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パティ・オースティン 来日記念特集~未だ衰えないシルキー・ヴォイスとその多才な魅力~

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 メロウでグルーヴィーなサウンドに包まれた、シルキー・ヴォイス。パティ・オースティンの印象といえば、フュージョンからブラコン全盛期に活躍したソウル・シンガーのひとりというものかもしれない。たしかに、70年代後半から80年代にかけて、こういったシンガーが多数現れた。ランディ・クロフォード、パトリース・ラッシェン、アンジェラ・ボフィルなども同じカテゴリに入れられそうだが、パティの存在は別格だ。というのも、時代に寄り添ったR&Bからオーセンティックなジャズ・ナンバーまで起用にこなすだけでなく、そのいずれもが傑作と名高いものばかりだからだ。華やかなヴォーカルだけでなく、コーラスやソングライティングまで多才な面を見せる彼女は、デビューから40年を経た今も第一線を走り続けている。ここでは、まもなく来日公演を行うパティ・オースティンの魅力に迫ってみよう。

 パティ・オースティンは、1950年にニューヨークのハーレムで生まれた。プロのトロンボーン奏者だった父親の影響もあって、幼い頃から歌い始める。彼女のステージ・デビューはなんと4歳の時。しかも、名門アポロ・シアターだったそうだ。そして、5歳でRCAレコードから声がかかるほど、天才少女としてその名を知られていた。なお、洗礼時に代父母を務めたのが、クインシー・ジョーンズとダイナ・ワシントンだったというから、まさにショー・ビジネスで生きるために生まれてきたと言っていいだろう。10代ですでに様々なレコーディング・セッションに参加。とくに、バーガー・キングやマクドナルドといたCMのジングルを多数手がけており、その分野でも有名になった。

CD
▲『エンド・オブ・ア・
レインボー』

 裏方ではあったが着実に実力を積み重ねたパティが、本格的にデビューするのは1976年。ジャズの名プロデューサー、クリード・テイラーが主宰するCTIレーベルから声がかかり、初のアルバム『End Of A Rainbow / エンド・オブ・ア・レインボー』を発表。スティーヴ・ガッド、エリック・ゲイル、ブレッカー・ブラザーズなど、当時のジャズ/クロスオーヴァー・シーンの凄腕たちが脇を固めた本作からは、清冽な印象のミディアム・グルーヴ・チューン「Say You Love Me / 愛してると言って」がヒットする。

 翌1977年には、デイヴ・グルーシンをアレンジャーに迎えた2作目『Havana Candy / ハバナ・キャンディ』をリリース。いずれも、メロウでスタイリッシュなサウンドと、そこに溶け込むパティのクールなヴォーカルが魅力。しかも、一部の楽曲を除いて自身で詞曲も手がけており、ソングライターとしての才能も発揮している。その後も、ライヴ・アルバムの『Live At The Bottom Line / ライブ・アット・ザ・ボトム・ライン』(1979年)、R&B色が増したコンテポラリーな3作目『Body Language / ボディ・ランゲージ』(1980年)と、CTIでアルバムを重ねていった。

Baby Come To Me
▲ 「Baby Come To Me」

 パティのキャリアで大きな転機となったのが、1981年のこと。クインシー・ジョーンズが設立したクウェスト・レコードに移籍し、4作目となるオリジナル・アルバム『Every Home Should Have One / デイライトの香り』を発表。その中に収録されたアダルトなムードに包まれたジェイムス・イングラムとのデュエット曲「Baby, Come To Me / あまねく愛で」が、ビルボード・チャートのHot100で1位を獲得する大ヒットを記録。R&Bシーンでも確固たる地位を築いた。

CD
▲『君はスペシャル・
レイディ』

 1984年には自身の名前をそのままタイトルに冠した5作目『Patti Austin / 君はスペシャル・レイディ』をリリース。ナラダ・マイケル・ウォルデンやデヴィッド・パック(アンブロージア)などをプロデューサーに起用したサウンドも大きく評価される。続いて、トミー・リピューマやジャム&ルイスなど豪華なプロデューサー陣が参加した『Gettin' Away With Murder / 恋人たちのモーメント』(1985年)、ジャズのスタンダード・ナンバーに挑戦した『The Real Me / ザ・リアル・ミー』(1988年)と、話題作を発表し続けた。

 90年代に入ると、今度はデイヴ・グルーシンとラリー・ローゼンのレーベル、GRPに移籍。ビルボードのジャズ・チャートで4位を記録した『Love Is Gonna Getcha / 愛の予感』(1990年)で健在ぶりを見せつけ、『Carry On / キャリー・オン』(1991年)、『That Secret Place / ザット・シークレット・プレイス』(1994年)と力作を発表していく。

CD
▲『サウンド・
アドヴァイス』

 GRPを離れてからも、テレビ番組でもお馴染みの「Kiss」を収録した『Jukebox Dreams / ジュークボックス・ドリームス』(1996年)、カヴァーとオリジナルをミックスした『Street Of Dreams / ストリート・オブ・ドリームス』(1999年)、突如ワーナーから発表された『On The Way To Love / エレガント・パティ』(2001年)、偉大なジャズ・シンガーへのオマージュ作『For Ella / エラ・フィッツジェラルドに捧ぐ』(2002年)、全編ガーシュインの名曲に挑戦して初のグラミーに輝いた『Avant Gershwin / ガーシュウィン・ソングブック』(2007年)、グレッグ・フィリンゲインズとタッグを組んだポップ作『Sound Advice』(2011年)と、コンスタントに傑作を物にしている。

Razzamataz
▲ 「Razzamataz」

 パティの名曲は自身の作品だけではない。そのヴォーカルの実力を買われて客演することも多いのが特徴だ。もっとも有名なのはクインシー・ジョーンズの『The Dude / 愛のコリーダ』(1981年)だろう。「Ai No Corrida / 愛のコリーダ」を始め、「Razzamatazz / ラザマタズ」など5曲でフィーチャーされている他、ソングライターとしても参加しており、彼女のソロ・アルバムと同列に並べてもいい内容だ。

CD
▲『ギヴ・ミー・
ザ・ナイト』

 また、マイケル・ジャクソンの『Off The Wall / オフ・ザ・ウォール』(1979年)では「It's The Falling In Love / それが恋だから」でデュエットしていることも特筆すべきだろう。他にも、ジョージ・ベンソンの『Give Me The Night / ギヴ・ミー・ザ・ナイト』(1980年)や、盟友といってもいいジェイムス・イングラムの傑作『It's Your Night / ユア・ナイト』(1983年)でも重要な役割を担っている。ゲスト・ヴォーカリストやコーラスとして参加した楽曲は数えきれないほど存在し、ジャズ、フュージョン、ロック、ポップス、サントラとジャンルを超越した大きな足跡を残してきた。

 今回の来日公演では、“AOR Set”というタイトルが付けられている。おそらく、70年代から80年代にかけてCTIやクウェストに残した名曲を中心に選曲されるのだろう。多岐に渡って活躍してきたシンガーとはいえ、ファンにとってはやはりこの時期の作品群は特別なもの。未だ衰えないシルキーな歌声で、あの黄金時代へと連れて行ってもらえるはずだ。

パティ・オースティン ジェリー・ヘイ ラリー・ウィリアムス クリフ・マグネス ポーリーニョ・ダ・コスタ ジョン・ヴァン・トングレン キム・ハッチクロフト ゲイリー・グラント「君はスペシャル・レイディ」

君はスペシャル・レイディ

2015/08/26 RELEASE
WPCR-28248 ¥ 1,100(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.君はスペシャル・レイディ
  2. 02.夜にときめいて
  3. 03.別れの時
  4. 04.今夜はホット・ラヴ
  5. 05.チェンジ・ユア・アティテュード
  6. 06.シュート・ザ・ムーン
  7. 07.あなただけ
  8. 08.ファイン・ファイン・フェラ
  9. 09.スターストラック
  10. 10.哀しみのエチュード

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