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鈴木茂とハックルバック復活記念 鈴木茂インタビュー(『鈴木茂&ハックルバック』(日本クラウン)ライナーノーツより転載)後編

鈴木 インタビュー

 1975年、鈴木茂の1stアルバム『BAND WAGON』発売に合わせて結成され刹那ながらも強烈なインパクト残し解散した幻のバンド"鈴木茂とハックルバック"が、7月に特別編成で復活を果たす。この奇跡の復活を記念して、先日『自伝 鈴木茂のワインディング・ロード』を出版したリットーミュージックの協力のもと、1996年3月21日、元ティン・パン・アレーのマネージャー長門芳郎が渋谷で行った「鈴木茂インタビュー」(CD『鈴木茂とハック ルバック』のライナーノーツより転載)の後編をお届けする。リットーミュージックの特設サイトに掲載された前編とともに是非ご一読いただきたい。

さらに、復活ライブに向け、鈴木茂からのメッセージも公開!

そして、オリジナルメンバー林敏明(Drums)の緊急参加が決定!

インタビュー前編(Rittor Music)>

「個性が違っちゃってて悩んでいた」

CD
▲鈴木茂『BAND WAGON』

長門:それで、そのサウンドを再現しようと、ハックルバックを結成することになるんだ。「BAND WAGON」の発売も翌年の3月25日に決まったし、ティン・パン・アレーの全国縦断「ファースト・アンド・ラスト」ツアーも始まるし。

鈴木:そう。それで、最初に話したように大阪でメンバーを集めて、1月一杯、クラウンの2回の練習室で夜、ずっとリハーサルをつづけた。最初の何回かのステージはひどかった。歌がね。演奏はみんなそれなりにガンバッていたからよかったんだけど、僕がまだ慣れていなかったから。3回目、4回目位からようやく、自分なりに落ち着いてできるようになったけど、ほんと最初の何回かはもう、終わって、落ち込んでね。ブルーになってた、毎回。それまで、ギター弾いてるだけだったじゃない。で、大滝さんがしっかり歌ってるから。そういった意味でも何の心配も要らなかったから。

最初は「BAND WAGON」のサウンドを再現しなくちゃっていうのがすごくあって、もうちょっとノリを何とかしてくれって、随分、トンに行って、彼も随分、悩んだと思うんだけど、でもだんだん、何回かやってくうちに、トンのドライヴ感てのが出てきて、それで、あっ、これだったらって、これに乗ってやっていこうっていうそういう風に思いはじめて。

長門:さて、3月後半から7月一杯まで、全国30か所近くを回ったコンサート・ツアーが終わった頃には、ハックルバックは完全にバンドとしてまとまっていたんだけどその年の暮れ(12月16日)の厚生年金ホールでのコンサートを最後に惜しまれつつ、解散することになる。「LAST SCENE」というコンサート・タイトルは僕が考えたんだった。ダフ屋が出て、大盛況だった。人気もピークだったのに、何で解散したんだろう?

鈴木:う~ん。この当時ね、佐藤さんと自分のカラーが少し違うなって、なんか一つのバンドで括るのがあまりにも個性が違っちゃってて悩んでいたんだよね、かなり。そんなこともあって、また、独りきりの気楽な状態に戻りたいなって。

長門:それで、気分転換みたいな意味もあって、ハワイ録音なんてアイデアが出てきたんだよね。

鈴木:そうそう。それで気分もレイド・バックして、ボサ・ノヴァの世界に入って行っちゃった。

長門:それが「LAGOON」だよね。一方、佐藤さんは、ロス録音のアルバム「スーパーマーケット」を作っちゃう。この「幻のハックルバック」の中に入ってる佐藤さんの「レイン・イン・ザ・シティー」は既にトロピカルだよね、エキゾチックな雰囲気。

鈴木:もう、この時の細野さんは、精神的に今までとは違ったところに行っちゃってたから、その影響が佐藤さんにもあったんじゃないかな。

長門:パラダイス志向みたいな。無国籍サウンド。

鈴木:すべては、はっぴいえんどのレコーディングで出会ったヴァン・ダイクがきっかけなんだけど。細野さんの「トロピカル・ダンディ」とか「泰安洋行」なんかが出た時周りの人は結構ショックだった。いろんな意味で。みんなそれぞれ、R&Bが自分のベースだとか、ロックンロールがベースだとか、根っこをかんじながらやってきたのが、急にフワフワと浮いちゃったものが近付いてきたから、みんな最初は戸惑ってしまったよね。

細野さんの音楽にはひねりがあって面白いグルーヴがあるんだけど、僕はもうちょっとストレートなカンジで、ノリを楽しむっていう基本的なパターンの音楽をやりたかったというのがあった。

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鈴木茂とハックルバック「1975 LIVE」

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