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天才ベーシスト、サンダーキャットが最新ミニAL、フライロー、ケンドリック、ドレイクを語る

サンダーキャット インタビュー

 超絶技巧ベース・プレイで、ジャズ界のみならず、様々なジャンルのアーティストを虜にする天才ベーシスト、サンダーキャットことスティーヴン・ブルーナー。ケンドリック・ラマーの最新作『To Pimp A Butterfly』をはじめ、これまでにエリカ・バドゥ、フライング・ロータスなどの作品に参加し、2011年にはフライング・ロータス主宰のレーベル<Brainfeeder>から『The Golden Age of Apocalypse』で待望のソロ・デビュー。その卓越したベースプレイはもちろん、ヴォーカルワークもさらに深みを増した表情豊かな2ndアルバム『Apocalypse』では喪失と再建を描き、さらなる評価を得た。常にシーンの最先端を走り続ける彼が今年6月22日にデジタル配信のみでリリースしたミニ・アルバム『The Beyond / Where The Giants Roam』をボーナス・トラック「Life & Death」とともに、12月9日に初CD化することが明らかに。アルバムはもちろん、ケンドリックとのコラボ、フライング・ロータスとの出会い、ケニー・ロギンズとマイケル・マクドナルドの髭(?)など、様々なトピックについて話してくれた。

それがジャズなんだ―
「こうしてみたら、どうなるんだろう?」って問うメンタリティーがね

Them Changes
▲ 「Them Changes」 (Live)

−−『The Beyond / Where The Giants Roam』のレコーディングはいつ頃から行っていたのですか?

サンダーキャット:『You're Dead!』の制作に参加していた頃から継続的に続けていたプロセスだったように感じる。ほぼ同じ時期にケンドリックのアルバム(『To Pimp A Butterfly』)と(フライング・)ロータスのアルバム(『You're Dead!』)の制作に携わっていて、その頃に起こったすべての出来事の副産物のようなものだね。ロータスとケンドリックのアルバムのためにとてつもないエネルギーを使った―自分でもっともっとアウトプットすることが可能だったんだ。
 あまり細かいことはあれだけど、何年も前から書いてた曲も多少あるんだ。物事がどうやって形になるか、なんて分からないからね。とにかく『You're Dead!』から『To Pimp A Butterfly』の制作過程を経て、形になった感じさ。
 音楽の流れが止まったことはないと思う―そのシームレスさが。いつだって曲は書いてて、ロータスやケンドリックにもアイディアを送ってた。みんなアルバムの制作に関わっているんだ―俺自身、自分の考えを率直に伝えるために常にみんなに音楽を送ることを心がけてたし。そういう面でアルバムに影響を与えたんじゃないかな、少しばかり両腕を広げ、オープンになることで。

Them Changes
▲ 「These Walls ft. Bilal, Anna Wise, Thundercat (Live)」 / Kendrick Lamar

−−『To Pimp A Butterfly』に携わることが自身の音楽に与えた変化はありましたか?

サンダーキャット:もちろん。携われて光栄さ。ケンドリック・ラマーのような才能あるアーティストと一緒に仕事できて嬉しいね。あれほどの“重量”に耐えるためには、オープンで恐れ知らずな人間である必要がある、って思うんだ。ケンドリックは、まるでエネルギーの塊のようだった。俺が何を聴いているのか、いつも知りたがった―「何聴いてるんだ?何やってるんだ?今プレイしてるそれは何だ?なぜプレイするのを止めたんだ?もう一回プレイしてみてくれよ。」って具合に。「何を口ずさんでるだ?どんなことを考えてるんだ?」って、ちょっと多めに瞬きした途端に「何を考えてるんだ?」って言ってきて。まるで、自分の頭の中に一緒にいるみたいさ。
  鮮明に記憶している最高な瞬間があって…俺がジョー・ヘンダーソンの「A Shade Of Jade」からマイルス・デイヴィスの「Little Church」をプレイした時に、彼は自分の髪をねじりながら、その場に立ちすくんでた。「ワォ」って顔しながら。気にいって、完全に気分がアガってるなって思ったね。それぐらいオープンマインドなんだ。彼が興味を持ちそうな曲を、よくプレイしていたね。
  それだけじゃなくて、(TDEのプロデューサー)サウンウェイブの隣に座って、作業するのだってそうだ。素晴らしいプロデューサー、ソングライターである彼と純粋な繋がりを築けたこと。一緒にサウンドやフリークエンシーを探究したんだ―最高だったね!その結果、従来の自分の歌い方やサウンドとは全く異なる曲をいくつか作った。それまで、ちゃんとした形がなくて―その方が好みの場合もある、なんていうかミステリアスな部分があって。でもそれがジャズなんだ―「こうしてみたら、どうなるんだろう?」って問うメンタリティーがね。みんなが気に入ってくれるといいね。

Them Changes
▲ 「Zodiac Shit」 / Flying Lotus

−−では、フライング・ロータスとの出会いについて教えてください。

サンダーキャット:【SXSW】で初めて会ったんだ。どの年かは忘れたけど、J・デイヴィのブルック・ドリューに紹介してもらって、とにかくすごくアツかった。お互い、相手について少し知っていて―むこうは俺のことをSa-RaやJ・デイヴィの作品を通じて知ってた。「なんか一緒にクールなものが作れるか、やってみようぜ。」って感じで、それが(フライング・ロータスのアルバム)『Los Angeles』がリリースされた直後だったかな。
  「やってみようぜ。」っていう、何か一緒にやりたいという気持ちはお互い一致していたけど、しばらく実現しなかった。なんせLAの連中はクレイジーだから―「君んとこのスタッフから俺たちのスタッフへ連絡をいれろ。」みたいな感じでさ―だからしばらく話はしてなかったんだ。初めて一緒に作った曲は、俺が憶えてる限り「Zodiac Shit」だったと思う。むこうからメールが来たんだ、俺がどんな作品にするか、まったく見当がつかないまま―単純にやってみる価値があるんじゃないかと思ったんだろうね。あれは今までで一番マジカルな瞬間だったと思う、マジで。君らは俺がドレスアップしてステージ上で演奏してるのを知ってるかもしれないけど、昔はインディアンの羽飾りを身につけて、自分のアパートを物を投げながら走り回ってた時期があったんだ―それで、あの曲を聴きながらダンスしたのを覚えてる、ダンスしながらレコーディングしたんだ。
  そこから一緒に作業し始めて出来上がったのが『Cosmogramma』を含める様々な作品の数々。共生的な関係に近くなっていったんだ、お互い物事に対する考え方が同じだったから。微々たることだけど、覚えてるのは、『Cosmogramma』の作業を始める前に、彼が(スタジオで)ビートをプレイして、独創的に空間と時間をワープさせながら、広げようとしていたこと。それをやりながら、テンポを遅めたり、早めたりしていて、どんなテンポに変えようとも俺が合わせてプレイしていたのに気づいて、「もっと早くプレイできるか?」って言ってきたんだ。俺は「もちろん、もっともっと早くしても大丈夫だ。やってみようぜ。」って答えた。気分的には「無限の彼方へ。サイコー!」って感じさ。それが始まりってわけさ。

−−まだ、コラボをしたことがない人で、やってみたい人はいますか?

サンダーキャット:あぁ、神とコラボレーションしたいね。神とコラボだなんて!インタビューの最後に言うようなことだな。

−−カニエ的な発言ですね。

サンダーキャット:(笑)。「イエスとコラボしてみたいんだ、マジかよ?靴のコラボなんかいいんじゃないか?」って、冗談さ。でも、インタビューのラストを飾る発言としては最高だ、それでトンずらする。マジな話だと、ケニー・ロギンズと…ドレイクと一緒に仕事がしてみたいね。

Successful
▲ 「Successful」 / Drake & Trey Songz

−−2人同時にですか?

サンダーキャット:史上最強にエモーショナルなバンドになるだろうな―オーマイガッド、ドレイクとケニー・ロギンズだって?それで俺がベースをするだって?最高じゃないか!アメリカ一“壊れた”音楽だ(笑)。ケニー・ロギンズは聴くよ―てか、彼になりたいんだ。マジな話で、マイケル・マクドナルドの髭と彼が歌ってるアルバムの中で食べてるサンドイッチ、それにケニー・ロギンズ…俺が髭を剃らないのは彼が理由なんだ。ケニー・ロギンズとマイケル・マクドナルド!それが俺が髭を剃らない理由、マジでだぜ(笑)。
  ドレイクは俺の大好きなアーティストの一人だ、そう言うのがクールだから言ってるんじゃない。俺が「ドレイクって、本当に最高だな。」って個人的に思った瞬間を思い出すね。トレイ・ソングスとやった、あの「Successful」って曲だ。
  曲を聴いた時に―なんだかすごく染みたんだ。本当にそんな感じだった。あの時は先が見えなくて…ひとつの曲であれほど自分をさらけ出すことができて、それを伝える方法も文字どおりリアルで―あれは並大抵の人間にできることじゃない。最近じゃ、何かしらあるとすぐ“meme”(インターネットミーム)になって、なんでも面白可笑しくしようとする世の中だけど、彼は自分のすべてを作品につぎ込んでる。彼のことは尊敬してるよ。それにドレイクの叔父はグラハム・セントラル・ステーションのラリー・グラハムなんだ。それって本当に最高じゃん。
  マドンナにキスされて、まるで彼女が自分の口の中でゲップしたかのような顔する奴なんていないよな?マドンナのキスが気に入らなかったのかよ?俺なんて、その辺の道端をキスさせられなきゃ文句はないよ。俺とは無縁な悩みさ―「マドンナにキスされそうになったんだ!」なんてさ。とにかくドレイクは最高さ。

Q&A by Natalie Weiner / 2015年6月22日 Billboard.com掲載

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