Special
たむらぱん×SuG武瑠 対談 インタビュー
天才女性シンガーソングライター×ヴィジュアル系シーンの異端
完全なる初遭遇、前代未聞の対談実現。
シンガーソングライターという枠組みに入れ込むには、あまりにも多種多様な音楽的アプローチを繰り広げ、最近では私立恵比寿中学などアイドルへの楽曲提供も行っている天才 たむらぱんと、ヴィジュアル系シーンの“異端”SuGのフロントマンにして、衣装やアートワークの制作、PV監督、関連小説の執筆まで含むアートディレクションを一挙に担う武瑠(vo)。
この2人には幾つもの共通点があると感じていたhotexpressは、交わらないはずのものが交わることで、そこにどんな言葉や可能性が生まれるのか。双方のファンが双方の音楽や価値観に何を感じるのか知りたく、前代未聞の対談をここに実現させて頂くことにした。特にコラボしている訳でも、対バンしている訳でもない、この日まで会ったこともない2人による、予定調和ゼロのガチンコ対談。ぜひご覧下さい。
「たむらぱんの声聴いてると泣きそうになる。」
--今回の対談実現は、武瑠さんの「ほんと、たむらぱんの声聴いてると泣きそうになる。」というツイートを発見したことがきっかけになっているんですが、そもそもたむらぱんを知ったきっかけって何だったんでしょう?
武瑠:1年半ぐらい前に『Crazy Bunny Coaster』というジェットコースターを題材にしたシングルをリリースしたんですけど、同じ題材で他のアーティストがどんなことをやっているのか調べたんです。内容が被らないように。それで、たむらぱんさんの『ジェットコースター』を知って、PVも曲も凄い良いなと思って。サビと2Aメロがとにかく好きなんですよ。なかなか選ばない、コピペとかでやっていたら絶対に作れないフレーズだったり、アレンジだったりが出てくるので。あと、言葉を大事にしてるんだろうなと思いました。
--ちなみにどの曲を聴きながら「たむらぱんの声聴いてると泣きそうになる」とツイートされたんですか?
武瑠:それも多分『ジェットコースター』ですね。あの曲、しょっちゅう聴いてるんですよ。
--今の話を聞いていかがですか?
たむらぱん:えーっと、恥ずかしいです(笑)。でもミュージシャンの人にそう言ってもらえれるのは、すごく嬉しいです。
--逆にたむらぱんはSuGに対してどんな印象を?
たむらぱん:私がSuGを知ったのは、平賀さんのつぶやきだったんです。「SuGの武瑠さんがたむらぱんを絶賛しているよ」っていう。で、平賀さんは私が自主制作盤とか出している頃からインタビューしてくれていたので、若干信用が……若干ってね(笑)。
武瑠:長い歳月をかけて……
--やっと若干です!
たむらぱん:その平賀さんが好きなバンドってどんな感じなんだろうと思って、いろいろモニタリングさせて頂いたんです。それで私が思ったのは「似てる」なんて言うのは申し訳ないんですけど、例えば誰かに何かを決められるってラクじゃないですか。周りはすごくカテゴリーを作りたがるし、それによっていろんなことがスムーズに動くのは事実だし。でも私はそれに当てはまらないから「何したいの?」って言われる感じがずっとあって。で、SuGさんも曲によって全然違うし、カテゴリーに収まってないから、その中であらゆる状況をパワーにして押し進めているのは凄いエネルギーだなと。
--それって双方の共通点ですよね。多種多様な音楽的アプローチ、ポップミュージックの限界に迫るかのような楽曲構成というものが挙げられると思うんですけど。
武瑠:ウチは5人とも曲を作るので制作スタイルは異なるんですけど、自分で作るときは、曲を作りながら同時でデザインやコラージュも進めて。で、他4人の曲の場合は、それを聴いて思い付いた世界観から「こういう話にしたいから、もっとここを重くしてくれ」「ここにこういうジャンルのテイストを乗せてくれ」って相談する。そういうことができるんで、衣装の生地を作ったり、小説を書いたり、アートワークを自分で手掛けたりできるんですよ。とても1人ですべてをやる自信はなくて。でもたむらぱんさんは1人であれだけ幅広い音楽性を持っていて、アートワークのディレクションとかもしているじゃないですか。
たむらぱん:私は発注事が下手というか……だから一番諍いが起きやすそうなバンドをやれてないと思うんですよ(笑)。バンドはすごく憧れるし、ロマンがあっていいなって思うし、みんなでやり取りできるのも良いなって思うんですけど、私はゼロから誰かと物を作るってことがどうしても出来ないから、10ぐらいまで行った後に渡すんです。でもそれだとベーシックな部分で誰かの賛同を得たりはできないから、自分でOKを出すしかない。だから不安にもなったりするんですよ。
武瑠:アートディレクションに関しては自分1人でやっているので、その気持ちは分かります。そのアートワークと同期させる為の曲のアレンジを発注していく。上手く説明できないときは自分で作るんですけど。
たむらぱん:同期させることに拘ってるからだと思うんですけど、SuGさんの作品はPVとかまで観た方がいいですよね。すごく繋がってる。すべてでひとつになっている。それは凄いなって思います。
武瑠:自分はそっちが先なんですよ。頭の中に描いた世界をどういう形で物に残していくかがスタートだったんですけど、学校の授業とかで一番苦手だった音楽を何故かメインに選んでしまった。だからバンドを組んだんだと思います。最初は自分では曲を作らなくていいと思っていたので。でも事務所の怖い人に(笑)「来月まで3曲作ってこい」って言われたので作りました。で、選曲会では、今はもう企画書を作ってみんなに配ってから聴いてもらうんですけど、当時は曲を流しながら必死に「こういうお話なんです」って説明して。
たむらぱん:へぇ~。私もそれやろうかな。私の考えってなかなか伝わらなくて(笑)。結構こっちは本気なんですけどね、笑われたりして。
--武瑠さんはたむらぱんのアレンジや曲の構成に関して、どんな印象を持たれていますか?
武瑠:最新シングルの『new world』を聴かせてもらって思ったのは、イントロ、A、B、サビというJ-POPのフォーマットがありますけど、それをちょっとずつズラして崩して楽しんでいる印象がありました。
たむらぱん:それはありますね。私もSuGさんのニューアルバム『Lollipop Kingdom』聴かせてもらったんですけど、「Yum!Yum!」って歌う『Pastel Horror Yum Yum Show』を聴いて凄いなって。展開も凄いし、映像も凄いんだけど、ああいう曲を「変な曲だな」で終わらせちゃうんじゃなくて、フレーズを覚えちゃえるところまで持っていっているところにグッと来る。
武瑠:凄いキャッチ能力ですね。自分の狙いがすべて理解されてる。おそらく「Yum!Yum!」とかそういう言葉を使わなかったら、ただ「変な曲だな」とか「プログレだな」で終わっちゃうと思うんですよ。だからアートディレクターとして、歌詞を書く人としてプレッシャーを感じたのが、普通にその曲に導かれる通りに書いていったら、ただマニアックで、今までのファンが「めちゃくちゃつまんない」って言うようなものになっちゃうことで。だから意識的に可愛い言葉とかを取り入れているんです。売れセンとかポップスが好きな人を騙そうというのがテーマとしてありました。
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:佐藤恵
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