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globe(小室哲哉)『#globe20th -SPECIAL COVER BEST-』インタビュー



globe(小室哲哉) 『#globe20th -SPECIAL COVER BEST-』 インタビュー

 globeやHYDE/木村カエラ/倖田來未/坂本美雨/TRF/AAAなどカバーアルバム『#globe20th -SPECIAL COVER BEST-』参加者は勿論、日本の音楽シーンを支えるトップアーティストたちの話にも言及。その音楽人生における世界に向けたラストミッションについても語ってくれた。日本……いや、世界の音楽シーンの未来を占うインタビューとなっているので、ぜひご覧頂きたい。

「また自分に寄り添ってくれる音楽を作ってくれよ」っていう気持ち

--globe20周年を迎えた8月9日に新宿ステーションスクエアでイベントを行って以来、今年は様々な場所でglobeの音楽を精力的に発信していますが、どんな感慨を持ってひとつひとつのイベントやプロジェクトに臨んでいますか?

※globe / 「FACE(20th Special Edit Version)」
※globe / 「FACE(20th Special Edit Version)」

小室哲哉:他のアーティストの20周年とは事情が違っていて、精力的にツアーをやったり、ベストアルバム+新曲を作ったり、そういうあたりまえのことが出来ていないんですけど、それでも出来ること。ミッションをひとつひとつ形にしていたらもう年末になっていました。TM NETWORKの30周年プロジェクトのときのようにそこまでglobe漬けという感じではなかったんですけど、それでもglobeを通していろんなことを皆さんに思い出してもらった年であることは間違いない。それぞれの学生の頃のはなし……まさに歌詞(Precious Memories)通りなんですけど(笑)。あとは来年でここ数年続いていた様々な周年が終わるので、そこでもう1回ぐらいは何かしらglobeの足跡を残していくつもりでいます。

--8月9日のイベントでは、客席からは「ありがとう!」「おめでとう!」といった歓声がいつまでも鳴り止まず、デビューから20年経った今もglobeは愛され続けているんだなとしみじみ感じたんですが、小室さんはいかがでした?

globe(小室哲哉)『#globe20th -SPECIAL COVER BEST-』インタビュー

小室哲哉:僕の立ち位置がTM NETWORKとは違っていて、やっぱりglobeの場合は「=KEIKO」だったので、あそこにKEIKOがいないっていうのはちょっと残念……というよりは、かなり残念。あそこでひょっとしたら登場できるんじゃないか? この年には復活するんじゃないか? みたいな期待もしてくれていたと思うので、そこらへんは……間に合わなかったって言い方も変なんですけど、だんだんだんだん治っていくような病気でもないし、いまだに「どうなのかな?」っていうのが正直なところなので。そんな状況でもglobeに注目してもらえるのは嬉しいというか、感謝しています。

--実際、あの日のイベントは現場でもネット上も大盛況でした。

小室哲哉:改めてこのソーシャルの時代で皆さんのレスポンスを直接聞いて、あの時代に一気に数百万枚、延べで考えたとしても1000万人近くの人がいっぺんに聴いてくれていた時期があったというのは、今から考えると凄いことだったなと改めて感じました。今の音楽業界で考えたら、1日とか1週間で何百万人が同じ曲を聴くなんて有り得ない訳ですから。でもそれは実際に起きたことだったんだなとは、このタイミングで改めて実感してます。

--特に1stアルバムを誰もが一斉にCDショップへ買いに行った現象は、当時で言えば『ドラゴンクエスト』のソレに遜色ないものでしたからね。何百万枚のCDが一瞬で売り切れるという。たしかに今は有り得ない。

小室哲哉:音楽でそういう状況っていうのはないですよね。1stアルバムは出荷時点で200万枚を超えていたので。

--globe20周年プロジェクトを走らせたのは正解だったと感じている?

小室哲哉:うん。それで誰が一番良かったなと思っているかと言ったら僕だと思う。実績とか業績とかもあるかもしれないですけど、それに対しての責任も僕にはあるので。globeを聴いてくれた、そこにお金や時間を費やしてくれた人たちの「また自分に寄り添ってくれる音楽を作ってくれよ」っていう気持ちに応えたいというか、そういう前向きな気持ちにさせてもらえたことは大きい。「あのときそうだったね」っていう思い出で終わらせないようにしてくれた。なので、待ちながらも前に進む。そういう刺激をもらえたので、良いことをやらせてもらったなと思ってます。

--また、10月25日には、中国・上海のアカデミーシアターでピアノコンサートを開催。こちらは実現してみていかがでしたか?

小室哲哉:15年ぐらい前、2000年ぐらいまでは海外での活動が多くて、なんとか「アジアのアーティスト」「アジアの音楽」というポジションを作りたかったんですけど、気付けばあっという間にK-POPがアジアを席巻することになって……どんなに緩く考えても、質も実績も両方ともK-POPが席巻して成功しているのは間違いないと思うんです。特に上海という場所はK-POPにとっても一番大事な主要都市、東京と同じような街になっているので、その中で自分ももうちょっときめ細かくアプローチしていきたいなと思っていて。やっと来年ぐらいから本業というか、音楽プロデューサーに戻れるので、それで急いでK-POPに追いついて、同じようなレベルのところには持っていきたい。日本を通り越してアメリカのものを吸収して発展している場所とは言え、日本のことも意識はしている訳なんで。大事なマーケットですから。しかも僕のことも業界の人間はみんな知っていて、ちょっと忘れられていたけど、ちょっと動けば「また小室哲哉もアジアに進出してくんのかな?」って思うとは思うので、すごく長い道のりですけど、なんとなく土壌やインフラみたいなものは出来がってるし、僕もそこに少しは種を蒔いてきていたので、20年後の東京オリンピックまであと4年、このタイミングで動くのはちょうどいいかなって。何かやれる実感があるので。

--ピアノコンサートについての質問がとんでもないビッグプロジェクトの話になって返ってきて驚いてます(笑)。

※globe / Love again
※globe / Love again

小室哲哉:10月に上海に行ったときはピアノコンサートをやって、あとはゆっくり観光するぐらいのイメージだったんですけど、全くそんな感じになれなくて。少なくとも東京よりは確実にネット社会だし、エンターテインメントに飢えてもいるので、そのエネルギッシュさは東京のほうが全然劣っていると感じたので。あと、テレビ番組のロケでベトナムに行ったんですけど、そのときは中1ぐらいの女の子の部屋を覗かせてもらって。そしたら壁中がK-POPのアーティスト。1枚だけテイラー・スウィフトだったんですけど、日本人はゼロなんですよ。「ん~、これはイカンな」と(笑)。「もうちょっと僕が出来ることがあるだろうな」とすごく思って。TM NETWORKの映像作りでジャカルタに行ったときも「こっちは盛り上がってるなぁ~」って感じたんですよ。単一民族じゃないからなのか分かんないんですけど、日本よりジャンルが雑多なんですよね。みんな、いろんなものが好き。日本もそうなんですけど、遠めで見ると「日本は日本っぽい」ってなっちゃう。そういうアジアの諸国は欧米みたいにきっちりジャンルが分かれているところもあるので、それだけ意外と優れてるんじゃないの?って。日本に追いついていると云うよりは、簡単に追い越されちゃうんじゃないの?って。そうやって今年はあらゆるところでアジアの勉強はしてきたなって思います。

--前回のインタビューでは、アジア規模でのどでかい凄いフェスが出来たら……みたいな話も飛び出しましたが、アジア全体の音楽市場にはまだまだ明るい未来があると感じている?

小室哲哉:そうですね。全世界が狙ってるマーケットだなっていうのはすごく感じました。日本みたいにエンターテインメントに対しての法規制が厳しくないので、だからフェスとかも「東京じゃ出来ないけど上海なら出来る」みたいな事例がある。簡単に欧米のものがアジアには行けちゃう。「なんでオランダとかスウェーデンのDJは日本には来ないけど、中国には行くんだろうな?」って思っていたんですよ。一般的な感覚だったら上海より東京に行くじゃないですか。でも向こうは人口も多いし、ニーズもあって、欧米のそのままのフォーマットでやれる。それは実際に行って感じました。

--人口も多くて、自由度が高くて、経済的にも潤っているってなると、エンターテインメントをする身からすると最強のエリアですよね。

小室哲哉:最強のエリアですよ。東京のエンタメ好きの人口を軽く超えられる街が山ほどあるので。

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