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ミシェル・ブランチ来日記念特集~その足跡と国内SSWへの影響を振り返る

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 「エブリウェア」そして『スピリット・リーム』の大ヒットともに鮮烈なデビューを飾り、2002年にはサンタナとのコラボで【グラミー賞】を受賞、その後もカントリーやフォークといった自身のルーツを追求しつつ活動を続ける歌姫、ミシェル・ブランチ。そんな彼女が6月8日、9日の2日間に渡ってビルボードライブ東京にて来日公演を行う。時代を経ても色褪せない名曲の数々を、クラブ空間で楽しめる本公演に、いまから楽しみで仕方がないというリスナーも多いことだろう。

 今回は、そんな彼女のこれまでのキャリアをおさらいしつつ、彼女の音楽に影響を受けた国内女性シンガーソングライター、YUI、Rihwa、片平里菜の3名の活躍を通して、ミシェルが日本の音楽シーンに与えた影響についても改めて振り返ってみたい。たとえば、今“日本人女性シンガーソングライター”と言われて貴方が思い浮かべるアーティスト。そんな彼女も、きっとミシェルが居なければ、今とは違うミュージシャンになっていたかも知れない。そんな想像をしながら、ぜひ楽しんで欲しい。

 Rihwa、片平里菜からコメントも到着!

早熟の天才によるインディーズ・デビュー作『Broken Bracelet』

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▲『Broken Bracelet』

 ミシェル・ブランチは1983年アリゾナ州生まれ(日本人では宇多田ヒカルと同世代!)。アイルランド系の父親とインドネシア系移民とフランス人移民の血を継ぐ母親の間に生まれた。3歳の頃から歌をはじめ、8歳からはヴォイス・トレーニングをスタート。14歳で初めてのギターを手にすると、ソングライティングもスタート。高校中退を機に、音楽家としてのキャリアに集中するようになる。

 2000年、当時17歳のミシェルはセルフ・プロデュースのアルバム『Broken Bracelet』をインディーズ・リリースする。同作は現在でもiTunes等で購入できるが、その収録曲の多くが、ミシェルが14~15歳の頃、つまりギターを初めてわずか1年前後で書いた曲群だということを考えると、やはり最初から彼女は早熟の天才であったのだと断言できるだろう。さらに言えば、『Broken Bracelet』は、メジャー・デビュー以降のいかにも2000年代初頭らしいプロダクションが施されていない分、今でも新鮮に感じる部分の多い隠れた名作となっている。

<マーヴェリック>と契約&1st『スピリット・ルーム』でのブレイク

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▲ 『スピリット・ルーム』

 2001年、ミシェルは、あのマドンナが設立し、アラニス・モリセットも所属していた<マーヴェリック・レコード>と契約。メリッサ・エザーリッジやボニー・レイットのバンドでギタリストをつとめ、スティーヴィー・ニックスのプロデュース経験もあったギタリスト/プロデューサーのジョン・シャンクスをプロデューサーに迎え、メジャー・デビュー・アルバム『スピリット・ルーム(The Spirit Room)』をリリースした。このアルバムでシャンクスは、当時ブリトニー・スピアーズとの仕事で勢いに乗っていたマックス・マーティンの仕事をヒントに、ポップ・ミュージック的なダンス・ビートとロック・ギターの融合というアイデアを同作の中で試みた。(彼は後に、このアルバムのいくつかの曲のビートには、ヒップホップ系のビートメイカー御用達の機材であるMPC2000やドラムマシーンを多く用いたとも語っている。)

 その結果、アルバムは大ヒット。彼女の代表曲となった「エブリウェア」(全米12位)をはじめ、「オール・ユー・ウォンテッド」(全米6位)、「グッバイ・トゥ・ユー」(全米21位)と、シングル曲もことごとくヒットし、ミシェルの音楽はアメリカの若者を代表する声として、世間に広く受け入れられることとなった。

グラミー賞受賞~充実の2nd『ホテル・ペーパー』

「ゲーム・オブ・ラブ」
▲ 「ゲーム・オブ・ラブ」 MV

 続く2002年にはミシェルはサンタナとのコラボ・ソング「ゲーム・オブ・ラブ」をリリース。どちらかと言えば、マイナー調でエモーショナルな曲を得意とするイメージの強いミシェルだが、この曲ではポップで歯切れの良いサウンドに合わせて、若々しい歌声を披露している。結果的に同曲は大ヒット。ミシェルとサンタナはこの楽曲によって2003年のグラミー賞【最優秀ポップ・ヴォーカル・コラボレーション】部門を受賞している。

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▲ 『ホテル・ペーパー』

 そして、2003年、ミシェルはメジャー2ndアルバム『ホテル・ペーパー』をリリースし、自身最高位となる全米チャート2位を記録した。前作と同じくシャンクスがプロデューサーをつとめた同作からは、ポスト・グランジ色の色濃い「アー・ユー・ハッピー・ナウ?」(全米16位)などがヒット。また、ミシェルの長年の親友であり、2005年以降、ザ・レッカーズ(The Wreckers)を共に結成するジェシカ・ハープの参加も本作の特筆点となっている。

 

ザ・レッカーズ~幻の『West Coast Time』~そして、現在

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▲ 『スタンド・スティル
~ルック・プリティ』

 2005年、ミシェルはソロキャリアを中断、ジェシカ・ハープと新ユニット、ザ・レッカーズを結成する。ザ・レッカーズは、ミシェルの音楽のルーツでもある“カントリー・ミュージック”を演奏するバンドとして活動し、アルバム『スタンド・スティル、ルック・プリティ』とライブ・アルバム『Way Back Home: Live at New York City』をそれぞれ1枚リリース。その後、2008年に解散した。

 2010年には、ミシェルはソロで『Everything Comes and Goes』EPをリリース。同作が皮切りとなり、2011年内には新作アルバム『West Coast Time』がリリース予定と伝えられるも、残念ながら同作はその後もリリースされていない。

 そんなミシェルは現在、新たなアルバムをレコーディング中と伝えられている。2013年には自身のTwitterで、スウェーデン人プロデューサーで、ジェイミー・カラムやメアリー・J・ブライジとの仕事でも知られるマーティン・テレファとレコーディングを行っていることを明かしている。また、つい先日には同じく自身のTwitterで以下のような意味深な発言も。ミシェル・ブランチの新しい音楽は、私達が思っているよりも直ぐそこまで来ているのかも知れない。6月の公演は、早熟の天才が歌う数々の名曲と、その現在進行形を堪能する絶好の一夜になるかも知れない。

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