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Billboard JAPAN × BASS MAGAZINE ラリー・グラハム&グラハム・セントラル・ステーション 来日記念特集
ビルボードジャパンとベース・マガジンがタッグを組み、来日を直前に控えたベーシストたちに迫る特別企画。第一弾はグラハム・セントラル・ステーションを率いて11月に来日するラリー・グラハムをフューチャー。チョッパー奏法の開祖としても知られる彼の幼少期に迎えたベーシストとしての起源、そして現在に至るまでの軌跡をベース・マガジン編集部、河原賢一郎氏に語ってもらった。
1人の黒人少年が生み出したベース史最大の発明
流行のネオ・シティ・ポップだろうがEDMだろうが4つ打ちロックだろうが、“スラップ”という巨大な影響力からは逃れることができないだろう。ベースの弦を指でハジき、リズムを強調させるこの奏法は、その登場以降、ファンクやロックをはじめとする、あらゆる音楽を一変させてしまったのだ。その起源がラリー・グラハム、という話は周知の事実かもしれないが、彼がベースを手にし、独自のスタイルを生み出すまでは、少年時代のさまざまな偶然が重なっていた。
仕方なく手にしたベースとドラマーの脱退で生まれたスタイル
1946年8月14日、テキサス州ビューモントに生を受けたグラハムは、2歳のときにカリフォルニア州のオークランドに移住。ギタリストの父親と、シンガー&鍵盤奏者の母親という音楽一家に育ち、グラハム自身は5歳でタップ・ダンスを、7歳でピアノを習ったのち、小学校高学年になるとギター、ドラム、サックスなどさまざまな楽器を演奏していたそうだ。そして15歳になると、母親とバンドを結成しクラブへ出演。当時はギターと、クラブに置いてあったフットベース(オルガンで低域を担うペダル。足で操作する)を担当していたが、このとき大きな転機が訪れる。ある日、フット・ベースが壊れてしまったのだ。そのため、急場しのぎでベースを弾くことになり、ついに“ベーシスト”ラリー・グラハムが誕生したのである。と、大げさに書いてみたものの、本人は“ペダルが直ったらまたギターを弾こうと思っていた”そうで、たまたま必要に迫られて手にしたという感覚だったらしい。
その後も、フット・ベースは直らないままベースを弾いていたグラハムだったが、ここでまたもうひとつの偶然がおきる。バンドのドラマーが脱退し、鍵盤とベースのデュオ編成で活動することになってしまったのだ。ベースがドラムの役割も担う必要に迫られた彼は、試行錯誤の末、リズムを打ち出すため指で弦をハジく奏法を考え出す。これがスラップの原型である。しかし、この時点でもまだギターへの未練を捨て切れず、本人も“なし崩し的にベースを弾くことになってしまった”と語っている。この後、そのベースが世界を変えてしまうことになるのだから、人生わからないものである。
時代の寵児、スライ&ファミリーストーンへ加入
10代前半のグラハム少年にとって、日々の楽しみのひとつがラジオであった。特にお気に入りだったのがシルヴェスター・スチュアートというDJの番組だ。この人気DJはラジオのかたわらバンド活動も行なっており、それを本格化させたのが、のちのスライ&ザ・ファミリー・ストーンである。シルヴェスター・スチュアートとはスライ・ストーンその人だったのだ。その後、知人の紹介でグラハムのライヴを観たスライからバンドに誘われ、1966年に彼らのバンドに加入。翌年に1stアルバム『新しき世界』でデビューを果たす。ベースはまだ、伝統的なR&Bのマナーにのっとったプレイが目立っていたが、バンドは『ダンス・トゥ・ザ・ミュージック』(1968年)や『スタンド!』(1969年)など、ファンク史に残る大名盤を次々と生み落としていった。
「Sly & The Family Stone - Dance to the Music」
1969年にウッドストック・フェスティバルで熱狂のステージを繰り広げると、同年リリースの両A面シングル「サンキュー」で、ついに現在のグラハムにつながるスラップ奏法が登場する。粘りのあるヘヴィ・ファンクなベースで、新たな金字塔を打ち立てたのだ。しかし翌年、グラハムはスライから突然の解雇を通知されてしまう。本人は当時のことを“なぜか突然解雇をスライから言い渡されたんだ。いまだに理由はわからない。でも僕はクビになった”と語っており、まさに寝耳に水だったようだ。
「Sly & The Family Stone - Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)」
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公演情報
ラリー・グラハム&グラハム・セントラル・ステーション
ビルボードライブ東京:2015年11月10日(火)~12日(木)
公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2015年11月14日(土)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
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