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リマール 来日記念特集&リマールが選んだ80年代プレイリスト、ビデオ・メッセージも公開!
また、次ページではリマールに選んでもらった80年代のベストソングのプレイリスト&本人のビデオ・メッセージも公開!
カジャグーグー(Kajagoogoo)。赤ちゃんの泣き声「ガガグーグー(GagaGooGoo)」を文字ってつけられたというそのバンド名は、私たち日本人にとっても妙に耳に残る響きである。もともとソロ・アーティスト兼俳優として活動していたクリストファー・ハミルが、ボーカリストを探していたバンドに加わる形で結成された、カジャグーグー。ちなみにリマール(Limahl)という名は、本名のハミル(Hamill)のアナグラムが由来となっている。地道な楽曲制作とライブ活動をおこなっていたカジャグーグーに、デビューのきっかけを与えてくれたのが、“ニュー・ウェイヴ”旋風巻き起こる80年代初頭の英国にて“ニュー・ロマンティック”の旗手として英国POPシーンの主役となりかけていたバンド、デュラン・デュランである。デュラン・デュランのキーボーディスト、ニック・ローズと彼らを手がけたことで注目を集めていたコリン・サーストンによるプロデュースのもと、カジャグーグーはEMIからメジャーデビューを果たすことになった。
1982年にデビュー曲「君はトゥー・シャイ(Too Shy)」は、当時の英国チャートを席巻していたデュラン・デュランの弟分的バンドという注目度の高さと、全盛期を迎えていた“シンセ・ポップ”的サウンド、そしてリマールのアイドル的なルックスも後押しし、デビュー曲ながら2週にわたり全英No.1を記録。同じく1位を記録したドイツのほかオーストリア、オランダ、スイス、スウェーデンなど欧州の多くの国でTOP5入りする大ヒットを記録した。また“第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン”と称されるアメリカでの英国POPバンド人気の波に乗り、全米ビルボードにおいても無名の新人バンドながら5位を記録している。当時、全米でのヒットのプロセスにおいて重要な役割を担っていたのが、1981年に開局したばかりの音楽専門チャンネル『MTV』でのオンエア、つまりミュージック・ビデオである。シンセサイザーを多用した軽快でポップな音楽性はもとより、中世的でミステリアスなルックスの英国POPバンド勢は、ディスコ・ブームや自国のロック・バンドに辟易していた若者たちの目にどれほど斬新に、そしてスタイリッシュに映ったのだろうか。
その手がかりとして、カジャグーグーの「君はトゥー・シャイ」が50位にチャートインを果たした1983年の全米ビルボード年間チャートから“第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン”の代表格とされるアーティストのミュージック・ビデオをいくつかピックアップして紹介したい。
ユーリズミックス
年間10位
まさにこのムーブメントの象徴といっても過言ではない、アニー・レノックスとデイヴ・スチュワートの元恋人同士によるユニット、ユーリズミックス。レノックスの男性的なルックスとクールな歌声、エレクトリックなサウンドが人気を博し、同曲は全米デビュー曲ながらNo.1の大ヒットを記録。同名アルバムも大ヒットし一気にスターダムにのしあがった。
カルチャー・クラブ
年間11位
アメリカのみならず、世界中に強烈なインパクトを与えた元祖“オネエ系”ボーカリスト、ボーイ・ジョージ率いるカルチャー・クラブ。同曲のリリースは1982年、アメリカでは最高位2位、全英1位を記録し大ブレイク。1983年にはあの「カーマは気まぐれ」が全米No.1を獲得、全世界で大ヒットを記録し第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン・ブームを牽引する存在となった。
デュラン・デュラン
年間17位
結成当初から世界を視野に入れ各地で積極的にライブ活動をおこなっていたデュラン・デュラン。同曲のセクシャルな内容とともにスリランカで撮影されたというミュージックビデオが、MTVのヘビーローテーションを通じて当時大きな話題に。77位の初登場からおよそ3か月の期間を経て、全米3位にまでのぼりつめ全米での人気を決定づけた。
ヒューマン・リーグ
年間33位
シンセサイザーとシーケンサーを駆使したエレクトロ・ポップ・ユニット、ヒューマン・リーグ。1982年に「愛の残り火(Don’t You Want Me)」が全米No.1となり、第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンの先駆け的存在に。同曲は最高位8位ながら、20週にわたりTOP100入りを果たすロングヒットを記録した。
そして最後にデヴィッド・ボウイの「レッツ・ダンス」にも触れておきたい。当時の流行に沿ったダンサブルなサウンドや印象的なMVはもちろん、第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンの面々がボウイへのリスペクトを公言するなどのバックアップもあり、新たなファンを獲得し全米No.1の大ヒットを記録。70年代にはグラム・ロック界の妖艶なカリスマだったボウイが、同曲のヒットによりポップスターへと華麗に変身を遂げた。
ちなみに、1983年の年間1位はポリスの「見つめていたい(Every Breath You Take)」。言わずもがな彼らも英国出身、“第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン”勢より一足先に世界的成功を収めたバンドである。一方で1983年はマイケル・ジャクソンが前年12月にリリースした『スリラー』が歴史的ヒットを記録し、「ビリー・ジーン」が2位「ビート・イット」が5位、9位に「マニアック」と年間TOP10に3曲を送り込んだ年でもある。
ヒット曲とその顔ぶれから当時のシーンの空気を感じられたところで、カジャグーグーの話に戻ろう。先に挙げたバンドと並び、カジャーグーグーも“第二次ブリティッシュ・インヴェイジョン”の旗手となったわけだが、その一方でリマールとバンド・メンバーとの間には亀裂が生じていた。「君はトゥー・シャイ」の大ヒットを受け、1stアルバム『ホワイト・フェザーズ』を発表するも、デビューからわずか1年あまりでリマールはバンドを脱退。1983年12月に「オンリー・フォー・ラブ」でソロ・デビューを果たした。そして、デビュー翌月の1984年1月、ソロ・シンガーとして再出発を果たしたリマールにとって運命的な出会いが訪れる。場所は日本。東京音楽祭に出演したリマールは、そこに審査員として参加していたディスコ・ミュージック界の名プロデューサー、ジョルジオ・モロダーの目に留まったのだ。
映画『フラッシュダンス』(1983年公開)の音楽を手がけてグラミー賞を受賞するなど、映画音楽の世界においても高い評価を受けるモロダーから、映画『ネバーエンディング・ストーリー』(1984年公開)のテーマ曲を歌うオファーを受けたリマールは、自身のサード・シングルとして「ネバーエンディング・ストーリーのテーマ」をリリース。全米ビルボード17位とTOP10入りは逃したものの、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリスなどのヨーロッパ各国やオーストラリア、そして日本でもオリコンチャート5位を記録するなど軒並みTOP10入りとなる世界的大ヒットを記録。同曲はリマールにとってはもちろん、ジョルジオ・モロダーにとってもキャリアにおける代表作のひとつとなった。誰もが一度は耳にしたことがあるであろう「ネバーエンディング・ストーリーのテーマ」だが、実はそのタイトルにちなみ、フェードインで始まりフェードアウトで終わるというポップスとしては珍しい手法がとられている。
「ネバーエンディング・ストーリーのテーマ」の大ヒット後、ファースト・ソロ・アルバム『ドント・サポーズ』、そして1986年には再びジョルジオ・モロダーのプロデュースのもと、セカンド・アルバム『カラー・オール・マイ・デイズ』を発表したリマールだが、その後しばらく表舞台から遠ざかることになった。一方でカジャグーグーもバンド名を「カジャ」と改名し、リマール脱退後の新たな方向性を見いだそうしたが、1985年に解散。メンバーそれぞれソロ・アーティストの道を歩むことになった。それから約20年…一夜限定の復活などを経て、2008年にカジャグーグーはリマールを含むオリジナルメンバーでの再結成を果たし、フェス出演を皮切りにライブをおこない往年のファンを歓喜させた。2011年4月にはカジャグーグーおよび各メンバーのソロ活動のために自身のレーベル[Reddot Music]を立ち上げ、同年にリマールはソロシングルも発表している。
4月に控える来日公演は、リマールのソロ名義となっているが「リマール~BACK TO 80s~」ということで、「ネバーエンディング・ストーリー」などのソロ曲はもちろん、カジャグーグー時代の楽曲も披露してくれるだろう。時代を彩ったポップスターの甘い歌声で、当時の記憶の引き出しを開けてみては?
公演情報
Limahl
~BACK TO 80s~
ビルボードライブ大阪:2016年4月19日(火)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ東京:2016年4月21日(木)~22日(金)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
リマール / Limahl (Vocals)
フィル・テイラー / Phil Taylor (Keyboards)
マイケル・カスウェル / Michael Casswell (Guitar)
フィル・ウィリアムス / Phil Williams (Bass)
ティム・バイ / Tim Bye (Drums)
リン・ウォーカー / Lynne Walker (Saxophone, Flute, BGV)
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Text: 多田 愛子
今月、遂に来日公演を行うリマールに80年代のベストソングを選んでもらいプレイリストを作った。やはり時代を席巻した人らしく、その中身は“ザ・80年代”な選曲。本人解説ともに、甘い記憶を閉じ込めたタイムカプセルのようなこのリストをお届けしたい。
また、ラストではリマールからのビデオ・メッセージも公開!
リマールが選ぶ80年代ベストソング
01. ABC - The Look of Love
後にシールやフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのプロデューサーを務めたトレヴァー・ホーンがプロデュース、アート・オブ・ノイズのアン・ダドリーが弦楽器パートのアレンジを担当している。これだけでも素晴らしいコンビなのに、リードシンガーでソングライターのマーティン・フライが歌う“When your girl has left you out on the pavement and your dreams falls apart at the seams”ってパートがまた格段に良いんだ。dreamsとseamsの韻の踏み方が最高だね。あと、中盤の“If you judge a book by its cover – then you judge the look by the lover – I hope you soon recover – me I go from one extreme to the another”で、韻を4つも踏んでいるところなんかもとても良いよね。この歌詞からバンドが感じていた葛藤や制作時の激論を感じるけれど、他とは違う存在であることがこのバンドが目指していたことだし、この曲でそれを決定づけたよね。
02. Ah-Ha - Take On Me
曲もビデオも最高! それにあの高音も! 男でもあんな声が出せるなんて驚きだよ。おそらくノルウェーに住むヨーデル民族から遺伝子を引き継いだんだろうね。
03. Bananarama - Cruel Summer
おかしな名前のバンドがカジャグーグー以外にもいるってことが証明できた。バナナラマって舌を巻きそうだね。バナナラマに加入したいっていうゲイ友達までいたんだ(もちろん女装してね)。不機嫌そうに見えることが多々あるけど、そこに魅力を感じるよ。
04. Culture Club - Do You Really Want To Hurt Me
この曲はボーカルのボーイ・ジョージが特定のドラマーに向けて歌ったラブソングであることは知っているよね? とてもエモーショナルで、魂のこもった曲だと思う。ゲイでもストレートでも、白人、黒人、アジア人、アルマニア人でもそれは関係ない。愛は愛なんだ。
05. Duran Duran - Hungry Like The Wolf
うーん、この曲を挙げたらひいきしているように思われそうだな。デュラン・デュランのキーボードのニック・ローズは、カジャグーグーが世界的に知られるようになった「君はトゥー・シャイ(Too Shy)」と、デビュー・アルバムのプロデュースをしてもらったからね。このバンドはMTVとVH1(アメリカのケーブル・チャンネル)の波に上手く乗っかったよね。当時のポップ・ミュージックのビデオって、スリランカとか異国情緒ある場所で撮影されてて、少しジェームズ・ボンドみたいな雰囲気なんだよね。それまでの音楽ビデオはどれも同じに見えたけれど、これからは違うってことを決定づけた瞬間だったと思うよ。
06. Eurythmics - Sweet Dreams
これもワン・ワードの不思議な名前のバンドだ。シンセサイザーは素晴らしい曲を生み出すことができることを証明する一曲だと思う。アニーの中性的なルックスのジャケットも印象的だね。80年代初期のニューウェーブ、ニューロマンティック時代を象徴しているよ。好きなようにレッテルを貼ってもいいけど、どちらにせよ、この曲は偉大なポップ・ソングだよ。
07. Frankie Goes to Hollywood - Relax
トレヴァ―・ホーンがプロデュースした作品の中でもベストな曲だね。セクシャルな表現だとして、イギリスのBBCラジオでは禁止されたんだ。この検閲がなにをもらたしたか想像できるかい?すぐに国民の関心を集めて、チャートで1位になったんだ。それは「聴いていいもの、悪いものはお前ら(国)が決めるんじゃない。俺たちが自分自身で決めるんだ!」っていう国民の声を代弁するような出来事だったと思う。
08. The Human League - Don’t You Want Me
シンセサイザーの時代を決定づける楽曲だね。シャーリー・バッシーのアルバムにエンジニアとしてクレジットされてたマーティン・ラッシェントが、プロデューサーとしてクレジットされてたんだ。リード・ボーカルの単調な歌い方はユニークだよね。クラフトワークをバリトン・ボイスにしたような。ちょっと不穏で、ビブラートが全然ないんだ。
09. Men at Work - Down Under
この曲の歌詞が大好きなんだ。最近グーグルで調べて、僕が今までこの曲を間違って歌っていたことに気づいたんだ。もちろん、間違っていたのは僕だけじゃないってことはわかってるんだけど。ほとんどの人が「ベジマイト・サンドイッチ」なんて聞いたこともないってことを、メン・アット・ワークも知らなかったんじゃないかな。
10. Soft Cell - Tainted Love
曲自体は1964年に作られて、60年代と70年代の初めにリリースされた曲なんだ。だから実際はSoft Cellのやつはカバーなんだけど、これがオリジナルみたいな認識になってるよね。この曲は、シンセサイザーが当時のポップスのサウンドを変える決定的な瞬間をもたらしたと思う。もし、40年代がビッグ・バンド・サウンド時代、60年代がギター・サウンド時代と言うなら、80年代はシンセ・サウンド時代と言えるんじゃないかな。リード・ボーカルのマーク・アーモンドは僕の好きなボーカルの一人なんだ。ポテっと尖った唇に、女の子よりも濃いアイラインがとかね。男がこんなメイクするなんて…世界はどうなってしまうんだ!っていうくらいの衝撃だったよ。
リマールからビデオ・メッセージが到着!
公演情報
Limahl
~BACK TO 80s~
ビルボードライブ大阪:2016年4月19日(火)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ東京:2016年4月21日(木)~22日(金)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
リマール / Limahl (Vocals)
フィル・テイラー / Phil Taylor (Keyboards)
マイケル・カスウェル / Michael Casswell (Guitar)
フィル・ウィリアムス / Phil Williams (Bass)
ティム・バイ / Tim Bye (Drums)
リン・ウォーカー / Lynne Walker (Saxophone, Flute, BGV)
東京公演にオープニングDJが決定!
>>詳細はこちら関連リンク
ベスト・オブ・カジャグーグー&リマール
2014/08/20 RELEASE
WPCR-15844 ¥ 1,430(税込)
Disc01
- 01.君は TOO SHY
- 02.ウー・トゥ・ビー・アー
- 03.ハング・オン・ナウ
- 04.ビッグ・アップル
- 05.ライオンズ・マウス
- 06.バック・オン・ミー
- 07.涙の傷あと
- 08.危険な裏街
- 09.オンリー・フォー・ラヴ
- 10.ネバーエンディング・ストーリーのテーマ
- 11.アイ・ワズ・ア・フール
- 12.インサイド・トゥ・アウトサイド
- 13.モノクロマティック
- 14.テイク・アナザー・ヴュー
- 15.ユア・ラヴ
- 16.ショック
- 17.瞳ときめいて
- 18.TOO MUCH トラブル
- 19.ター・ビーチ
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