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小室哲哉(globe)『Remode 2』インタビュー



小室哲哉(globe) 『Remode 2』 インタビュー

 globe20周年プロジェクトの期間「KEIKOにglobeを意識させたい想いがあった」という心情吐露に始まり、ITの進化と共に歩んだ20年、現代の情報処理能力に合わせた、スマホに照準を合わせた音楽制作、globeお披露目の場となった【TK DANCE CAMP】(共演者:安室奈美恵、篠原涼子、坂本龍一、H Jungle with t等)裏話、KEIKOの覚醒と共に確立されたglobe像、届けたい歌、20周年以降のglobe等について語ってもらった。これを読まずに彼らの、そして音楽シーンの未来は語れない。

ドリカムの吉田美和さんなんて何も変わってない。励まされます。

--昨年8月に新宿ステーションスクエアで始まったglobe20周年プロジェクトも完結を迎えようとしていますが、globeを強く意識して稼動したこの1年間は小室さんにとってどんな日々になりましたか?

globe / 8月3日「Remode 2」& 9月7日限定ライブBlu-rayボックス発売決定!
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小室哲哉:それまでのKEIKOの療養というか、病気に対しての向き合い方とはちょっと違う1年間だったと思います。KEIKOにglobeを意識させるというか、「意識させたいなぁ」っていう気持ちを持っていた1年だったなって。みんなの「声が聴きたい、歌を聴きたい」っていう想いに何かしらの形で応えたいと思っていました。プログレスを見せたかった。結果的にそれは先送りになっちゃったんですけど……この20周年、1年間っていう限られた期間の中では追いつけなかった。

--でも想いとしては、この20周年のどこかでKEIKOさんの今の歌を届けたかったと?

小室哲哉:20周年のどこかでと云うよりかは、締め括りに。……でもマークといくつか形に残すことは出来ているので。彼も彼で頑張っていると思うし、「これでglobeの活動が止まるんだな」っていう気持ちはさらさらない。みんな、精神年齢も昔の40代、50代とは圧倒的に違うのは間違いないので、50歳で人生を終えていた江戸時代からたかだか200年でこれだけ寿命も延びていて、そこにはメディカルの発達もあって……だからまだ先があるなって思う。実際、つい1年前にTM NETWORKは30周年を元気に迎えましたからね。ましてやKEIKOとマークはTMのメンバーと比べると遥かに若い訳ですから。だから何かまだあるなって。ドリカムの吉田美和さんなんて何も変わってないじゃないですか。

--もはや年齢という概念がないですよね。

小室哲哉:元から年齢という概念がない。あれだけアグレッシヴに歌っている姿を見ていると、良い意味で励まされます。

--最近は、音楽特番でglobeの曲をよくパフォーマンスされていますが、20年目もglobeが分かりやすく求められている状況にはどんなことを感じますか?

小室哲哉(globe)『Remode 3』インタビュー

小室哲哉:自分でも正直ちょっと驚いてるかな。「20年後にこういう風になっているんだ」という予測のもとに作っていた曲は1曲もないので。あの時代のアーティストは「この時代を切り取る」という発想で作っていたとしても、「後世に残る曲を作る」という感覚はそんなになかった。でもこうして20年後も求められているというのは、ITの進化と微妙に結びついているのかなって。テクノロジーのおかげで、データ化して、それをバラバラにしてもう1回組み立てることが出来たり、音質の劣化を防げたり、そんなこと昔は考えられなかったし、あとはコピー文化からシェア文化。この移行も大きいですよね。コピーしないと届けられない時代から、ソーシャルを使ってあっと言う間に拡散していけるようになった。だからこの20年間、たまたまですけど、globeはITの進化と共に歩むことができた。そういう良い時代にたまたま生まれたグループ。globeの10周年目はiTuneが日本に上陸した年だったり、タイミング上手くできてるなって。

--最近ブレイクした勢いのあるアーティストたちと、音楽特番などを通して共演するのはどんな感覚だったりしますか?

小室哲哉:僕もそうだし、周りもそうですけど、あんまり「大御所が来たぞ」「90年代の人が来たよ」っていう感覚じゃないというか、僕に対してはそういう空気を感じないですね。リハーサルとか本番前のサウンドチェックとか僕が居たとしても何にも違和感がない。10代、20代、30代、40代、50代が混在している訳ですよ。でもあたりまえのように混在している。良い意味で、変に敬語とか使わなくなってますよね。儀式的に必ず楽屋に訪れなきゃいけないとか、そういうものは全部崩れてきてる。別に挨拶しないからって何もないし、そういうものは全部取っ払われている。一番分かりやすい例が、LINE。季語や「お元気ですか」から始まることなんてまず有り得ない。

--「どうした?」って思われますよね(笑)。

Nirvana - Smells Like Teen Spirit
Nirvana - Smells Like Teen Spirit

小室哲哉:いちいち面倒くさいじゃないですか、それで2回3回既読するの(笑)。だからいきなり伝えたいことから入らなきゃいけない。そういう時代になってる。globeで例えるなら「20年前の曲です」っていう前段は要らなくて「Feel Like dance」って言えばいい。だから今回のアルバム『Remode 2』も「これは95年に作った曲なんですよ。それが2016年にこんな風になってます」みたいな仕掛けもしてないですし、すごくソーシャルに近い作り方をしてます。儀礼的なものとか儀式的なものは、全部カット。例えば「スモーク・オン・ザ・ウォーター」(ディープ・パープル)のイントロを今の時代は求めない。イントロなしで曲に入って、あのギターリフは後ろで鳴っていればいい。ニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」にしても、あのジャラーン♪って音がイントロに聴こえてこなくても歌の中で鳴っていればいい、みたいな。ニルヴァーナっぽい音が入ってるね、そう気付かせるだけでいい。

--分かりやすい例えですね。

小室哲哉:どんどんみんなの情報処理能力が凄いことになっているので、いっぺんに多くの情報が入ってきてもなんとなく処理できる。それに合わせていくと、必然的に音楽もそういう作り方になるので、今回も削ぎ落とせるところは削ぎ落としてる。それを必要としない音楽もあるんですけど、ポップスは削ぎ落とせるだけ削ぎ落とす。今は「良いな」と思ったら速攻でリピートできる訳ですから、リマインドみたいなことが要らない訳で。だったら長いよりは3分ぐらいの曲にしたほうが良いし、そういう意味ではどんどん簡略……と日本語で言うとちょっと軽く聴こえちゃうんですけどね。だから『Remode 2』も一聴するとサラッと聴こえるかもしれないんですけど、サラッとさせているんじゃなく今の情報処理能力に合わせた作り方をしている。深く入りたい人はどんどん深く入っていけると思うし、もしかしたら「ルーツは何なのか?」っていうところまで入っていける。「ここを聴いたら検索できますよ」っていうフックはしっかりとあるので。今の人たちの聴き方で聴いてもらえればいい。

--なるほど。

小室哲哉:ビフォースマホ/アフタースマホで言ったら、今はアフタースマホの時代。常にひとつのことだけじゃなく、一斉に届く情報に応えて処理していく。何が言いたいかと言うと、昔は「ながら○○○」という言葉が流行って、受験勉強のときに「ラジオを聴きながら○○○」とか、他にも「テレビを観ながら○○○」とか「ゲームをしながら○○○」とか。でも今や「ながら」なんて使うことは有り得ない。それがあたりまえだし、スマホがライフラインですから。そういうライフスタイルに『Remode 2』は『Remode 1』に比べて相当寄せている。たった1年なんですけどね。今日だって今朝からどれだけスマホの話をしているか分からない(笑)。IT関連の話をしない日がないんですよ。それは僕だけじゃなく誰もが。おじいちゃん、おばあちゃんだって無意識にIT関連の話をしている。関わらざるを得なくなっている。それぐらい世の中は激変したんですよ。そこに寄り添えるようなアイテムとしてのglobe。

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