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「チャートって世の中の鏡みたい」― LOVE インタビュー
2007年に「過ちのサニー」で配信デビューし、同年夏にDREAMS COME TRUEのバッキングヴォーカルとしてアリーナツアーに参加。70年代フォークや90年代オルタナティブロックなど、多彩な音楽を背景に持ち、様々なアーティストとの交友関係も広い大阪府出身のシンガーソングライターLOVE。並行して女性ロックンロールバンドTHE LIPSMAXギターボーカルも務める。2010年からは、TOKYO FMの『LOVE CONNECTION』のパーソナリティーとして、Billboard JAPANチャートを使った最新音楽チャートなど、平日のランチタイムを彩る番組を担当している。ラジオを通して知るヒットソングや、ヒットのあり方。そして、これからのラジオの役割とは?
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アラニス・モリセット、ジョニー・ミッチェル、ベン・ハーパーを聴いていました
−−LOVEさんは、子供の頃 どうやって音楽を聴いていましたか?
LOVE:中学生や高校生の時は、CDショップに行って片っ端から試聴機で音楽を聴いていました。ジョニー・ミッチェルやベン・ハーパーなどが好きでしたね。
−−好みが渋いですね。
LOVE:昔から、アラニス・モリセットが大好きで。自分の趣味が渋いかも分からず、彼女が尊敬しているアーティストや同じ時代の曲をひたすら探して聴いていました。中学校と高校がインターナショナルスクールだったので、学校ではデスティニーズ・チャイルドなどアメリカのBillboard チャートでヒットしている曲が流行っていましたね。
−−今は、どのように聴くことが多いですか?
LOVE:ラジオ局には多くのサンプルCDが届くので、今はサンプルを通じて新しい曲を知ることがほとんどです。サンプルを作るのにもお金がかかっていますし、誰かが作った情熱のかけらだと思うので、いただいたサンプルは必ず1度は聴くようにしています。なので、ラジオの仕事を始める前はオルタナティブやフォークなど自分が好きなジャンルの曲ばかりを聴いていましたが、ここ数年は、かつてないくらいの数のポップスを聴いていると思います。
−−『LOVE CONNECTION』のプレイリストは、どのように作られるんですか?
LOVE:プレイリストを作ったり、選曲をしたりするのは主にディレクターさんの仕事なんですが、毎週私も含めたメンバーで会議をしています。例えば、昨年の夏は「ラヴァーズ・ロック」を掘り下げる企画を提案してみたり、「恋と音楽の水曜日」というテーマにあわせて、西野カナさんと在日ファンクさんの曲を照らし合わせてみたり。季節やニュースなどに合わせてテーマを考え、皆で意見を出し合って決めています。
−−Billboard JAPAN HOT 100を見てみると、総合順位とラジオ順だと全然、結果が違います。ラジオは、今 流行っている曲ばかりが流れるというわけではないんですね。
LOVE:そうですね。それに、ラジオの仕事をして初めて知ったんですが、私が好きな“言葉の意味が深い曲”や“聴いていて涙が出る曲”というのは、お昼のラジオで流しても必ずしも共感を得られるわけではないんです。ラジオの仕事を始めてから、“ラジオライク”という言葉を知ったのですが、ラジオは何かをしながら聴くことが多いので、フレーズがちょっと気になる曲や、聴いていてテンションが上がる曲という気軽な曲が支持されることが多いです。
−−なるほど。たしかに、ラジオは仕事や運転など、何かをしながら聴くことが多いですもんね。
LOVE:なので、連休の時にはドライブ特集をしてみたり。ただし、なるべく印象的な出来事があった時には関連するような曲を選んだりしています。例えば9月11日にピンクの「Dear Mr.President」をかけたり、3月11日に福島や東北に縁のあるアーティストを選んだり。時が経っても、みんなで噛みしめることができるような選曲を心掛けています。
−−LOVEさんは、もともと18歳からミュージシャンとして活躍されていましたが、2010年にラジオ業界に入ることになったきっかけは何ですか?
LOVE:実は、すごい偶然なんです。きっかけは、当時私にとってのレーベルオーナーだったDREAMS COME TRUEの中村正人さんの『中村正人の夜は庭イヂリ』というラジオ番組なんです。私は、その番組で“イヂリ見習い”というアシスタントをさせていただいていました。そうしたら、偶然その番組を偶然聞いてくれていたディレクターさんが、昔からすごくお世話になっていた方で「LOVEちゃんと、ラジオ番組をやるのが夢なんだ」っておっしゃってくださって。私は、ずっと自分の夢を叶えることばかり考えていたのに(笑)、私が喋るだけで誰かの夢を叶えることができるんだったら、ぜひやりたいと思って引き受けました。だから恩返しの気持ちでスタートしたので、こんなに長く続くとは思っていませんでしたね。そして番組がスタートして1年ほどたって震災があり、ラジオの意味をすごく考え直しました。
−−震災があっても、担当の番組はなくなりませんもんね。
LOVE:そうですね。しばらくの間は普段のサテライトスタジオから東京FMの本社に行って、アナウンサーの方と2人態勢で番組を放送していました。自分は、やはり歌い手としての延長線にいるDJであって、アナウンサーじゃないんだなってことを思い知らされましたね。
−−どういう意味でしょうか?
LOVE:被害状況がどんどん明らかになってきて、思わず原稿を読んで手が震えても、声は絶対に震わせずにニュースを読むのがアナウンサーなんです。なので、自分には何ができるんだろうと考え、避難所の子供達に向けて歌のお姉さんをやったり、とにかく不安な人々の気持ちを和ませる役をやろうって思いました。不安なことや怖いことって、逆に言葉に出しちゃった方が安心するんですよ。触れない方が、より不安を呼んでしまう。なので、いま起こっていることを口にして共有することで、少しでもリスナーの皆さんに安心していただけたらと思いました。ラジオも、歌を歌う時のように、大事な話をごまかさずに、そして聞いている人が安心するように伝えることってできるんじゃないかって。
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プロフィール
大阪出身のシンガーソングライター。アコースティックギターをかき鳴らし歌う凛々しさに魅了される。TOKYO FM「LOVE CONNECTION」のパーソナリティも務めており、その人柄に惹かれるファンも多く人間的にも魅力溢れるアーティスト。震災後、福島県相馬市全小学校に文房具を贈るライブイベント「今日ここにいるという事」を企画し今年で5回目の開催となる。ソロ以外でも、TOKIE(ベース)山口美代子(ドラム)と女性トリオバンド“THE LIPSMAX”を結成し活動をしている。
番組情報
TOKYO FM『サンデースペシャル 音楽シーンを大解剖!ビルボード・ ジャパン 2016年上半期TOP50』
放送日時:2016年6月19日(日) 19:00~19:55
出演者:LOVE、礒崎誠二(Billboard JAPAN)
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