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アラン・トゥ-サン インタビュー
ニューオーリンズ音楽を牽引してきた雄
ニューオーリンズの音楽を牽引してきたシンガー/コンポーザー/ピアニスト/プロデューサー、アラン・トゥーサン、御年74歳。70年代にはザ・バンドの「ライフ・イズ・カーニヴァル」、ラベルの「レディ・マーマレイド」などのヒットを生み、セカンド・ラインをベースにしたファンク・サウンドを確立したレジェンドに迫る。
アラン・トゥ-サンの“現在”
--まず近況を教えてください。
アラン・トゥ-サン:ここ数カ月、演劇やバレエの為の音楽を書いているよ。ひとつは、「Magic Tree House」というシリーズ用でもうひとつは、「Bad Water」。バレエには、まだタイトルがないんだ。プロデューサーにジョー・ヘンリーを迎えて、レコーディングを行う予定なので、その準備もしているよ。それが終わったら、ツアー中に書いた曲がたくさんあるので、それらのレコーディングに取り掛かろうと思っているよ。
--長年スタジオをメインとして活動してきましたが、近年では精力的にツアーをしていますね。この変化はどこからきたものですか?
アラン・トゥ-サン:これは実はハリケーン・カトリーナの影響でもあるんだ。心が落ちつくニューオーリンズと自分のスタジオから離れることを余儀なくされて…少しずつ色々なところから演奏しに来てほしいという声がかかるようになって。最初は、とても居心地が悪く、苦手だった。だが時間と共に徐々に克服し、自分が長年スタジオから伝えようとしていたことを受け止めてくれる人々が目の前にいるという事実を楽しめるようになってきた。ライブで受けるレスポンスは、まるで魔法のようだ。ツアーをすることによって音楽は、アーティストと観客が、同じ空間で分かち合うということが一番重要だということに気付いた。音楽業界がやっていることはすべて、それを宣伝するためだけのものだ。
故郷ニューオーリンズへの想い
--故郷のニューオーリンズは、音楽の街として歴史を刻んできましたが、街と音楽の密接な関係性については?
ニューオーリンズには根強い音楽の伝統があり、その"精神"は発展を重ねてきた。今でも、その伝統がこの地域の昔の音楽の魅力と密に関係しているということだね。だから何をしようと過去の偉大な作品たちとの関係が切れず、今の作品にも揺るぎない信頼性を与えてくれているのだと思う。
--ニューオーリンズ音楽の伝統を継承する理由は?
簡潔にいうと、これが私の道だからだね。それはもう私が幼い頃に決めていたことだ。音楽を仕事にするということは、とてもエキサイティングであって価値のあることだと思っている。いつでも新しい曲が生まれる可能性を秘めている。人生の長旅、悲しみ、喜び、憂うつ、スピリチュアルな部分を共にしてくれる。今までこの世界になかったものを、どの瞬間にでも生み出すことが出来る。朝起きる理由であって、私の動力であるといっても過言ではないね。
--では同郷のプロフェッサー・ロングヘアの影響について教えてください。
私が、ピアノを演奏し始め、色々なスタイルを学び始めた時には、メロディ、リズム、歌詞においても一定のスタイルがあった。たとえば、新しい楽曲を練習し始めても、他に似たような曲が数々あって、とても論理的に音楽と向き合うことが出来た。その頃"フェス"に出会ったんだ。彼のプレイを初めて聴いた時の衝撃は今でも忘れないよ!左手ではランバ、右手ではジャンカ・ブルースを奏で、余分な小節を取り入れたり、両手で3連譜を弾いたり。歌詞もぐじゃぐじゃでよく分からない、それでも説明出来ない悟りと強い信念がこもっていた。彼の最後のインヴェンション「ビッグ・チーフ」の中のピアノのスタイルの元を辿っても"フェス"以外の誰にも辿り着かないんだ。
名盤『サザン・ナイツ』
--1975年の名盤『サザン・ナイツ』は、35年以上前にリリースされた作品ですが、レコーディング当時のことを少し教えてください。
アラン・トゥ-サン:このアルバムは、今でも私にとても大切な一枚なんだ。アルバムのフィーリングはすべてインスピレーションに基づくもの。「サザン・ナイツ」以外の曲はもうすでに出来上がっていた。でも何かが足りないと感じていた時に、友人のヴァン・ダイク・パークスが、自分にとって一番意味があることについて曲を書いてみたらいいんじゃないかとアドヴァイスをくれた。そしてその日の内に「サザン・ナイツ」を書きあげた。すると不思議と何か足りないという気持ちは消えたんだ。この曲は、私が幼い時に家族や親戚を訪ねた時のことをありのままに表現している。私の人生においてとても特別な時期だよ。
--10月のビルボードライブでの公演は、1stステージでは過去に他アーティストに提供した楽曲の数々をセルフカバー、2ndステージでは『サザン・ナイツ』を再現するというスペシャルな構成ですよね。
アラン・トゥ-サン:そうなんだ、1stステージでは他のアーティストに提供した曲や『ザ・ブライト・ミシシッピ』からの曲、またレコーディングされてない新曲も演奏する予定で、スペシャルなライブになるよ。
--最後に、魅力ある音楽が共通して持つものとは?
アラン・トゥ-サン:魂だね!目に見えなくても、様々な感情を彷彿させ、時には行動を起こさせる力、音楽が止んだ後にも心に残るような影響があるからね。
ライブ情報
【Allen Toussaint Billboard Live Tour 2012】
ビルボードライブ東京公演:2012年10月15(月) ~ 10月16日(火)
ビルボードライブ大阪公演:2012年10月18(木)
info:http://www.billboard-live.com/
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