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ベリーグッドマン『SING SING SING 4』インタビュー

 10月5日にメジャーデビューアルバム『SING SING SING 4』をリリースする大阪出身の3人組ユニット、ベリーグッドマン(BERRY GOODMAN)。ポジティブで力強い応援ソングや、センチメンタルなラブソングを含んだ同作からは、既に多くのタイアップ曲が世に送り出され、バンドの掲げる“大阪城ホール、ワンマン公演”という夢をもガッシリと後押ししている。ファンにとってはまさに待望のメジャーデビューアルバムと言えるだろう。

 そして、そんな華々しいメジャー作に、インディーズ時代のアルバムと地続きの『SING SING SING 4』という名前をつけたことに、現在のベリーグッドマンの価値観が凝縮されている。2013年11月結成。わずか3年弱の期間で、大阪のアンダーグラウンドからメインストリームまで駆け上がった彼らのフレッシュな力強さに、Rover、HiDEX、MOCAへの全員インタビューで迫った。

「この人と一緒にいたら得しかないな」って思いました(Rover)

--早速、Wikipediaからで恐縮なのですが、昔、RoverさんとHiDEXさんがバンド(Roofy)をやっていて喧嘩別れした、というのは本当なんですか?

HiDEX:ガチの大喧嘩をしましたね。

Rover:まだ尾を引いてます(笑)

--(笑) それはどうして?

HiDEX:すれ違いというか、お互い思ってることがぶつかって「じゃあ、やめよう!」って。

--当時の音楽スタイルは今とは違った?

HiDEX:いや、結構近かったですね。当時の曲をベリーグッドマンでやってたりするので。

Rover:DJがいて、マイクを持って歌う感じも僕は好きだったんですけど、アコギとかで演奏して歌うのも好きで、そこの食い違いがあったんです。あと、あんまり僕は(手を横に振って)こういう感じの曲は好きじゃなかったんですけど…

MOCA:今は、ライブの7割くらいそれやで(笑)

Rover:当時は「一人で歌ってお客さんも要らない」くらいの感じだったので…でも、MOCAと出会ってから変わりました。

--MOCAさんとの出会いはどちらが先ですか?

HiDEX:僕ですね。18歳くらいの時に会って、デモの入ったCD-Rを貰いました。でも、その時はちゃんと聴いてなくて。その後、RoverとMOCAが出会って、MOCAのソロCDを僕とRoverでプロデュースすることになり、その時に(MOCAの)デモを改めて聴いて「あの時の曲だ!」ってなりました(笑)

MOCA:当時は「いつすごい人に出会うか分からへん」って思って、常にCD-Rを10枚は持ってましたね。

--その頃はどんな音楽活動を?

MOCA:SMAPさんの「世界に一つだけの花」を、弾かれへんのにピアノでカバーして路上で歌ったりしてましたね。でも、基本的にはクラブのMCでお客さんを煽りまくって、それで生計を立ててました。

--Roverさんと出会ったのは?

Rover:クラブですね。

MOCA:彼はアクティブで「よろしく!」みたいな感じだったんですけど、僕は人見知りだったので、その後に送られてきた挨拶のメールとかも無視してたんです。どうせ一生会うことないと思って。でも、その翌週にばったり会って、挨拶されたんですけど、無視しました(笑)

Rover:MOCAは当時クラブのマネージャー的なことをやっていて、メールも無視されたし、挨拶もそんな感じだから「冷たいな…」って思いました。でも、歌もやってると聞いてたので、僕のやっていたアコースティック・ライブのイベントに誘ったんです。Youtubeを観たらウクレレを弾いて歌ってたから、そういう感じのライブなのかな? と思っていたら、当日のリハーサルで急に「世界に一つだけの花」を6小節くらいピアノで弾き出して。それで「OKです!」って終わったので、「この人、何するんやろう?」と思いました。

--それはライブの内容とは関係ないんですか?

MOCA:一切関係ないです。ピアノも弾かない(笑)

Rover:楽屋で「どんな音楽をするん?」って聞いても、「フリースタイルで」みたいなことしか言わないんです。こっちはリハーサルしか観てないから「音とかチェックしてないんや。カッコええな」と思って。そしたら、僕が楽屋で弾いてたギターを聴いて、「めっちゃカッコええな。弾いてくれへん?」って言い出して。それで初めて一緒にライブをやりました。僕がアコギを弾いて、MOCAはほんまにフリースタイルで、お客さんに「冬」っていうテーマを貰って「モト冬樹がどうたらこうたら」っていう曲をやったんです(笑) それで爆笑をかっさらって、「面白い人やなあ」って思いました。

--そのライブがきっかけになったんですね。

Rover:そうですね。「この人と一緒にいたら得しかないな」って思いました。

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歌を辞めるか続けるか迷ってた時期があって(HiDEX)

--MOCAさんはどうだったんですか?

MOCA:僕はRoverの音楽もRoofyの音楽も知っていて。でも、僕が知ったくらいのタイミングで活動休止したので、その後どうなるのか気になってました。実は一度、二人に「マネージャーになってくれ」って頼まれたこともあって。さっきの流れで、Roverと一緒にライブをやってたんですけど、僕がソロCD(『原始人の歌』2013年)を出す時はHiDEXにトラックをお願いしたいって思って、そこで改めて3人の接点が出来ました。僕は今も基本的に制作はRoofyがやっていると思っていて、僕は後ろで「良いと思う!」って言ってるだけですね。

HiDEX:最近は感想を聞いても何も返事がなくて、ずっとパソコンで何かを調べてる(笑)

MOCA:BBQセットですね。新作がどんどん出るんですよ、BBQセット。

--なるほど(笑) そこからベリーグッドマンの結成に至ったのは?

HiDEX:僕は、歌を辞めるか続けるか迷ってた時期があって。「もう裏方に回ったほうが良いんじゃないかな?」って。それでも、最後に一花咲かせな辞められへんと思って、まずRoverに声を掛けたんです。でも、二人だとまた同じ繰り返しになると思って、MOCAを誘うことにしました。実は、MOCAは最初あんまり乗り気じゃなかったんですけど、僕が勝手に“ベリーグッドマン”って名前を思いついて、無理やりアー写を撮ったりして流れを作りました。

 それまでも3人でアコースティック・ライブをよくやってたんです。僕がアコギやパーカッションを弾いて、Roverもアコギを弾いて、MOCAはフリースタイルみたいな。それが面白かったのか、色んな先輩にも「3人でやった方が良い!」という助言を頂いて、それでやってみようかなって思ったんです。

MOCA:僕は最初3人でやってる画が全く思い浮かばなくて。それまでも遊びでしか音楽をやったことがなかったんで「これガチのやつや!」って思ってちょっと怖かったんです。でも、先輩とか、今も付いてくれてるマネージャーも、3人でやった方が良いって言ってくれて、ET-KINGのBUCCIくんも「ZEPPまでは見える」って話をしてくれて。だったら頑張ってみようかなと思いました。あと、Roverに「絶対やった方が良いぞ」って裏で説得されましたね。

Rover:MOCAはソロ願望が強かったんで。

HiDEX:CD2枚目(『SING SING SING 2』)くらいまではソロ願望めちゃくちゃ強かったよね。

Rover:MOCAとしてのソロCDも出したばっかりだったし、それを100万枚売るっていう目標を掲げて頑張ってて…

(一同爆笑)

Rover:「それだったらベリーグッドマンやった方がええんちゃう?」って優しい言い方で(笑)。俺も3人で歌うっていう考えは最初は無かったんですけど、BUCCIくんが「絶対やった方が良い」って言ってくれたことに心が震えて決めました。

 その当時、僕とMOCAは、チームこそ組んではなかったんですけど、MOCA&Roverって独特の名前で一緒にライブとかをやっていて、それを辞めるのは無いだろうって思ってました。それだったら命捧げてもええかなって。そこからは早かったですね。でも、当時MOCAはまだ淡路島の海の家で店長をやってたんですよ。

HiDEX:大阪から2時間離れた場所に住んでて…

MOCA:島流し食らってたんですよ(笑)

Rover:だから僕とHiDEXでロゴを考えて、「Tシャツとかステッカーを作ろう」とか「CDを自主制作で2か月に一回出して、半年貯まったらアルバムにしよう」とか、そのために必要な費用とかも全部計算して。全部自分たちでやる体で進めてました。

--自分たちで手探りで始めたんですね。そこからバンドに手応えを感じたタイミングは?

MOCA:今でも無いですよ。ただ、本当にカスみたいな状況から、もしかすると良くなるかもって思えたきっかけが、僕らの「コンパス」っていう曲で。それを元に僕たちが崇拝しているDef Techが所属しているレコード会社(Village Again Association)の人と繋がるきっかけになったし。色んなタイアップとかパワープレイとかも取って貰えたんで「あれ?こんなにスムーズなん?」って思いましたね。

Rover:僕が最初に衝撃を受けたのが、2014年5月10日の初ワンマンライブですね。2013年11月に結成ライブをして、その月にそのワンマンを企画したんです。ずっと下積みでもやってた、DROPっていう250くらいキャパの会場なんですけど、僕らからしたらすごいことで、それを目標に設定しました。で、実際に4月にチケットを販売したら、200枚近い先行分が1分くらいで完売して。その時は「行ったな」って思いました。僕らの世代でそういうチームはいなかったので。ちょうどインディーズの1stアルバム(『SING SING SING』)を出させて貰ったタイミングで、結成からそこまでは何の確信も無かったんですけど、ワンマンのチケットが動いた瞬間「すごいチームかも知れない」って思いました。まあ、その時のライブはグダグダだったんですけど(苦笑)


▲ベリーグッドマン「コンパス」

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    作曲した経験も大きかった(Rover)
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Kis-My-Ft2さんの「サクラヒラリ」を作曲した経験も大きかった(Rover)

--その後2枚のアルバムを出してメジャーに移ります。今回のメジャーデビューアルバムも、これまでのアルバムを踏襲して『SING SING SING 4』というタイトルですが、改めて感慨はありますか?

Rover:僕らからしたら同じような作業を4回やってるだけで、そこに乗ってくる思いが特別強いかといったら、そうではないんです。例えこれが『SING SING SING』シリーズじゃなくて『BGM』みたいなタイトルだったとしてもそれは変わらなくて。あとは支えてくれているスタッフさんが多くなってくれているので、その人達が一人残らず「良い曲だね」とか「力のある曲だね」って納得してくれるための努力と配慮は増えました。そうやってみんなが一緒にならないとヒットは生まれないと思うので。アルバムの1枚目とか2枚目くらいまでは、ただ作品を作っただけでしたけど、『3』くらいからはプロモーションのことを考えたり、MVの感じを考えたり、これをファンの子が聴いてTwitterにアップした時に、どんな反応になるのかな?って考えたり。そういう作り方は自然としてるかも知れないですね。

--どうやって届けるか、まで考えて作るようになった。

HiDEX:それまでも予め曲ごとに細かいテーマは作ってたんです。その経験が今に活きてるなって思いますね。「○○なテーマで作って欲しい」っていうオファーがあっても、割とすんなり出来るのかなと。

--3人で自分たちでやってたことで、プロデューサー的な感覚も身につけられたんですね。

HiDEX:最初の3枚は、ほんまに事務所もレーベルもノータッチだったので、そうならざるを得ないというか。そこは自ずと考えたのかなと思います。

Rover:あと、Kis-My-Ft2さんの「サクラヒラリ」(2015年)を作曲した経験も大きかったと思います。オファーを貰った時のテーマ設定が本当に細かく「コンサートのどういうシチュエーションでどうやって歌うか」っていうことまで決まっていて。そういう作り方って、それまではほとんどしてなかったんです。自分らが歌う曲で、テーマを設定して作るのは得意だったけど、自分たちより売れてる人が歌うもので、どうなるんだろう? と思いながら作りました。でも、そうやって出来上がった曲が、彼らのファンから「神曲」だってTwitterでつぶやかれるようになったんです。そこにすごく可能性を感じて。キスマイさんのファンから「ベリーグッドマンさん、ありがとうございます!」って言われるのは、僕らにとって大事件だったんです。すごく成長するエネルギーになりましたね。曲ってこういう風に成長するんだなって実感できた。

 今回のアルバムはそういうのがみっちり入ったものになったのかなと思いますし、例えばドラマとのタイアップとかも、「このアルバムだったら世の中に責任を持って売りたいです!」ってスタッフさんに思って貰えてるからこそ、加速度も増したかなっていう感覚があります。この先も、そういうチームでありたいなと、この作品を通して改めて思いました。

--実際のアルバムの制作はどんな感じで進んだんですか?

HiDEX:今までは広がるのも期待したり、好きなものも追求したり、色んなことを考えながら作ってきたんですけど、今回は完全にその経験を踏まえて作れました。各々が「ここは好きなフレーズやろうな」とか「でも、ここは俺が好きな部分やねんな」とか、バランスよく考えながら出来たんじゃないかと思います。

--じゃあ、すごく悩んで作ったというわけではない?

Rover:いや、悩んだところは悩んだんですけどね。

HiDEX:「Eye to Eye」とかすごく時間が掛かったので。

Rover:あの曲は一回病みましたね。

HiDEX:外から見てて、二人は自分の思う物語と、プロデューサーの思う物語が違って、それを摺り合わせるのが大変だったんじゃないですかね。

Rover:自分の視点で見えたことを言うなら直ぐ書けるんですよ。でも、自分の始点から見たものが他人の恋愛事情にピンポイントでバチッとはまることなんてないので、俯瞰で見ないといけない。そうなるとめっちゃ難しい。俺もひねくれ者やから「世界中どこでもなんて不可能やん!」って思ってしまったことで、より一層難しくなっちゃて。で、最終的にたどり着いたのが、映画監督だったらどう撮るか、っていうことで。嘘でも良いからストーリーを描こうと思いました。MOCAが最近結婚して、その経緯もよく知っていたので、それを主人公にさせて貰いつつ、若い子にも伝わるように台本を書く、みたいな感じで書きました。


▲ベリーグッドマン 「Eye to Eye」

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「こんなに心に響く音楽が世にあったんや」と思って(MOCA)

MOCA:「Eye to Eye」は、サビとかオケは早い段階で出来てたんですけど、やっぱり歌詞がめっちゃ大変でしたね。でも、今回もアルバム全体のコンセプトは無くて、今まで通り一曲づつみんなのBGMになっていけば良いなという思いで作れました。そういう意味でも、今までで一番スムーズだったのかなと思います。

HiDEX:僕は寝れなかった日もありましたけどね(苦笑) でも、僕は制作担当。で、プロモーションは二人に任してるので。二人に頑張って貰ってる期間、僕は家でゲームとかしてます(笑)

MOCA:だから今回、HiDEXが取材に参加してるのは、とても珍しいです。大御所みたいな動きさしてます(笑)

--貴重な機会ありがとうございました。最後に、ベリーグッドマンさんの音楽からは、リスナーを元気付けたり、勇気付けたりしたいという意図を強く感じるのですが、逆にリスナーとしてみなさんが勇気付けられた音楽があれば教えて下さい。

MOCA:僕は18歳の特にDef Techさんの「My Way」をライブDVDで観て号泣して「こんなに心に響く音楽が世にあったんや」と思ってしまった。Shenさんの英語の歌詞は分からなかったんですけど、そこに入ってくるMicroさんの声の温度感と、メッセージ力と、ステージングというか、ゴリラのような躍動感がすごくて「あ、俺もこんな音楽をしたい」っていうのがあって今に至るので、その曲はキーになってますね。


▲Def Tech「My Way」(LIVE)

HiDEX:僕はミスチル(Mr.Children)さんですね。それまで洋楽バンドのコピーとかをやってたんですけど、日本人のバンドを勝手にシャットダウンしていて。ある日、ドラムを辞めなあかんタイミングがあって「何をしようかなー」ってボーッとしてた時に不意に流れてきた「しるし」に衝撃を受けて。それまで歌を歌う気なんてさらさら無かったのに、曲を作ったり歌詞を書いて歌おうと思った、きっかけの曲ですね。

Rover:僕はルーツって難しくて、ビートルズも松山千春さんも美空ひばりさんも色々とあって、その中にはDef Techの「My Way」も入ってるんですけど、その中でも、今でも一番聴いて泣きそうになるくらい感動するのはサッチモ(ルイ・アームストロング)の「この素晴らしき世界(What a Wonderful World)」ですね。いつもはこういうインタビューでは出てこないんですけど、最近ふと聴いて、やっぱりこの曲が一番感動的だなって。

 それは、僕自身がトランペットをやってたってこともあるんですけど、この人の生き様というか。めっちゃ貧乏で、朝、生卵を二個飲んで仕事に行ったとか。マイルスとかクインシー・ジョーンズも好きだけど、そういうリアルな感じを一番歌ってるのはやっぱりサッチモだと思うんです。で、僕はそういうヴァイブスを、出会った当時のMOCAにも感じたんですよね。知らないやろ、サッチモ。

MOCA:サチモス(Suchmos)?

Rover:それは今売れっ子のバンドやな(笑)

--歌から伝わる力強さみたい部分に憧れる?

Rover:そうですね。僕は今後、あんな太い声で歌う事って無いと思うんですよ。どちらかと言うと高い声で歌う方で。でも、憧れますね。声とか世界観とか。ああいうのが一番ヒップホップかなって思うんです。

ベリーグッドマン「SING SING SING 4」

SING SING SING 4

2016/10/05 RELEASE
UPCH-2096 ¥ 2,200(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Intro~ちょっと成長しました~
  2. 02.Eye to Eye
  3. 03.ライオン
  4. 04.Color
  5. 05.Supernova
  6. 06.Break
  7. 07.TTS
  8. 08.君に恋をしています
  9. 09.シンクロニシティ
  10. 10.ありがとう~旅立ちの声~

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