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globe(小室哲哉)『Remode 1』インタビュー

globe 『Remode 1』 インタビュー

 小室哲哉はいつまでも夢を見させてくれる

 「もう1回、若い子たち、ティーンと付く世代の子たちが僕らをキッカケに音楽に目覚めるようなことがしたいですね」「東京オリンピックという、日本という国の〆切があるので、「そこに向けて何か世界にアピールしようよ」みたいなことでの集い」

 今回のインタビューでは、自身が人生の多くを費やした二大ユニットであるTM NETWORKとglobeの比較話を散りばめながら、今から20年前にglobeはどんな目的で結成されたのか、この20年間でどんな影響を音楽シーンに与える事が出来たのか、当時の小室哲哉にとって「1位を獲ること」がなぜ重要だったのか、globeはなぜ何があっても「解散」や「活動終了」を選ばなかったのか、小室哲哉にとってKEIKOやMARCはどんな存在なのか、最新作『Remode 1』に込めた想いは何なのか、小室哲哉はこれからのサブスク時代にどう立ち振る舞おうとしているのか、そしてかの大型野外主催フェス【TK DANCE CAMP】は再び開かれる可能性はあるのか、すべてを語っていただいた。

 音楽シーンの未来に希望を見出せなくなってしまった。こじんまりとした世界で音楽やエンタメを語ることに慣れてしまった。そんな我々の目を覚まさせるTK節全開のインタビュー、ぜひご覧頂きたい。

TM NETWORK=地元の仲間、globe=確実に売れる必要があったバンド

--3月21日と22日 横浜アリーナにて、TM NETWORKの30年間に及ぶプロジェクトがひとまず一段落しました。自身ではどんな感慨を持たれましたか?

※TM NETWORK / 「We Love The Earth(from LIVE Blu-ray / DVD TM NETWORK 30th 1984? QUIT 30 HUGE DATA)」
※TM NETWORK / 「We Love The Earth(from LIVE Blu-ray / DVD TM NETWORK 30th 1984? QUIT 30 HUGE DATA)」

小室哲哉:つい最近、Blu-rayで横浜アリーナの前のさいたまスーパーアリーナ【TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA】を観てて、30年近くTMを見てきた人間と「集大成が出来たよね」って言ってて。横浜アリーナ【TM NETWORK 30th FINAL】はそれのディレクターズカットというか、監督気分で「取りこぼしていたところを観てもらいたい」みたいな感じだったと思います。あとは長く付き合ってくれたミュージシャンとかね、しばらく一緒にやってなかった人たちも「ここで一緒にやっておこうよ」っていう。そういったヒューマニティと、自分がずっと最初からやりたかったことの集大成の、更に集大成が【TM NETWORK 30th FINAL】。本当にディレクターズカットに近いものだったかなという気がします。

--久しぶりに小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登の3人で活動してきて、途中、宇都宮さんの入院などもありながら、それでもTM NETWORKとして駆け抜けたこの3年間は、小室さんにとってどんな意味を持つ日々だったなと思いますか?

※TM NETWORK / I am 2013(TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end)
※TM NETWORK / I am 2013(TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end)

小室哲哉:せっかく長くやってきたグループならそういう時期がやっぱりあったほうが良いですよね。一緒にいれば初期の頃のこととかどうしても思い出したりするし、話題にもなりますから。なので、アニバーサリーっていうものには何か意味があるんだなって改めて思いました。何かそういうことがないと集まれないところもあるし、決められた時間、決められた場所で何かを3人でやらなければいけないっていう、全ての絶対条件を揃えるのがライブだったりするので、それをアニバーサリーということで3年間にわたって出来たこと、その期間に自信作と言えるものを数曲、特に「I am」を創れたのは良かったなって。2人にとっても節目として「これからどうやっていこうか」っていう部分で良いキッカケになったと思うんですよね。あとでまたお話するかもしれませんが、TMはバンドっていうよりも友達、地元の仲間の延長線上で。それにしては凄い夢が叶ったほうだよね、っていう気持ちが強いかな。

--地元の仲間の延長線上でTM NETWORKを30年間。本当に夢みたいな話です。

小室哲哉:「仲間で何とかしよう」っていうところでここまでやれたんだから凄いよねっていう。

--そのTM NETWORKの30周年プロジェクトを進めていく中で、今回のglobe20周年プロジェクトも水面下で動かしていたんですか?

※globe / 「Remode 1 digest disc1」
※globe / 「Remode 1 digest disc1」

小室哲哉:そうですね。僕の中ではこのふたつがメンバーとして活動してきたユニットなんですけど、ここのところ20本ぐらいインタビューを受けている中で、皆さんから「globeってバンドですね」っていう感想をよく聞いていて。なんでバンドかって言うと、KEIKOもMARCもミュージシャンとしてはいわゆるアマチュアから始まって、僕だけひとり飛び抜けてキャリアが長かったので、何かと教育やアドバイスをプライベートも含めてしてきて。どういったライフスタイルにしていくとロックミュージシャンっぽくなれるかとか(笑)、あとは洋楽っぽく見えるかとかね。そういうことも含めてTMの3人よりglobeの3人で話してきた時間のほうが長いんですよね。僕がいろいろ話して、それに対して2人とも活発なメンバーだったからガンガンつっこんでくるというか。年数はTMのほうが10年長いんですけど、一緒に居た時間は圧倒的にglobeのほうが長いんです。なので、バンド感は強いのかなって。

--なるほど。

小室哲哉:MARCがロック好きだったこともすごく大きいかもしれないですね。ちょうど一回り下の年齢なんですけど、ギリギリ僕らの世代が聴いていたロックとかも彼は分かって、そんな2人に影響を受けてKEIKOも自然とそっちに流れていったんです。一番ミュージシャンとして成長する時期だったと思うので、20代を駆け抜けた訳ですから。そういう意味は一気にいろんなものを吸収していったんじゃないかな。

--8月9日にデビュー20周年を迎えたglobeですが、今から20年前。小室さんは何を目的としてこのユニットを組んだのでしょうか?

※globe / Feel Like dance
※globe / Feel Like dance

小室哲哉:僕のやってきたことがひとつのピークに達していて、ブームになっていた状況だったので、レーベルとしてはコケるとか失敗するとかが許されない。「確実に売れてくださいね」っていうオーダーがあって……

--凄いオーダーですね(笑)。

小室哲哉:「間違いなく今までプロデュースしてきたものよりも上に行って頂けたら」っていう。そういったマーケットから考えていくようなプロジェクトで……「どうにかなるだろう」とは思ってなかったですよね。メンバーを探すこともそうだし、それまで続けていたダンスミュージックからどうロックっぽく変化させていくかも考えていたし。それで「海外から来たんじゃないか?」と思わせるようなものをイメージしていたんですけど、KEIKOの歌声が、結果的に良かったんですけど、すごく日本的な要素、もっと言えば演歌的な要素もあったので、それを無理やり洋楽にするんじゃなくて、基本的にはJ-POPだろうと。で、空気感としてMARCが洋楽色を出してくれれば良いのかなと、方向転換して始まったのがglobeです。

--当時はTM NETWORKはすでに活動終了していましたし、数多くのアーティストのプロデュースは手掛けていましたが、プレイヤーやメンバーとしての小室哲哉がいない寂しさやつまらなさを感じていた部分もあったんでしょうか?

※TRF / Overnight Sensation ~時代はあなたに委ねてる~
※TRF / Overnight Sensation ~時代はあなたに委ねてる~

小室哲哉:いや、それは全然なくて。さっき言ったオーダーに対する責任感だったり、使命感みたいなところで、今までのプロデュースワークを超える為です。ミュージシャンとしてアマチュアの2人だけがポン!っていきなり出ていって、それを果たして超えられるのかな?っていうところで、僕はタグボートみたいな感じですかね。引っ張れるところまでは引っ張ってあげて、大海に出たらだんだん後ろに引いていくイメージ。例えば、ライブパフォーマンスのソロコーナーがあったとして、僕はそれまで蓄積してきたもので何かやれたりするんですけど、当時の2人に何かをやらせるのは難しかったですし、例えば当時のtrfみたいにDJとダンサーがいてみたいな、そういう飛び道具的なものもglobeにはなかったので、テレビに出て行くにしても2人だけではちょっと弱いかなって。なので、「メンバーになりたくてしょうがない」という感覚ではなかったです。最初は引っ張らなきゃいけないってところで、その上でロック色みたいなところを僕が担当してました。

--それから20年。globeは音楽シーンに対してどんな影響を与えられたと思いますか?

小室哲哉:1stアルバムはトータルで450万枚、下手したら今は500万枚ぐらいいってるかもしれないですけど、当時はその規模感は数字でしか分からなかったんです。でも、今、いろんなソーシャルサービスで、1×1であの曲、この曲、あのフレーズ、あのメロディー、あの歌声、あの3人の仲良さそうな感じとか、そういうものに対する直の声が聞けるようになったところで、ただのエンタメではないなっていうのはすごく感じますよね。

--というのは?

小室哲哉:一言一言みんな考えて思い出しながら綴ってくれているので。それはもうキリがなくて、あの曲のこのフレーズが、就職、受験、失恋、恋愛成就、あらゆるいろんなキッカケ、いろんな瞬間瞬間に生きている。そこに共存しているんです。もっと深刻なもので言えば「自殺しようかと思っていたら、あの曲が流れたので何とか立ち直れた」みたいな文言もありましたし、そう考えるとただのエンタメだけではなくて、人それぞれのライフスタイルまでも……まぁそれはglobeに限らず、90年代の僕がプロデュースしたいろんな楽曲もそうなんですけど、その中には当然globeも入っていて。非常に入り込んでいて、役にも立ってたんだなっていうのは、やっとこの数年で直に声を聞くことができて分かりました。出来ることなら全員に「ありがとうね」って返してあげたいぐらいです。

--そのglobe、当時、日本ではまだとても受け入れられる状況じゃなかったラップをド頭から取り入れたのは、何故だったんでしょう?

※globe / globe EDM Sessions - Joy to the love(2013 ORIGINAL PANTHER D.B.R REMIX)
※globe / globe EDM Sessions - Joy to the love(2013 ORIGINAL PANTHER D.B.R REMIX)

小室哲哉:その理由はふたつあって、KEIKOがフルで歌い切るというのはまだまだ心配だったのと、このあと来るであろうヒップホップ……もう当時のアメリカは2PAC「California Love」とかいろいろ含め、ヒップホップ全盛になり出していて、R&Bとかソウルとか言われていたものが完全にヒップホップになったりしていた時期だったので、それを日本で先駆けて取り入れようと。で、たまたまMARCがトリリンガルで、英語、フランス語、日本語が使えて、すごく器用な子だったので、元々ラッパーを目指していた訳ではなかったんだけど、わりとスラっと出来たところもあって。それで声をふたりで分担してもらったんです。そこからの成長過程の中で、KEIKOが丸々歌っても十分イケるっていう段階に入ったのが「DEPARTURES」ぐらいですかね。それまでのシングル3枚は我慢というか、いわゆる女の子がカラオケで頭から終わりまで歌える曲が完成するまでは、MARCの力を相当借りないといけなかった。だから時代を先駆けてラップというのはちょっと建て前でもあって、実際はふたりでシェアしてもらう必要があった。それもバンドっぽいなと思います。

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globe「Remode 1」

Remode 1

2015/08/05 RELEASE
AVCG-70109/10 ¥ 3,300(税込)

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Disc01
  1. 01.Many Classic Moments
  2. 02.FACE
  3. 03.You are the one
  4. 04.Love again
  5. 05.Judgement
  6. 06.UNDER Your Sky
  7. 07.Shine on you
  8. 08.Wanderin’ Destiny
  9. 09.SWEET PAIN
  10. 10.FACES PLACES

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