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「様々なことを経験してきたから、書くことがたくさんあるの」― セイント・ヴィンセント 最新インタビュー
2014年にリリースされた『セイント・ヴィンセント』で世界的に大ブレイクしたNYを拠点に活動する女性シンガーソングライター、セイント・ヴィンセントことアニー・クラーク。同作で【第57回グラミー賞】の最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバムを授賞した彼女が、現地時間4月29日に音楽の権利保護を目的とした著作権管理団体ASCAP(American Society of Composers, Authors and Publishers=米国作曲家作詞家出版者協会)が主催する【ASCAPポップ・ミュージック・アワード】で、音楽界の未来を切り拓いたアーティストに贈られる<ASCAP Vanguard Award>を受賞した。過去にベック、ビョーク、アーケイド・ファイア、ケンドリック・ラマーなどに贈られたこの賞に対して「とっても嬉しい。過去に受賞したアーティストたちは私にとってヒーローのような存在だから。」と語るアニーに、授賞式に先駆け話を訊いた。
様々なことを経験してきたから、書くことがたくさんあるのよ
▲ 「Digital Witness (Live On Letterman)」
??この度<ASCAP Vanguard Award>を受賞しますが、ASCAPのような音楽出版権利団体は、アニーにとってどんな意味がありますか?
アニー・クラーク:今の時代、プロのミュージシャンとして活動するのを容易にしてくれる。なぜなら、彼らはいつだってアーティストの味方をしてくれるから。発行している雑誌の表紙に私を起用してくれたり、これまでずっと親切にしてくれた。こうやって表彰してもらえて、とても光栄だわ。
??ASCAPと契約を結ぶことは、あなたにとって何を象徴しましたか?
アニー・クラーク:まだレコード契約もなくて、曲を書きながら、セイント・ヴィンセントを“形成”していた駆け出しの頃、一番最初に登録したものがASCAPだったの。印税とかそういうのを受け取る以前の話だけど、オンラインでASCAPに登録して、お財布の中にメンバー・カードを入れてたことで、自分がプロだ、って感じがした。だから、私にとって“プロ”のミュージシャンになったという初めての証しってとこね。
??ASCAPから一番最初のチェックを受け取った時のことって、憶えてますか?
アニー:多分1stアルバムをリリースした頃(2007年の『マリー・ミー』)。月に400~500ドルだったかな、もっと多い時もあったけど、家賃が払えるか、払えないかっていう時に足しになったのは大きかった。今はそんなギリギリの生活はしてなくて、それには感謝してるけど、今でもとっても役立ってる。
??ASCAPの登録IDは何にしたのですか?
アニー:ネイル・ポリッシュ・マニフェスト・ミュージック(Nail Polish Manifesto Music)。デビュー作をリリースする前で、まだ大学に通ってた頃だから、すっごくライオット・ガールな名前よね(笑)。
??仮に登録名を変えれるとしたら、何にしますか?
アニー:分かんないけど、少なくともクラウトロックのレベルに達するようなものにする。ネイル・ポリッシュ・マニフェスト・ミュージックじゃなかったら何でもいいわ。
▲ 「How I Wrote That Song: "Teenage Talk"」
??TVシリーズ『Girls』の新シーズンに起用された新曲「Teenage Talk」はアニー自身の高校時代にインスパイアされた曲ということですが、プロムの思い出ってありますか?
アニー:私のプロムはカジノがテーマだったと思う。ブラックジャックとジェームズ・ボンドとかかな。相手はダグって子だったんだけど、事前に死ぬほど酔っぱらったのを憶えてる。そういうダンス・パーティーがある度に、特定のお酒を選ぶの。ヴァレンタインの時はジン&トニックで、プロムはマルゲリータだったかな。その頃だから、コアントローと新鮮なライム・ジュースってわけにはいかなくて、サイアクなテキーラとマルゲリータ・ミックスだった。車の中で飲み過ぎて、会場に着いてすっごくお腹が痛かった記憶があるわ。テキサスではやっちゃいけないことだから、多分言わない方が良かったかもしれないけど、郊外で育つと当たり前のことなの。
??「Teenage Talk」は、この頃についての曲なのですか?
アニー:あの曲は、私の親友である3人の女子へのオマージュよ。学校のロッカーに押し込められたりはしなかったけど、完全に浮いてたし、アウトサイダーだった。他の生徒は結構保守的だったけど、私たちはやかましくて、ベンチの裏でマリファナを吸ってる感じだった。その頃の人生の目的と言えば、音楽を聴くことと映画の台詞とかを引用すること。それが生きがいだったの、お互いを笑わせることがね。今でも仲良しで、私がこれまで出会った中で一番可笑しな人々の部類に入るわね。激動の高校時代はそうやって自分たちを守ってたわけ―チアーリーダーが練習してるのを横目にピンク・フロイドとローズ・オブ・アシッドを聴いて…混沌してる感じね。
??先日、最新作のデラックス・エディションを発売したばかりですが、次回作の方向性については考えていますか?
アニー:曲は常に書いてる。それが何になるかっていうのはまだ自分でも理解できてないけど、曲は書き続けてる。様々なことを経験してきたから、書くことがたくさんあるのよ。
??音楽リスナーとして、最近気に入ってる作品はありますか?
アニー:ディアンジェロの新作は頻繁に聴いてる。それとケンドリック・ラマーの最新作。後はカンの『エーゲ・バミヤージ』とか、昔から大好きな作品をまた聴き直してる。今、クラウトロックをさらに探究してるの。
Q&A by Andrew Hampp / 2015年4月29日 Billboard.com掲載
"Birth In Reverse" MV
リリース情報
関連リンク
セイント・ヴィンセント(デラックス)
2015/04/08 RELEASE
HSU-12001 ¥ 2,640(税込)
Disc01
- 01.RATTLESNAKE
- 02.BIRTH IN REVERSE
- 03.PRINCE JOHNNY
- 04.HUEY NEWTON
- 05.DIGITAL WITNESS
- 06.I PREFER YOUR LOVE
- 07.REGRET
- 08.BRING ME YOUR LOVES
- 09.PSYCHOPATH
- 10.EVERY TEAR DISAPPEARS
- 11.SEVERED CROSSED FINGERS
- 12.BAD BELIEVER
- 13.PIETA
- 14.SPARROW
- 15.DEL RIO
- 16.DIGITAL WITNESS (DARKSIDE REMIX)
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