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しなまゆ『ヘンシン』モリユイ単独インタビュー



しなまゆ 『ヘンシン』 モリユイ単独インタビュー

今から約1年半前に華々しくメジャーデビューを果たした3ピースPOPバンド・しなまゆ。実は病に苦しめられていたという告白から始まり、ヘンシンを目指して歩き始めたバンドストーリー、モリユイが大好きなチャットモンチーも手掛けたいしわたり淳治、同じく大好きな木村カエラの楽曲を手掛ける渡邊忍との出逢い、そして辿り着いた新作『ヘンシン』への想い。ぜひご覧下さい

病から回復に費やした1年「自分をどうにか元に戻したい」

--メジャー1stアルバム『まえならえ』タイミング以来、1年強ぶりのインタビューになります。この約1年間はしなまゆにとって、モリユイにとってどんな日々でした?

※しなまゆ/チャイニーカンフーセンセーション!(Short Ver.) 2014/12/17発売1stALBUM『まえならえ』
※しなまゆ/チャイニーカンフーセンセーション!(Short Ver.) 2014/12/17発売1stALBUM『まえならえ』

モリユイ:アルバム出した後に一回落ち込んじゃった時期があって、体調的にも精神的にも思いっきり。そこからの回復に費やした1年でしたね。

--なんで落ち込んじゃったんですか?

モリユイ:甲状腺のホルモンバランスの病気みたいなんですけど、そんなものを患っていたとは全然気付かなかったんですけど、襟がある衣装を着たときにボタンがしまらなくて! 喉の甲状腺が凄い腫れちゃってたんですよ。そのときぐらいから気持ちが落ち込んじゃって、もう立て直せないというか……体調的にも気持ち的にもすごくツラくなっちゃってて。病院に行って、自分が病気だってことに気付いて、お薬を毎日飲むようになってからは元気になっていったんですけど、それまでは私もまわりも何でモリユイが落ちてるのか分からなくて、ちょっと大変でしたね。

--そこから回復までに1年もかかったと。

モリユイ:お薬を飲むようになったらなったで、何が面白いわけでもないのにずっとハイなんですよね。だから上げ下げが凄い。落ちちゃう日は落ちちゃうから、そのときはもう何もないんですよ。「どうなりたい」とか「どうしたい」とかなくて、ただ落ちてる。その状態と上手く付き合っていくのは、自分の中で戦いだったかもしれない。

--そもそもなんで甲状腺の病気を患ってしまったんでしょうね?

しなまゆ『ヘンシン』モリユイ単独インタビュー

モリユイ:何でなんでしょうね? 女性に多いみたいで、バセドウ病と橋本病というのがあって、私は橋本病って言われたんですけど、先天的になる人はなるみたいです。それが生活に支障を来たすレベルになっちゃう人は何%みたいなんですけど。

--でもそんな状態でもライブ活動はしてましたよね?

モリユイ:でも本当は人前に出たくなかったです。何をしているかどうか覚えてられなくて、人が話していることとかも全然わかんないんです。理解はしたいから途中までちゃんと聴いてるんですよ。でも「うん、うん」って頷いている間に「何の話してるんだろう?」ってなっちゃう。あとは、日によってはすごく疲れてたり、全く眠れなかったり、動悸が酷かったり、もうそうなると音楽どころじゃなくなっちゃって、とにかく「自分をどうにか元に戻したい」みたいな。そんな状態だから周りのみんなもどうしていいか分かんない。

--そこからどうやって立ち直っていったんですか?

モリユイ:お母さんの存在が大きかったです。すごく支えてくれたんですけど、一緒に話をする機会をたくさん作ってくれて、今、私がどんなことを考えているか?とかも全部聞いてくれていて。それで「だったらこうしなさい」みたいなことは言わないんですよ。ただ聞いてくれてる。メンバーも自分が「もうダメだ」ってなってるときは敢えて触れない。触れてもいいことがないので、グッと堪えてくれていたし、荷物を運んでくれたり、温度を寒くしないように気遣ったりもしてくれてました。

--よくそんな状態でツアーやってましたね。

※しなまゆ/Amie(Live Ver.) 2015/6/25「高度33000フィートで行く!気持ちなツアー!」 FINAL
※しなまゆ/Amie(Live Ver.) 2015/6/25「高度33000フィートで行く!気持ちなツアー!」 FINAL

モリユイ:ツアーが始まる前に病気である事に気付いたんで、ライブが終わったら「なるべく早くユイをお家に帰してあげよう」みたいな感じでした。練習も遅くまでやるんじゃなくて、集まれるときに集まったり、カツカツした状況にならないようにすごく気を遣ってくれていて。でもステージに立てばガァー!って歌うので、お客さんにはそういう状態であることは伝わってなかったと思います。声が疲れやすかったりしたので、喉の調子について「どうしたんだろう?」と思ったりすることはあったかもしれないですけど、それ以外のところでは見せてなかったと思う。

--その病はストレスを感じさせないようにすれば治っていくものなんですか?

モリユイ:薬を飲めば治ります。私のケースはホルモンが出すぎちゃって、それのせいで自分のことを攻撃しちゃう。出ていいホルモンの上限って4ぐらいなんですけど、私は100いくつあったんですよ。「そりゃ具合も悪くなるわ!」と思って。だからそれを抑える薬を処方してもらっていて、薬を飲んでいれば全然大丈夫。

--人知れず存続の危機を迎えていたんですね。再びしなまゆにインタビューが出来てよかったです。

モリユイ:本当に!

--気付けば、しなまゆもメジャーデビューして1年半ぐらい経ちます。バンドとして、想像していた通りの未来を歩めていると思いますか?

※しなまゆ『ストロベリーフィールズ』LIVE Ver.
※しなまゆ『ストロベリーフィールズ』LIVE Ver.

モリユイ:正直、想像とは違いましたね。私、メジャーデビューしたら勝手に売れると思ってたんですよ(笑)。もっと華々しい感じを想像していました。しかも自分たちの力じゃないところでの華々しさを勝手に想像していたんですけど、実際には自分たちの考えがあって、発信があって、そこに成果がないと辿り着けないんだなって。本当に今更なんですけど! アルバム出してすぐは無敵感があったんですよ。「凄いアルバムが出来た!」って。でもそれのセールスがあんまり伸びてない現実を知って、私たちはまだあんまり知られてないんだと思ったときに「あれ? そんなに甘くないぞ」ってことに気付いて。

--しなまゆは有名になりたいバンドなの?

モリユイ:もちろん。大きい舞台にも立ちたいし、そこで走りながら歌いたいし(笑)。でもそこまで辿り着く為には武器が足りないとも思ってます。というか、持っている武器を活かしきれてない。しなまゆってすごく良い人たちなんですよ。全員、毒があんまりなくて。でも同時に野望もないんですよ! 憧れはもちろんあるんですけど、何かを踏みにじってまでそこに行こうとする感じはない。ピュアゆえに貪欲さがない!

--良くも悪くもドロドロしてない?

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モリユイ:ドロドロしてなさ過ぎて! もちろん、それを「キライだ」って言う人は少ないんですけど、だからこそ特別目に止まることも少ない。「音楽で面白い事をしよう」っていう気持ちは3人ともあって、発想もクリアーな分イヤらしくないし、すごく素直だし、そういうところはすごく良いなって思うんですけど、それをまだ上手く出し切れてないのかなって。なんか、ヘタなんですよね(笑)。でも私が元気になったのもあって、今は「てっぺん獲りたい!」とか「なんでも出来るようになりたい!」とか、そういうモードのほうが良いと思ってて、今まで何にも弾けなかった楽器を片っ端から触ろうとしてるんですよ。それもひとつの武器というか、手段になると思っているので。メロディーや歌詞の可能性ももっと広げられたらなと思うので、その為にも楽器が必要だなって……これもまた本当に今更なんですけど!

--でも変革しようとしているんですね。

モリユイ:ピュアと言えばキレイなんですけど、まだまだ甘いんですよね。甘さゆえに「楽しいからOK!」みたいなところがあるんですよ。そこを超えたいなと思ってて。

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男から女へ!?「「歳取ったらおじさんになれる」とマジで思ってた」

--でも、ゆるフワなポップ感が好きって言う人もいる訳ですよね?

しなまゆ『ヘンシン』モリユイ単独インタビュー

モリユイ:私もゆるフワな感じは好きなんですよ。tvk(テレビ神奈川)でやらせて頂いているおさんぽ番組『しなまゆの南武線ドミネーション』なんて完全なゆるフワなんで。みんな、頭の中がゆるフワなんですけど(笑)、でも私はそのしなまゆを知ってもらった上で、音楽に対する姿勢も知ってもらいたい。というのは、私は曲が良いなと思っても「この人の人間性がどうしてもダメだ」って思っちゃうとダメなんですよ。「曲が良ければ良いじゃん」っていう理論も全然分かるんですけど、分かった上でどうしてもダメなんです。でも人柄が凄い好きなアーティストの曲ってどんな曲でも好きなんですよ。だからしなまゆも3人の人柄を好きになってもらいたいし、でも真剣に音楽をやってるんだよ!っていうところも見せていきたい。だからバチバチやりたいなって思うんですよね。

--具体的な例を出すと、どんなバンドが理想なんですか?

※ふくろうず『ハートビート』
※ふくろうず『ハートビート』

モリユイ:私、ふくろうずが大好きなんですよ。ボーカルの内田万里ちゃんは「私、歌いたくないんです」って言っちゃうようなコンプレックスの塊だと思うんですけど、でもメロディーも歌詞も面白いし、何がともあれ好きなんですよ。どんな曲を出してもその人の言葉のように聴こえて好きだし、「この人たち3人の雰囲気が好きなんだな」って気付いてからはもうあらゆるバンドの中で一番好きなんです。「こんなに不器用な人たちがこんなにポップな曲作ってるんだ?」って思うとワクワクしてしょうがない。

--そんな理想のバンドに近づく為にこれからどうしようと思ってるんですか?

モリユイ:ライブで楽器が弾きたくて。ギターも弾きたいし、最近はマイクロコルグで「フワァー! ヒューン!」みたいな感じで遊んでるんですよ。例えば「曲と曲のあいだにMCしながらインスト入れ込んだりしたら面白いかな?」とか考えながら。そんなこと今まで考えたことなかったけど、超面白そうだなと思って。楽器を手にして初めて感じることがたくさんある。

しなまゆ『ヘンシン』モリユイ単独インタビュー

--では、近い将来、今までと違ったライブアプローチが見れるかもしれない?

モリユイ:ヘンシンな感じで!

--今回のミニアルバム『ヘンシン』には、そういう現状打破的な想いも込められているんですか?

モリユイ:そうですね。チームしなまゆでアルバムのテーマを考えたときに、みんなの頭の中から出てきた言葉が「変わりたい」とか「羽化したい」とか「脱皮」だったんです。そういう変わっていきたい想いがみんなの中にあったので、それで『ヘンシン』にしました。ただ、今は『ヘンシン』を作っていたとき以上にヘンシンしようとしている感じがあるんです。『ヘンシン』で「やっと一歩踏み出せる!」ってなったので、今はヘンシンしていこうとする勢いがさらに凄い。

--今作『ヘンシン』では、リード曲「恋をしている目をしている」のMVでモリユイがガーリーな感じになってたり、変身願望が分かりやすく現れてますよね。

※しなまゆ/恋をしている目をしている(Short Ver.) 2016年3月9日発売miniALBUM『ヘンシン』
※しなまゆ/恋をしている目をしている(Short Ver.) 2016年3月9日発売miniALBUM『ヘンシン』

モリユイ:私、ハダけてますからね(笑)。あのミュージックビデオは結構ドキドキしたし、緊張したんです。普段だったら絶対にしないアプローチというか、私をよく知っている人からしたら面白映像じゃないですか?

一同:(笑)

モリユイ:「誰やねん!」ってなるし、それこそ1,2年前の私だったら「本当にイヤだ」って言ってたと思うんですけど、そこもちょっと変わったんだと思います。「可愛いものを作ってくれる」って安心できる人たちと作っていたんで、衣装フィッティングのときは「面積、もうちょっと何とかなりませんかね? これ、大丈夫ですかね?」ってビビったりもしてたんですけど(笑)、最終的には「この人たちに任せておけば大丈夫」って思えた。だからあのMVは観てほしいんですよね。特に女の子に観てほしい。

--あのMVが観られれば観られるほど、ライブでのべらんめえ感とのギャップが生まれていいですよね。

モリユイ:ハハハ!「思っていた人と違う!」みたいな(笑)。

--今作『ヘンシン』の資料には「新生しなまゆ始動」と書いてあったんですけど、その意識は自分の中にもあったりするの?

モリユイ:あります。特に歌詞はすっごく変わったところだなって思いますね。私、女の子が超イヤだったんですよ!

しなまゆ『ヘンシン』モリユイ単独インタビュー

--どういうこと(笑)?

モリユイ:女の子として見られたくないって思ってたんです。小4ぐらいまではボクっ子だったんですよ。自分のこと「ボク」って言ってて。

--それはブリッコ的な使い方じゃなくて?

モリユイ:じゃなくて、本当に「ボクはボクだから」っていう理由で「ボク」。「わたし」とか言えない。髪型もずっとショートカットで男の子みたいだったんです。だから結構最近まで「歳取ったらおじさんになれる」とマジで思ってたんですよ! 奥田民生みたいになるんだろうなって。

--完全に自分を男だと思ってたんですね(笑)。

※杉恵ゆりか / 「skirt」MV
※杉恵ゆりか / 「skirt」MV

モリユイ:潜在的に「キレイな女性になる」じゃなくて「格好良いおじさんになる」と思ってたんですよ。でもある日突然「ちょっと待って。私、おばさんになるの?」って気付いて、別に冗談でも何でもなく本気でショックだったんです。それで「どうしたもんかな」って悩んでるときに女の子の本音みたいなものをさらけ出してくるアーティスト、杉恵ゆりかさんに出逢って。

--渋谷eggmanで対バンしてましたよね?

モリユイ:そうなんですよ! 彼女のライブを観て「女の子を出すことってイヤじゃない」って初めて思えて、それから「女の子、最高かも?」って思えるようになって。

--去年の話じゃないですか(笑)。

モリユイ:去年までおじさんになりたいと思ってた。ライブ中もなるべく女の子として見られたくないと思っていたから男っぽく振る舞ってたし、「女の子として見られたら最悪だ、終わりだ」って本気で思ってました。だから前アルバム『まえならえ』までは、ラブソングとか作ってもファンタジーだったんですよね。そういう照れ隠しがあったんですけど、今回の『ヘンシン』は「女の子っぽいものをちゃんと出そう」っていう意識があったんで、曲のテーマが女の子になってるんです。いろんな女の子を書いてみようって。だから性別が変わったぐらいのヘンシンが今作にはある。

しなまゆ『ヘンシン』モリユイ単独インタビュー

--男から女にヘンシン。

モリユイ:ハハハハ!

--女性になって第一弾のアルバム『ヘンシン』?

モリユイ:そうです(笑)。

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いしわたり淳治/渡邊忍との出逢い~『ヘンシン』後のしなまゆ

--そんな今作『ヘンシン』の重要なファクターとなっている、日本の音楽シーンを牽引する2人のミュージシャンについても触れさせてください。モリユイが大好きなチャットモンチーも手掛けたいしわたり淳治、同じく大好きな木村カエラの楽曲を手掛ける渡邊忍。何故にこの2人がプロデュースしてくれることになったんでしょう?

※チャットモンチー 『「シャングリラ」Music Video』
※チャットモンチー 『「シャングリラ」Music Video』

モリユイ:まずいしわたり淳治さんは、私が歌詞を書く上でもう一歩踏み出したいし、もっと赤裸々に書けるようになりたいし、それがちゃんと伝わるようにしたいと思っていて、そしたら「彼に任したら凄いことになるだろう」といしわたり淳治さんの名前が挙がったんです。それでお願いさせて頂いて。あと、渡邊忍さんはずっと前から「誰かプロデュースしてもらいたい人いる?」って聞かれる度に名前を挙げてて、高校時代からカエラちゃんが大好きだったから、カエラちゃんに憧れて眉毛剃ってたぐらい憧れていたから(笑)「私も忍さんと音楽が出来たらいいなぁー」ってずっと思ってたんですよ。それでしなまゆのライブを観に来てくれて「やりましょう」と言って下さったんです。

--実際ご一緒してみていかがでした? まずいしわたり淳治さん。

モリユイ:いしわたりさんはもう「先生!」みたいな。「どうしてこうなるの?」「ここはどういう意味なの?」「まずサビの頭から書かなきゃダメでしょ? みんなが聴くのってそこだよね?」って何度も言われて。私はそういうことを考えず感覚で書いちゃうタイプなので「全然ダメ」ってコテンパンにされました(笑)。その「ダメ」に全部理由があるんですよ! だからこっちは「すみませんでした」しか言えない。「これさ、3日間あった訳だけど、3日間ちゃんと悩んだ? 違うよね、昨日書いたでしょ? 僕、分かるから」みたいな。

しなまゆ『ヘンシン』モリユイ単独インタビュー

--実際どうだったの?

モリユイ:そうだった(笑)。ちょっと和ませようと思って話しかけても、本当に無駄がない方なんで、付け入る隙なし! 良い歌詞書く他なし!

--徹底してて格好良いですね。

モリユイ:格好良かったです! すごく勉強になりました。

--そんな先生と作り上げた「恋をしている目をしている」の仕上がりにはどんな印象を?

モリユイ:凄い。やっぱりいしわたりさんなしには書けなかったと思います。歌詞の中に無駄がない。本当に必要なことしか書かれてなくて、どんな子がどんなことをどんな風に思ってるのかちゃんと頭に浮かぶ。だからって説明臭くはなくて……凄いなぁ。

--また一緒に仕事してみたいですか?

モリユイ:覚悟を決めてから。

--完全にビビってるじゃないですか(笑)。

しなまゆ『ヘンシン』モリユイ単独インタビュー

モリユイ:大人になってからあそこまで詰められたことがなかったんで(笑)。夢にも出てくるんですよ! だから他の曲の歌詞を書くときも「これ、いしわたり先生が見たらなんて言うかな?」って考えますもん。今までこんなに強力な戒めを身に纏ったことがない!

一同:(笑)

--では、渡邊忍さんとはご一緒してみていかがでした?

モリユイ:会ったときから「どんな曲にする?」「格好良い曲が良いです」「じゃあ、アレしてアレしちゃう?」みたいな。全部こんな感じなんですよ!「歌詞は……ユイちゃんの最近の愚痴を箇条書きして送ってもらえる?」それで送らせて頂いて出来たのが「not yet」で。レコーディングしているときもずーっと面白いんです。子供と言ったらアレなんですけど…………とても大人の男性とは思えない(笑)。すごく自由だし、大きな子供みたいな。あと、忍さんはウチのタクマ(g)くんが尊敬してるギタリストなんですよ。だからすごく喜んでましたね。

--「not yet」を聴くと「あれ? しなまゆってこんなに技巧派バンドだったっけ?」って思うぐらいの衝撃がありますよね。カエラちゃんの曲で言えば「Yellow」みたいな。

※木村カエラ「Yellow」
※木村カエラ「Yellow」

モリユイ:そうですよね!「You bet!!」とか。カエラちゃんのバンドもやってる柏倉さんやテリーさんもチームとして一緒に作ってくれたんで。凄い曲が出来上がりましたね。

--そんな2大プロデューサーとの共作にも劣らぬ存在感を放っている「Bambi」についても触れたいんですが……

モリユイ:おぉー!「Bambi」は今回のアルバムで唯一「私がどうしても作りたい」と言って作った曲なんですよ。そういう思い入れがバレてるんでしょうね。この曲を作ったのは、やっと女の子を意識し始めた時期だったんですけど、私と同世代の女の子ってみんな綺麗になっていく年頃で。高校も卒業して化粧もちゃんと覚えて、ヘアスタイルもしっかり決めて、大人の女になっていく。そんな流れを見ながら「今って“可愛い”が飽和してるな」って思ったんですよね。SNSに自撮り写真アップしたり、自分をプロデュースできる女の子がどんどん増えてきて、本当に飽和してる。豊かと言えば豊かなんですけど、「私はもっとチヤホヤされておかしくないのに」っていうフラストレーションの表れだと思って。そのフラストレーションを吹き飛ばせるようなジャカジャカした曲が作りたかったんですよね。

--なるほど。

モリユイ:それでタクマくんに「ギターが弾けない女の子が弾きそうなロックンロール作ってくんない?」って言って。「こんなかな?」「いや、これはギター弾けるわー!」「もう分かんない!」みたいな。ギター弾ける人に頼んでるから当然なんですけど(笑)。それが1年ぐらい前の話。で、今回『ヘンシン』に入ることが決まったときに「私を救ってあげる曲にしたいな」ってなんとなく思って。落ち込んでいた時期の私に対して、あとは当時の私みたいな人たちに対して「許してあげたいな」と思って歌詞を書きました。

しなまゆ『ヘンシン』モリユイ単独インタビュー

--病気から回復したり、男性から女性になったり(笑)、先生に育てられたり、まさしくこのタイミングで『ヘンシン』を遂げたしなまゆ。今作のリリース以降はどんなストーリーを歩んでいきたいと思いますか?

モリユイ:もうすでに『ヘンシン』後のしなまゆの作品が出したくなってます。あと、最近「人前に出ることが好きだな」って気付けたので、どんどん前に出たいですね。今、すごく楽しいんですよ。『ヘンシン』がリリースされるという安心もあると思うんですけど、結構楽しんでますね。「ここからだね!」みたいな。だから皆さんにも「ここから」を追いかけてもらいたいです。

Interviewer&Photo:平賀哲雄

モリユイ単独インタビュー写真

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しなまゆ「ヘンシン」

ヘンシン

2016/03/09 RELEASE
FLCF-4496 ¥ 1,834(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.恋をしている目をしている
  2. 02.not yet
  3. 03.サタデーフライト
  4. 04.ダンス社会人
  5. 05.Bambi
  6. 06.傘

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