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天童よしみ CHART insight インタビュー
子供の頃から、地元ののど自慢大会に出場するたびに話題を集め、1971年にフジテレビ系列のアニメ「いなかっぺ大将」の挿入歌を担当。そして、1972年に「風が吹く」でデビュー後、「道頓堀人情」や「珍島物語」などが大ヒットし、NHK紅白歌合戦での圧巻のパフォーマンスや、のど飴のCMなど、世代を超えて愛される天童よしみ。そんな彼女が考える“ヒット”とは?
昔から好きなのは松任谷由実さんです
−−天童よしみさんは、音楽好きなお父様の影響で歌を歌い始められたと伺いました。小さい頃は、どんな音楽を聴いてらっしゃったんですか?
天童よしみ:私が小さい頃は、とにかくアメリカンポップスが流行っていました。「ヴァケイション」とか「ルイジアナ・ママ」とか、「ダイアナ」とか。そういうアメリカのポップスに、日本語歌詞を付けるのが流行った時期で、テレビで観て「かっこいいなあ」って思っていました。歌もかっこよかったですが、特に印象に残っているのは楽器の音色です。サックスとかドラムとか、曲のアレンジに色んな工夫がされていて、今でこそ聴きなれた曲調かもしれませんが、当時はとても新鮮に聴こえて、すごくかっこよかったのを覚えています。
−−では子供の頃、実際歌ってらっしゃったのも洋楽のカバー曲が多かったですか?
天童:そうですね。小さい頃は、よく真似して歌っていましたね。その後、演歌や歌謡曲が流行り始めたら、歌謡曲もかっこよくて。音楽の流行にあわせて、自分が歌う曲も変化していきました。
−−今は、どういう曲を聴いてらっしゃるんですか?
天童:昔から好きなのは松任谷由実さんです。ユーミンの曲は、女性の立場について歌った詩が多くて共感できるんです。いつ聴いても昔の曲に聴こえない新しさがあるし、大好きですね。他は、特に好きなジャンルというのはなくて、自分の気持ちにぴったり合う曲が自分の好きな曲です。EXILEさんとか若い方の曲も、よく聴いています。
−−新しい曲を聴く時というのは、どうやって情報収集されるんですか?テレビやラジオを通じて、知ることが多いのでしょうか?
天童:番組でご一緒したり、仕事の出会いをきっかけに知ることが多いですね。番組だと、目の前で歌を聴くことができるので、それで「かっこいいなあ」って思って、あとで調べてみたりします。EXILEさんは、音楽自体にすごく動きがあるというか、サウンドが活動的でかっこいいなと思って聴いています。逆に仕事で出会った方から「天童さんの歌、いつも聴いています」とおっしゃっていただくこともあります。
−−仕事を通じて、幅広いジャンルのアーティストとの出会いがあるんですね。
天童:そうですね。仕事を通じて出会って、お互いのライブに行ったり。aikoさんも、そんなお友達の一人です。お互いジャンルは全然違いますが、aikoさんとは通じあうものがすごくあります。私の場合は、演歌界の方のほうが、逆に交流が少ないかもしれませんね。リズムやテンポを参考にさせていただいたり、仲良くさせていただいているのは、演歌以外のジャンルの方が多いです。あとは、バンドメンバーから薦められて新しい曲やアーティストを知ることも多いです。
−−天童さんは、小さい頃から地元大阪の数々の大会で優勝され、1970年にフジテレビ系列のアニメ「いなかっぺ大将」の挿入歌をリリース、1972年に天童よしみさんのお名前で「風が吹く」でデビューされました。天童さんが、ご自身のヒットを体感されたのは、どのタイミングでしたか?
天童:オリコンチャートの順位が上がっていく様子を見た時ですね。毎週、事務所にオリコンの雑誌が届くんですが、今まで100位にも入っていなかった曲が、60位、50位、40位…というように、数字が上がってくるんです。数字で自分の頑張りが評価されているようで、とても励みになりましたし、ベスト10に入った時には、「これがヒットなんだな」って思いました。あとは、「道頓堀人情」という曲をリリースした頃というのは、ちょうど世の中にカラオケが広まっていく時代でした。なので、カラオケの普及も後押しして、「道頓堀人情」が人々に歌われ浸透していく様子を見た時に、チャートで順位が上がり、実際皆さんが歌ってくださることによって、ヒット曲であり、皆さんが知っている曲になっていくんだなあと実感しましたね。
−−天童さんは、ご自身の作品の順位をご覧になるんですね。
天童:見ますね。頑張れば頑張るほど、ヒットしていく様子が数字に表れるのは面白いです。
−−音楽チャートは、必要だと思われますか。
天童:思います。データを通じて、今どれくらい浸透しているかを見ることができるというのは、歌手にとっても重要なことですし、必要なバロメーターの1つだと思います。だからこそ、信頼できるデータというのが必要になりますし、歌手たちもチャートの結果を励みに「明日も、頑張ろう」と、思えると思います。なので、今でもチャートは見ています。
番組情報
BS-TBS『今夜、熱唱!天童よしみスペシャルライブ2016~魂の歌声、ひばり・歌謡曲・ジャズ・フォークまで~』
日時:3月11日(金)19:00~20:54
リリース情報
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みんなが知っている曲がヒットなんだと思います
−−私達は、日米ともに、時代にあわせた音楽の複数の聴き方を合算して、複合チャート「Billboard HOT 100」を作っています。どのデータを使用するかは、日本とアメリカで異なりますが、いま日本では、パッケージの売上げ、ダウンロード、ストリーミング、ラジオ、Twitter、ルックアップ、YouTubeなどの動画再生数を合算してチャートを作っています。天童さんは、このような音楽の聴き方が変化してきていることや、YouTubeなどの無料のサービスについて抵抗はありますか?
天童:YouTubeに特に抵抗や、否定的な気持ちはありません。私が子供の頃は好きなアーティストのレコードは欲しいし、ジャケット写真を手元に置いておきたいと思っていました。友達から借りたり、ダビングしたりすれば聴けるのかもしれないけど、すきなアーティストのジャケットに書かれている文字を見るだけでも嬉しかったし、実物が欲しかった。なので、お小遣いを一生懸命貯めて学校が終わってから友達とレコード屋さんに走って行った時代でした。
今は、簡単にYouTubeで聴ける便利な世の中になりましたが、YouTubeは音楽を聴くための過程であって、ゴールではないと思っています。そういう意味では、YouTubeはとても必要な存在だと思いますね。
−−天童さんご自身も、YouTubeはご覧になりますか?
天童:一日中、見ていられるくらい、しょっちゅう見てますよ(笑)。自分の曲がアップされている動画も、見ています。動物が私の歌を見て反応している動画とかも、あるんです。
−−そんな動画があるんですか!
天童:私がテレビで「珍島物語」を歌っている様子を見ている犬が、「海が割れるのよ~」という歌詞の後に「ワワワワーン」って吠える動画を見たことがあります。
−−すごいですね。
天童:面白いですよね。猫が一緒に鳴いてる動画も見つけたことがあります。他には、2歳の子供が一緒に踊ってくれている動画や、私が歌っている映像にあわせて、どなたかが歌ってらっしゃる声をかぶせた動画とか。新曲を発売して2~3日後に、そんな動画がアップされていたりして、いつも「すごいなあ」って思って見ています。
−−勝手にリスナーがアップしたり、真似をしたりしているのを見て、嫌な気分にはなりませんか?
天童:全然、なりませんよ。むしろ歌ってもらえることが嬉しいですし、心地良いです。アップされた動画を見て、「このフレーズ、難しいのに上手に歌えているなあ」って感心することもあります。なので、そういう動画を見て、「次はコンサートに行ってみたいな」って思って下さる方が増えると嬉しいですね。YouTubeで観るのと、コンサートで聴くのは全く別の音楽体験ですから、YouTubeをどんどん見て音楽を好きになって、リアルな体験をしにコンサートへ足を運んでいただければ良いなと思います。
−−そうですね。YouTubeで手軽に音楽を聴けるおかげで、より幅広い年代にも音楽を届けることができるようになりました。先日、行われたビルボードライブでのライブ収録にも、若い方の姿を見かけました。
天童:そうですね。実際、お客様から「YouTubeで歌を聴いて、ライブに行きたいと思いました」という声を聞いたこともありますし、最近特に、ライブへ来るきっかけがYouTubeという方は多いように思います。
−−昔はCDが一番売れた作品がヒット曲でしたが、今は音楽の聴き方が多様化してきて、1つの指標ではヒットを表しづらくなりました。CDのセールス数は多くなくても、ライブの動員がとても多いアーティストや、YouTubeの再生回数がとても多い曲など、アーティストや楽曲によって、反応するメディアが全然違います。天童さんは、ヒットとは何を指すと思われますか?
天童:音楽との接し方が増えているからこそ、子供からお年寄りまで、みんなが知っている曲が“ヒット”なんだと思います。幼稚園の子供と、高校生、社会人だと、まわりの環境って全然違いますよね。幼稚園の子供は、テレビで音楽を聴いているかもしれないし、高校生だと携帯で聴いているかもしれない、車を運転する人はラジオで聴くことが多いと思います。例えば、私は船の中で聴く曲を作ってくださいと頼まれることがあります。船の中って、ラジオもテレビも電波が届かなくて聞けないんだそうです。なので、みなさんCDで音楽を聴くのを楽しみにしてらっしゃるそうです。そういう人たちも、みんな含めて知っている曲というのが“ヒット”なんだと思いますね。
番組情報
BS-TBS『今夜、熱唱!天童よしみスペシャルライブ2016~魂の歌声、ひばり・歌謡曲・ジャズ・フォークまで~』
日時:3月11日(金)19:00~20:54
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歌を通じて世の中の皆さんを応援したい
−−先日、ビルボードライブ東京でライブ収録を行っていただきました。ジャズや、J-POPなど、幅広いジャンルの曲を歌われましたが、今回の曲目は天童さんがセレクトされたんですか?
天童:全て番組のプロデューサーに決めていただきました。もともと、60曲近く候補曲がありましたが、そこからセレクトして、残ったのが当日歌った曲です。どの曲を残すかはリハーサル当日まで試行錯誤しましたが、結果的に収録を終えてプロデューサーにも大きく頷いていただけたので、ほっとしています。
−−今回、初挑戦されたのはどの曲ですか?
天童:ほとんどが初挑戦です。
−−そうなんですか! では、一番難しかったのはどの曲ですか?
天童:難しかったのは、逆に美空ひばりさんの曲です。それまで全然違う雰囲気の曲を歌っていたのに、ひばりさんの曲を歌うということは、そこでいつもの天童よしみに戻るということなので。それに、他の曲のイメージやビルボードライブの会場と、ひばりさんの曲が合うのか当日までとても不安でしたが、結果的にはぴったりはまって良かったと思っています。
−−涙ぐんでらっしゃるお客様も、いらっしゃいましたね。
天童:そうですね。「川の流れのように」を歌っている時に、最前列のお客様が涙ぐんでいる姿が私からも見えました。皆さんの心に届いたようで嬉しかったです。
−−ライブ中のトークで、「デビューから45周年ですが、そういう区切りの年に限らず常に新しいことに挑戦していきたいと思っている」とおっしゃっていました。具体的に、挑戦してみたいことはありますか?
天童:昨日、終わったばかりですが、またビルボードライブでも歌わせていただきたいです。歌い終わった時、「超さびしい!」って思いましたから(笑)。他にも、どんどん新しいことに挑戦していきたいと思っています。
−−ビルボードライブは、日頃 天童さんがコンサートをされている会場より小さいですし、お客様との距離が非常に近いです。歌いづらくなかったですか?
天童:全然ありません。2階席や3階席の皆さんの顔がよく見えましたし、他の会場ではなかなか味わえない一体感がありました。アットホームな感じで、とても暖かい雰囲気のコンサートができたと思っています。テレビでご覧になる方も、私の表情がいつもと違うことに気付いてくださるんじゃないでしょうか。
−−昨年に引き続き、オペラ歌手の森麻季さんとのコラボシーンもありましたね。森さんとの出会いは何だったんですか?
天童:森さんとは、別の番組での共演をきっかけに知り合いました。森さんはオペラ歌手ですし、私より何オクターブも高い声で歌われるので、声が合うか不安でしたが、一緒に歌ってピタっと合った瞬間は、とても気持ちが良かったです。
−−番組をご覧になる方に向けてメッセージをお願いします。
天童:ビルボードライブ東京の公演当日にお越しになれなかった方も、ご自宅がビルボードライブになったような雰囲気で観ていただきたいです。お酒を飲まれる方は、グラスを片手に一緒に楽しんでいただきたいですね。
−−最後に。天童さんは45年間歌を歌い続けてこられましたが、歌を通じて何を伝えたいと思ってらっしゃいますか。
天童:まず、常に心がけているのは自分自身が健康であることです。その上で、歌を通じて皆さんに元気を伝えるために、私は歌を歌い続けています。皆さん、日頃からお仕事のことや家族のこと色んな苦労をされていると思います。ファンの方からのお手紙でも、行き詰っていることや悩み事などが書かれていることもあります。そういう時に支えになってくれるものって、色々あると思いますが、私は歌を聴いて歌と自分の気持ちが、ばしっと合った時にすごく励みになるんです。ドレミファソラシドの音階の中に、自分の胸にぐっとくるフレーズと出会える瞬間があるんです。それが音楽の素晴らしさだと思いますし、それが私の歌であれば歌手冥利に尽きます。なので、世の中の皆さんを応援したいという一心で、日々歌わせていただいています。
番組情報
BS-TBS『今夜、熱唱!天童よしみスペシャルライブ2016~魂の歌声、ひばり・歌謡曲・ジャズ・フォークまで~』
日時:3月11日(金)19:00~20:54
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女のあかり C/W 檜
2016/03/16 RELEASE
TECA-15664 ¥ 1,528(税込)
Disc01
- 01.女のあかり
- 02.檜
- 03.女のあかり (オリジナル・カラオケ)
- 04.女のあかり (メロ入りカラオケ)
- 05.檜 (オリジナル・カラオケ)
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