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木村カエラ『PUNKY』インタビュー



木村カエラ 『PUNKY』 インタビュー

 今回のインタビュー、終盤で「2016年秋現在、木村カエラはどんなアーティストになっているなと自身では感じていますか?」「自由を取り戻したアーティスト、みたいな?」「めちゃくちゃ格好良いじゃないですか」と笑い合うシーンがあるのだが、実はこれ、今回のニューアルバム『PUNKY』に辿り着くまでの、実は泣きべそをかきながら過ごしていたここ数年のストーリー、そしてこのインタビュー直後に開幕した全国ツアーを繋ぐ、とっても印象的なシーンとなっている。彼女はなぜ泣きべそをかきながら過ごしていたのか? そして、自由を取り戻すことが出来たのか? すべてを語ってくれた。

まさかのアルバム作り直し!~デビュー時からのバンドと離れた真相

--今回のアートワーク、ヤバいですね。

木村カエラ - 「BOX」ミュージックビデオ short ver.
木村カエラ - 「BOX」ミュージックビデオ short ver.

木村カエラ:ありがとうございます(笑)。

--木村カエラの顔からスタッズが飛び出してますよ。おそらく『PUNKY』の世界観を表したものだと思うんですが、この写真が仕上がってきたときはどんな印象を?

木村カエラ:私の中で元々この写真のイメージがあって、それをみんなに伝えさせてもらって、「じゃあ、撮りましょう」ってなったんですけど、実際に撮ってみたら想像以上の写真になったんですよ。それでもう凄い興奮しちゃって!

--そもそもなんでこのイメージをアートワークにしたいと思ったんでしょう?

木村カエラ:アルバムを作ってる途中で「自分が本当は何を見ているのか?」探してたんですよ。それでタイトルも決まってなかったんですけど、ジャケット写真とかのビジュアルのイメージだけはしっかりあって。「キラキラしていたい」とか「尖っているものがいい」とかハッキリしてたんです。で、スタッズってキラキラ光ってるし、尖ってるから、それを「顔に付けたい」と思ったところから始まったんですよね。

木村カエラ『PUNKY』インタビュー

--今回のツアーでは、このビジュアルで出てくる?

木村カエラ:ハハハハ! これ、付けるの、超大変だったんだから。歌いながらポロポロ取れちゃうよ(笑)。

--カエラさんはポップアイコンでありながらパンクス精神も強いアーティストだと元々感じていましたが、自分的にはどんなところがパンクだなと感じたりします?

木村カエラ:パンク……あんまり嘘がつけないんですよね。自分のやりたいことを誤魔化したりしてると凄くイライラしてくるので、言葉もそうですけど、嘘をつくのが嫌いなんで、そこはパンクというか……頑固?

--自分のやりたいことを突き通す為には、他者の意見を否定して傷つけてしまうこともあると思いますし、すごくエネルギーを要しますよね。

木村カエラ:あ、私、人に対してはパンクじゃないんですよ、全然(笑)。だから否定するにしても仲の良い人であれば自分の想いをちゃんと伝えますし、基本的には人を傷つけることを望んでいない。ただ、自分自身のことは他人が何を言おうが絶対曲げないし、自分がやりたいことがよく分かんない状態で作品を作ったりとか、普段の生活もそうですけど、中途半端にしているとその中途半端が溜まって爆発しちゃう。それはイケないなと思うので、何をやるにしても全力でいたいし、全力でやる為には嘘なく過ごしていたいなと思う。ある意味、変に完璧主義だからそういうところは嘘つけない。

--自分が作りたいものが明確なときは、そこに向かって嘘をつかず全力で臨んでいけると思うんですが、そこがボヤっとしている。でも制作は進めなきゃいけない。みたいなときはどうしてるんですか?

木村カエラ:今回、まさにそうでした。元々「もうちょっと打ち込みの音とか極めてみたいな」「弦と打ち込みでアルバム1枚作ってみたいな」っていうイメージがずっとあって。ただ、なんかそれをやっていても、生楽器の中で歌っているほどの興奮状態まで行き切らないというか、「あれ?おかしいな。馴染んでこないな」と思っていて。でもそこから、このジャケット写真を撮ったら「あ、もうパンク! 絶対、生音!」って感じになって、それまで集めていた曲のデモを全部……もうそれでアルバム1枚作れたのに「本当にごめんなさい。全部1回なしにして、この人たちに曲作ってもらいます」って突然のお願いをして、あまり時間がない中での方向転換! でもそう決まったら速いので、書くのも速いし、時間がないので大変ではありましたけど、あらゆる作業はバァーって走っていく。逆にふわふわした状態で「この曲どうだろう?」「何書いていいか分かんない」ってなってるよりは、方向転換されて大変でもバァーって突き進めちゃえたほうが周りの人も動きやすいだろうし、そう思ってこのジャケットを撮った段階で方向転換しました。

--この写真によってすべて誘われたというか、構想が定まったんですね。

木村カエラ:本当にそうなんですよ。「あ、私がしたいことコレだ!」って。元々スタッズのイメージはあって、パンクなんだけど、女性らしさとか上品さもある写真が撮りたいと思ったのは、そういうことなんだよねって。愛があるけど、パンクであって、今を生きることに一生懸命なんだっていう部分が、この写真には物凄く入ってて、それをアルバム全体でも表現するべきだって思ったんですよね。

木村カエラ『PUNKY』インタビュー

--ということは、幻のアルバムが1枚ある訳ですね。完成直前で眠らせたアルバムが。

木村カエラ:そうですね。マネージャーのパソコンの中にある(笑)。

--通常の進行で考えると、アートワークの撮影って、アルバム完成の日程が見えてないと取り掛からないじゃないですか。ということは、そのタイミングから丸々もう1枚違うアルバムを作ってみせたってことになる訳で、これってとんでもない話ですよね?

木村カエラ:またゼロから作り出した訳ですからね。シングル収録曲やタイアップの楽曲はすでにいくつかあったんですけど、いわゆるアルバム曲と言われるものはゼロからだったので……(マネージャーに向かって)すっごい大変だったよね(笑)? めちゃめちゃ忙しい日々。でも「あの人にこういう曲を書いてほしい」っていうイメージは明確だったので、最後の方はもうバァーって一気に完成していったんです。かなりギリギリでしたけど、そこにもう悩みはなかったので。

--こういうケースって過去にもあったんですか?

木村カエラ:あんまりないです。おそらくこのアルバムを出すまで、ここ数年の私って結構ふわふわした状態だったぽくって(笑)。「一体、自分が本当は何をしたいのか?」っていうところがおそらく分からなくなってきちゃってて。何でもやればやるほど人の声に耳を傾けたくなるのは普通のことで、でも人の声に耳を傾けつつも自分のやりたいことは決まってるから、そのあいだで中心を捉えられないまま彷徨ってた。それで「とりあえず一人で戦ってみよう」みたいな。じゃないと、私はこのまま前に進めないと思ったんですよね。だから元々のバンドメンバーも、デビュー当時からずっと一緒にやってたんですけど、彼らには「私はみんながいると甘えちゃうから、一回離れる」って説明して、自分が「ここまでいけたら良い」っていう姿になるまでみんなとはやらないって決めたんです。あのメンバーでやり続けていると自分が変われない。私が変に迷ってしまっていたから、あそこで自分に覚悟を決める必要があったんですよね。でもそのおかけでようやく戻ってきました。だから今実はすごくスッキリしてて! それがすごく嬉しいんですよね。

--そんな覚悟の先に生まれた新アルバム。『PUNK』でなく『PUNKY』というタイトルにしようと思ったのは?

木村カエラ:私はパンクも好きだし、ロックも好きだし、バンドも好きなんですけど、『PUNK』っていうタイトルは違うなと思ってて、でも『PUNKY』だったら可愛いなと思って意味を調べてみたら「熱がある状態」とか「火口」って出てきて、これはピッタリだと。表に出さないけど、自分の中にある熱い気持ち、ちゃんとある想い、変わらない想い。それが火口でバーン!って爆発するときもあるし、まさに私の今の状態はPUNKYだと思って、字面も語感も良かったし、「絶対これ!」って決めました。

--その『PUNKY』という言葉や世界観を今打ち出したくなったのは何故なんでしょうね?

木村カエラ:自分自身で「ブレてた自分は格好悪かったな」って思って。もう大っ嫌いな状態だったから「ダッサ!」みたいな。だからパンク。パンクをやっている人たちはガァー!って自分の気持ちをぶつけていく。それが青春だったり、そこに恥ずかしさがあるようでないような、でもどこかにあるような……その状態をもう一度やらなくては!っていう。なんかそういうところだったかな。だからパンクをやりたいって想いもあるし、「もう行けるよ!」みたいな。その今の感じを出したかったんだと思う。

--「もう行けるよ!」それは木村カエラを取り戻せたという感覚なんでしょうか?

木村カエラ:戻ってきたというよりは、やっぱり悩んでいる間も成長はしているんだなと今回は感じていて、今の自分にしか書けないパンクの状態が書けている。おそらくブレてない木村カエラ=今の木村カエラだから書ける作品になっている感じがして、だからまた新しい感じだなって思ってます。

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木村カエラ「PUNKY」

PUNKY

2016/10/19 RELEASE
VIZL-955 ¥ 4,070(税込)

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