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セルジオ・メンデス特集 powered by 『ラティーナ』
いよいよ来月6月に1年ぶりの来日公演を行うセルジオ・メンデス。ブラジル音楽だけでなく、いまや世界のポップス界のスターである彼だけに、これまで残して来たのは名盤の数々ばかりではない。
今回はそんなセルジオ・メンデスの“名言”にフィーチャー。今年で創刊63年を誇るコンテンポラリー・ワールド・ミュージック・マガジン『ラティーナ(Latina)』の協力のもと、その膨大なバック・カタログからセルメンのインタビュー・コメントを引用、90年代編、2000年代編と2ページに渡り、その時代時代の彼の作品とともにご紹介したい。
各々の名盤の魅力はもちろん、彼がその時々にどんな気持ちで作品を創ってきたのか、その深く広い創作の背景のダイジェストとして見渡して頂ければ幸いだ。
『ブラジレイロ』(1994)
今、僕にはパッションがある。アルバムもすごく良いのものに出来たしね。実は去年、父が亡くなり、その後地震で家が潰れてしまったし、母が心臓発作で倒れてしまった。いいこともあり悪いことも続けざまに起きたよ。フジ(彼の愛犬である秋田犬の名前)もガンで手術したしね。いったい何なんだろう。でも、それが人生さ。ただ、音楽は救済してくれるんだ。(1994年11月号より)
まずは、94年に発表した『ブラジレイロ』から。本作は、カルリーニョス・ブラウンやギンガといったブラジル人作曲家を招き、80年代のポップな作風から離れ、ブラジル色の強く出た作品として高く評価された。セルジオ自身もインタビュー内で、本作について「とにかくブラジルに行き、ブラジルで時間をかけてアルバムを作ること」がポイントだったと語っている。
今回、引用したコメントは、会話が自身の人生と音楽の関係に話が及んだ時のもの。「音楽は救済してくれる」という発言に、彼の音楽に込める思いの強さが感じられる。
『オセアーノ』(1996)
とても悲しかった。すごく好きな友達だったし…今回『オセアーノ』に「黄金の月」を選んだのも、ジョビンのレパートリーの中で、これは私の最も好きな曲のひとつだから。(1996年9月号より)
『オセアーノ』は、前作『ブラジレイロ』のコンテンポラリー路線を引き継ぎつつ、カエターノ・ヴェローゾや、アントニオ・カルロス・ジョビンなどが作曲した“ブラジルのクラッシク”とも言うべき楽曲も積極的に取り上げた一枚。
コメントは1994年、『ブラジレイロ』リリース後、セルジオが日本ツアーをしている最中に亡くなったジョビンと、自身の関係に話が及んだ時の発言。セルジオいわく、自身のキャリアの初期に「絶大な」影響を与えたジョビンの曲を取り上げた当時の心境が伝わってくる。
創刊63年、今なおカッティング・エッジな世界の音楽を紹介する
『ラティーナ』の魅力
2000年代編に入る前に、ここで『ラティーナ』について簡単にご紹介。もともとは『中南米音楽』という名称で、主にタンゴの専門雑誌として知られていた『ラティーナ』。現在の名称に変更したのは1983年5月号より。以後、中南米の音楽を中心に、ワールド・ミュージックを紹介する雑誌として、現在まで刊行を続けている。
その内容は、というと、2015年も、1月号の<ブラジル・ディスク大賞>にはじまり、濱瀬元彦×菊地成孔の対談記事や、ホルヘ・ドレクスレルやアントワーヌ・ロワイエのインタビュー、そして、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ特集など、王道からカッティング・エッジなものまで、幅は広く、かつ、“コンテンポラリー”という肩書に相応しい切り口で音楽を紹介している。
現在発売中の最新号は<私の好きなピアニスト>特集ということで、名だたる執筆陣が今注目すべきピアニストを紹介している。表紙絵はブラジル人歌手、ヴァレリア・ロバォン。いま、世界の音楽界で何が起きているのかをチェックしたい、という人は是非チェックしてみよう。
ビルボードライブ公演情報
セルジオ・メンデス
日時:2015年5月26日(火)・27日(水)・28日(木)
会場:ビルボードライブ東京 ⇒詳細はこちら
日時:2015年5月30日(土)
会場:ビルボードライブ大阪 ⇒詳細はこちら
関連リンク
セルジオ・メンデス オフィシャルサイト http://www.universal-music.co.jp/sergio-mendes
『Latina』 ウェブサイト http://www.latina.co.jp/
『タイムレス』(2006)
例えば、「マシュ・ケ・ナダ」のようなブラジルの古い曲を若い世代に紹介するというのはあのアルバムのポイントだったわけだけど、実際に『タイムレス』は若い人たちからポジティブに受け止められ、熱烈な反応が返ってきたからね。その事実は本当にうれしかったし、自信にもなった。(2008年3月号より)
『オセアーノ』以降、実に10年もの間、アルバムをリリースしてなかったセルメンが2006年に発表した復活作にして、2000年代以降のリスナーにとっては、おそらく最初のセルメンとの邂逅となった作品。当時、ブラック・アイド・ピーズで全盛を極めていたラッパー/プロデューサーのウィル・アイ・アムも参加し、世界中で大ヒットをおさめた。
コメントは次作『モーニング・イン・リオ』ツアーの来日時に、『タイムレス』を振り返ってのひと言。伝統とモダン、ブラジルと非ブラジルの駆け引きはセルメン・サウンドの駆動源でもある。
『モーニング・イン・リオ』(2008)
最初、とにかくまずはブラジルに行こう。ブラジルに戻ろうと思った。そこを出発点にしようとし、そうすれば何かが生まれるだろうと考えたんだ。(2008年3月号より)
前作『タイムレス』の成功を受けて、ブラジル音楽の豊かな財産を、モダンなダンス・ビートでアップデートする基本路線はそのままに、よりブラジル寄りの、より幅広いゲスト音楽家と組んで制作された一枚。Dreams Come Trueの吉田美和もゲスト参加。
コメントは『モーニング・イン・リオ』の制作の過程について語る中でのひと言。周期的にブラジル回帰を志向するセルメンだが、やはり“ブラジル”こそが、彼のクリエイションの原点であることを改めて実感する。
『ボン・テンポ』(2010)
最初に私が音楽を作るとき、私はその曲を好きにならなくてはならない。自分が好きじゃない曲を誰かに愛してくれというのは無理だからね。そして次の段階では、その曲を自分なりに表現していく。さらに、できあがったところから自分の中で現代にマッチしたアレンジをしようとしているんだ。(2010年5月号より)
前作『モーニング・イン・リオ』以降、さらにルーツへの回帰を深めた通算38作目。
コメントは自身の作曲法に話が及んだときのひと言。伝統的なブラジルの音楽にモダンな要素を取り入れることで2000年代の大ブレイクを遂げたセルメンだが、その作曲の根幹にあるシンプリシティに、改めて作家の個性を感じるひと言だ。
『マジック』(2014)
この言葉に出会うまで、沢山考えたんだ。人生はマジックに溢れているし、ぼくにとっては音楽において特にそうだ。(2014年7月号より)
現時点での最新作。ウィル・アイ・アムらアメリカ勢、セウ・ジョルジュらブラジル勢など多彩なコラボで作っている点は近作と同じだが、過去曲の再録ではなく新曲を中心にしている点で一線を画している。そんな中、唯一過去曲の再録となった「ソウ・エウ」が、セルジオが若い頃に学んだ音楽の先生だった、というエピソードは胸にくるものがある。
コメントは新作のタイトル、そしてコンセプトについて聞かれての発言。『マジック』。それは彼の人生観と音楽観が集約されたひと言なのかも知れない。
ビルボードライブ公演情報
セルジオ・メンデス
日時:2015年5月26日(火)・27日(水)・28日(木)
会場:ビルボードライブ東京 ⇒詳細はこちら
日時:2015年5月30日(土)
会場:ビルボードライブ大阪 ⇒詳細はこちら
関連リンク
セルジオ・メンデス オフィシャルサイト http://www.universal-music.co.jp/sergio-mendes
『Latina』 ウェブサイト http://www.latina.co.jp/
マジック
2014/06/18 RELEASE
SICP-4140 ¥ 2,640(税込)
Disc01
- 01.ワン・ネイション feat.カルリーニョス・ブラウン
- 02.マイ・マイ・マイ・マイ・ラヴ
- 03.ドント・セイ・グッバイ feat.ジョン・レジェンド
- 04.ソウ・エウ feat.セウ・ジョルジ
- 05.ホエン・アイ・フェル・イン・ラヴ feat.グラシーニャ・レポラーセ
- 06.メウ・リオ feat.マリア・ガドゥ
- 07.マジック feat.スコット・マヨ
- 08.サンバ・ヂ・ホーダ feat.アイラ・メネゼス&グラシーニャ・レポラーセ
- 09.アトランティカ feat.アナ・カロリーナ
- 10.オーリャ・ア・フーア feat.ミルトン・ナシメント
- 11.ヒドゥン・ウォーターズ feat.グラシーニャ・レポラーセ
- 12.シンボーラ feat.カルリーニョス・ブラウン
- 13.ドント・セイ・グッドバイ (radio version) feat ジョン・レジェンド <日本盤ボーナス・トラック>
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