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cero × 黒田卓也 Billboard Live スペシャルインタビュー

 来たる10月2日、ビルボードライブ東京にてInterFM 897 開局記念 【cero ~Night Drifter Live~ special guest 黒田卓也】が行われる。また、翌10月3日にはビルボードライブ大阪にて、同じくceroと黒田卓也によるスペシャル・コラボ・ライブが行われる。

 最新作『Obscure Ride』で、ロバート・グラスパーに代表される“現在進行形ジャズ”の影響を昇華したサウンドを確立したceroと、2014年、ホセ・ジェイムスのプロデュースによるアルバム『ライジング・サン』をリリースし、まさにそうしたジャズの流れの最先端に立つ黒田。J-POP、そしてジャズというジャンルの垣根を超えて共鳴するアクト同士の共演に、大きな注目が集まる。今回、Billboard JAPANでは、そんな両者のスペシャル対談インタビューを実施。今回のスペシャル・ライブや、両者にとって重要な作品であるディアンジェロの『Voodoo』、そして前述の現在進行形ジャズの流れについて、ceroの髙城晶平(vo/gt/etc.)、荒内佑(key/cho)、橋本翼(gt/cho)、そして黒田卓也に話を聞いた。

ceroと黒田卓也の“ライブ”観

――まず初めに、今度のビルボードライブでの公演にちなんで、皆さんはご自身の活動の中で“ライブ”という場をどのように捉えていらっしゃるかについて教えて下さい。黒田さんはいかがでしょうか?

黒田卓也:“ライブ”ですか…。聖なる遊び場ですね。スタッフ以外、アーティストしかステージには立てないですよね。そういう聖なる砂場というか、そういう感覚です。もちろん音楽や自分を解放する場所ですし。すごく特別な場所ですね。

――ceroの皆さんはどうですか?

髙城晶平:ほんとその通りだなって。解放する場所っていうのも共通してると思います。加えて、僕達は録音物のウェイトが高いというか。例えば、録音物の通りライブで演奏しようと思うとすごい楽器の量になっちゃうので、なかなかそうは出来ない。ceroは、ライブをやるとなると、録音物から何かの要素を削らなきゃいけない事態が往々にしてあるんです。

 だから、昔は表現し切れないことへのジレンマを感じていたんですけど、でも、最近はそういう限定的でミニマルなところがかえって面白くて。僕たちは、アレンジとかもドンドン変えるバンドなので、フットワーク軽くアイデアを試す場として一番機能してますね。

――ある意味、録音物との距離感ありきで考えているということですね。黒田さんは録音物との関係性についてはどうですか?

黒田卓也:すごく似てると思います。ライブでしか出来ないことと、録音でしか出来ないことはやっぱり違うので。音源を再現するというより成長させていくものというか。そういうことが出来る場ですよね。

ディアンジェロ『Voodoo』について

--なるほど。では、作品について。ceroの皆さんも、黒田さんも、最新作の重要なインスピレーションにディアンジェロの『Voodoo』を挙げていらっしゃいますよね? みなさんそれぞれのあの作品に関する印象を教えて下さい。

荒内佑:僕はやっぱり音数が少なかったっていうのが大きかったですね。いわゆるニューソウル的なソウルの流れからいうと、どんどん華やかさが落ちていって、筋肉だけになっていて、それがひたすら素晴らしいという感じですね。その近辺の、エリカ・バドゥの『ママズ・ガン』とかも素晴らしいですけど、それに比べてもさらにストイックに音が落ちてますよね。

髙城晶平:その後に続くネオソウルだったりR&Bだったり、似たようなアプローチの音楽ってありますけど、やっぱり『Voodoo』が一番“ブードゥー”。一番魔術的っていうか、危ない何か、魔法が入ってる。そういうサムシングがありますよね。そういうのは聴いていて毎回思います。「魔術めいてるなぁ」って。そこが一番重要なところなのかなと思います。

橋本翼:僕は『Voodoo』を聴き始めたのがわりと最近なので、逆にまだすごく新鮮なんです。最初に聴いて、とにかくビックリしたのが「音がデッドだなあ」って。今まで何気なく録音していたドラムのスネアにしても、響きとかをあんまり考えてなかったのかもと思いました。残響とかじゃなくて、ありのままの音を拾う、みたいな意識が少なかったなと。

 あと、これはタダの妄想なんですけど、ジャケがすごくマッチョじゃないですか。つまり、自分の内側を鍛えてるから、“響き”にあたる、服のようなものを纏う必要が無いのかも、っていうイメージなんです。

髙城晶平:脱げよ!と(笑)。

橋本翼:そうそう。完全にありものでやるっていうので一貫されていて。何かしらギミックで飛ばしたりっていうのは、色んな人が使ってる手法なんですけど、そういうのも殆ど無い。あれはびっくりしましたね。

――黒田さんもやはり音に関する観点が一番大きかったですか?


▲ディアンジェロ『Voodoo』

黒田卓也:そうですね。まあ、誰がどう聴いても印象が強すぎますよね。スネアがこの辺にあるような音で(顔から数センチのところに手を構える)。当時、日本の評論家の一人があのアルバムをむちゃくちゃ悪く書いて話題になったんですよ。でも、そんな風にみんなびっくりしちゃうくらい、あり得ない音のバランスだった。でも、それを自信満々で出せたチームがいて、ああいう実験室があったっていう背景が、あのアルバムの一番の凄いところですよね。もちろん、ディアンジェロの作品なんだけど、彼だけじゃ絶対に出来なかった。

――いわゆる“ソウルクエリアンズ”と呼ばれるチームですね。

黒田卓也:そうそう。あのチームの賜物の一つなんでしょうね。今回のアルバム(『ブラック・メシア』)も全然印象が違うじゃないですか。ああいう“怪しさ”みたいなものは全くなくなりましたよね、悪い意味じゃなく。(『Voodoo』は)本当に特別なアルバムで、多分もう2度とああいうアルバムは無いでしょうね。

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cero「Obscure Ride」

Obscure Ride

2015/05/27 RELEASE
DDCK-9005 ¥ 3,463(税込)

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Disc01
  1. 01.C.E.R.O
  2. 02.Yellow Magus(Obscure)
  3. 03.Elephant Ghost
  4. 04.Summer Soul
  5. 05.Rewind Interlude
  6. 06.ticktack
  7. 07.Orphans
  8. 08.Roji
  9. 09.DRIFTIN’
  10. 10.夜去
  11. 11.Wayang Park Banquet
  12. 12.Narcolepsy Driver
  13. 13.FALLIN’

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