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特集:“日本のブラック・ミュージック~シティ・ポップス”の系譜 小坂忠、鈴木茂、さかいゆうとの問答で振り返る
この5月、日本音楽史のレジェンド、小坂忠のデビュー50周年ライブがビルボードライブにて開催される。50年前と言えば1966年。その後の小坂のキャリアを紐解くと、フローラル、エイプリル・フール、マッシュルーム・レーベル、ティン・パン・アレーおよび『HORO』、そしてミクタムレコードと、日本のポップ音楽史を彩ってきた数々の伝説的な固有名詞に突き当たる。
50周年という節目を祝うべく、スペシャルなメンバーも集結。鈴木茂、小原礼、Dr.kyOn、屋敷豪太、小林香織という鉄壁の演奏陣。さらにスペシャル・ゲストとしてさかいゆうの参加も決定。“日本のソウル・ミュージック”の系譜が一本の線として繋がるような、特別な公演となる。また、鈴木は7月に“ハックルバック”および吉田美奈子との限定復活公演も決定している。
今回はそんな公演を前に、小坂、鈴木、さかいの3者にインタビューを実施。今回のステージで、さかいがゲストとして参加予定の数曲(小坂忠「I love people」、さかいゆう「Life is…」、インプレッションズ「People Get Ready」)の選曲の理由も交え、メールにて話を聞いた。世代や視点の異なる3者のインタビューを並列に届けることで、50年という日本のポップスの時間を多角的に振り返ってみたい。
最終ページで公演のリハーサル映像も公開!
メールインタビュー(1) さかいゆう
――“日本のソウル/ブラック・ミュージック”という言葉を聞いて、どんなものを思い浮かべますか?
さかい:ワビサビの効いたペンタトニック。
――振り返って、ご自身にとってソウルやブラック・ミュージックとの出会いはどのようなものでしたか?
さかい:自分がまだミュージシャンを志す前の10代の頃に、当時好きだったMISIAが『ブラックミュージックレビュー(bmr)』でDonny Hathawayの盤をフェイバリットにあげていて、出会ったのがキッカケだったと思います。
その前にBoyz Ⅱ Menとかマライアはなんとなく好きで聞いていたんですが、本当の意味での好奇心をそそられたのは、リアルタイムR&Bよりは60年代~70年代のソウルミュージックでした。
なにか聞き逃してはいけないような、そんな、歌というよりも時空を超えた大切な手紙のような印象でした。
――最も影響を受けたブラック・ミュージックのレコードやアーティスト、音楽を5つ教えて下さい。
さかい:Donny Hathaway『Live』、D'Angelo『Voodoo』、Miles Davis『Kind of blue』、Marvin Gaye『I want you』、Stevie Wonder『Key of life』。
――逆にブラック・ミュージック“以外”で最も影響を受けたレコードやアーティストを5つ教えて下さい。
さかい:小谷美紗子『Profile too early to tell』、槇原敬之『君は僕の宝物』、美空ひばり大全集、カーペンターズ『Close to you』、リヒテル 『バッハ平均律クラヴィーア曲集』。
――今回の小坂さん50周年記念ライブに向けて、意気込みをお願いします。
さかい:「ほうろう」と「People」は何百回も聞かせていただきました。佐藤博さんの大ファンなので、嬉しさ倍増でした。あと、何年か前に『まだ夢の続き』も読ませていただいてます。
余談ですが、小坂忠さんと共演するということは、午前2時のバーカウンターでバーボンを3杯くらい飲んで「おまえな、音楽ってのはなぁ」って説教してくる先輩の態度が急に変わることです(笑)。
――さかいさんは現地に留学して学ぶなど、洋楽から大きな影響を受けているアーティストかと思います。今でも現行の洋楽シーンなどは気にしますか?
さかい:常に“なんとなく”聞いてます。僕はラジオのパーソナリティとかやってるわけではないので、そんなにアンテナ張り巡らしているほうではありません。
月に一回行くか行かないかのCD屋さんで、2~3時間かけて試聴機なんかで気に入ったアルバムを見つけて、ジャンル関係なく10枚くらい購入するくらいです。
――逆に、J-POPという意味ではどうでしょう? 自分の音楽をJ-POPとして作るというようなことは意識しますか?
さかい:していません。
――シンガーとして、小坂忠さんにはどんな印象を持っていますか?
さかい:余裕、風格、太い、誠実、グルーブマスター、祈り。
――小坂さんはゴスペルのシンガーとしても知られていますが、一方でさかいさんもゴスペルからの影響を公言されています。留学時、実際にゴスペルのステージに参加したりもしたのでしょうか?
さかい:ニューヨークのブルックリンやL.A.の教会で何回か歌わせてもらいました。
曲は、Kirk Franklin、Commisioned、Mahelia Jackson、定番の「Oh,happy day」や、あと、ゴスペルではありませんが「You've got a friend」とかも歌った記憶があります。
よくルームメイトの教会に行ってキーボードの人が弾く指をずっとみて勉強してました。リハのときなんかに録音させてもらったりしてそれを家で何度も聞いてコピーしたりもしました。
ゴスペルは、特にサウンド面で、トラディッショナル、モダン問わず常に影響を受けています。
――今回のライブでは、さかいさんの 「Life Is…」とインプレッションズの「people get ready」をセッション曲に選んでいらっしゃいます。選曲の理由を教えて貰えますか?
さかい:伝説のシンガー小坂忠に歌ってもらえるなら、どの曲でも僕は嬉しいんですが、中でも、人生について歌った「Life is…」、つまり「人生とは…」をご一緒したく思いました。
「People Get Ready」は音楽の教科書に載せましょう!
ビルボードライブ公演情報
小坂忠 Debut 50th Anniversary Premium Live
featuring 鈴木茂, 小原礼, Dr.kyOn, 屋敷豪太 & 小林香織
Special Guest さかいゆう
ビルボードライブ大阪
2016年5月10日(火)
1stステージ開場17:30 開演18:30
2ndステージ開場20:30 開演21:30
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ビルボードライブ東京
2016年5月18日(水)
1stステージ開場17:30 開演19:00
2ndステージ開場20:45 開演21:30
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鈴木茂とハックルバック with 吉田美奈子
ビルボードライブ東京
2016年7月1日(金)
1stステージ開場17:30 開演19:00
2ndステージ開場20:45 開演21:30
2016年7月2日(土)
1stステージ開場17:00 開演18:00
2ndステージ開場20:00 開演21:00
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ビルボードライブ大阪
2016年8月20日(土)
1stステージ開場15:30 開演16:30
2ndステージ開場18:30 開演19:30
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メールインタビュー(2) 鈴木茂
――“日本のソウル/ブラック・ミュージック”という言葉を聞いて、どんなものを思い浮かべますか?
鈴木:日本のミュージシャンとしては故 佐藤博さんのあのピアノのプレイを思い浮かべます。
――振り返って、ご自身にとってソウルやブラック・ミュージックとの出会いはどのようなものでしたか?
鈴木:レーベルとしては、アトランティック・レコードのアレサ・フランクリン、モータウンの・マーヴィン・ゲイ、後はビル・ウィザース、STAXレコードのサウンドも大好きです。
――最も影響を受けたブラック・ミュージックのレコードやアーティスト、音楽を教えて下さい。
鈴木:アレサ・フランクリン、ロック・ステディー、あとは先に上げたミュージシャンたち。
――逆にブラック・ミュージック“以外”で最も影響を受けたレコードやアーティストを5つ教えて下さい。
鈴木:ジミ・ヘンドリクス、リトル・フィート、ザ・ビートルズ、トラフィック、プロコル・ハルム。
――小坂忠さんとは名盤『HORO』での共演はもちろんのこと、40年以上の付き合いになると思いますが、どんな印象をお持ちですか? また、小坂さんの50周年記念ライブにサポート・ミュージシャンとして参加されますが、そこではどんなことを意識してプレイされますか?
鈴木:昔から変わらない気さくで楽しい人柄と、彼にしか出せないヴォイス&ヴォーカルが印象的です。ヴォーカルに沿ったソウルフルな演奏を心掛けたいと思います。
――鈴木さんは、7月にはビルボードライブ東京、8月には大阪で開催される【鈴木茂とハックルバック with 吉田美奈子】公演にも出演されます。このハックルバックは、アメリカ西海岸で現地の豪華ミュージシャンを起用して録音したアルバム『バンドワゴン』を再現するために帰国後に結成したバンドとのことですが、当時、日本でメンバーを探すにあたって意識したことはありますか?
鈴木:ロック色が強く、音に厚みのある(外人っぽい)ミュージシャンを当時探していた時に見つかったのがあのメンバーでした。
――今回の【ハックルバック】公演は、オリジナル・メンバーの田中章弘さんに加えて、中西康晴さん、上原“ユカリ”裕さん、さらに吉田美奈子さんという旧知のミュージシャンとの共演となります。このメンバーで作り出す音のイメージは既にありますか?
鈴木:あの当時のサウンドを意識して、また当時より使用している楽器を使ってバンド・サウンドを作れるよう頑張ります。
――【ハックルバック】の公演に関しても意気込みを教えて下さい。
鈴木:なんと言っても“美奈子”との久々の共演を楽しみにしています。あの美奈子のヴォイスが加わったサウンドは、間違いなく凄みのある、素晴らしい物になるでしょう。もちろん新しいメンバーと一緒に音を出せることももう一つの楽しみです。
ビルボードライブ公演情報
小坂忠 Debut 50th Anniversary Premium Live
featuring 鈴木茂, 小原礼, Dr.kyOn, 屋敷豪太 & 小林香織
Special Guest さかいゆう
ビルボードライブ大阪
2016年5月10日(火)
1stステージ開場17:30 開演18:30
2ndステージ開場20:30 開演21:30
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ビルボードライブ東京
2016年5月18日(水)
1stステージ開場17:30 開演19:00
2ndステージ開場20:45 開演21:30
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鈴木茂とハックルバック with 吉田美奈子
ビルボードライブ東京
2016年7月1日(金)
1stステージ開場17:30 開演19:00
2ndステージ開場20:45 開演21:30
2016年7月2日(土)
1stステージ開場17:00 開演18:00
2ndステージ開場20:00 開演21:00
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ビルボードライブ大阪
2016年8月20日(土)
1stステージ開場15:30 開演16:30
2ndステージ開場18:30 開演19:30
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メールインタビュー(3) 小坂忠
――“日本のソウル/ブラック・ミュージック”という言葉を聞いて、どんなものを思い浮かべますか?
小坂:照り焼きバーガー。
――振り返って、ご自身にとってソウルやブラック・ミュージックとの出会いはどのようなものでしたか?
小坂:小学生の時にラジオから流れてきたレイ・チャールズの「What I Say」を聞いて、その歌に訳もわからず感動した。あの絞り出すような歌声が心に残った。ナット・キング・コールの優しい歌声にも惹かれた。“声”は素晴らしい楽器だと思った。
――最も影響を受けたブラック・ミュージックのレコードやアーティスト、音楽を教えて下さい。
小坂:レイ・チャールズ『Modern Sounds In Country and Western Music』、ナット・キング・コール『The Gratest hit』、ビル・ウィザース『Still Bill』、アル・グリーン『Let’s say together』、サム・クック『Mr Soul』。
――逆にブラック・ミュージック“以外”で最も影響を受けたレコードやアーティストを5つ教えて下さい。
小坂:ジェイムス・テイラー『One Man Dog』、サイモン&ガーファンクル「I am a Rock」、ボブ・ディラン『セルフ・ポートレイト』、ザ・バンド『Music From Big Pink』、ハンク・ウィリアムス『Honky Tonkin’』。
――今回の50周年記念ライブに向けて、意気込みを教えて下さい。
小坂:50年歌ってこられた事は、感謝しかない。たくさんの人に支えられて、ここまで来られたのだから。精一杯、歌いたい。
――デビュー50周年、ザ・フローラルやエイプリル・フールといったロック・バンドからキャリアがスタートしたことについて、今振り返ってどう思いますか?
小坂:その時々、自分の琴線に触れた、いろんな音楽をやってきた。いろんな歌を歌って来た。そのすべてが、イマの自分を創る栄養になっている。そのすべてが、イマに繋がる。
――小坂忠さんの『HORO』は“日本のR&Bの先駆け”とも言われます。小坂さんにとってはどんなアルバムですか?
小坂:あのアルバムがなかったら、イマの自分はなかっただろう。自分の歌を探して、ようやくたどり着いたのが『HORO』だった。
――小坂さんはその後ゴスペル・ミュージックへと向かわれましたが、ご自身の歌に関して、その前後で最も変わった部分はどこだと思いますか?
小坂:ゴスペルは、“歌の力”というものを教えてくれた。歌を通して、何を伝えたいのかが、はっきりした。大きな分岐点だった。
――鈴木茂さんをはじめ、今回のバンドメンバーについて、どのような印象をお持ちですか?
小坂:このメンバーは、もうバンドと言ってもいい。それくらいに深い付き合いをしてきたので、安心して歌えるファミリーみたいなもの。みんな音を聞いただけで顔が見えてくるようなONE & ONLYの素晴らしいミュージシャンです。
――今回のライブでは、小坂さんの「I love people」をセッション曲に選んでいらっしゃいます。選曲の理由を教えて貰えますか?
小坂:これは『PEOPLE』というアルバムの為に作った曲。僕は、何が好きって……やっぱり『人』なんだ。
――近年も新作アルバムをリリースするなど、精力的に活動されている小坂さんですが、今後の活動の中でやりたいことがあったらぜひ教えて下さい。
小坂:いつまで歌えるかわからないけど、歌は歳を重ねてゆけば味も変わる。それを楽しみたい。そして、新しいことにチャレンジしていきたいと思っている。
小坂忠 Debut 50th Anniversary Premium Live -リハーサル- 映像
ビルボードライブ公演情報
小坂忠 Debut 50th Anniversary Premium Live
featuring 鈴木茂, 小原礼, Dr.kyOn, 屋敷豪太 & 小林香織
Special Guest さかいゆう
ビルボードライブ大阪
2016年5月10日(火)
1stステージ開場17:30 開演18:30
2ndステージ開場20:30 開演21:30
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ビルボードライブ東京
2016年5月18日(水)
1stステージ開場17:30 開演19:00
2ndステージ開場20:45 開演21:30
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鈴木茂とハックルバック with 吉田美奈子
ビルボードライブ東京
2016年7月1日(金)
1stステージ開場17:30 開演19:00
2ndステージ開場20:45 開演21:30
2016年7月2日(土)
1stステージ開場17:00 開演18:00
2ndステージ開場20:00 開演21:00
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ビルボードライブ大阪
2016年8月20日(土)
1stステージ開場15:30 開演16:30
2ndステージ開場18:30 開演19:30
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