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大塚 愛『LOVE TRiCKY』インタビュー

大塚 愛 『LOVE TRiCKY』 インタビュー

嫌悪感から「大塚 愛の音楽は聴かない」って
言ってる人にノックできたら

 そう語る今回のインタビューは、いつにも増してぶっちゃけモード全開。普通のアーティストだったら間違いなくカットされるであろう話も、ここにはそのまま記してある。それは構想12年をかけて完成に至った『LOVE TRiCKY』の自由度の高さと比例してるように感じる。昨年末の【AIO PIANO vol.2】で、ピアノ弾き語りワンマンライブと銘打ちながらドゥンドゥンドゥン♪とエレクトロサウンドを響かせたあの瞬間から、大塚 愛は誰にも止められない怪物となった。

 さあ、大塚 愛が好きな人はもちろん、大塚 愛が嫌いな人もぜひこのインタビューを読んでいただきたい。そして、出来ることなら世界中に『LOVE TRiCKY』を拡散させてほしい。

「オシャレは大衆性ではない」~Perfumeのブレイク、そして……
--7thオリジナルアルバム『LOVE TRiCKY』が完成しました。今作を紐解くにはまず昨年末の【AIO PIANO vol.2】まで遡る必要がありますよね。

※大塚 愛 ai otsuka / 『LOVE TRiCKY』MUSIC CLIPS
※大塚 愛 ai otsuka / 『LOVE TRiCKY』MUSIC CLIPS

大塚 愛:そうですね。

--ピアノ弾き語りワンマンライブを銘打ちながら、アンコールではエレクトロモード全開のアレンジを施した新曲や「ユメクイ」「さくらんぼ」等を連発。どうしてああいう展開にしたんでしょう?

大塚 愛:「reach for the moon」という未発売の曲をやりたいなということで、あれをライブでやるってなると、あれは打ち込みの音楽なので、それに合わせた流れを組んだ感じです。ただ、阿部くん(STUDIO APARTMENTの阿部登。最新アルバム『LOVE TRiCKY』のサウンドクリエーター)と2人でやるのはなんとなく恥ずかしかったので、生のベースを入れた3人体制にしました。というところから始まってます。

--お客さんからすると「あれ、ピアノ弾き語りライブじゃないの?」という驚きもあったと思うんですが。

大塚 愛:でもピアノは弾いているので。別に間違いではない……ピアノさえ弾いていれば! あと、ああいうライブだと「寝る人がいるんじゃないかな?」と思ったので、それで叩き起こす的な。「もう終わりますけど!」みたいな。親切感からああいう流れにしました(笑)。

--それが今作への伏線になっていたと思うんですが、そもそも『LOVE TRiCKY』のようなエレクトロ基調のアルバムを作ろうと思った経緯は?

※大塚 愛 / 360゜
※大塚 愛 / 360゜

大塚 愛:いわゆるカラオケで歌う系の曲じゃないもの。それをずっとやりたかったんです。ただ、デビュー当時は「オシャレは大衆性ではない」っていう判断だったんですよ。日本ではオシャレが大衆向きではなくて、カラオケで歌いやすいものだったり、当時はまだまだ歌手優勢の時代だったので、シンガーソングライターというより歌手が歌っているものをみんなでカラオケで歌う時代に思えて。そこで私がオシャレ系の曲でデビューしたところで、聴いてもらえる機会はおそらく少ないだろうと。で、当時はとにかく売れることが一番の目標だったので、そっち系の曲はとりかえず1回置いておいて、カラオケで歌えるもの。いわゆるJ-POP、王道をやるって選択したんですよね。でもそういう自分の好きな音楽性のものはアルバムとかにちょっとずつ散りばめながら、なるべく反対側に移行できるようにゆっくりゆっくり5thアルバム『LOVE LETTER』(※発売当時のインタビュー)へ向かって進んでいたんですけど……とは言え、普通に自分の声でエレクトロをやるっていうのが合ってるのか、合ってないのか、そのときはイマイチ分かってなくて。だったらもうちょっと声が変わってしまったほうが面白いなと思って、別名義でそういうエレクトロの曲を出したりしてて。

--なるほど。

※Rabbit / 裸人
※Rabbit / 裸人

大塚 愛:ただ、それをやってたら、Perfumeが同じようなことをやって爆発的に売れちゃって、「あ、私、これまたパクりみたいに言われるな」と思ってすぐやめたんです(笑)。そのまま止まっちゃったんですけど、自分の声を変えずにエレクトロで成立させられる方法をずっと模索はしていて、Rabbitっていう集団に参加したときに、エレクトロに自分の声をどう遊ばせて乗せることができるかっていうことに挑戦したら、自分の中では上手くいったんです。「これは出来るな!」っていうところで、それを一緒に創ってくれる人を探して、今回の『LOVE TRiCKY』が出来たっていう。

--時間かけましたねー!

大塚 愛:フハハハハ!

--デビュー当時から目指していた音楽だと捉えたら、構想12年ですからね。その待望の作品をSTUDIO APARTMENTの阿部さんと創ろうと思ったのは?

※STUDIO APARTMENT - 6th ALBUM「にほんのうた」ダイジェスト映像
※STUDIO APARTMENT - 6th ALBUM「にほんのうた」ダイジェスト映像

大塚 愛:いろんな人に対してアンテナを張っていたんですけど、阿部くんの人柄とかを耳に聞いたりして、その中で実際に連絡先をゲットして、いざ連絡してみたら本当にすごく良い人で。「発売できるかどうかまだ確定していないんですけど、それでも私と曲を作ってくれませんか?」って言ったら、即答で「いいですよー!」みたいな。「良い人すぎるだろ!」っていう感じで始まりました。

--STUDIO APARTMENTの阿部さんに対してはどんな印象を?

大塚 愛:オシャレだなー!

--実際に組んでみていかがでしたか?

大塚 愛:うーん……とにかく目が大きい。

--(笑)

大塚 愛:常にビックリしているような顔で、「あ、今日もビックリしてんだなー」みたいな(笑)。私、結構人見知りだから、交わるまでがなかなか長いんですけど、阿部くんの柔らかい人柄とビックリした顔のおかげで、最初から居心地が良かったというか。どんどん話を聞いてくれるし、どんどんリターンも早めにくれるし、すごくやりやすかったですね。自分が「こういうことをやろうと思う」というものがAパターンだとしたら、「Bパターンも考えてみたよ」って全く別のものも提案してくれたりして、「あ、それもいいね。幅も広がるし」ってなったりする。なので、すごくラッキーな出逢いだったなって。

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大塚 愛への嫌悪感「聴いた事もない曲を「パクっただろ?」と言われたり」
--阿部さんからしたら大塚さんと音楽を創るってどんな気分なんですかね?

大塚 愛:あ、まだそれは聞いたことない! 本音はどうなんでしょうね? 「このクソ女が!」って思ってるかもしれない(笑)。

--そんな風に思ってる人とこんな傑作生み出せないでしょ(笑)。今作の要のひとつ「reach for the moon」の仕上がりにはどんな印象を?

大塚 愛:タイアップが先に決まってて、いろんな曲を最初に提案したんですけど、オシャレなものはダメで、なるべく歌謡曲的なものを希望されていて。なので、「reach for the moon」はこの10曲の中で一番歌謡っぽいものになってるはずなんです。この曲だけ阿部くんのトラックを聴いてから私がメロディーを考えたものではなく、元々自分のストックにあったメロディーを持ってきて合わせてるんですよね。ただ、私は「オシャレなアルバムが創りたい」って思っていたので、そこからコードを変えたり、トラックも変えてもらったりして、なるべくオシャレにオシャレに調整しました。

--また、10,000人の心音やメッセージを収集したという話題曲「end and and ~10,000 hearts~」(NTT西日本 スマート光ハートビートプロジェクトソング)。実際に制作してみていかがでした?

※大塚 愛 ai otsuka / 「end and and ~10,000 hearts~」スマート光ハートビートプロジェクトソング
※大塚 愛 ai otsuka / 「end and and ~10,000 hearts~」スマート光ハートビートプロジェクトソング

大塚 愛:心臓の音を目立たせることがこんなにも大変なのかって。相当苦労しました。でもこの曲の制作以来、自分の娘の心臓の音を胸の上から聴いてみることが増えて。心臓の音って温かみがあって。打ち込みと生のドラムの音の違いのように、生の音からは温かみが出るんですよね。例えば、マッサージ器と指圧の差みたいに。それをダイレクトに感じさせてくれたのが心音で、それが入るだけでドキュメンタリーっぽい雰囲気が出る。エレクトロはクールというか、淡々としてたりとか、無機質でロボット的な感じなんですけど、心音が入るだけで急に人間っぽくなる。

--自分的には『LOVE TRiCKY』、どんなアルバムになったと感じているんですか?

大塚 愛:曲作りには2年ぐらいかかってるんですけど、レコーディングは1ヶ月ぐらいでバババッてやったんで、ゆっくりやっていたところと最後の畳み掛けのスピードの差が凄すぎて、長かったのか、短かったのか、よく分かんない。でもすごく面白くて、楽しかったです! 作り方が今までと全然違うし、自分以外の人が作ったトラックに合わせて自分の中の何かを引き出すっていうことも凄く面白くて。ソングライティングをやっていたというよりも、歌遊びをたくさんしたなーっていう感覚のほうが強いですかね。歌も楽器と言うか、シンセの一部みたいな感じだったので、コーラス入れるのも面白かったです。

--このアルバムを聴いて「今、大塚 愛ってこんなことやってるんだ?」と思うリスナーはたくさんいると想像できるんですが、どんな風に世に響いていったらいいなと思っていますか?

大塚 愛:うーん…………嫌悪感から「大塚 愛の音楽は聴かない」って言ってる人にノックできたらいいな。

--大塚 愛に嫌悪感を抱いているタイプってどんな人たちなんでしょうね?

大塚 愛:いやー、もうほぼだと思ってます。

一同:(笑)

--随分生きづらい世の中で音楽やってきましたね!

大塚 愛:フハハハハ!

--その中でよくここまで逞しく生きてきましたね、っていう話になりますよ(笑)?

大塚 愛:いっぱいいすぎちゃって、もう!

--まぁでもとにかく自分を嫌いな人間も振り返らせると。

大塚 愛:まぁでもこれでダメだったらまたシャッター下ろすんですけど(笑)。「ごめんなさい、まだでした。また来ます」みたいな。

--実際、一定の層に嫌悪感を抱かれている感覚を持ったまま活動してきたんですか?

※大塚 愛 / 桃ノ花ビラ
※大塚 愛 / 桃ノ花ビラ

大塚 愛:そうですね。最初はショックでしたよ。デビュー当時、ホームページが誰でもコメントを載っけられる仕様になってて、「聴きましたよー」「良かったです!」とか書いてあるのを読むのがすごく楽しみで。でもだんだんだんだんネガティブなコメントも増えてきたときの、最初の挫け様ったら半端なかったですよ。知らない間にとばっちり……私、昔からとばっちりが多いんですよね。会った事もない人と熱愛してることになってたり、聴いた事もない曲を「パクっただろ?」と言われたりとか。それで最初は心折れまくってたから精神的にもすごく不安定だったし……。だけども、だんだんと愛おしく思うぐらい、「あ、私、また怒られてるんだ(笑)?」「すみませんね、そんなことに労力使わせちゃって」みたいな。

--「いちいち嫌悪させちゃって、すみませんね」的な(笑)?

大塚 愛:そうそうそう。「しかも外に向けて発信したいとまで思わせてしまって、ごめんね」みたいな(笑)。「でも聴いてくれたんだ?」って思ったり。

--聴いてないと、知らないと何も言えないですからね。

大塚 愛:あと、私に対しての「ブサイク」とか「歌がヘタだ」っていうコメントには同意見なんで……若干「仲間?」みたいな。

--自分のことを悪く言われてんのに(笑)?

大塚 愛:「そうだよねー。あそこの顔、ブサイク。私もすごく思う」って。だから一緒に呑んだらすごく仲良くなれると思う(笑)。

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  2. 「何やってもそんなに売れないんだし、まぁいっか」みたいな(笑)
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「何やってもそんなに売れないんだし、まぁいっか」みたいな(笑)
--いつ頃からそういう心持ちになれたんですか?

※大塚 愛 / Is
※大塚 愛 / Is

大塚 愛:「Is」の頃ぐらいかなー? 今も毎日ヘコんでますけど、だんだん良い意味で諦めることを覚えたっていうか、ちゃんと背伸びしないで自分を見れるようになった。「そんなに凄い人じゃないんだから、そもそも。そんなにハードルを上げる必要ないじゃん?」って自分に対して。昔は「自分は凄い人になりたい」とか「今、私、注目されてるから落ちたくない」とか思ってて、気合いが入れば入るほどヘコむし、ツラいし、苦しかったけど、今は「何やってもそんなに売れないんだし、まぁいっか」みたいな(笑)。

--「じゃあ、何でも好きなことやってやれ」みたいなこと(笑)?

大塚 愛:好きなことやろーって。

--まさに開き直りですね。

大塚 愛:アハハハハ!

--でも「どう思ってくれても構わない」ってものが刺さることもありますからね。

大塚 愛:だから「そのうち、売上出そー」みたいな。

一同:(爆笑)

--ラクですねー(笑)。

大塚 愛:「ダメだったら、別の仕事探そー」みたいな。

--また大問題インタビューになってますよ、これ!

大塚 愛:いや、それぐらいの気持ちのほうが良いのかなって。「これしか選択肢がない」って思うとしがみつこうとするじゃないですか。そうするとどんどん苦しくなるんで、「ダメだったら別の仕事やればいいんだよ」ぐらいに思っていたほうが……

--たしかに音楽にとっては健全かもしれませんね。

大塚 愛:音楽も恋愛もそれが一番上手くいく。

--逆に今まで大塚 愛の音楽を愛聴してきたファンには、今作『LOVE TRiCKY』がどんな風に響いてくれたらいいなって思いますか?

※大塚 愛 ai otsuka / 『LOVE TRiCKY』MUSIC CLIPS
※大塚 愛 ai otsuka / 『LOVE TRiCKY』MUSIC CLIPS

大塚 愛:好みだったら響くだろうし、好みじゃなかったら「また今度」っていう。これを聴いて「昔のほうが良かった!」「前みたいな曲をもっとやってほしい!」って言われたとしても、「その気持ちは分かりました」ぐらいのスタンス。そこで「今のほうが良いじゃない!」って言おうとも思わないし。ただ、昔はもう戻ってこないですからね。どんなに求められたって、昔にはならないので。なので、今は「こういうアルバムが出来ました。聴いて好きになってくれる人がひとりでもたくさんいたらラッキーだな」っていう感じ。

--このアルバムを引っ提げたツアー【大塚 愛 LOVE TRiCKY LIVE TOUR 2015~ヘルシーミュージックで体重減るしー~】は、どんな内容になりそうですか?

大塚 愛:やっとね、見えてきたんですよー。いやぁ~、長いこと悩んだ。でも今までとはかなり……私が知る限りでは確実に斬新。今までにないライブ。「え、何これ?」みたいな。

--それは楽しみです。

大塚 愛:立食パーティーです。

--余計分かんなくなってきた(笑)。

大塚 愛:アハハハハ! テーマは「立食パーティー」です。多分、目で見ても驚くと思う。「なんだこれ?」って。それは、本当にどんなライブにするか決まらなくてピンチだったから、私の開き直りがまた回転して「だったら、これでいいよ!」って思ったことから生まれたものだったので、もし最初のプランが上手くいってたらこの斬新さは無かった可能性が高い。なので、「やっぱりいつも最終的には上手くいくようになってるんだなー」って思いました。

--今までも「こうしちゃえ!」ってものが結果的に「これ、新しいじゃん」ってなるケースは多かったんですか?

大塚 愛:私はデビューして1年経たずに恵まれてしまったので、多分、やりたいことが叶っていたほうだと思うんですよね。とっても。でも今はやれることがどんどん制限されるようになって、その狭まった選択枠をどう自分でひっくり返せるか。そういう思考回路になったのかなって思います。なので、今回のツアーはおそらく斬新だと思う。

--今回のアルバム『LOVE TRiCKY』で大きく舵を切った大塚 愛は、これからどうなっていくんですかね?

大塚 愛:ここから先4年ぐらいのシナリオはもう書きました。デビュー前から計画は立ててきたんですけど、今回も「これかな?」っていう感じで定まってきたので、あとはもう当てはめるだけかなっていう感じです。欲しい食材を揃えて、最後にでっかい料理を出す!みたいな流れになるのかなって。

--では、最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

大塚 愛:うーん……出来れば聴いて下さい。大塚 愛かどうかはどうでもいいんで! もう誰でもいいんです! とりあえず曲を聴いてみてください。そして皆さんで海外にバラまいてください(笑)。

--このCDを?

大塚 愛:私の知らないところでこのアルバムが流れてる、そんなトリッキーなことがあったら良いなーって。知らないところで勝手に盛り上がってたら面白いな。どこかの民族の間でめっちゃ流行ってほしい! マサイ族の村で大フィーバーとか(笑)。

Interviewer:平賀哲雄

Music Video
大塚 愛『LOVE TRiCKY』インタビュー 大塚 愛『LOVE TRiCKY』インタビュー 大塚 愛『LOVE TRiCKY』インタビュー 大塚 愛『LOVE TRiCKY』インタビュー

大塚愛「LOVE TRiCKY」

LOVE TRiCKY

2015/04/22 RELEASE
AVCD-93119 ¥ 4,400(税込)

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Disc01
  1. 01.タイムマシーン
  2. 02.laugh
  3. 03.summer lovely days
  4. 04.affair
  5. 05.I’m lonely
  6. 06.reach for the moon
  7. 07.shooting star
  8. 08.パラレルワールド
  9. 09.busy lady
  10. 10.end and and ~10,000 hearts~

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