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デイム・ファンク 来日直前インタビュー

デイム・ファンク インタビュー

 世界中を見渡すと、ファレル・ウィリアムスからブルーノ・マーズまで、エイティーズ・ファンク・サウンドを取り入れたサウンドが音楽シーンを席巻しているが、この流れを作ったのは、ストーンズ・スロウ所属の”モダン・ファンク伝道師”のデイム・ファンクと言っても過言ではない。80年代からリアルタイムでプリンスやスレイヴなどにのめり込み、90年代は西海岸のGファンク・シーンでスタジオ・ミュージシャンとして活躍した彼は、ビンテージ・キーボードとドラム・マシンを駆使した独自のモダン・ファンク・サウンドをクリエイトし、ストーンズ・スロウのレーベル・オーナーであるピーナッツ・バター・ウルフの目に止まった。2009年にリリースされた彼のデビュー・アルバム『Toeachizown』は前代未聞の5枚組のLPだったが、モダン・ファンク・サウンドが世界的に注目されるきっかけとなり、伝説的ウェスト・コースト・ラッパーのスヌープ・ドッグとのコラボレーション・アルバム『7 Days Of Funk』やスレイヴのフロントマンだったスティーヴ・アーリントンとの『Higher』も話題となった。また、彼が2006年から運営するクラブ・イベント【Funkmosphere】は、ブギー・ファンクに焦点を当て、今やLAのナイトライフを代表するイベントとなっている。そんなデイム・ファンクの最新作『Invite The Light』はスヌープ・ドッグ、オハイオ・プレイアーズのジュニー・モリソン、Qティップ、レッドホット・チリ・ペッパーズのフリー、キッド・シスターなどの豪華ゲストをフィーチャーしながらも、モダン・ファンクを更に進化させたサウンドとなっている。デイム・ファンクに最新作を大いに語って頂いた。

自分の人生にポジティビティを迎え入れて、
ポジティブに生きること、そしてクリアなものの見方を意味してる

−−新作『Invite The Light』のコンセプトについて教えてください。

デイム・ファンク:『Invite The Light』は、 自分の人生にポジティビティを迎え入れて、ポジティブに生きること、そしてクリアなものの見方を意味してるんだ。人生で様々なトラウマや辛いことを経験しても、それを切り抜ける不屈の精神、忍耐、集中力をもつことで、最終的に光に向かうことができるんだ。それを題材にしたミュージック・ビデオを発表したんだよ。暗い部屋から光に向かっていくことをコンセプトとしたアルバムなんだ。俺が人生で体験したことがインスピレーションになったんだけど、あまり自分の体験を前に打ち出したくないんだ。オーディエンスにこのアルバムを聴いてもらって、自分たちの体験と照らし合わせて欲しいからなんだ。ポジティブなサウンドでアルバムが始まって、途中からダークになって、最終的にはポジティブな感じで終わるアルバムなんだよ。ゲストはみんな有機的な形で決まったんだ。別にレーベルに押し付けられて参加してもらったわけじゃないんだ。仲のいいミュージシャンに電話をして、参加してもらったんだ。

−−様々な豪華ゲストが参加しているようですが、彼らが参加したきっかけは?

デイム・ファンク:オハイオ・プレイヤーズのジュニー・モリソンは、アルバムのオープニングの曲でスポークン・ワードを披露してくれたんだ。知り合いのDJが彼と引き合わせてくれて、彼が俺のDJを見にきてくれたことがあったんだ。

 この曲を作ったときは、彼にアルバムのタイトルだけを教えて、それに触発されて彼が言葉を書いたんだ。彼のような偉大なファンク・アーティストがアルバムの冒頭を飾ってくれて、本当に光栄だよ。ジュニーがゲストとして何かに参加することは本当に難しいらしいから、嬉しいよ。

  ア・トライブ・コールド・クエストは、フェイバリットのヒップホップ・グループの一つなんだ。彼らのファースト・アルバムは革命的だったね。Qティップをプロデューサーとしてリスペクトしてるし、彼のラップも声質も大好きなんだ。世界中のフェスでQティップとよく顔を合わせるようになって、連絡先を交換したんだ。

 新作を制作してるときに彼にこのトラックを送ったら、次の日にラップを完成して返送してくれたから、驚いたよ(笑)。彼が参加してくれたのは光栄だし、彼のフロウは本当にヤバイよ。

  レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーに関しては、マーズ・ヴォルタのドラマーのジョン・セオドアを通して知り合ったんだ。ジョンが、フリーに俺の音楽のことを教えてくれたみたいなんだ。

7 Days of Funk Release Party
▲ 「7 Days of Funk Release Party」

 そのあとにフリーに会って、たまたま同時期に日本に行くことがわかったんだ。ストーンズ・スロウのドキュメンタリー映画「My Winyl Weighs A Ton」の上映会を日本でやったときにフリーが遊びに来てくれて、「一緒に演奏したかったら、いつでも声をかけてくれよ」って声をかけてくれたんだ。

 それで、俺とスヌープの『7 Days Of Funk』のリリース・パーティーをLAでやったときに、彼が来てくれて演奏してくれたんだ。そのあともずっと連絡を取り続けてたんだけど、新作の「Floating On Air」を作ったときに、彼に声をかけたんだ。彼は本当にクールなやつだし、すごく落ち着いたありながら、ロックなエッジのあるファンク・ミュージシャンだよ。

Hit Da Pavement (Explicit) ft. Snoop Dogg
▲ 「Hit Da Pavement ft. Snoop Dogg」 / 7 Days of Funk

  スヌープは素晴らしい人間だし、仕事熱心だし、本当に気の合う家族みたいな仲なんだ。彼とはしゃべらなくても、暗黙の了解で心が通じ合ってるし、音楽的な趣味が似てるんだ。だから、『7 Days Of Funk』を作ったときはすんなり作業できたよ。

 新作では、「Just Ease Your Mind From All Negativity」という曲でコラボレーションをしたけど、素晴らしい出来なんだ。スヌープと仕事できる立場にいるだけで、俺はラッキーだと思ってる。スヌープから声がかからないプロデューサーの方が多いわけだから、自信に繋がるよ。

  ジョディ・ワトリーはネット上で知りあったんだけど、彼女に音源を聞かせたら気に入ってくれたんだ。彼女が参加した「Virtuous Progression」にはジミ・ジェームス、キッド・シスター、ジェイン・ジュピター、ナイト・ジュエル、スライ・ストーンの娘のノヴェナ・カーメルも参加してるんだけど、女性アーティストにアルバムのエンディングを飾って欲しかったんだ。男性ホルモンだらけのアルバムにしたくなかったんだよ(笑)。ジョディはこの曲でフックを歌ってるんだけど、俺の家にきてレコーディングしたんだ。僕の彼女がジョディと記念写真を撮ってたよ。以前も彼女と曲を作ったことがあるんだけど、その曲はまだリリースされてないんだ。彼女とリオン・シルヴァースがこのアルバムに同時に参加してることは、マニアならその凄さはわかるはずだよ。

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そんなことをやったら自分がイヤになる

−−前作とは違うサウンドを目指したのでしょうか?

デイム・ファンク:前作の『Toeachizown』は6年前にリリースしたんだけど、その間に『InnaFocusedDaze』EPをリリースしたり、スヌープ・ドッグと『7 Days Of Funk』もリリースしたりしたんだ。新作が完成するまでに色々な辛いこともあったんだけど、『Invite The Light』は、 ポジティブに生きること、そしてクリアなビジョンを意味してるんだ。『Toeachizown』にはなかったかもしれないけど、ダークな曲も今回は作ったんだ。それに、今まではあまりアップテンポな曲はリリースしなかったけど、このアルバムには入ってるんだ。昔からアップテンポな曲とか、ラリー・ハードっぽい曲を作ってたんだけど、リリースする機会がなかったんだ。今回は、そういう曲をアルバムに収録して、俺のアフロ・フューチャーリズムの側面を表現することができて良かったよ。

−−今作からあなたのサウンドが更に進化した印象を受けましたが、制作方法や機材に変化があったのでしょうか?

デイム・ファンク:そうなんだ。今はPro Toolsでレコーディングしてるから、サウンドがもっとクリアになったんだ。以前は、CDバーナーに直接レコーディングしてたんだよ。今はそれぞれのチャンネルを分けてレコーディングしてるから、可能性が広がったよ。でも使ってる楽器は、以前と同じくアナログ機材が多いんだ。俺はプラグインよりも、ハードウェアのほうが好きなんだ。他のミュージシャンが色々なプラグインやソフトウェアを使ってるのはわかってるけど、あえて一線を画すためにハードウェア機材を使うほうが好きなんだ。Linn DrumとOberheimは昔ほど使ってないんだ。ここ数年間、俺の『Toeachhizown』とかプリンスの影響で、使ってる人が多すぎたんだ。そういうトレンドと距離を置きたかったんだ。最近モダン・ファンクを作ってる連中は、俺が4年前から使ってたのと同じドラム・マシンを使ってるから、違うドラム・マシンやシンセを取り入れることにしたんだ。

Zero
▲ 「Zero」 / Chris Brown

−−あなたの影響だと思いますが、最近は80年代ファンク・サウンドが流行っているようですが、それについてどう思いますか?

デイム・ファンク:ファンクが復興してることは嬉しいことだよ。ファンクをリスペクトしてるアーティストが増えてるし、それを現代の音楽に取り入れるアーティストが増えてる。クリス・ブラウンやタイ・ダラー・サインみたいなアーティストの最近の曲は、ファンクのベースラインを取り入れてるんだ。だから、ファンクが再び注目してることは本当だし、クールなことだと思う。みんなが「ファンク」という言葉をまた使うようになって、先人のファンク・アーティストの音楽を掘るようになってくれるんだったら、素晴らしいことだよ。

−−モダン・ファンクがトレンドとなっている今の時代の中で、どうやってオリジネーターであり続けることができるのでしょうか?

デイム・ファンク:自分の音楽をやり続けるだけだよ。昔から、俺は他の連中とは一線を画してるよ。俺のサウンドは、昔のファンク・サウンドを真似したものじゃないんだ。もちろん、俺はプリンス、Pファンク、スレイヴ、チェンジ、エムトゥーメイ、ルース・エンズなどのアーティストに影響されたけど、俺独自のコードやアプローチを常に使ってきたんだ。それは、1988年から活動し始めて、下積みも長かったからできることなんだ。他の人の真似をしていないということにプライドを持ってるし、そんなことをやったら自分がイヤになるね。曲を完成したときに、他のアーティストに似ていたら誰にも聞かせたくないよ。

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DJ MURO @ FUNKMOSPHERE
▲ 「DJ MURO @ FUNKMOSPHERE」

−−あなたが運営しているLAのクラブ・イベント【Funkmosphere】について教えてください。

デイム・ファンク:【Funkmosphere】は2006年に立ち上げたクラブ・イベントなんだけど、モダン・ファンクのレアなレコードをプレイする場が欲しかったから立ち上げたんだ。ブギーが大ブレイクするずっと前に始めたイベントなんだ。ヨーロッパでも同ジャンルのレコードを集めてたコレクターたちは、ブログなどでこういうレコードについて情報交換をしていたから、2000年代初頭からすでにコミュニティはあったんだけど、俺たちはアメリカのディギング・コミュニティからはバカにされてたよ(笑)。俺たちが集めてたのは、1975年以前のア・トライブ・コールド・クエストの元ネタっぽいファンクとか、ロイ・エイヤーズっぽいブレイクじゃなかったからね(笑)。最初は14人くらいしかお客さんが集まらなかったけど、100人以上集まるようになり、今はThe Virgilというクラブで毎回イベントをやってるんだ。これからどんどん大きくなっていくと思うよ。

−−今までスヌープ・ドッグやスティーヴ・アーリントンとコラボレーションをしてきましたが、今後はどのようなコラボレーションを予定していますか?

デイム・ファンク:正直言って、コラボレーションよりも、自分のソロ活動に専念したいんだ。昔のアーティストは、あまりコラボレーションをしなかったんだ。次のアルバムでは、ゲストを入れないと思う。プリンスなんかは、ゲストは起用しなかった。このアルバムは、ゲスト参加は自然だったからいいんだけど、最近のアーティストはコラボレーションをやりすぎてると思うんだ。

Live at The Teragram Ballroom
▲ 「DâM-FunK Live at The Teragram Ballroom」

−−11月に来日ツアーをするそうですが、どんなライブになりそうですか?

デイム・ファンク:今回はバンドでツアーするんだけど、バンドのミュージック・ディレクターのE-Dayとは3年前から一緒に演奏してるよ。15年前から友達だけどね。彼はベース、キーボード、バックボーカルを担当してるんだ。レジー・レッジというドラマーが今回参加するんだけど、彼はドラム以外にバックボーカル、サンプルのトリガーも担当してるんだ。3人編成のバンドなんだけど、すごくいいバンドだよ。今もライブをやってるから、日本に行く頃にはかなりタイトな演奏になってるはずだよ。新曲とか前の曲もミックスして演奏するよ。

−−今後の予定は?

デイム・ファンク:全編アンビエントの作品を作りたいんだ。そのあとは、俺のグライドゾーン・レーベル(Glyde Zone)をまた復活させたいんだ。サングラスやTシャツ、ポスターなどの物販商品も出していくよ。Dam-Funk.comでチェックしてほしいね。

−−日本のファンにメッセージをお願いします。

デイム・ファンク:長年俺をサポートしてくれて感謝してるよ。日本のカルチャーをリスペクトしているし、日本人の音楽に対する姿勢をリスペクトしてる。日本からもインスピレーションを受けるよ。日本に行ったらレコード店に遊びに行くから、レコードを買い漁らないでくれよ(笑)。

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