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音楽プロデューサー 島田昌典 インタビュー
aiko、いきものがかり、秦 基博、back numberなど、数多くのアーティストの楽曲アレンジおよびプロデュースを手掛ける島田昌典。チャートを通じて感じたこと、そしてヒット曲とは何なのかについて存分に語ってくれた。
シングルセールスだけでは見えない部分も多い
??島田さんは普段チャートを、ご覧になりますか?
島田昌典:今、音楽の聴き方が配信やストリーミングなど大きく変わってきて、それにあわせて世の中の音楽シーン自体が大きく変わりました。インディーズでも面白いバンドがどんどん増えてきましたし、チャートに入らないけどライブ動員がすごく多いアーティストもいます。そういう意味で、音楽の幅がとても広がってきましたし、シングルセールスだけでは見えない部分も多くなってきたなあと感じています。
??Billboard HOT 100は、ご覧になりますか?
島田:常にチェックしているわけではありませんが、気になるアーティストがいた時、どれだけアメリカで人気があるのか知るために見ることはあります。あと、ジャパンチャートを見ていると、洋楽もたくさんチャートインしているんですね。洋楽ファンとしては、嬉しいです。
??JAPAN Hot100には、シングルセールス以外に、ダウンロードやラジオ、ルックアップ、ツイート、そして6月3日からはYouTubeとストリーミングも取り入れました。
島田:先日、音楽ストリーミングサービスのAWAがスタートしましたが、日本でももっと増えてくると思いますし、他の国と同様にストリーミングが主流になる時代がくると思います。昨日もAWAのプレイリストを聴いていましたが、今まで出会わなかった曲にも出会えるし、そこから気になるアーティストをまた調べたり…。世界が広がりますよね。今までiTunesの自分のプレイリストの中だけだった世界が、誰かのプレイリストを通じて広がるのは楽しいですね。昔、CDショップで曲を探していたみたいに、ランダムに音楽がレコメンデーションされるのは、とても刺激的だし面白いです。
??新しいサービスの誕生というのは、島田さんのプロデュースの仕方にも影響しますか?
島田:そうですね。これからは売り方も、大きく変わっていくんだろうなと思っています。例えば誰が作ったプレイリストなのか、誰がオススメしている曲なのかが重要視される時代も来るのかもしれません。プレイリストも、どのシチュエーションで聴くためのプレイリストなのかなど、どんどん細分化されていってユーザーが気軽に選ぶような聴き方になるんでしょうね。そうなると、僕らはどうやってユーザーのアンテナに引っかかるかが重要になってきます。飽きられずに最後まで聴かれなくてはいけないわけですから。
??作曲の仕方にも、影響がありそうですね。
島田:冒頭で興味を引かないと、どんどんスキップされちゃうだろうし、イントロが長いと早送りされる可能性も増えますよね。Aメロ前にサビを使う“サビ頭”などの手法は昔からありますが、もっとユーザーを意識するような作り方になるんだろうなと思います。そして、また新しいチャートも出てくるでしょうし、世代に合わせたチャートなど細分化されたチャートも出てくるかもしれませんね。
??ビルボードは、日米ともに“売上”=“市場”と考えるのではなく、ラジオやYouTubeなどの音楽との“接触”を通じて、売上に繋がる可能性のあるユーザーも含めて“市場”であると考えています。
島田:そうですね。CDが売れた結果以外にもSNSで今、話題になっている音楽というのは、とてもリアリティのある音楽ですもんね。
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プロフィール
島田昌典
(音楽プロデューサー、アレンジャー、キーボーディスト)
自身のプライベートスタジオ「Great Studio」から数々のヒットソングを創作。aiko、いきものがかり、秦 基博、back number他数多くのアーティストの楽曲のアレンジ&プロデュースに関わる。ブリティッシュ、サイケデリック、バンドサウンド、アメリカのルーツミュージック、ストリングス&ブラスアレンジなど、幅広い音楽からのスピリットを融合させて生まれるポップサウンドは、音楽ファンのみならずアーティスト、ミュージシャンからも絶大な支持を得ている。
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