『parallel universe』ですが、どんな風に世に響いていったらいいなと思いますか?
岡本仁志:…………このアルバムの中に皆さんの心の楽園を作ってほしいなと。
中村由利:(笑)。
--笑っちゃってますけど(笑)。
中村由利:いや、でもこちらの態勢としては“welcome to parallel universe!”ですよ。「どうぞ、皆さんいらっしゃいませ」と待っている感じです。
--また、今作のリリース日には岡本さんの新プロジェクト SUPER LIGHTのミニアルバム『Now Printing...』も発表されます。まずこのプロジェクトを立ち上げた経緯や理由を聞かせてもらえますか?
岡本仁志:ソロプロジェクトは自分ひとりでゼロからやっていかないといけないので、最後まで集中力が続くかが肝なんですよ。たった7曲のミニアルバムですけど、完成させるのに物凄くエネルギーを使う。なので、何か内部エネルギーを新しいもので発生させたかったんですよ。それで気分を変えるべく「名義変えちゃう?」ってなって。そしたら本当に新鮮な気持ちで取り組めて、未だに“SUPER LIGHT”って文字を見るとすごく嬉しいんですよね。ウキウキする。
--今作『Now Printing...』はどんなアルバムを目指したものなんでしょうか?
岡本仁志:半ば後付なんですけど、半分ぐらい出来たときにバラバラ感が見えたんですよ。で、もっと映え立つように残りをいろんなタイプの曲に散らした感じですね。バラバラ感を演出しました。
--中村さんはもう聴かれたんですか?
中村由利:もらって聴きました。GARNET CROWではギタリスト 岡本仁志ですけど、ソロは音楽職人。作務衣を着てろくろを回してるイメージ。ギタリストでもボーカリストでもアレンジャーでもなく、音楽職人 岡本仁志みたいな印象を受けますね。すごく頑固で、周りが褒めても自分が気に入らなかったら作った器もパリン!って割っちゃう。使ってる機材は最先端だったり、音もデジタルなものがあったりするんだけど、姿勢はアナログチック。そのギャップが面白いなと思いました。
岡本仁志:要領が悪いと?
中村由利:効率は良くない(笑)。でもそれが職人っぽいし、面白い。
岡本仁志:バカにされてるんですかね?
中村由利:褒めてんじゃん!
--(笑)。
中村由利:要は素晴らしいということです。
--あと、年末には【GARNET CROW livescope 2010+ ~welcome to the parallel universe!~】と【GARNET CROW Special Countdown Live 2010-2011】の開催が決定しています。それぞれどんなライブにしたいですか?
中村由利:アニバーサリーイヤーである2010年は始まりもライブだったんですけど、締め括りも皆さんとライブで会えるということで。今回のアルバムも皆さんから頂いたパワーで出来た訳なので、今度はライブで私たちが何かしらのパワーを皆さんに与えることが出来たらなと思ってます。感謝の気持ちと共に。あと、クリスマスも近いし、みんなで盛り上がって笑って楽しみたいです。
--では、最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします!
岡本仁志:今回のアルバム『parallel universe』は窓口が広いと思うんですよ。なので、GARNET CROWをちょっとしか知らない人にもたくさん聴いてもらいたいですね。
中村由利:そのアルバムを聴いてもらってですね、ライブにも来てもらいたいなと。直接皆さんとお会いして感謝の気持ちを告げたいので。あと、私たちのライブって縁起が良くって。ファン同士で結婚される方々が異様に多いんですよ! この前のイベントでも「僕たち結婚するんです」「婚約しました」「GARNETの曲を結婚式でかけます」って3組連続で報告があったんです。だからもう今回のライブでは“婚活シート”を作りたいぐらいなんですよ!
--実現したら前代未聞ですね。
中村由利:そう思っちゃうぐらい、恋愛成就率が異様に高くって。なので、お一人で参加される方にも新たな出逢いが待ってるかもしれません!「今年のクリスマスは寂しいな」と思ってる方はですね、ギリギリ間に合いますから。楽しく年末年始を過ごしたい方は、ぜひ今回のライブに来てお相手を探して頂ければなと!
--そんなこと言ったら日本中から集まりますよ!
中村由利:ヤバイことになっちゃうかな!? あ、でも演奏中はお静かに。MC中や終演後はご自由にお話しして頂ければなと思います。婚活シートの有無に関してはこれから事務所と検討しますので。
--(笑)。
Interviewer:平賀哲雄
parallel universe
2010/12/08 RELEASE
GZCA-5230 ¥ 3,666(税込)
Disc01
- 01.アオゾラ カナタ
- 02.As the Dew ~album version~
- 03.Over Drive
- 04.tell me something
- 05.迷いの森
- 06.空に花火 ~orchestra session~
- 07.渚とシークレットデイズ
- 08.The Crack-up
- 09.strangers
- 10.今日と明日と
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