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鶴 アルバム『ニューカマー』インタビュー
昨年47都道府県を2周する前代未聞のツアーを完遂し、さらに強靭なアンサンブルを手に入れたロックバンド 鶴が、8月10日にニューアルバム『ニューカマー』をリリースする。
そこで今回はメンバー3人をお招きし、ロックファンなら文句無しに必聴の会心作となった本作について、THE YELLOW MONKEY、奥田民生、エレファントカシマシ、クレイジーケンバンド、怒髪天、フラワーカンパニーズ、SCOOBIE DO、そしてももいろクローバーZまで……。
日本を代表するバンドやミュージシャンを引き合いに出しながら、“また俺たち全部詰め込んだ”という、強烈な新作の魅力に迫る。
SCOOBIE DO先輩は僕らのビジネスモデル
▲YouTube「LIVE DVD 47改め94都道府県TOUR「Live&Soul」in 梅田AKASO 予告編」
--このたびリリースする新作『ニューカマー』は、5月に行った新曲だけで構成するワンマンツアーで発表した楽曲が収録されています。
秋野温:初めての試みでしたね、先に全部発表してから録音するっていうのは。去年、47都道府県を2周するツアーでライブをたくさんやったから、次は曲でしょうと。だったら前のめりに新曲を出してみようと思って、アルバムを出す前に全部披露しちゃいました(笑)。--鶴といえばトゥーマッチにやりきるバンドという印象があるのですが、これだけのキャリアを積んだ今もなお、ということには驚きすらあります。
秋野温:3年前に自主レーベル「Soul Mate Record」を立ち上げたんですけど、自分たちがやりたいようにやれるんじゃないかっていう思いから始めて。最初は何が何やらって感じだったんですけど、最近になってようやく地盤ができたというか。いまだに新鮮で楽しいことが多いんですよね。--自主レーベルを設立するバンドマンというと、僕はSCOOBIE DOがまず思い浮かべますね。
秋野温:SCOOBIE DO先輩は僕らのビジネスモデルです(笑)。音楽が素晴らしいしライブもかっこいい。僕らは事務的な裏の作業をほぼほぼマネージャーにお願いしているのでSCOOBIE DO先輩ほどではないんですけど、やっぱり憧れますね。ライブバンドを目指すなら、あれができなければいけない。背中を追いかけてます。 神田雄一朗: 自主レーベルを始めるっていう段階で、ある時メンバーとマネージャーとで厳しい現実の話になったんですけど、「このままじゃ俺たちやっていけない……」と気づいて。そこで緊張感がグッと増して、気づいたら3~4年経って、あの時よりは色々見れるし頭も身体も回るようになってきた印象ですね。SCOOBIE DO先輩まで行くのはなかなか難しいんですけど、変化は感じているのでこれを持続させていきたい、この流れを続けていきたいですね。 笠井快樹:僕は不安になったこともあって、前作『ソウルのゆくえ』で秋野くんの曲をメインにした時、「バンドとしてはこれがいいんだろうな」とわかりつつ、自分の曲も出したいっていうジレンマはありました。それが今、バンドとして馴染んできて、僕の曲も使ってもらえるようになって、今はやっと回ってきたと思いますね。 秋野温:今振り返ればガチガチになってたと思う時期もありますからね。ライブバンドたるものかくあるべし、みたい勝手なイメージから自分たちで隅っこの方に行っちゃう時期もあって……。でも、その隅っこにも大事さやパワーがあったし、それをわかって何を取り込むかって時期なのかな、今は。それはTHE YELLOW MONKEYの影響が大きい
--そんな今の鶴が完成させた新作『ニューカマー』ですが、本作は3人以外の音はほとんど収録されていませんよね?
秋野温:ないですね。ギターを重ねているのと、シェイカーとタンバリンくらいで、これも僕が演奏してますから(笑)。--しかも1曲目の「未来は今だ」は印象的なギターコードから、がっちりしたコードリフとどっしりした重低音の中、素晴らしいメロディが歌われていきます。これは昔から3人が強い影響を仰っていたTHE YELLOW MONKEYへのリスペクトを感じさせる1曲だなあと。
秋野温:復活しましたねぇ~(しみじみと)。ここからだいぶ話が反れますよ(笑)。 神田雄一朗:もう2回ライブを観に行きました! 最近バンドの調子が良いんですけど、それはTHE YELLOW MONKEYの影響が大きいんですよ。1回目はバラで、2回目は3人で観に行って、同じ時に同じバンドを観て、同じ感動を得た。15年前にコピーバンドをやっていた3人ですから、気持ちが凄かったですね。バンドとは?とかバンドの良し悪しみたいなものも含めた気持ちの面でプラスになっていて、最近はライブをやる前も良いんですよ、“俺たち、最強”みたいな(笑)。--しかも「未来は今だ」の素晴らしいところは、そういう影響を感じさせる音楽を今の音でやっていて、“それにしたってアナログな僕ら”という言葉でシメる鶴らしさもある。選ぶ言葉ひとつひとつも、昔よりストレートになってきましたよね。
秋野温:ライブで“こうなりたい、ああなりたい”みたいな、たとえばSCOOBIE DOみたいに人の心を揺さぶるライブをやりたい。ステージで生き様を出している人の方が揺さぶられるようになったから、そういう曲を書こうと自分なりの人生観を書いて、それをどう共感してもらうか。だからストレートなものが多いですね。ライブMCがそのまま歌になるような感覚というか。昔は全部おちゃらけておしまいだったし今も要所ではやりたいんですけど、今の自分たちにしかないバンド感っていうんですかね。ライブハウスに来てくれるのは僕たちのメッセージを受け取りに来てくれる人たちだと思うし、全国各地を巡って“響いたな”って思えれば自信にもなりますし。これを大事にしようと思ってますね。……まあ、もうちょっと遊べるようにもなりたいな、と考える時もあるですけどね(笑)。
- “うちのギター、良い音出してるでしょ?”
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Interviewer&Photo:杉岡祐樹
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