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TETSUYA 【CÉLUXE NIGHT】インタビュー
FC発足1年を記念して今年もFC LIVEの開催が決定! 4月15日 Billboard Live TOKYOにてアコースティック編成での【CÉLUXE NIGHT VOL.1.5】と、4月29日 EBISU The Garden Hallにてバンド編成の【CÉLUXE NIGHT VOL.2】をそれぞれ開催するTETSUYA。今回のインタビューでは、同イベントに向けて改めて彼のアーティスト/ミュージシャン像を浮き彫りにすべく、その音楽に対する価値観やスタイルについて語ってもらった。
たまにあるんですよ。ふと「あ、俺、ラルクのtetsuyaか」って(笑)
−−ご自身ではTETSUYAをどんなアーティスト/ミュージシャンだなと感じていますか?
TETSUYA:自分では……まぁ一般的に言われているのは、美メロ、キレイなメロディーを作るのが得意な人。
−−音楽を始めた当初はどんなアーティストを目指していたのでしょうか?
TETSUYA:元々「プロになりたい」と思っていた訳でもないし、というか、プロになれるとも思ってなかったんです。楽器を始めて、バンドが楽しくなって、そのまま辞められなかったからここまで来た人というか、続けていたらこうなっていた。
−−そもそも何がきっかけで音楽を始めることになったんですか?
TETSUYA:元々は自分が楽器を演奏できるようになるとも思ってなかったんです。ギターやっている先輩に「ベースでもやれば」って言われて、「ベースって何すか?」っていうところから始まったんですけど(笑)、それぐらい興味がなかったんです。自分に楽器が弾けるような才能があるとも思ってなかったし、「出来ねーよ」って思ってた。しかもベースって、ひとりで部屋で弾いてても全然面白くなかったんですよ。先輩に薦められてベースを買ったものの「騙されたな!」って思って。
−−(笑)
TETSUYA:でもみんなとバンドで練習したときに楽しさが分かった。「あ、みんなと演奏するって楽しいな」って思えたんですよね。
−−世間的には、L'Arc~en~Cielでもソロでも劇的にポップでキャッチーな楽曲を創る人というイメージがあって、かの「Pieces」の作曲者でもあるじゃないですか。このTETSUYAさんの音楽性はどうやって培われたものなんですか?
TETSUYA:どうやって培われたんですかね? 最初に音楽を聴きだしたきっかけはYMOとか一風堂で、高校生の頃からレコード屋でアルバイトしたりもしてたんで、他の人よりちょっと多く音楽を聴いて育ったのかなと思うんですけど……今はそんなに音楽聴かないですし、自分ではよく分からないですね。最初から何か目指しているものがあった訳でもなく、バンドやりだして、それが面白くて、辞められなくて、その中で自分も曲を書かざるを得ない状況になって、どうせ作るなら良い曲作りたいと思って……ただ、それもベースを始めたときと同じで、自分が曲を書けるなんて思ってなかったんですよ。でも他に書く人がいなかったんで、「じゃあ、書くしかないか」みたいな(笑)。そしたら書けたんですよね。
−−成り行きで始めたパターンが多いんですね(笑)。では、今現在、TETSUYAさんが求める理想の音楽ってどんなものになっていますか?
TETSUYA:理想の音楽……難しいな。なんて答えていいか分からないんですけど、とりあえず自分が曲を作るときは「サビはサビらしくしよう」とか、やっぱり耳に残るメロディーを作れなきゃいけないと思ってるんで、ちゃんとサビが来たら「あー、サビ来た! 良いね! 格好良いね!」って盛り上がってもらえるような曲にしたい。
−−それはバンドでもソロでも一貫されてますよね。
TETSUYA:そうですね。自分自身がリスナーとして聴く場合も「あれ? サビなかったじゃん」みたいな曲がイヤなんですよ。イントロから盛り上がって「お、格好良いじゃん」、Aメロ、Bメロと来て「いいね、いいね」ってなってるのに、「あれ? 終わっちゃったじゃん。サビどれだったの?」ってなる曲、たまにあるじゃないですか。
−−マニアックな構成になっている曲もありますよね。
TETSUYA:そういうの、自分には響かないんですよ。単純に「サビ弱いじゃん、ないじゃん」って僕は思うので、そうなりたくないとは思ってますね。
−−ちゃんとドラマティックな展開が待っていない曲は気持ち悪い?
TETSUYA:うん。「もうちょっと頑張って良いサビ持ってくればいいのに」って思っちゃう。
−−そんなTETSUYAさんが作ってきた曲の中で「最も理想的なものが作れた」と思うものを1曲挙げるとしたら?
TETSUYA:うーん……「lonely girl」かな? 僕、基本的に世に出ているものはそれなりのクオリティーでお届けしてると思ってるし、どの曲もちゃんとサビは用意してるんですけど、あの曲は個人的に一番好きな曲だし、どこ切っても綺麗なメロディーなんですよね。
−−そうしたTETSUYAさんの楽曲たちが日本中の人々に聴かれたり、カラオケで歌われたり、ライブで求められたり、様々な形で愛されている状況自体にはどんなことを感じたりしますか?
TETSUYA:普段はそういうことを考えたりしないんですけど、たまにあるんですよ。ふと「あ、俺、ラルクのtetsuyaか」って(笑)。それは不思議な気分になりますね。ただ、ある日突然オーディションで優勝してデビューした訳じゃないじゃないですか。中学のときにバンド始めて、そこから楽しいからやり続けて、いろんなバンドやって、メンバーと出逢って、ラルク結成して、メンバーも変わったりして、今もこうしてバンドや音楽をやってますけど、本当にちょっとずつちょっとずつ、階段を1段1段のぼってきて、いきなりエスカレーターとかエレベーターで上がってきたことは一度もないんですよ。デビューしていきなり武道館に立った訳でもないし、いきなり東京ドームに立った訳でもないし、むしろデビューしてしばらく売れない時期もあったし、武道館も東京ドームもある程度の年数が経ってから辿り着いてるんで、そのスピードに応じて自分も成長してきている。なので、別に驚くことは普段ないんですけど、たまに振り向いたときに「え、こんな上まで来てたんだ?」って思う感じですかね、同時に「俺、音楽でよく飯食えてんなぁ」って驚く。音楽なんかで飯食えるって思ってなかったんで、不思議な気分になるときはあります。
−−そこにはちゃんと嬉しい気持ちはあるんですか? それとも変な感じ?
TETSUYA:変な感じ。嬉しいし、すごく幸せだなって思うけど、なんか……自分のことじゃないみたい。
−−リアリティがない?
TETSUYA:うーん……自分の事だと思えてない。キャーキャー言われてても自分に対してだと思えてない。ただ、リアリティがないということでもないんですよね。
音楽自体にモチベーションを失っていた時期があったんですよ
−−別人格とも違う?
TETSUYA:あ、別人格なのかな?
−−例えば、矢沢永吉さんは「自分」という者と「YAZAWA」という者を分けて語るときがあるじゃないですか。いわゆる「YAZAWA」を演じてる。
TETSUYA:僕も言いますよ。「俺は良いけど、TETSUYAはなんて言うかな?」って。
−−まんま矢沢さんの名言ですね(笑)。
TETSUYA:(笑)。でもそういう感覚はある。やっぱり商品なんでね。「個人的には良いけど、商品としてTETSUYAがそれやっていいのか?」って思うことはあります。
−−自分自身でTETSUYAをプロデュースしている感覚?
TETSUYA:そうですね。
−−そのTETSUYAをプロデュースしている自分からすると、TETSUYAはどうでなきゃいけないと思いますか?
TETSUYA:品ですね。品がなきゃいけない。
−−では、いわゆる品のない要素は徹底的に排除する?
TETSUYA:うん。それは似合わないから。元々下品なことが嫌いではあるんですよ。汚いものも嫌いだし、綺麗なものが好きだし、生まれつき上品なものが好きなんですよね。まぁでもそれはそれとして、仕事をしていく中で、音楽をやっていく中で、プロデュースとかブランディングを考えていく中で、どういう商品であるべきか考えていく中で、TETSUYAは上品であるべきなんだろうなと思うようになりました。
−−L'Arc~en~Cielは、元々はTETSUYAさんが各メンバーを口説いて結成したバンドですよね。そのバンドがこれほどのモンスターバンドになる予感みたいなものは、当時からあったんでしょうか?
TETSUYA:いや、ないです。
−−では、どのへんのタイミングで「これは凄いことになるかもしれない」と感じ始めたんでしょう?
TETSUYA:どのへんかなぁ? オリコンで1位獲ったときぐらいじゃないですかね。僕、レコード屋でアルバイトしていたときから「武道館でライヴやったところで食えないよ?」っていう話を聞いちゃってたんですよ。武道館でライヴやっててもアルバイトしてるバンドやアーティストがいたり、10代の頃からそういう現実を知っちゃっていたので、まったく夢がなかったんです。「音楽なんかで食っていけないでしょ?」って思ってた。運良くデビューできたところで、毎年何組も新人がデビューしている中で生き残れる人なんてほんの一握りだから、デビューを目標にしたところで食っていけない。だから目標もなかったし、武道館に立つのが夢でもなかったし……ただ、そのときそのときにやらなきゃいけない事をひとつひとつ一生懸命やるってだけで。「曲を作れ」って言われたら良い曲を作る、「レコーディングしろ」と言われたらちゃんとしたプレイをして、ちゃんとした作品を作り上げる、「ツアー行け」って言われたら1本1本のライヴで一生懸命パフォーマンスする。そのときそのとき与えられた仕事を丁寧に一生懸命こなすだけ、それをずっとやってきただけ。
−−その結果が今であると。
TETSUYA:そうですね。
−−そしてL'Arc~en~Cielは今や世界中で愛される存在になった訳ですが、そのバンドのリーダー/メンバーであるときの自分と、ソロ活動をしているときの自分も感覚的に別モノだったりするんですか?
TETSUYA:それはもう分かんないです。違うのか一緒なのかも分からない。
−−それは音楽的にも?
TETSUYA:元々別に「バンドで出来ないことをソロでやろう」っていう感じでもなかったんですよ。そういう方もいるとは思うんですけど、僕の中ではそれもない。他にやりたいことがあった訳でもないし。
−−では、そもそもソロ活動を始めようと思った理由は何だったんですか?
TETSUYA:他のメンバーがソロ活動をやることになったので、そうなるとスケジュールが空いちゃうんで、「ヒマになっちゃうなぁ。何しようかなぁ?」みたいな。
−−理由は、ヒマになっちゃうから(笑)?
TETSUYA:「じゃあ、俺もやろっかなぁ」みたいな。ヒマなんで(笑)、「自分で曲書いて、自分で歌おうか?」って思ったんですよね。
−−ソロ活動も成り行きだったんですね。ただ、そのきっかけのおかげで、TETSUYAさんの音楽をバンドとソロの両方で我々は楽しめるようになった訳ですけど、今はそのスタンスでの活動に対してどんな想いを持たれていたりしますか?
TETSUYA:バンドもソロも……音楽自体にモチベーションを失っていた時期があったんですよ。ソロもしばらくやってなかったし。でもまたソロをやろうと思ったのはスタッフのおかげかな? スタッフから「やりましょうよ」って話を持ちかけられてなかったら、やってなかったと思います。こう見えて意外と他人任せなんです。他力本願でここまで来てるんで(笑)。僕のパブリックイメージ的には「リーダーとしてグイグイ引っ張ってきた」って見られがちなんですが、全然そんなことはなくて。僕からしたら、今回もそうですけど、運だけでここまで来た感覚なんです。
−−では、TETSUYAさんが活動を続けていく上で周囲の存在は物凄く重要?
TETSUYA:そうですね。1人じゃ何も出来ないんで、スタッフに支えられてここまで来てます。
−−今回のソロ活動の提案に対しては、どういうモチベーションで立ち向かっていく感じだったんでしょう?
TETSUYA:やるって決まったらそれはもう妥協しないんで、良いものを作る。両極端なんですよ。やるなら徹底的にやる、中途半端になるなら辞める。
僕は職人です。芸術家タイプじゃない
−−今日お話を伺っていて気付いたんですが、TETSUYAさんって職人肌なんですかね?
TETSUYA:そうですね、僕は職人ですね。
−−それはバンドを結成したときからずっと?
TETSUYA:いや、プラモデルのコンテストで優勝したときから。
一同:(笑)
TETSUYA:小学生のときに優勝したんですけど、その頃から細か~い仕事が好きで、綺麗に、丁寧に、優勝できるぐらいの作品を作っていたんですよ。その当時は「俺は職人」と気付いてはいなかったですけどね。
−−職人仕事に燃える人なんですね。逆に、自分から湧き上がる何かがあって「これを生み出そう」と思うことはあんまりない?
TETSUYA:そうなんですよ。芸術家って何だかよく分からないものを「これが芸術だよ!」って言いくるめてなんぼみたいなとこあるじゃないですか? けど、職人さんって喋らない。自分の仕事に対して語らない寡黙な人が多いじゃないですか。もくもくと黙って作業をする、僕はそっちのタイプなんです。エンターテインメントと芸術は違うと思ってる。
−−ゆえに自分が作る曲にはちゃんとサビがなきゃいけないし……
TETSUYA:そうそうそう! ディズニーランドに来た人は楽しめなきゃいけないと思うんですね。ディズニーランドに来て「なんかよく分かんないよ……これ何!?」ってなるものって無いじゃない?「これが芸術なんだよ!」みたいなことは言わないし、老若男女誰が来ても楽しめるものでないといけないじゃないですか。僕はそっちです。「これを理解しろ。分からないなら来るな。これが分かる奴だけ来い」っていうタイプじゃない。
−−そこにお客さんがいて「ここまでやったら楽しんでくれるんじゃないか」というものを作ってきた感覚ですか?
TETSUYA:うん。来てくれる人が楽しんで喜んでもらえるようなものを作りたいし、CDを買ってくれた人が楽しんでくれるような曲を作りたい。
−−そんなTETSUYAさんから見て、今の音楽シーンってどんな風に映っていたりするんでしょう?
TETSUYA:今の音楽シーンはあんまりよく知らないんですけど、宗教っぽくてイヤだなって思います。何が良いかよく分かんないようなものをみんなして「良い、良い」って言ってて、「一体何が良いんだろうなぁ?」って思うことが多い。それはちょっと怖いなって思います。俺のやってることなんてたかだかエンターテインメントに過ぎない。宗教でも何でもないと思ってるんで。
−−シーンの中で、自分はどういった存在で在り続けたいなと思いますか?
TETSUYA:ディズニーランドですよ。僕の曲を知らなくてもライヴに来てもらえれば楽しめるようにしたいし、実際そう言ってもらえることって多いんですよね。それを知ってもらう為のきっかけ作りとしてこういうところに出てきて話したり、いろいろやらなきゃいけないなとは思ってるんですけど。
−−そんなTETSUYAさんがこの先叶えたい夢とか目標ってあったりしますか?
TETSUYA:スタッフから言われて「良いじゃん! それ、面白そうじゃん!」と思ったものをやっていく。何をやるにも支えてくれるファンがいるから出来るし、クオリティも保てるんですけどね。だからどんどんファンを増やさなきゃいけないと思ってます、やりたい事をやる為にも。
−−OFFICIAL FAN CLUBを発足して1年、作ってみていかがですか?
TETSUYA:自分のFAN CLUBはずっと欲しかったんですけど、以前は作っちゃイカンと思ってたんです。L'Arc~en~CielのFAN CLUBもあるんで、そこにTETSUYAのソロのFAN CLUBも作っちゃうと、僕のコアなファンは両方入らなきゃいけなくなっちゃうんですよね。そこが申し訳ないなとずっと思っていたんです。でも案外そこまで気にしなくて良かったんだなというか、「作ったほうが本当のファンも喜ぶんだな」っていう感じだったんですよ。去年行ったFC LIVEもすごくアットホームだったし、自分のファンしかいない空間ですから、すごくリラックスもできる。
−−今年もFC LIVEを開催。4月15日 Billboard Live Tokyoにてアコースティック編成での【CÉLUXE NIGHT VOL.1.5】と、4月29日 EBISU The Garden Hallにてバンド編成の【CÉLUXE NIGHT VOL.2】をそれぞれ行う訳ですが、どんな時間/空間にしたいと思っていますか?
TETSUYA:去年は大阪でしかやってないんで、東京でやるのは初めてなんですけど、とにかく楽しみです。みんなにもそんなに力まず、ラフな感じで楽しんでもらえたらなって思っています。あと、Billboard Live Tokyoで初めてライヴさせていただくんですけど、良い感じなんでしょ?
−−良い感じです(笑)。
TETSUYA:ロケーションも良い感じでしょ?
−−ステージの向こう側に六本木の夜景が一望できます。
TETSUYA:それを僕も堪能したいと思っているので……毎月やりたいですね。
一同:(笑)
TETSUYA:毎月やりたいんで、皆さん、よろしくお願いします(笑)。
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