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カマシ・ワシントン来日記念特集~ジャズ・ジャイアントの半生とルーツ~
フライング・ロータス、ケンドリック・ラマー、コモン、サンダーキャットが絶賛し、2015年にリリースした『ザ・エピック』は多くの音楽メディアで年間ベストに選出されるなど高い評価を獲得したカマシ・ワシントン。今やLAジャズの最重要人物とも言われる彼が12月、ビルボードライブに登場し来日公演を行う。先日のフジ・ロックでも話題を総なめにしたカマシ。その来日を前に、彼の半生、音楽のルーツに改めて迫る。
カマシ・ワシントンは1981年生まれ。米国カリフォルニア州ロサンゼルス郡のイングルウッドで育った。父親はサックス奏者、母親はフルート奏者という音楽一家に生まれ、2歳からドラム、5歳からピアノ、8歳からクラリネットを演奏するなど、様々な楽器に触れていった。13歳からはサックスを始めると、アレクサンダーハミルトン高校の音楽科、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(以下UCLA)の音楽民族部門へと進学。在学中、ケニー・バレルやビリー・ビギンズといったジャズ・プレイヤーと共演を果たし、音楽家としての腕を磨いていった。
また、カマシは学生時代から様々なバンドに参加。高校時代は “マルチ・スクールジャズバンド(以下”MSJB“)“で活動。高校時代は “マルチ・スクールジャズバンド(以下MSJB)”で活動。ロナルド・ブルーナー、ステファン・ブルーナー、キャメロン・グレイヴス、ライアン・ポーター、テラス・マーティン、アイザック・スミスなどいま思えば錚々たるジャズ・ミュージシャンが参加しており、たくさんの刺激を貰ったという。大学時代にはブルーナー兄弟とキャメロンとともに“ヤング・ジャズ・ジャイアンツ”を結成し、1997年ジョン・コルトレーン・サクソフォン・コンペティションで優勝。一躍LAのジャズ・シーンに躍り出た。2004年には同バンドでアルバム『ヤング・ジャズ・ジャイアンツ』をリリース。その後も“The Next Step”というバンドを結成し、活動している。
幼少期から楽器に触れ、才能を磨いていったカマシ。その類まれなる音楽センスとプレイが目に止まり、多くのアーティストからも声が掛かった。高校時代にはスヌープ・ドッグのツアーにバック・バンドとして参加。バンドメンバーには、“MSJB“で一緒だったテラス、アイザック、ライアンの他に、キーヨン・ハロルド、サンダーキャット、ロバート・スパット・シーライトといった、多くの若いジャズ・ミュージシャンだけでなく、プロデューサーのバトルキャットやスーパーフライ、ミュージシャンのDロックやマーロン・ウィリアムスも参加していた。ここでの経験はカマシの演奏技術だけでなく、音の細部から全体像にまで気を配るといった、音楽観の深部にまで影響を与えた。
▲ Kamasi Washington Boiler Room London Live Performance
カマシの音楽の魅力は、ジャズ・サックス奏者の作品でありながら、ジャズ・リスナーでなくても楽しめるところにある。それは、様々なジャンルの要素を飲み込んだ楽曲が多いからだ。とりわけ、ヒップホップとは密接に結びついている。
そもそも、カマシの育ったサウスセントラルLAの大半では、ヒップホップが聴かれていた。彼もまた、ジャズと同様にヒップホップも聞いていたという。そういった音楽が根底に流れた上で、2010年代には、フライング・ロータス、ケンドリック・ラマーといったヒップホップ・アーティストとの相次ぐ共演を果たす。フレーズを意識した演奏ではなく、フィーリングを重要視したヒップホップの考え方は、カマシの演奏方法に多大なる影響を与え、彼の魅力的な、感情を乗せたパワフルな演奏方法へと結びついていったのだ。
その他にも、ジェラルド、スタンリー・クラーク、ジョージ・デューク、ハーヴェイ・メイソンらとジャズを、スヌープ・ドッグやローリン・ヒル、ラファエル・サディーク、チャカ・カーンとヒップホップやR&Bを、ポリスター・プレイヤーズとファンクを、フランシスコ・アグアベージャとアフロ・キューバン・ジャズを、キルベル・アセッファとエチオピアン・ジャズをといったように、ジャンルを超えた様々なアーティストと共演を果たしてきた。このように、カマシは様々な音楽シーンと結びつくことで、その独自の音楽性を培っていったのだ。
2000年には、オーケストラ作編曲家であるジェラルド·ウィルソンのバンドに参加。カマシが通っていたUCLAの教授だったというジェラルドから作曲について多くのことを学んだ。ジェラルドからは「オーケストラ用の楽曲を書くべき」「バンドで共演したら良い」と言われたという。この言葉は、2015年にカマシのリーダー作としてリリースした『The Epic』に大きな影響を及ぼした。
▲ Kamasi Washington's 'The Epic' in Concert
『The Epic』はフライング・ロータス制作総指揮のもと、総勢60名以上のLAジャズ・メンバーとともに制作し、CD3枚組170分超えとなるフルボリュームの作品だ。ジャズ・メンバーの中には30名程のオーケストラもおり、ジェラルドのアイデアがそのまま形になったことが分かる。この作品は、スピリチュアル・ジャズの要素がある曲から、アフロ・ジャズ、ソウル、R&Bなど、様々なジャンルの要素を含んだ楽曲をアルバムの中で一つにしており、まさにカマシ自身を表しているといえる。ジャズ・リスナーでなくても楽しめる、カマシの魅力が詰まった作品となった。
昨年の初来日、今年7月のフジ・ロックに続き12月、遂にカマシ・ワシントンがビルボードライブに姿を現す。LAジャズの最重要人物である彼が、どのようなパフォーマンスを披露するのか。ジャズ・シーンに新たな歴史の1ページを作るであろうライブは必見だ。
公演情報
カマシ・ワシントン
ビルボードライブ大阪:2016/12/5(月)
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ビルボードライブ東京:2016/12/6(火)-8(木)
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INFO: www.billboard-live.com
プレストン・グラスゴウ・ロウ
ビルボードライブ東京:2016/10/5(水)
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INFO: www.billboard-live.com
クリス・デイヴ & the Drumhedz
ビルボードライブ東京:2016/10/10(月)~11(火)
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ビルボードライブ大阪:2016/10/13(木)
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INFO: www.billboard-live.com
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