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メイシオ・パーカー来日記念特集~JB、パーラメント、プリンス…稀代のサックス・プレイヤーの歩みを追う
ファンキーなリズムをきらびやかに盛り上げるホーン・セクション。そして、どす黒いグルーヴを切り裂くようなソリッドなブロウ。ファンクという音楽に欠かせない楽器のひとつがサックスだ。ここまでの一文を読むだけで、音楽ファンならある人物の姿が頭に思い浮かぶに違いない。そう、ファンクの代名詞と行っても過言ではない稀代のサックス・プレイヤー、メイシオ・パーカーである。ソロやリーダー・グループとしての活動はもちろん、ジェームス・ブラウン、Pファンク、そしてプリンスをはじめとする数々の客演にいたるまで、彼が歩んできた道はそのままファンクの歴史だ。その演奏を耳にすれば、誰もが身体を動かし踊りたくなること必至。ここでは、7月に来日公演を控えたメイシオ・パーカーの歩みを追ってみよう。
マーチング・バンドに憧れサックスを手にし、JBバンドへ加入
メイシオ・パーカーは、1943年生まれ。米国ノースカロライナ州のキンストンという街で育った。クリーニング店を営んでいた彼の父親はピアノやドラムを嗜む音楽好きだったし、母親も父と一緒に教会でゴスペルを歌っていたということもあって、幼い頃から音楽には慣れ親しんでいた。マーチング・バンドに憧れたメイシオはサックスを手にし、いつしかバンド活動を始め、街のクラブに出演するようになる。そして、弟であるドラマーのメルヴィン・パーカーとのコンビは、巷で噂になるほどの人気となっていた。
メイシオのキャリアで最も大きな出来事といえば、1964年にJBことジェームス・ブラウンのバンドに加入したことだろう。実際は、弟のメルヴィン・パーカーが見初められたのだが、メイシオも無理やり潜りこむ形となった。この時に発表されたシングル「Out Of Sight /アウト・オブ・サイト」は、JBの最初期のファンク・ナンバーとして知られる。つまり、メイシオはファンクの誕生に欠かせない重要な役割を担っていたのだ。
「Papa's Got A Brand New Bag / パパのニュー・バッグ」、「I Got You (I Feel Good) /アイ・フィール・グッド」、「Cold Sweat / コールド・スウェット」、「Say It Loud – I'm Black And I'm Proud / セイ・イット・ラウド」、「Give It Up Or Turnit A Loose / ギヴ・イット・アップ、オア・ターン・イット・ア・ルーズ」、「Mother Popcorn / マザー・ポップコーン」といった、JBの代表的なファンク・ナンバーは、いずれもメイシオのサックス・プレイなしでは語れないものであり、そのままファンクの金字塔になっているのは周知のとおりである。
JBバンドからの離脱と復帰を経て、ソロアルバムを発表
しかし、1970年になると、ギャラの支払いをめぐってトラブルが起き、ジェームス・ブラウンのバンドをお払い箱となってしまう。そのため、メイシオは自身のバンド、メイシオ&オール・キングス・メンを結成。アルバム『Doing Their Own Thing / ドゥーイング・ゼア・オウン・シング』を制作し、2年間に渡ってツアーを行った。しかし、なかなか思うようにいかず、失意のままバンドは解散。音楽活動を休止するまでにいたるが、1973年にはJBと和解して彼のバック・メンバーに復活。このメンバーは、すでにJB'sとしてバンド自体が独立した機能を持っており、アルバム『Doing It To Death / ドゥーイング・イット・トゥ・デス』(1973年)を発表するとこちらも大ヒット。
JBのサポートを行なうと同時にグループ単独でも活動を続け、トロンボーンのフレッド・ウェズリーやベースのブーツィー・コリンズらとともにファンク・サウンドをさらに研ぎ澄ませていった。また、1974年にはJBファミリー全面サポートの元、ソロ・アルバム『Us / アス』を発表している。
パーラメントやソロプロジェクトへの参加を果たし、ファンクの頂点へ
そして、再びメイシオに転機がやってくる。ジョージ・クリントン率いるファンク・グループ、パーラメントに加入することになったのだ。1975年に発表した大ヒット作であり彼らの代表作『Mothership Connection / マザーシップ・コネクション』を皮切りに、『The Clones Of Dr. Funkenstein / ザ・クローンズ・オブ・ドクター・ファンケンシュタイン』(1976年)、『Funkentelechy Vs. The Placebo Syndrome / ファンケンテレキーVSプレイスボ・シンドローム』(1977年)、『Trombipulation / トロンビピュレイション』(1980年)といった数々の傑作に参加。同時並行で、ブーツィー・コリンズ率いるブーツィーズ・ラバー・バンドの一員としても活動を開始する。
他にも、パーラメント休止後のPファンク・オール・スターズや、フレッド・ウェズリー&ホーニー・ホーンズ、ジョージ・クリントンやバーニー・ウォーレルのソロなど、Pファンクの要としてバリバリとサックスを吹きまくった。そして、1984年からは再びジェームス・ブラウンのバンドにも復活。1988年まで活動をともにし、名実ともにファンクの頂点を極めた。
ジャズ、ファンク、ソウル、ブルースといったジャンルを跨いだソロ活動を開始
しかし、ファンクの鬼才たちとの過酷なツアーは、精神的な疲弊が少なくなかった。そんなことからも、1990年代に入ると、メイシオは本格的にソロ活動を開始する。最初に発表したアルバム『Roots Revisited / ルーツ・リヴィジテッド』(1990年)は、驚くことにファンクのリズムを脱ぎ捨て、スウィングとブルースへと傾倒した本格的なジャズ・アルバムだった。レイ・チャールズやチャーリー・ミンガスなどのナンバーをチョイスし、これまでに見せなかったメイシオの魅力を打ち出した本作は、ビルボードのコンテンポラリー・ジャズ・チャートで10週連続で首位に鎮座。ジャズ・ファンに向けてもアピールすることとなった。そして、『Mo’Roots / モ・ルーツ』(1991年)、『Life On Planet Groove / ライフ・オン・プラネット・グルーヴ』(1992年)、『Southern Exposure /サザン・エクスポージャー』(1993年)と、精力的にスウィンギーでファンキーなジャズ路線を歩んでいく。
その後のメイシオは、ジャズ、ファンク、ソウル、ブルースといったジャンルをまたぎながらアルバムを発表し、充実した活動を続けている。ここ近年のアルバムも、『Funk Overload / ファンク・オーヴァーロード』(1998年)、『Dial: M-A-C-E-O / ダイアル・メイシオ』(2000年)、『Made By Maceo / メイド・バイ・メイシオ』(2003年)、『School's In! / スクールズ・イン』(2005年)、『Soul Classics / ソウル・クラシックス』(2012年)など、いずれもファンキーで彼のプレイを存分に楽しめる作品ばかりだ。
プリンスや坂本龍一での客演など、多くのミュージシャンから愛されている
また、メイシオのプレイは、自身のアルバム以外でも多数の客演で聴くことが出来る。キース・リチャーズ、ブライアン・フェリー、キャンディ・ダルファー、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、アーニー・ディフランコ、デ・ラ・ソウル、カラー・ミー・バッド、坂本龍一など、ジャンルも多岐に渡るのが面白い。
なかでも、先日急逝したプリンスの『Rave Un2 The Joy Fantastic / レイヴ・アン2・ザ・ジョイ・ファンタスティック』(1999年)以降、10年ほどの蜜月関係は忘れられないコラボレーションだろう。ここまで、多くのミュージシャンに愛されているサックス・プレイヤーは他にはいないし、これからも出てこないのではないだろうか。そして、メイシオがまだ現役でファンキーにブロウし続けていることに、音楽ファンは感謝すべきなのだ。
ジェームス・ブラウンのドキュメンタリー映画に出演
6月18日より公開した映画『ミスター・ダイナマイト ファンクの帝王ジェームス・ブラウン』に、メイシオ・パーカーが出演中。来日公演とともに要チェック!
公演情報
メイシオ・パ-カー
ビルボードライブ東京:7月18日(月)・19日(火)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:7月17日(日)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
メイシオ・パーカー / Maceo Parker (Saxophone)
グレッグ・ボイヤー / Greg Boyer (Trombone)
ウィル・ブールウェア / Will Boulware (Keyboards)
ブルーノ・スペイト / Bruno Speight (Guitar)
ロドニー・”スキート”・カーティス / Rodney "Skeet" Curtis (Bass)
ピーター・マックリーン / Peter MacLean (Drums)
ダーリーン・パーカー / Darliene Parker (Vocals)
コーリー・パーカー / Corey Parker (Vocals)
関連リンク
Text: 栗本斉
ルーツ・アンド・グルーヴズ
2007/09/12 RELEASE
VICP-63962/3 ¥ 3,122(税込)
Disc01
- 01.ハレルヤ・アイ・ラヴ・ハー・ソー
- 02.バステッド
- 03.ゼム・ザッツ・ガット
- 04.ユー・ドント・ノウ・ミー
- 05.ヒット・ザ・ロード・ジャック
- 06.マージー
- 07.ジョージア・オン・マイ・マインド
- 08.ホワッド・アイ・セイ
- 09.トンク (日本盤ボーナス・トラック)
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