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新山詩織『ハローグッバイ』インタビュー
2枚目となるオリジナルアルバム『ハローグッバイ』を完成させた新山詩織。明らかにバラエティ豊かになったサウンド、ひとりではなく“誰か”と自分の関係性から描かれた歌詞など、ここには19歳の女の子が20代へと立ち向かっていく上での成長、それに伴う葛藤が丁寧に表現されている。今作に収められた楽曲たちについて話を訊いた。
私は次の新しい扉を開いて、新しい朝を迎えていくからね
--新山詩織には、スマホいじるならギターに触っていたい、みたいな女の子の印象があります。
新山詩織:そうですね。イマドキの女の子では……確実にない。--(笑)。本当はイマドキの女の子になりたい?
新山詩織:同じようになりたいとは思ってないです。今の自分……だからこそ音楽をやれてると思うし、どの曲も今の自分だからこそ歌えているものだと思うし、作詞の面でも、歌とか声の面でも、このままのスタイルでいいと思います。--そこに迷いはないんですか?
新山詩織:ふとしたときにあります。でもそれでいろいろ考えた後に辿り着くのは、「でも、これだから良いんじゃない?」。最終的にはそう思うような気がします。--デビュー2年目に突入している訳ですけど、デビュー前とデビュー後の自分。どんなところが変わったなと思いますか?
新山詩織:…………今回のアルバムにも繋がるんですけど、以前は学生生活と音楽がどっちもあって、その中で相手のことを想うというよりかは、自分のことをすごく想う。他のことに目を向ける余裕がなくて、本当に独りよがりな自分がいたと思うんですけど、それから1年2年経って、いろんな人と会って、学校も卒業して、自分の時間ができて、その中で昔の自分とか、あたりまえのようにいた友達とか、無くなってきた気がして、その分、自分じゃない別の誰かを想う時間がすごく増えた。そこから出てくる言葉とかも変わってきたと思うし、自分の中から出てくる気持ち=言葉はすごく変わったなと思います。--高校を卒業してからの1年強はどんな日々だったなと思いますか?
新山詩織:今、まだ19歳ではあるけど、二十歳に向かって、より大人に向かっていってる、社会人であって。自分に対しての周りの見方も変わってきてると思うし、その中で今まで以上に「しっかりしないと、やらないと」って気持ちもすごく出てきて、それで空回りすることも多々あったりしたけど、「これからもっともっと進んでいく」っていう段階を周りの人と作っていく、成長していく日々でした。--そうして完成した新山詩織の2ndアルバム『ハローグッバイ』。自身ではどんなアルバムになったと思いますか?
新山詩織:「とにかく誰かに今あるこの想いを伝えたい」っていう想いが1曲1曲にすごく詰まってる、詰め込めた1枚になってると思います。--1stアルバム『しおり』と比較するとどんな違いを感じますか?
新山詩織:…………ひとりじゃなく、私と誰かのふたりがいる。今までいろんな出来事と出逢ってきて、自分自身も新しい自分っていうものを見つけたい気持ちもあったりして。根本的な部分は変わらずに、よりもっと「あー、なんか、この人の歌いいなー」って興味を持ってもらいたいっていう気持ちも日に日に大きくなっていたから、その気持ちが『ハローグッバイ』にはかなり反映されていると思います。--「あー、なんか、この人の歌いいなー」って興味を持ってもらいたい。それはどんなときに思うようになっていったんでしょう?
新山詩織:いろんなアーティストさんと対バンする機会も多くなって、私のことを初めて知る人もその中にはたくさんいるから、そのライブはライブだけど、その前に曲と詞があって、それを届けるっていうことを考えたときに、もっと距離を縮められたらいいな、もっと寄り添えたらいいなって、すごく思ったり。それが2ndアルバムでもっと出来たらいいなって。--そんな2ndアルバムのタイトルを『ハローグッバイ』にしたのは?
新山詩織:10代から20代へ向かっていく。ということを意識して作った1枚でもあって、今までの独りよがりだった自分を……ひたすらもがいて悩んで乗り越えていく。前の自分とは一旦お別れをして、私は次の新しい扉を開いて、新しい朝を迎えていくからね。っていう想いから『ハローグッバイ』にしました。--今、新たに踏み出していく意識が強くある?
新山詩織:まさに今すごくあります。--それに相応しいアルバムが出来た実感はある?
新山詩織:今回も、私が作詞で、作家さんが作曲の形が多いんですけど、前作以上に、その元々あるメロディーに呼ばれて出てきたフレーズとか、そこで自分の新しい面が見られたりして。そういう部分でも新しい場所に進んでいけているような感覚を、詞を書いているときに感じたりもしたし、「誰かと一緒に創り上げていく」っていう意識もここにはちゃんとあって、新たなスタートを切るきっかけが出来たんじゃないかなっていう実感があります。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄
学生時代、すごく好きな人がいて……
--「誰かと一緒に創り上げていく」こととその結果として生まれる音楽は、新山詩織にとって新鮮で刺激的なものだったんですか?
新山詩織:言葉を、一番伝えたい言葉を書くっていうのは本当に難しいなってすごく思ったし、でも「こういうメロディーにこんなフレーズを乗せたら逆に切なくなるんだ」みたいな細かい部分も含めて、自分の表現において発見できたことがたくさんあって。このアルバムを作れて、完成させることができて良かったなって、自分の今後のことを考えても思います。--では、そのアルバムに収録された新曲たちに触れていきたいんですが、1曲目「Winding Road」。突然ノイズが入って音が遠くなったり、冷たい世界から温かい世界へと曲が展開していったりと、ドラマティックなナンバーですが、この曲にはどんな想いを込めているんでしょう?
新山詩織:今までの、もがいて悩んで乗り越えていく自分がすごく重なって。この曲は、これからどんな風に自分が生きていきたいか、進んでいきたいか。強い意志を歌っているというよりかは、それを手探りしていきながら、自分の道を探していくっていうイメージで書いていて。これから進んでいく道も決して綺麗で真っ直ぐなものでは絶対にないと思うし、今までもいろんな人や出来事に出会いながら、ぶつかりながらうねった道を進んできたなと思うし、その道が誰かが作った道であれ、自分だけの歌で塗り替えていくんだ。いけるよね?って自分に言い聞かせているようなイメージで書きました。--そこから2曲目「sunny day」へ続いていく流れが秀逸で。新山詩織がここまで爽やかで眩い曲を歌っていることに驚きました。自分ではどう?
新山詩織:可愛らしい曲。ちょっとコロっとした感じがあって、歌詞を書くにあたって「これは女の子の恋心だな」ってすぐ出てきたんですけど、自分の中学の頃の淡い片想いをそのまま書いた感じです。ちょっと想像も、妄想も混ぜつつ(笑)。学生時代、すごく好きな人がいて、でもそのときはなかなか積極的に動けず、ただ遠目から見ているだけ。そのまま卒業して、季節だけが流れて……ふとしたときにその想いを寄せていた人が目の前にパッと現れる。そのとき不思議と自信が湧いてきて、昔は言えなかったけど、今なら言えるかな?って。自分の場合は結局なかなか言えないんだろうなって思ったんですけど……でも同じ状況にいる人には「前に進んでほしい」って想いがあったので、最後は前向きな内容にしました。--そしてシングル曲「絶対」を挟んで「Dear friend」へ。綺麗なメロディのロックンロールです。自身ではどんな印象を?
新山詩織:この曲はがっつり前のめりな感じ。こういう曲調に逆に切ない、儚い歌詞を乗せたらグッと来るんじゃないかなと最初に思って、昔の思い出をいろいろ思い出しながら考えていたときに、地元の夏祭りに親友たちと行ったことを思い出して、その祭りの一番最後の〆が花火だったんです。その花火はパッと開いたらすぐ消えて、すごく儚い。友達と一緒に見ているときに、その花火が全部鳴り止んでしまったら、何気ない、他愛もないことを話しているこの時間さえ、全部無くなってしまうのかな。流れていっちゃうのかなと思ったときに、ちょっと寂しくなって。それでもこの関係はずっと続けていきたいなっていう想いを、実話をもとに歌にしてみました。--続いて、5曲目「好きなのに」。数々の女性アーティストやアイドルの名曲を手掛けてきた松隈ケンタ作曲のナンバーです。
新山詩織:デビュー前から制作していた曲なんですけど、今回のアルバムに向けて歌詞を書き換えて、今回のアルバムの中では一番大人な雰囲気の曲になりました。ザ・恋愛。これも曲調につられて切なさがすごく出てきた歌詞なんですけど、設定的には相手の男の子が自分の世界だけに熱中してて、女の子のほうは「たまには構ってほしい。こっち向いてほしい」っていう気持ちがあるけどそれを上手く伝えられない。それでときどきちょっと怒りに近い気持ちも出てくるんだけど、その人の何かに熱中しているところも好きだったりするから離れられない、その切なさ、もどかしさを書きたいなって思って。--今作は次の曲「気まぐれ」もそうですけど、新山詩織のイメージ的には珍しい恋の歌が多数収録されていますよね。
新山詩織:「より新しいものを書いてみたい」っていう想いがあって、1stアルバムでも「午後3時」みたいな恋愛寄りの曲はあったけど、もっと自分の同世代の人がリアルに共感できる、そっと寄り添って「大丈夫だよ」って恋愛の面でも言ってあげられるような詞を書きたいなとすごく思って。高校の頃の友達と久しぶりに会ったときに、その子の恋愛事情もいろいろ聞くようになって、その話を聞いていたときに感じたことも詞になっていたりします。--「きらきら」はどんなシチュエーションから生まれた曲なんでしょう?
※新山詩織「ドキュメンタリーフィルム・ダイジェスト"Road To Stage" Vol.2」
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Interviewer:平賀哲雄
それを思いっきり裏切れるようなライブにしたい
--あと、9曲目の「しおりのR & R」。何とも分かりやすいタイトルになっていますが、笹路正徳作曲のこちらはどういった経緯で生まれたんでしょう?
新山詩織:アルバムに入れる曲を決めるときに、ライブで盛り上がれる曲が1曲欲しいと思って、それから笹路さんと共作することになったんですけど、笹路さんから送られてきた曲が自分が好きで聴いているようなロックンロールで、ラフな感じの曲だったので、いざ作詞しようと思ったときにワクワクドキドキ感もあったけど、逆に「このメロディーに上手く自分の言葉を乗せられるかな?」っていう不安もありました。でも笹路さんとやり取りしながら、今までにない自分の表情とか歌い方を引き出してもらいながら作り上げていった感じです。--「相変わらず泣き虫な顔してるの?」とか、この歌詞は自分自身に対してぶつけているものだと思うんですけど、自分を俯瞰的に見て笑い飛ばせている感じが非常にロックンロール的だし、新山詩織の曲としては新しいと思いました。
新山詩織:自分を笑い飛ばすっていうのは、書いている中ですごく感じました。「泣き虫な自分を吹っ切ってやる!」みたいな感じはかなり出てる。それはこの曲に引き出してもらえたもので、明らかに他の曲とは色が違うんですけど、もうはっちゃけようと思って(笑)。こういう自分も自分なのかなって思いました。--そして「ありがとう」を挟んでクライマックスへ。11曲目「フィルム」には自身ではどんな印象を?
新山詩織:曲を聴いたとき、すごくクールなひんやりした若者が淡々と今の現実世界を走っていくイメージがあって、それを元に歌詞を書いていったんです。今までいろんな出来事があったけど、そこに時間を巻き戻せる訳はなくて、ただガムシャラにひたすら前を向いて走っていく。そこに今の自分もすごく重なるんですけど、結局はそのときそのときその場にいる自分が自分であって、だからこそ何か新しいものを探しに行くっていうイメージは強くあります。--で、最後の1曲「Hello」。この曲にはどんな想いを?
新山詩織:今回のアルバムで一番キーになる曲で、10代から二十歳に向かっていく上で、二十歳になる前夜を思い浮かべながら書いたんですけど、本当にいろんな人と出逢ってきたことによって、何かある度に自分のことを攻めていた自分を変えてもらったりとか、自分で変えようと思わせてもらったこともたくさんあって。より「そのままでいいんじゃない?」って言ってあげられるようになって、今までの自分を認めてあげられた気がして。こんなに自分の味方、いつも応援してくださるファンの方、家族、友人、自分を分かってくれる人がたくさんいるんだから、その人たちと一緒に手を繋いで、これから徐々に進んでいったらいいんじゃない?って言ってあげているような曲でもあります。--そういう感覚に辿り着けて、それを「Hello」という曲に出来たこと自体にはどんな感慨を持たれていますか?
新山詩織:良い方向に変わっていってるんだなってすごく感じたし、前みたいに後ろを振り返ってそれにすがりつくとかじゃなくて……もっともっと前に踏み出していける、自分にとっての自信っていうのがこの曲を書く中でも出てきたりして。自分にとって新たな大切な曲になったなってすごく思います。--以上12曲入りの2ndアルバム『ハローグッバイ』。聴く人にとってどんなアルバムになってくれたらなと思いますか?
新山詩織:新しいことに挑戦しようとしている人、これからもっと自分の新しい世界を広げていきたい人も、ひとりだけで考え込むことがあると思うんですけど、そういうときに自分の周りをじっくり見てみて、そばにあったかい人、信じられる人っているんだなって気付くことによっていろんなことを乗り越えていけると思うんです。そういう一歩前に足を踏み出すきっかけになってくれたらいいなって思います。--そんなアルバムを携えたツアーも決定しています。今作がカラフルな作品であるだけにライブも色彩豊かな内容になるのかなと思ったりもしたんですが、自身ではどんなライブができたらなと思っていますか?
新山詩織:いつもライブを観に来てくれている人は「どんなライブかな?」「どんなセットリストかな?」ってある程度想像しながら来ると思いますし、初めて観に来るっていう人も「新山詩織ってこんな人なのかな?こんな感じなのかな?」ってイメージしながら来ると思うんですけど、良い意味でそれを思いっきり裏切れるようなライブにしたい。その中でより新山詩織っていうものをもっともっとぶつけられるライブにしたい……するっていうのは決めてます。--今作『ハローグッバイ』を完成させた今の新山詩織は、どんなアーティストだなって感じていますか?
新山詩織:…………遠くにいるんじゃなくて、いつでも聴き手のそばにいる。何回も言ってるんですけど、寄り添っていられる人でいると思うし、これからもそうでありたいな。それはずっと変わらないです。Interviewer:平賀哲雄
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Interviewer:平賀哲雄
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