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Aimer×クラムボン・ミト インタビュー ~死にゆく星の旋律コンサートに向けて~

Aimer クラムボン・ミト インタビュー

 9月3日、4日に世界初上演される【ALMA MUSIC BOX:死にゆく星の旋律コンサートwith京都市交響楽団】。ロームシアター京都を中心とした岡崎エリアで開催される【京都岡崎音楽祭 OKAZAKI LOOPS】の注目公演のひとつだ。本公演は、実現に至るまでに壮大なストーリーがある。
 まず2014年、南米チリの砂漠に設置されているアルマ望遠鏡で観測した“ちょうこくしつ座R星”の信号を、オルゴール盤に置き換えた「ALMA MUSIC BOX」という作品が誕生。同年、六本木・21_21DESIGN SIGHTの「活動のデザイン展」にて、ディスクの周波数に対応した映像を映すインスタレーションとして初公開された。2015年には、その70種類のメロディを使って国内外のミュージシャン11人が楽曲を作り、アルバム『Music for a Dying Star - ALMA MUSIC BOX x 11 artists』がリリース。本公演では、それらの楽曲が京都市交響楽団と共に披露される。本公演に参加するミト(クラムボン)と、ゲストボーカルのAimerに、公演への意気込みや「ALMA MUSIC BOX」との出会いについて話を聞いた。

ミト:星から届いた情報は全部受け止めたいと思った

−−「ALMA MUSIC BOX」のプロジェクトを知った時、どのような印象を持たれましたか?

ミト:非常に感銘を受けましたね。だって目には見えない星の信号をオルゴール盤に焼き付けて視覚化し、さらにそこから流れる音を通じて、死んでしまった星を見るっていうことですよね。その観念に驚いたし、とてもロマンチックなプロジェクトだなと思いました。

−−ミトさんはアルバムにも参加し、「the signals~くらやみのレクイエム~」という曲を作曲されています。70種類もあるメロディの中から、どのように自分が使う音を選んでいったんですか?

ミト:僕は、70個のメロディを全て使いました。

−−あの曲の中には、全てのメロディが入っていたんですね。

ミト:そうです。これらの信号は、アルマ望遠鏡が受け止めなかったら、この世に存在しないと思われていた信号です。でも、実は950光年も離れたところにある星の爆発した光が、ここまで飛んできていて、それがこうやって音になった。ものすごく尊いことですよね。だから僕は星から届いた情報が70枚のオルゴール盤に表されているのであれば、全部受け止めたいと思いました。でも、70トラックを全部聴くという作業は想像以上に大変で、聴くだけで1日かかりました。そこから無作為に選んだメロディーを同時に出すと、冒頭のような不思議なフレーズができるんですよ。そうやって、色んな組み合わせを作ってサンプラーに取り込んで、音を磨いていきました。素材作りだけで、3日かかりましたね。

−−どのようなイメージで曲作りを進めていったのですか。

ミト:星の信号に意思があったら、どんなことを考えていたのかなという発想から膨らませていきました。

−−1光年が約9兆4600億キロですから、950光年は果てしなく長い旅路です。

ミト:果てしなく遠いところから一人ぼっちで届く信号のことを思うと、きっと孤独で寂しかっただろうなと思いました。だから、僕は日頃ベースを演奏していますが、この曲にはベースを入れませんでした。ベースには重力や安定感というイメージがあるので、ぽつんと取り残された感じを表現するにはベースがない方が良いと思いました。

−−Aimerさんは、今回ミトさんの作品にゲストボーカルとして参加されます。初めてミトさんの曲を聞いた時、どのように感じましたか。

Aimer:この作品に全てのオルゴールのトラックが使われているということを、今はじめて知ったんですが、たしかにミトさんの曲って心地よく不規則なんです。表現が難しいんですが、良い意味で入り乱れている感じがしました。あと、この曲を聴いたあとにタイトルを見て、「レクイエム」という言葉が、すごくしっくりくるなと思いました。

ミト:「くらやみのレクイエム」というのは、終わっていく星への鎮魂歌という意味と、星が存在していたことを示す信号への鎮魂歌の2つの意味を込めています。世の中には宇宙からのたくさんの塵が舞っていて、生まれることよりも、終わるものの方が山のように溢れています。そう思うと、全ての物質や概念は鎮魂歌になるなと思いました。

−−Aimerさんの歌の部分には、歌詞が付いているんでしょうか。

ミト:はい。今朝、やっと完成しました。色んな構想が浮かんだので、歌詞を書くのはとても楽しかったですね。書こうと思ったらすぐに書けたんだけど、なんだか書き上げるのがもったいなくて、今朝までかかってしまいました。歌詞の中の「とうめいなぼくらに てをのばしたせかい」というのは、アルマ望遠鏡を表しています。そして最後の「おわりはじまる」という言葉は、終わった星の信号を通じて僕たちが音を作ったということを表しています。レクイエムというタイトルを付けていますが、全然悲しい曲じゃありません。終わった星の信号を通じて僕たちはこうやって演奏することができている。これって、すごくハッピーな邂逅ですよね。だから音が生まれたことの素晴らしさを歌詞にしました。

−−Aimerさんは、この詞を見てどう思いましたか。

Aimer:私、実は2014年に21_21DESIGN SIGHTで「ALMA MUSIC BOX: 死にゆく星の旋律」の展示をプライベートで見ているんです。その時の感想と、今日ミトさんからいただいた歌詞の中にある「おわりのはじまり」という言葉は、ぴったりだと思いました。


▲ ALMA MUSIC BOX / 死にゆく星の旋律 / Melody of a Dying Star


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(V.A.) 澤井妙治 蓮沼執太 湯川潮音 伊藤ゴロー 高木正勝 milk(梅林太郎) Throwing a Spoon「Music for a Dying Star - ALMA MUSIC BOX × 11 artists」

Music for a Dying Star - ALMA MUSIC BOX × 11 artists

2015/09/30 RELEASE
EPCT-2 ¥ 3,056(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.ALMA MUSIC BOX No.07 (ALMA MUSIC BOX)
  2. 02.the signals ~くらやみのレクイエム~ (mito(クラムボン))
  3. 03.Limbo (milk(梅林太郎))
  4. 04.#31-#40 (蓮沼執太)
  5. 05.sea ice (伊藤ゴロー)
  6. 06.Waves of The Frequency (澤井妙治)
  7. 07.the blossoms close at sunset (Steve Jansen)
  8. 08.lost star (湯川潮音)
  9. 09.Thoughts of Colours (Throwing a Spoon(トウヤマタケオ×徳澤青弦))
  10. 10.Chascon 5850 (滞空時間)
  11. 11.あわい (高木正勝)
  12. 12.alma712 (Christian Fennesz)

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