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「いまだにジャズという言葉の解釈が複雑だと感じる」―ノラ・ジョーンズ 来日インタビュー
デンジャー・マウスとタッグを組んだ2014年の『リトル・ブロークン・ハーツ』では、臨場感溢れるバンド・サウンドで、ややダークな世界観を表現し、アーティストとして着実に進化を遂げてきたノラ・ジョーンズ。その後、グリーン・デイのフロントマン、ビリー・ジョーとともに、エヴァリー・ブラザースの楽曲を取り上げた『フォエヴァリー』や盟友サーシャ・ドブソン&キャサリン・ポッパーとのオルタナ・カントリー・バンド、プスンブーツのメンバーとしてもアルバムを発表した彼女が、ソロ名義としては約4年ぶりとなるスタジオ・アルバム『デイ・ブレイクス』を2016年10月5日に日本先行リリースする。
今作は、ノラが所属する<ブルーノート>の75周年を記念して2014年に開催された【Blue Note At 75】コンサートにて、今なお精力的に活動を続ける“ジャズ・ジャイアント”=ウェイン・ショーター、そしてノラのデビュー作にも参加したブライアン・ブレイドとの共演を経て、「ピアノを弾くことが楽しく感じた」彼女が自身のルーツであるピアノと向き合った1枚。上記の2人に加え、 ロニー・スミス、カリーム・リギンズ、ジョン・パティトゥッチらの名プレイヤー、さらにはサーシャ・ドブソン、キャサリン・ポッパーなども参加しており、ジャズを根幹に、アメリカーナ、ポップス、フォークなどノラを構築する音楽が凝縮された濃厚な作品に仕上がっている。Billboard JAPANは、今作のプロモーションのために9月に来日したノラに話を訊いた。
来日時に行われたライブのレポートはこちらから>>>
TOP Photo: Danny Clinch
いまだにジャズという言葉の解釈が複雑だと感じるけれど…
とはいえ、ジャズ・コミュニティが復活の兆しをみせているのは確か
−−まず、ここ数年の間にノラが携わってきたプロジェクトについて伺いたいのですが、2013年にはグリーン・デイのビリー・ジョーとともに『フォエヴァリー』を発表しました。意外な組み合わせでしたが、充実した内容でした。
ノラ・ジョーンズ:同感。本当に意外だったけれど。
−−そしてプスンブーツとしてもアルバムをリリースしましたが、この2作はある程度偶発的に生まれた作品だったのですか?
ノラ:そうね。プスンブーツとしては、もうかれこれ8年ぐらい活動してるけど、やっとアルバムを作るのに好期だって感じたの。バンドだ、って実感も沸いてきていたし、制作する時間もきちんと取れたから。ビリー・ジョーとのアルバムは、本当に偶然って感じ。ある日、彼から「やってみない?」って電話がかかってきて、面白そうだったから「じゃあ、何日間か時間をとって相性を試してみよう。」って答えた。で、実際作業を始めて、いい感じだったから、突き進もう、ってことになったの。
−−ノラ自身、元々エヴァリー・ブラザースのファンだったんですよね。
ノラ:もちろん!彼らの音楽をやるのは、考えるまでもなかった。けれど、第一に相性が大事だし、エヴァリー・ブラザースの楽曲をビリーとやるのも最初はどうかな、と思ってた。最終的には、ビリーがなぜ彼らの楽曲を取り上げたかったかも理解できたし、エキサイティングな経験だった。でも、プロジェクトをスタートした時は、どんな作品が完成するか、まったく見当がつかなかったわ。
−−そしてヴォーカリストとしては、異母妹のアヌーシュカの作品をはじめ、キース・リチャーズの最新作収録の「Illusions」にもゲスト参加していますね。
ノラ:イエス!
−−実際にキースとスタジオ入りしたのですか?
ノラ:あれは残念ながらオーヴァーダブだから、一緒にスタジオには入ってないけど、その直後にキースに会ったわ。過去にも一緒に歌ったことがあるけど、あの曲はすごく気に入ってるの。
−−ちなみに、ノラの最新作『デイ・ブレイクス』収録の「Burn」のヴォーカルはちょっとキースを意識していたような印象を受けました。
ノラ:えぇ、本当?クール!嬉しい言葉ね。
−−(笑)。後は、ロバート・グラスパーの「Let It Ride」という曲にも参加していましたが、ノラのイメージとはかけ離れたドラム&ベース・トラックで、ビックリしました。
ノラ:そう、でも楽しかったわ!彼が探求しているサウンドには、すごく興味があるの。
−−2人は、旧友なんですよね。
ノラ:そう、彼と出会ったのは高校生の時。頻繁にハングアウトするほどの仲じゃないけど、年々連絡は取り合ってきた。それにレーベルとマネージャーも同じだから、イベントとかで顔を合わせることが多い。彼がスキニーな高校生の頃から知ってるから、久しぶりに会うと、これまで彼が成し遂げたことを含め「わぁ~、ロバート!」ってテンションがあがっちゃう。あの曲に「参加してほしい。」って言われた時も、嬉しかったわ。
−−最初にトラック、プロダクションを聴いたときの印象は?
ノラ:すごく気に入った。どんな風に仕上がるかわからなかったけど、彼がなにか変わったことをやろうとしていたのは理解してた。
−−2人は、共通点が多いですよね。出身地のテキサス、レーベルはもちろん、ジャズや<ブルーノート>の古典的なイメージを拭うのにも重要な役割を担っています。
ノラ:そう言ってくれて嬉しい。いまだにジャズという言葉の解釈が複雑だと感じるけれど…。とはいえ、ジャズ・コミュニティが復活の兆しをみせているのは確か。
−−人々が抱いてるジャズのイメージと実際は相違がありますよね。
ノラ:そう、常に変化していて、単純に誤解されがちなのよね。
−−ノラ自身、デビュー当初ジャズというジャンルの固定概念に縛られることに抵抗はありましたか?
ノラ:すごく嫌だと思ったことはないかな。特に駆け出しの頃は、“ジャズ”をやっていたから。でも、デビュー作がリリースされた後は…だって、私のデビュー作は本来の意味でのジャズ・アルバムじゃないから。当然ジャズに影響は受けていて、リリース以前にはジャズをやっていたけれど。そうね…難しい…複雑な心境を呼び起こすトピックね(笑)。
−−その上、ピアノを弾き語りする天性の歌声を持つ美女的なレッテルを貼られたり…。
ノラ:そうなの!そういう言葉で片付けられることもあった。正直、そんな評価は気にしてないし、どうでもいいの。けれど、そうやってレッテルを貼られるのは、本当にタフなことなのよ。
リリース情報
デイ・ブレイクス
- ノラ・ジョーンズ
- 2016/10/05 RELEASE
- [通常盤 UCCQ-1065 定価:¥ 2,700(tax in.)]
- 詳細・購入はこちらから>>
- [日本限定盤 UCCQ-9039 定価:¥ 3,456(tax in.)]
- 詳細・購入はこちらから>>
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リズミカルで、美しいメロディをオーヴァーレイしていくという部分にポイントをおいた結果、
よりピアノを取り入れる形になった
−−<ブルーノート>の75周年を記念した【Blue Note At 75】コンサートに出演したことにインスパイアされ、ニュー・アルバム『デイ・ブレイクス』の制作を始めたそうですが、最も触発されたのはどの部分でしたか?
ノラ:ミュージシャン同士のコミュニティ意識が素晴らしかったの。そういえば、あの時ロバートもいたわね。ウェイン(・ショーター)やブライアン(・ブレイド)、ジェーソン・モラン…彼もテキサス出身なのよ、そしてジョン・パティトゥッチ。彼らと演奏したことでインスピレーションを受けて、“これ”を一緒にレコーディングをしたら楽しいだろうな、と思ったの。“これ”って、すごく大まかな表現をしたけど(笑)、実際に一緒に演奏したのは私のデビュー作からの「I've Got To See You Again」という曲よ。アレンジがとてもしっくりきたの―リズミカルで、曲の上をウェインと私が浮遊している感覚で。その手ごたえが、彼らと一緒にレコーデイングしたいと思わせてくれた。その後数年間、このプロジェクトを頭に曲を書いていたんだけど、だんだん方向性が変わっていっちゃって…。
−−なるほど。
ノラ:それがこのアルバムよ。方向性がシフトし始めてからは、「こういうアルバムが作りたい」とかジャズ…そう呼びたいのであれば(笑)、そういう概念は忘れて、自分が書いた曲と向き合った。構想を始めた当時決めていたのは、ジャズ・スタンダードやジャズに立ち返ったアルバムは作りたくない、ということ。またこの話になっちゃうけど、ジャズというとノスタルジックな、昔の音楽と解釈されることもあるから。私の好きなジャズ・レコードだって、50~70年前に制作されたもの。だからと言って、そういう作品が作りたかったわけじゃなくて、何か“新しいもの”を作りたかったの。
−−ということは、アルバム制作を進める時は、全体像に向かって、というよりは個々の曲にコミットする感じ?
ノラ:全体像を頭の片隅におきながら、曲にコミットする感じかな。全体像にこだわりすぎて、逆に制限されてしまうのは嫌だから。自分が作ろうと想定していた曲じゃなくても、完成まで見届けないと。そういう場合の方が、案外いい曲が出来上がることがあって、それが全体像に対する見解をガラリと変えてしまうこともある。
−−では、ピアノを中心においた作品を作る上で、ポイントとなったのはどんな部分でしょう?
ノラ:元々はピアノが作品の中心という風には考えていなかったの。もっとピアノが弾きたかったのは確かだけど。ピアノの方が自分らしいし、実際問題ああいう高度なコードをギターで弾くのは私には無理。リズミカルで、美しいメロディをオーヴァレイしていくという部分にポイントをおいた結果、よりピアノを取り入れる形になった。そのまま曲を書き進めて、あとは曲に導かれていったの。
−−制作中には、ピアノ・トリオの作品をよく聴いていたそうですね。
ノラ:そうね、ジミー・スミス・トリオはよく聴いた。後は、デューク・エリントンの『マネー・ジャングル』、セロニアス・モンク…レス・マッキャン&エディ・ハリスの作品も沢山聴いた。それと60年代のオールドスクールなソウル、ジャズっぽい作品。あの時代の作品は本当に最高、エネルギーが全然違うの。
−−それにトリオの演奏自体からも、他の編成にはない、独特なダイナミクスとエネルギーが感じられますよね。
ノラ:私は、昔からシンプルな音楽に惹かれてきた―10つの楽器が一堂に会して、濃密なアレンジを奏でるような音楽ではなくて、“余白”を好むの。マイルス・デイヴィスが好きなのは、それが理由。たぶんトリオの演奏にはその要素があるからだと思う。どんなに超絶技巧な演奏でも、ある程度“余白”があるの。
−−今作の曲作りは、特に苦労なく進みましたか?
ノラ:苦戦した曲はいくつかあった。完成するのに時間がかかったり、人の手を借りて完成させた曲もあったし。でも、インスピレーションが舞い降りてきて、即時に曲を完成できるのは格別よ。その時に完成できなくても、曲の大まかなアイディアが浮かぶだけでも、すごくいい気分。今作の曲作りは特に楽しかった。ピアノを弾きながら作ったから、どの曲もソロ・ピアノ・バージョンがあるの。そのバージョンも個人的にとっても気に入ってる。もちろんアルバムのフル・バンドのバージョンも好きだけど。
デビュー作にさかのぼっても、こんな風にピアノを弾くことはなかった。弾いてるは弾いてるんだけど、デビュー作、そして2ndアルバムの大半は、ギターで書かれ、ギターが根幹にある曲ばかりだった。あくまでもピアノは曲を色づけるという立ち位置。新作は、どの曲もピアノが中心にあって、制作していて本当に楽しかった。
−−ちなみに、自宅にピアノがいくつかあるのですか?
ノラ:うん。とてもいいピアノが2台置いてあるスペースがあって、そこでレコーディングもできる。あ、でも、今作すべてをそこでレコーディングしたわけじゃないわ。その部屋っていうのが2階にあって、普段過ごしている空間じゃないの。私は大体1階のキッチンにいるから(笑)。キッチンには、数年前に夫と散歩をしていた時に、とあるピアノ店で見つけた、すごくクールな小さなピアノを置いてるの。
−−ということは、高級なピアノより、キッチンのピアノの方を頻繁に弾いている?
ノラ:そうなの(笑)。時間があって、ベビーシッターがいれば、2階でじっくりやるけどね。キッチンの方は、お酒を嗜みながら弾くのにピッタリなんだ。
−−作業しているときにお子さんがやって来て、横に座ってママのこと観察している、なんていう場面もあるんですか?
ノラ:彼らが周りにいる時に、本格的に作業することはあまりないんだけど、私が弾いているときに隣に座ってきたり、一人でピアノの前に座ってることもあるわ。
−−彼も弾くんですか?
ノラ:ううん。まだ2歳半だもん。ついこの間、「メリーさんの羊」を教えようとしたんだけど、集中力に欠けるから無理だった(笑)。
リリース情報
デイ・ブレイクス
- ノラ・ジョーンズ
- 2016/10/05 RELEASE
- [通常盤 UCCQ-1065 定価:¥ 2,700(tax in.)]
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- [日本限定盤 UCCQ-9039 定価:¥ 3,456(tax in.)]
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(「Fleurette Africaine」は)アルバムのために曲作りをしていた時によく聴いていた―
あの曲が持つ魔法とエネルギーを自分の作品に少しでも注入したかった
−−アルバムの話に戻りますが、デビュー作の曲調を彷彿させる「Carry On」は、早い段階で書かれた曲だったのですか?
ノラ:一番最初ではないけど、早い段階で書いたのは間違いないわ。
−−「And Then There Was You」も同様の昔懐かしいヴァイブを持つ曲です。
ノラ:うん。あの曲は、かなり昔に書き始めた曲ね。確か、前作のツアー中だから、5年前ぐらいかな。でも、今作の作業を始めるまで完成できなかった。一番長く時間をかけて完成させた曲だと思うわ。
−−「Flipside」や「It's a Wonderful Time for Love」は、恋愛関係について歌っているものの、政治的ニュアンスも含んでいたようにもとれました。
ノラ:ソングライティングをする上で、直接的な文字通りの表現は、あまり使わないようにしてる。これらの曲は、ニュースで報道されている世界中の様々なクレイジーな事件に触発されて書かれたもの。「Flipside」が興味深いのは、これまで私が書いてきた曲に比べ、詞や押韻する部分の量が多いこと。曲の展開も予想外で、すごく気に入ってる。
「It's a Wonderful Time for Love」は、詞を完成させるのが一際難しかった曲。どんな曲にしたいかはわかっていて、音楽に加え“It's a Wonderful Time for Love”というフレーズもすでに思い浮かんでいた。
−−そのフレーズだけですでにインパクトがありますよね。
ノラ:うん、だから余計に(歌いだす)「ヘ~イ、恋するのにピッタリな時期だよ~。一緒に踊ろうよ~。」みたいな詞にはしたくなかった。
−−ベタすぎます(笑)。
ノラ:でしょ(笑)?曲調をちょっと昔懐かしい感じにしたかったから、詞までそれに合わせたくなかったの。そこでサラ(・オダ)に手伝ってもらいながら、思い描いていたトーンから脱線しないように、2人で詞を練り上げていった。
−−そういう状況に陥った際の、共作者の選定方法ってあるんですか?
ノラ:単純に手伝ってくれそうかどうかかな(笑)。共作者を選ぶプロセスは、ごく自然で、気心知れた人とか、その時に一緒にいるミュージシャンとかが多い。この時はサラに手伝ってくれるか、お願いした。彼女とこういう時間がかかるプロセスを踏んだことがなかったから、不安はあったけど。でも昔からの親友で、何度かコラボしてるから試してみたの。
−−ニール・ヤングのカヴァー「Don't Be Denied」では、詞を変えていますが、やはり男性目線だと感情移入が難しかった?
ノラ:うん、そうする必然があったの。元々、この曲が大好きだったんだけど、実際一人称でウィニペッグ出身の少年について歌うのは違和感があって。きっとニールは気にしないと思う、多分だけどね(笑)。少しだけでも自分のものにする方法だったの。でも、視点を変えただけで、その人物のイメージがガラリと変わってしまうのは興味深かった。
−−そして曲を彩るキャサリン・ポッパーとサーシャ・ドブソンのコーラスも絶妙でしたね。やはりコーラスやハーモニーには惹かれる?
ノラ:もちろん。昔から大好きで、ハモる部分がない曲にも自分で勝手に加えて歌ってたりしたから(笑)。もしソロでやっていけなかったら、脇でコーラスを歌うシンガーになっていたと思う。
−−では、タイトル・トラックの「Day Breaks」について教えてください。サウンド的には、ノラの前作に収録されていてもおかしくない曲です。
ノラ:確かにそうね。アルバムのタイトルにしたのは、単純に曲のタイトルが気に入ったからで、あの曲だからタイトルにしたわけではないの。タイトルを考えていた時に、これが一番しっくりきただけ。じゃなかったら、「It's a Wonderful Time for Love」になってたかも。でも、それだと全く違う印象の作品になっちゃうでしょ(笑)。
−−まさにジャズ・スタンダードのカヴァー集のようなタイトルですよね(笑)。
ノラ:そうなのよ(笑)。
−−アルバム収録の「Peace」と「Fleurette Africaine」のカヴァーには、ウェイン・ショーターが参加しています。これまで様々なレジェンドと共演していますが、ウェインと一緒にレコーディングする上で、ナーヴァスになることはありましたか?
ノラ:ウェインの場合は、これまで何度か共演しているから、徐々に段階を踏んでいった感じ。彼の自宅にも遊びに行ったことがあるし。
−−レコーディングで共演するのは初めてですか?
ノラ:ううん。以前、ハービー・ハンコックがジョニ・ミッチェルの楽曲をカヴァーした作品で歌った時に一度共演してる。あの時はものすごく緊張した。今回初めてだったのは、私がピアノを弾いて彼と共演したこと。要するに、彼のカルテットに自分を挿入したの(笑)。彼が普段演奏しているような曲は難解だから、どう考えても私には弾けないけどね。
とにかくエキサイトしていた。彼との共演も、ピアノを弾くことも。冒頭で話したけれど、このアルバムを作る際に意思していたのは、まずウェインと一緒に演奏することだった。それに加え、揺るぎない、オリジナル楽曲を収録したかった。それも特定のヴァイブを持ったものを。ところが、曲を書き進めていくうちに、方向性が変わっていき、ウェインとレコーディングするまでに、オリジナル楽曲はすべてレコーディングしてしまったの。
−−ウェインとのセッションは、レコーディング終盤で行われたものだったんですね。
ノラ:そうなの。だからと言って、既に出来上がっている曲に彼の演奏をオーヴァーダブするだけじゃ、参加してくれる意味がない。ちゃんと一緒に演奏しないと。そこで、この2曲を彼とレコーディングすることにした。2曲とも大好きな曲だし。
−−「Peace」は、以前カヴァーしていますよね。
ノラ:そう!あれからしばらく経ってるから、また歌いたくなったの。詞も大好きで、アルバムの他の曲ともテーマ的に合うし、いいんじゃないか、と思って。演奏してみて、グレイトな気分だったわ。もう1つのデューク・エリントンの方は、アルバムのために曲作りをしていた時によく聴いていた―あの曲が持つ魔法とエネルギーを自分の作品に少しでも注入したかったの。
リリース情報
デイ・ブレイクス
- ノラ・ジョーンズ
- 2016/10/05 RELEASE
- [通常盤 UCCQ-1065 定価:¥ 2,700(tax in.)]
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- [日本限定盤 UCCQ-9039 定価:¥ 3,456(tax in.)]
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音楽全般に言えることで、直観的であるべき
−−「Peace」をウェインと改めて演奏してみて、発見や驚いたことなどありましたか?
ノラ:う~ん、特にないかな…。彼って、音譜を弾くというより、フィーリングを奏でるという感じなの。今の発言めちゃめちゃヒッピーぽいけど(笑)、本当にそうなの。何を演奏しても美しい。この曲に関して気に入ったのは…彼、この曲で全然演奏してないの。イントロ部分でも、私が歌ってる時も。でも、私が歌い終わったら、凄まじいソロ・パートを吹いて、またちょこっと最後で演奏するだけ。彼は注意深く音の化学反応を聴いていて、自分が表現したいことがあるまで絶対に演奏しない。そういうところもすごく気に入ってるの。
−−もちろん生&ワンテイクで録音したんですよね。
ノラ:ウェインが参加してる曲は、すべて生よ。唯一「Day Breaks」でオーヴァーダブしたけど、それだけ。彼が私の背後に座り、みんな同じ部屋で演奏してる。その空間の雰囲気も、レコーディングがうまく捉えられていると思う。
−−では、アルバムのエンディングを飾る「Fleurette Africaine」をアレンジする上で、ウェインとどのような会話をしましたか?
ノラ:演奏するのが難しい曲であるのは確か。けれど特に会話はせず、そのまま演奏した。そこがもう一つ面白いところで…彼はこの2曲を間違えなく知っていたと思うけれど、過去に実際演奏したことがあるかは、私知らないの。ところがコードをおさらいしたり、とかそういう場面は一度もなかった。ただ「OK、わかったよ。じゃあ演奏しよう。」と言われたのしか記憶してない。私とベースのジョンは、事前にコードを確認したけれど。ウェインは、そういうことを超越した人物だから、音楽をコードとかそういう次元で考えてないのかもね。
−−興味深いですね。先ほどちらっと話していましたが、みんなの演奏の上を浮遊している感覚共々。
ノラ:それでいて、ちゃんと一緒に演奏している感触もある。だから彼と演奏するのは全然ハードじゃない。本当に素晴らしいミュージシャンで、何でもできる。彼ほどの柔軟力があれば、アルバム収録曲全曲に参加してもらうのも可能だったと思うけど、他の曲は彼と一緒にやりたかったことは異なるヴァイブだったの。
−−ちなみに、ノラがお気に入りのアルバムを締めくくる1曲は?「Fleurette Africaine」を越える曲も中々ないですが。
ノラ:ありがとう。アルバムのラスト・ソングって、私自身思い入れが強くて、メロウな曲を収録するのが好きなの。あのジェフ・バックリィのアルバムの最後の曲はなんだっけ…?
−−そういえば、「Tragedy」ってジェフ・バックリィにインスパイアされた部分もあるんですか?
ノラ:ワーオ!その解釈すごく素敵ね。全然気づかなかった。
−−彼の人生や死を彷彿させる詞がいくつかあるな、と思っていて。
ノラ:本当は何についてかは教えられないけど、気に入った!それにしても、あの曲なんだっけ、「Hallelujah」じゃなくて…。でも、いい質問。
−−わかりました。アルバム収録曲は、シンプルな音作りなものが大半なので、ヴォーカリストとしての表現力も存分に感じられましたが、自身で振り返ってみてどうでしょう?
ノラ:曲にとてものめりこんでいたから、ヴォーカルに関しては後から色々気づいた感じかな。ちょっとキーが低すぎる曲がいくつかあるから、もっとキーを上げたらよかったと思ったり。特にライブだと、低く歌うのがちょっと難しいから。これは最近曲を生で演奏し始めて気づいたこと。でもレコードで聴くとちょうどいいし、ヴァイブも合ってるんじゃないかな。
−−なるほど。
ノラ:歳と経験を重ねることで、ヴォーカルについてあまり考えないようになった。歌は、ウェインが演奏しているのと同じ感覚であるべき。歌だけじゃなくて、音楽全般に言えることで、直観的であるべき、ということね。歌ってみて、合うか、合わないか、それだけよ。
−−では、デビュー当時から、音楽を作る理由に変化はありますか?
ノラ:特に変化はないわね。
−−結婚して、子供が生まれても?
ノラ:優先するべきことが変わったからって、音楽を作るのは止めないわ。私の一部だから。音楽を作っている時間は減ったかもしれないけど。お酒を飲んでる時間が絶対的に減ったのは、確かだけどね(大笑)!レストランに行く機会も減ったし。それぐらいかな。
−−お子さんたちは、ママがどんな仕事をしているか理解している?
ノラ:まだ幼いから、わかってないと思う。私が歌う人だっていうのは理解してるけど、有名なアーティストだとは思っていないんじゃないかな。
−−2人にも音楽の道へ進んでほしい?
ノラ:これについては何度も何度も話し合っているんだけど、複雑な問題よね。ハードな人生になるのは間違いない。しかも、親が成功したミュージシャンだと余計にね。単純に音楽を楽しんでくれて、それが人生の糧になればいいと思ってる。実際に演奏するか、どうかは気にしてない。弾くようになったら、楽しいけどね。
−−ですね。そして新作のツアーも楽しみにしています。
ノラ:私も楽しみよ!
−−バンドは、グレッグ(・ヴィーチョレック)らを含む往年のメンバー?
ノラ:うん。この間【ニューポート・ジャズ・フェスティヴァル】に出演したんだけど、10月にアルバムに参加したメンバーとともにいくつかスペシャルなショーもやる予定。それ以外は往年のメンバーとツアーする。日本にも来る予定よ!
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デイ・ブレイクス
- ノラ・ジョーンズ
- 2016/10/05 RELEASE
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