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【ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2015】総力レポート

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 今年で第11回目を迎えたクラシックの祭典【ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭】が、5月2日から4日までの3日間東京国際フォーラムを中心に開催された。前回までの時代や作曲家を切り口にしたテーマから一転、今年のテーマは「PASSIONS」。メインビジュアルも今までのポップなイラストから、想像力をかきたたせるような女性の写真へと一新された。3日間とも天候にも恵まれ、爽やかな5月の風とともに、恋のパシオン、祈りのパシオン、いのちのパシオンの3つの切り口で国内外のアーティストが熱演を繰り広げた。

【ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2015】

Photo:K.miura

5月3日

ドイツの若手ヴィルトゥオーゾ達「ザ・クラシカル・バンド SPARK」

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 リコーダー2本、ヴァイオリン、チェロ、ピアノというユニークな編成の、ドイツからやってきたヴィルトゥオーゾ5人組が、LFJ初日から2公演、大いに会場を沸かせた。その音楽的背景には、クラシックはもちろんのこと、ミニマル・ミュージックやロック、ワールドミュージックなどの幅広い要素がミックスされ、まるでジェットコースターに乗ったかのようなスリル満点のクールさで客席を巻き込んでいく。現在活躍中の作曲家をメインに据えた情熱あふれる「新世代室内楽」プログラム。最後は共に踊り出したくなるような躍動感で、多くの新たなファンを獲得したのではないだろうか。


バッハ・コレギウム・ジャパンによるバッハ「マタイ受難曲」

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 今回のラ・フォル・ジュルネのテーマ「パシオン」、初日の注目公演の一つとして据えられているのはJ.Sバッハによる「マタイ受難曲」。イエス・キリストが十字架にかかる「受難の物語」を描き出す、全3時間の公演時間となる大作だ。バッハ・コレギウム・ジャパンによる、2組のオーケストラと歌い手達からなる大規模アンサンブルを指揮したのは、長年オルガン・チェンバロ奏者として演奏に携わってきた鈴木優人。「熱狂の日」に相応しい若く瑞々しい指揮振りと、信頼に裏打ちされた精緻な響きに満たされようと、満杯の客席が一心に耳を傾けていたのが印象深いステージとなった。


イタリア古楽界の巨匠によるルネサンスの恋の歌

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 今年のテーマの一つである「恋のパシオン」。昔から恋愛にかかせないのは、音楽であり歌だ。イタリアを代表する古楽グループであるラ・ヴェネクシアーナと、クラウディオ・カヴィーナが、モンテヴェルディのマドリガーレを集めた公演を行った。地中海特有の芸術を守るべく名盤を数多く発表し、特にモンテヴェルディのマドリガーレ集については、録音史に輝く最高傑作としても名高いラ・ヴェネクシアーナ。そんな彼らの来日公演とあって、客席は多くのファンで埋め尽くされた。カヴィーナのチェンバロとともに、愛の気持ちを吐露した詞の数々が気品溢れるアンサンブルによって紡がれていく。「素敵な羊飼い」では「私を愛している?」と、「ええ、愛する人よ」という可愛らしい掛け合いが何度も繰り返され、思わず客席から笑みがこぼれた。


堤剛×若き精鋭たちによる20世紀の祈りの音楽

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 メシアンによる「世の終わりのための四重奏曲」に、日本の音楽界を長きにわたり牽引している堤剛(チェロ)と、成田達輝(ヴァイオリン)、吉田誠(クラリネット)、萩原麻未(ピアノ)という若き才能たちが挑んだ。本作は、メシアンが第二次世界大戦中、ナチス・ドイツの捕虜として収容されている際に作曲し、初演も収容所で行ったという非常に珍しい状況下で生まれた作品。同じ収容所に居合わせた音楽家たちと演奏するために作曲されたことから、チェロ、ヴァイオリン、クラリネット、ピアノというレアな編成で作られた。会場の中央にスポットライトが落ちると、張りつめた空気の中、吉田のクラリネットによる朝を告げる鳥の声で始まった。4人は互いに、色鮮やかで変化に富んだ音色を響かせ、客席もどんどん熱を帯びていく。第8曲「イエズスの不滅性への頌歌」で成田のヴァイオリンの音が消えてからも、会場内は興奮と静寂の入り混じった空気で、しばし満たされた。ホールD7の最終公演で22時を回っていたにも関わらず、拍手は鳴り止むことはなく何度もカーテンコールが続けられた。

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