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「エレクトロニック・ミュージックにより音楽性を持たせたい」― ZEDD 来日インタビュー

ゼッド インタビュー

 ロシアに生まれ、ドイツで育った現在25歳のDJ/プロデューサー、ZEDD(ゼッド)。2010年頃からレディー・ガガやスクリレックスのリミックスを手掛け、2011年にリリースされた「スペクトラム feat. マシュー・コーマ」で一躍ブレイク。
 デビュー・アルバム『クラリティ』のタイトル・トラック「クラリティ feat. フォクシーズ」で初の米ビルボード・シングル・チャートTOP10入りを果たし、第56回グラミー賞では<ベスト・ダンス・パフォーマンス賞>も受賞。ソングライター、プロデューサーとしては、これまでにレディー・ガガ、ジャスティン・ビーバー、アリアナ・グランデや安室奈美恵などトップクラスのアーティストの作品に参加し、EDMという垣根を越えて幅広いジャンルのアーティストと精力的にコラボを重ねている。
 そんなZEDDの最新作『トゥルー・カラーズ』が2015年5月にリリースされた。リリースに伴い【ZEDD TRUE COLORS PREMIUM LIVE】と称された来日公演が東京と大阪で開催され、海外ではアリーナクラスの会場を軒並みソールドアウトさせる彼の白熱のパフォーマンスに会場は大熱狂。8月には【SUMMER SONIC】へ出演するために再来日を果たすZEDDが、東京公演の翌日に最新作について話してくれた。

自分の真の姿=“トゥルー・カラーズ”を
ファンたちや世界へみせることは、
僕にとってとても大切なこと

Break Free ft. Zedd
▲ 「Break Free ft. Zedd」 / Ariana Grande MV

??まず、おめでとうございます、と言わないとですよね。ニュー・アルバム『トゥルー・カラーズ』が米ビルボードのトップ・ダンス/エレクトロニック・アルバム・チャートで1位になりましたね。

ZEDD:ありがとう!

??総合アルバム・チャートでも4位でしたね。前作に比べ、野心的な作品に仕上がっているので、嬉しかったのでは?

ZEDD:そうなんだ。だから、このアルバムがこんなにも成功するなんて、誰も予想していなかった。僕は特定のジャンルのアーティストとして売れた。だから、みんなが求めていた作品ではなく、より奥深く、音楽的で、成熟された作品が作りたかった。僕と同じ立場にあるアーティストたちとは少し違うことがしたかったんだ。

??『トゥルー・カラーズ』はゼッドの音楽的バッググラウンドがあったからこそ出来上がった作品だと感じるのですが、自身のバッググラウンドについて簡単に話してもらえますか?過去にはロック・バンドにも所属していたんですよね。

ZEDD:そう。小さい頃をピアノを習っていたから、一番最初に出会ったのはクラシック音楽。で、12歳の時に兄とロック/メタル・バンドを始めて…僕はドラマーだったんだけど、その頃はあまりピアノは弾いてなかった。バンドを18歳ぐらいまで続けて、ちょうどその時にジャスティスの音楽に出会い、インスパイアされ、自分でエレクトロニック・ミュージックをプロデュースしてみたいと思ったんだ。
 ポップ・ミュージックに関しては、昔から好きでよく聴いていたし、仕事としてジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデの作品に携わったことで、マックス・マーティンに出会い、彼からは様々なことを学んだ。ポップ・ミュージックへの情熱は、これまでずっと持っていたものだし、未だに大好きなんだ。このアルバムは、ロック、ポップ、そしてクラシック音楽から多大な影響を受けたアルバムだと言えるね。

True Colors
▲ 「True Colors」 (Empire State Building)

??アルバムのリリースに先駆けて、収録曲を1曲づつ、テーマカラーとともに、あらゆる場所でプレミア公開しましたが、どのロケーションが一番気に入りましたか?

ZEDD:選ぶのが難しいな…、全ロケーション素晴らしかったから。アルカトラズ島も最高だったし。でも特にエモーショナルなったのは、エンパイア・ステート・ビルディング。ああいう風にライトアップされるのはすごく稀だから。それと、グランドキャニオンでのプレミア・イベントも僕にとってハイライトだったよ。

??収録曲に色を関連付けるというアイディアは、どのように生まれたのですか?

ZEDD:アルバム制作の中盤に差し掛かった時点で既に完成していた4、5曲はすべて全く違う感じの曲だった。そしてアルバムのタイトルにもなっている「トゥルー・カラーズ」という曲を書いた時…誰かに自分の真の姿、ありのままの姿をみせることについての曲なんだけど、その時に気づいたんだ。どの曲もまったく違うけれど、すべて僕が情熱を感じていること体現してる、って。それがたとえみんなが僕に期待していないことであろうと。でも、自分の真の姿=“トゥルー・カラーズ”をファンたちや世界へみせることは、僕にとってとても大切なこと。
 そこで“トゥルー・カラーズ”がアルバムのコンセプトとなり、その後アルバムのために書く曲も他の曲とは違うユニークなものにしたいと思った。だから、コンセプトにそぐわない曲、他の曲に似すぎている“カラー”を持った曲はアルバムからカットしなければならなかった。そこでてカットした曲の代わりに書いた「ペーパーカット」は、他のアルバム収録曲とはまったく違う感じの曲に仕上がったんだ。

??因みに、色を決めてそこから曲を作ることはありましたか?

ZEDD:それはなかったね。すべて、いつも通りに音楽からスタートしたよ。どの曲もカラフルで、独自の“カラー”を持っているということに気づいて、色と関連づけるアイディアを思いついて、他の曲とは全く違うプロダクションを施すことにしたから。

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エレクトロニック・ミュージックにより音楽性を持たせたい

??今、少し話してくれましたが、タイトル・トラック「トゥルー・カラーズ」はプロダクションもミニマルで、これまでのゼッドの楽曲とは、まったく異なった曲だというのが印象的でした。

ZEDD:確かに、この曲は僕がこれまで作った中で、一番変わってる曲だと言えるね。当時出来上がっていたのが、「トランスミッション」、「ストレイト・イントゥ・ザ・ファイア」、「アディクテッド・トゥ・ア・メモリー」とこの曲で、全曲異なった感じの曲だけど、中でも「トゥルー・カラーズ」は際立っている。だから、さっき話したように、アルバムのコンセプトを思いつくきっかけになったんだと思うし、今作にとってすごく重要な曲で、アルバムの中核でもあるんだ。

??なので、昨日のライブで演奏しなかったのはちょっと残念でした。

ZEDD:まだ演奏してないだけだよ。これからもっと新曲をプレイしていくつもり。特に「トゥルー・カラーズ」は原曲のままライブではプレイできないから、リミックスかエディットしなきゃいけないと思うんだ。でもこれから絶対にプレイしていくよ。

??じゃあ、もしかしたら【SUMMER SONIC】で聴けるかもですね。

ZEDD:うん、そうだね。楽しみにしてて。

??そしてこの曲を聴いて、ラップトップではなく、楽器を使ったトラディショナルな方法で曲作りを行っているのでは、と気になったのですが…。

ZEDD:実は、このアルバムに収録されているすべての曲にはピアノとヴォーカルで作ったデモがあるんだ。ピアノとヴォーカルのみで成り立たない場合は、曲、音楽として弱い、という意味なんだ。一番多く時間をかけるのはプロダクションの部分だけど、曲の中核とソウルの方が重要だと思ってる。その判断するベストな方法というのが、曲をピアノとヴォーカルのみで演奏してみて、それがグッとくるか、ってこと。何かを感じることが出来れば、いい曲だってことなんだ。

写真
2015.06.04 ZEDD @ SHINKIBA STUDIO COAST
Photo: Masanori Naruse

??そういった曲作りの2つの側面を組み合わせることで生まれる面白味というのは?

ZEDD:大半のエレクトロニック・ミュージックにはハートとソウル、そしてコードやメロディがなくて、あるのはサウンドのみなんだ。僕のアーティストとしてのミッションは…というか、それを僕のミッションにしたいと思っているんだけど(笑)、エレクトロニック・ミュージックにより音楽性を持たせたい。そうするための僕なりの方法というのが、レベルの高いエレクトロニック・ミュージックを音楽を作っていくこと。楽器を使って曲作りを行うことで他のアーティストが使わないコード・プログレッションを用いたり、楽器を使うことでより曲がオーガニックになると思うんだ。たとえば、ビートを作って、その周りに音楽を足していくという方法よりも。

??なるほど。今後ライブ・パフォーマンスにバンドを起用することなどは考えていますか?

ZEDD:一応TVでパフォーマンスする時には、曲を再構築して、バンドと一緒にプレイしているんだよ。たとえばジミー・キンメルではバンドやオーケストラとプレイしたし、レターマンの時もそう。とは言え、通常のライブ・ショーは今のDJのフォーマットが気に入ってる、今のところはね。でも、それは今後変わっていくことでもあると思っているんだ。

??アルバムを作る上で、プレッシャーは感じましたか?

ZEDD:自分の満足がいく作品を作る、という以外に特にプレッシャーはなかったね。アルバムを何枚以上売らなきゃいけない、とか、そういうのは僕というより、レーベルにとってのプレッシャーだと思うから。一番難しいタスクは自分自身を満足させることで、何よりも僕がハッピーじゃなきゃ、ダメなんだ。多分、僕を満足させるより、アルバムをたくさん売る方が簡単なんじゃないかな(笑)。だから、アルバムを完成させるのに、こんなにも時間がかかったんだ。自分が本当に満足できる作品が出来上がるまで、時間をかけたかったから。

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他の人が既にやったことを繰り返すことに面白味がない

Beautiful Now (feat. Jon Bellion)
▲ 「Beautiful Now (feat. Jon Bellion)」 MV

??話は変わって、今作では様々なジャンルのアーティストとコラボしていまよね。たとえばエコスミスのようなストレートなポップ・バンドにとってゼッドとのコラボは少し異色ですよね。そういったアーティストたちは、どのように説得するのですか?

ZEDD:僕から説得することはしないよ(笑)。相手がやりたいか、やりたくないか、それ次第だと思っているから。これまでずっとそうやってやってきた。それが一見、合わなそうな組み合わせかも、と思われる相手でも。今君が言ったエコスミスもいい例だし、ロジックだってそうだと思う。ロジックのファンなんて、これまでなかった新しいものが聴けるって、みんなすっごくエキサイトしてた。パラモアのヘイリーとの「ステイ・ザ・ナイト」も同じ、それまで彼女はエレクトロニック・アーティストとコラボしたことがなかったわけだし。
 これまでコラボしてきた人たちは、普通だったらそういったコラボはやらないような人々で、僕が初めてのコラボ相手だったことが大半。マシュー・コーマもそうさ。僕とコラボした後に、他のEDMアーティストとコラボするようになった。僕はいつでもユニークで、みんながアッというコラボ相手を探しているんだ。常に新しいことやりたいと思ってる、他の人が既にやったことを繰り返すことに面白味はないからね。

??では名前があがったラッパーのロジックとXアンバサダーズとのコラボ「トランスミッション」について教えて下さい。ラッパーとコラボするのは初めてですよね。

ZEDD:これもさっきの話に繋がるんだけど、今回のコンセプトに沿って、よりカラフルな作品を作るために、自分の殻から抜け出さないとダメだ、って感じたんだ。ラッパーと一緒に曲作りをすることは、それを手助けしてくれた。僕のTwitterを彼がフォローしていたのに気づいたから、「君の作品が好きで、今度何か一緒にやってみたい。」ってDMを送ったんだ。そしたら、「何かビートを送ってくれれば、そこから何か作ってみるよ。」って返事が来た。そこで彼に「トランスミッション」をメールして、ディナーを食べて帰って来たら、彼が曲に合わせてラップした音源が既にメールボックスに入ってたんだ!

写真
2015.06.04 ZEDD @ SHINKIBA STUDIO COAST
Photo: Masanori Naruse

I Want You To Know ft. Selena Gomez
▲ 「I Want You To Know ft. Selena Gomez」 MV

??スゴイですね(笑)。

ZEDD:そう、わずか数時間のうちに完成させていたんだ。しかもレコーディングしてる写真も次々と送ってきてくれて。すごく気に入ったけど、少し変えたい部分もあった。でも、これまでラップは扱ったことがなかったから、どうしたらいいのかわからなくて、「ラッパーと仕事するのは初めてなんだ。このパートをもう一回レコーディングしてもらってもいい?こういう場合って、詞を変えてってリクエストしてもいいものなの?」って彼を質問攻めにした(笑)。彼はとてもナイスガイで、数日後わざわざスタジオにやってきてくれて、そこで一緒に曲を完成させたんだ。素晴らしい経験になったし、すごく楽しかったよ。

??では、これまでコラボしてきた数々のアーティストやプロデューサーの中で、ソングライターとして多く学ぶことがあったと感じるのは誰ですか?

ZEDD:すごくイイ質問。レディー・ガガと一緒に仕事をしたことは、僕に大きな影響を与えた。でも一番影響されたのはマックス・マーティンかな。彼はシンプルなんだけど独創的なものを作る才能に長けている。それって世の中で一番難しいことだと思うんだよね。なぜなら、とてもシンプルなものというのは、すぐに飽きるようなくだらないものにも成りえる。そのバランスっていうのは紙一重なんだ。とても難解な作品を作ることで目立つのは簡単だけど、たとえばビートルズが成し遂げたことは、とても、とても難しいこと。その点でマックスから大きな影響を受けたね。

??ビートルズの作品だったり…時が経ってもその良さが変わることはないですしね。

ZEDD:その通り!それが僕が成し遂げたいことで、作品のゴールでもあるんだ。だから、あまりプロダクションに頼らず、曲自体に重点を置いているんだ。ある日、このトレンドが去って、リスナーがもうEDMなんて聴きたくない、ってなった時に、何が残るだろう?そう考えた時に、ビートだけじゃ、リスナーが繋がりを感じるのには不十分なんだ。音楽は人間の心を捉えるものでなくてはならない。それが僕のやろうとしていることなんだ。だから、ピアノで曲を作っている。そうすれば曲のコアは永遠と生き続けるから。それはアルバムに収録されている曲すべてに関して言えること。純粋に音楽を愛していて、お金や名声のために音楽をやってるのでなければ、それはすごく重要なことだと思う。

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これからも自分のハートが導くままに音楽を作っていく

??今後予定しているコラボなどはありますか?つい先日アルーナジョージのアルーナの意味深な写真をSNSに投稿してましたよね…。

ZEDD:アハハ(笑)。

??あれはふざけてただけ?

ZEDD:いや、そんなことないよ~。まだ、公式に話せるコラボはないんだ。アルバムを完成させたばかりだからね。とは言え、アルバムが完成する前から、既にスタジオに入って新たな曲に取り掛かってて、数組のアーティストとコラボしてる。残念ながら、このアルバムに入れることは出来なかったけど…。これまで僕がそういうのを内緒にしてるの知ってるでしょ(笑)。

??わかりました(笑)。とにかくまだ明かせないってことですね。

ZEDD:そう、全部内緒にしてて、みんなをアッと驚かせたいんだ!

写真
2015.06.04 ZEDD @ SHINKIBA STUDIO COAST
Photo: Masanori Naruse

Clarity
▲ 「Clarity ft. Foxes」 MV

??では最後に、ここ数年間EDMの人気は下火になりつつありますが、トレンドが去っても自身の音楽性は貫くと思いますか?

ZEDD:どうかな。覚えておいて欲しいのが、僕がEDMを作っている期間というのは、僕の人生において、ほんの数年間でしかない。エレクトロニック・ミュージックを作ってきた期間に比べ、他のジャンルの音楽を作ってきた期間の方が遥かに長い。クラッシック音楽は10年以上、ロック・ミュージックも10年近く作ってきた。でも、エレクトロニック・ミュージックに携わってからは、まだ5年あまりしか経っていない。だから、次はジャズを探究し始め、その後8年間はジャズを作る可能性もあるし、映画音楽を作り始めるかもしれない。今は僕自身エレクトロニック・ミュージックが大好きだけど、年々と音楽の好みは変わっていく。だから、自分の音楽の好みが変わって、何か他のことに興味を持ち始めれば、音楽性を変えるかもしれない。

??トレンドとはまったく関係ないということですね。

ZEDD:今までもずっとそうだよ。現に「クラリティ feat. フォクシーズ」みたいな曲は、これまでラジオでかかることはなかった。けれど、ヒットしたからラジオでもかかるようになった。元々、ラジオでかけて欲しいと思って作った曲じゃないし。これからも自分のハートが導くままに音楽を作っていく。何が流行ってるか、そうじゃないか、っていうのは関係ない。だって、8年間メタルをやってたけど、メタルがクールっだったことはないし、それで有名になったわけでもないし(笑)。その当時、自分が情熱を持って取り組んでいたのが、メタルだったってだけなんだ。

ゼッド「トゥルー・カラーズ」

トゥルー・カラーズ

2015/05/20 RELEASE
UICS-1295 ¥ 2,420(税込)

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Disc01
  1. 01.アディクテッド・トゥ・ア・メモリー feat.バハリ
  2. 02.アイ・ウォント・ユー・トゥ・ノウ feat.セレーナ・ゴメス
  3. 03.ビューティフル・ナウ feat.ジョン・ベリオン
  4. 04.トランスミッション feat.ロジック & X・アンバサダーズ
  5. 05.ダン・ウィズ・ラヴ
  6. 06.トゥルー・カラーズ
  7. 07.ストレイト・イントゥ・ザ・ファイア
  8. 08.ペーパーカット feat.トロイ・シヴァン
  9. 09.バンブル・ビー
  10. 10.デイジー
  11. 11.イリュージョン feat.エコスミス
  12. 12.アイ・ウォント・ユー・トゥ・ノウ feat.セレーナ・ゴメス (マーク・ベンジャミン・リミックス) (日本盤ボーナス・トラック)
  13. 13.アイ・ウォント・ユー・トゥ・ノウ feat.セレーナ・ゴメス (フォックス・スティーヴンソン・リミックス) (日本盤ボーナス・トラック)

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