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特集:ハンバートハンバート~生活に根ざした大切な歌
フォーク、カントリー、ブリティッシュ・トラッドといったアーシーな香りをたたえた男女デュオ。ハンバートハンバートの魅力を端的に表現すると、こんな感じだろうか。しかし、ジャンルに惑わされずその音楽に触れれば、そのなんともいえない温かみに溢れた歌の魅力に取り憑かれるはずだ。けっして派手ではないし、声高らかに何かを主張するわけでもない。でも、生活に根ざした大切な歌がそこにある。
さらに、ハンバート ハンバートの二人から公演へ向けたビデオ・メッセージが到着!
ハンバートハンバートは、1998年に結成された。メンバーの佐藤良成と、佐野遊穂は公私共にパートナーである。佐藤は主にギターとヴォーカルを担当するが、マンドリンやフィドルも演奏する。佐野は、ヴォーカルをメインに、時にはハーモニカも吹く。
2001年にインディーズで初のアルバム『for hundreds of children』を発表。冒頭を飾る名曲「夜明け」は、コンピレーション・アルバム『喫茶ロックnow その2』に収録されて話題を呼んだ。翌2002年には、70年代フォーク時代の職人ミュージシャンである佐久間順平をプロデュースに迎え、ヴィム・ヴェンダース監督映画からタイトルを拝借した2作目『アメリカの友人』をリリース。本作にはボブ・ディランの代表曲「Blowin' In The Wind」のカヴァーを収めており、シングルカットされている。
2003年にはサード・アルバムとなる『焚日』で、ミディよりメジャー・デビュー。まるでURCやベルウッドあたりのフォーク・ソングを思わせる歌詞やサウンドが逆に新鮮な傑作だ。本作には、前作に続いての佐久間順平に加え、ラップスティールの名手と謳われた駒沢裕城がアレンジで参加。他にも、栗コーダー・カルテットの関島岳郎やマチルダ・ロドリゲスがバックアップしている。また、山田耕筰の唱歌「赤とんぼ」を披露しているのも彼ららしい。
2005年には、4作目のアルバム『11のみじかい話』を発表。CCRの名曲「すべての人に歌を」に佐藤が日本語詞をつけた「虹」もユニークだが、前作同様に佐藤の手によるフォークや唱歌のような歌詞とメロディが英国のトラディショナルな雰囲気を持ち合わせており、フレッシュな感覚を抱かせる。また、収録曲のひとつ「おなじ話」は、各地のFM局でパワープレイを多数獲得し、その人気は全国へと広がっていった。2006年には5作目の『道はつづく』、2007年には堤幸彦監督の映画『包帯クラブ』のサウンドトラック、2008年には6作目『まっくらやみのにらめっこ』、2009年には再び映画のサントラ盤『プール』に参加するなど、コンスタントに充実した作品を発表していった。
2010年には、ユニバーサルミュージックに移籍。7作目となる『さすらい記』をリリースする。CMタイアップとなった「アセロラ体操のうた」がボーナストラックで収録されていることもあり、これまでで一番売れたアルバムとなる。また、2011年にはミニ・アルバム『ニッケル・オデオン』を発表。2012年には、COOL WISE MENと共演した企画アルバム『ハンバート・ワイズマン!』でスカやロックステディを取り入れ、新境地を見せた。
2014年には4年ぶりとなる8作目のフル・アルバム『むかしぼくはみじめだった』をスペースシャワーネットワークよりリリース。グラミー受賞アーティストでもあるカントリー/ブルーグラス・シーンの鬼才ティム・オブライエンをプロデューサーに迎え、カントリー・ミュージックの聖地である米国ナッシュビルでレコーディングを敢行。子供番組に書き下ろした「ホンマツテントウ虫」や「ポンヌフのたまご」のセルフ・カヴァーなど、ユニークな楽曲が並んでいるが、決して奇をてらうわけでもなくいたって自然体。この感覚が彼ららしい。
彼らの音楽は、先述した通り、フォークや唱歌、カントリーやアイリッシュ・トラッドなどからの影響が色濃い。とりわけ、日本のフォークには傾倒しており、ミディ時代に発表したシングルには、西岡恭蔵や高田渡のカヴァーが収められていた。また、2005年と2006年に連続してリリースされた高田渡のトリビュート・アルバムにも参加している。流行り廃りに関係なく、いい歌を追求しているからこそ、こういったカヴァーも自然に歌えるのだろう。
さて、こんなマイペースなハンバートハンバートであるが、2016年に入ってからは何かと騒がしい。1月から始まったTVアニメ『この素晴らしい世界に祝福を!』では、佐藤がエンディングテーマの詞曲アレンジを担当。3人の声優が彼のトラッド・テイストの楽曲を歌うという、これまでにない組み合わせが楽しめる。そして5年ぶりの海外公演となった1月の上海公演が終わったと思ったら、3月末にはビルボードライブ東京での単独ライブが決定した。
ハンバートハンバートは、作品はもちろんだが、ライヴの評価も非常に高い。恒例となりつつある日比谷野音から、小さな会場までを包み込む空気感は、一度味わうとやみつきになる。また、曲間でのトークの面白さもファンには人気で、MCだけを集めたCDなんていうものも会場限定で販売しているほどだ。
3月のビルボードライブでは、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか。ぜひ期待していただきたい。
ハンバート ハンバートから公演へ向けたビデオ・メッセージが到着!
公演情報
ハンバート ハンバート
Special Guest 大工哲弘
ビルボードライブ東京:2016年3月31日(木)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
佐野遊穂 / Yuho Sano(Vocal, Harmonica)
佐藤良成 / Ryosei Sato(Vocal, Guitar)
Guest:
大工哲弘 / Tetsuhiro Daiku
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Text: 栗本斉
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