大塚 愛への嫌悪感「聴いた事もない曲を「パクっただろ?」と言われたり」
--阿部さんからしたら大塚さんと音楽を創るってどんな気分なんですかね?
大塚 愛:あ、まだそれは聞いたことない! 本音はどうなんでしょうね? 「このクソ女が!」って思ってるかもしれない(笑)。
--そんな風に思ってる人とこんな傑作生み出せないでしょ(笑)。今作の要のひとつ「reach for the moon」の仕上がりにはどんな印象を?
大塚 愛:タイアップが先に決まってて、いろんな曲を最初に提案したんですけど、オシャレなものはダメで、なるべく歌謡曲的なものを希望されていて。なので、「reach for the moon」はこの10曲の中で一番歌謡っぽいものになってるはずなんです。この曲だけ阿部くんのトラックを聴いてから私がメロディーを考えたものではなく、元々自分のストックにあったメロディーを持ってきて合わせてるんですよね。ただ、私は「オシャレなアルバムが創りたい」って思っていたので、そこからコードを変えたり、トラックも変えてもらったりして、なるべくオシャレにオシャレに調整しました。
--また、10,000人の心音やメッセージを収集したという話題曲「end and and ~10,000 hearts~」(NTT西日本 スマート光ハートビートプロジェクトソング)。実際に制作してみていかがでした?
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※大塚 愛 ai otsuka / 「end and and ~10,000 hearts~」スマート光ハートビートプロジェクトソング
大塚 愛:心臓の音を目立たせることがこんなにも大変なのかって。相当苦労しました。でもこの曲の制作以来、自分の娘の心臓の音を胸の上から聴いてみることが増えて。心臓の音って温かみがあって。打ち込みと生のドラムの音の違いのように、生の音からは温かみが出るんですよね。例えば、マッサージ器と指圧の差みたいに。それをダイレクトに感じさせてくれたのが心音で、それが入るだけでドキュメンタリーっぽい雰囲気が出る。エレクトロはクールというか、淡々としてたりとか、無機質でロボット的な感じなんですけど、心音が入るだけで急に人間っぽくなる。
--自分的には『LOVE TRiCKY』、どんなアルバムになったと感じているんですか?
大塚 愛:曲作りには2年ぐらいかかってるんですけど、レコーディングは1ヶ月ぐらいでバババッてやったんで、ゆっくりやっていたところと最後の畳み掛けのスピードの差が凄すぎて、長かったのか、短かったのか、よく分かんない。でもすごく面白くて、楽しかったです! 作り方が今までと全然違うし、自分以外の人が作ったトラックに合わせて自分の中の何かを引き出すっていうことも凄く面白くて。ソングライティングをやっていたというよりも、歌遊びをたくさんしたなーっていう感覚のほうが強いですかね。歌も楽器と言うか、シンセの一部みたいな感じだったので、コーラス入れるのも面白かったです。
--このアルバムを聴いて「今、大塚 愛ってこんなことやってるんだ?」と思うリスナーはたくさんいると想像できるんですが、どんな風に世に響いていったらいいなと思っていますか?
大塚 愛:うーん…………嫌悪感から「大塚 愛の音楽は聴かない」って言ってる人にノックできたらいいな。
--大塚 愛に嫌悪感を抱いているタイプってどんな人たちなんでしょうね?
大塚 愛:いやー、もうほぼだと思ってます。
一同:(笑)
--随分生きづらい世の中で音楽やってきましたね!
大塚 愛:フハハハハ!
--その中でよくここまで逞しく生きてきましたね、っていう話になりますよ(笑)?
大塚 愛:いっぱいいすぎちゃって、もう!
--まぁでもとにかく自分を嫌いな人間も振り返らせると。
大塚 愛:まぁでもこれでダメだったらまたシャッター下ろすんですけど(笑)。「ごめんなさい、まだでした。また来ます」みたいな。
--実際、一定の層に嫌悪感を抱かれている感覚を持ったまま活動してきたんですか?
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※大塚 愛 / 桃ノ花ビラ
大塚 愛:そうですね。最初はショックでしたよ。デビュー当時、ホームページが誰でもコメントを載っけられる仕様になってて、「聴きましたよー」「良かったです!」とか書いてあるのを読むのがすごく楽しみで。でもだんだんだんだんネガティブなコメントも増えてきたときの、最初の挫け様ったら半端なかったですよ。知らない間にとばっちり……私、昔からとばっちりが多いんですよね。会った事もない人と熱愛してることになってたり、聴いた事もない曲を「パクっただろ?」と言われたりとか。それで最初は心折れまくってたから精神的にもすごく不安定だったし……。だけども、だんだんと愛おしく思うぐらい、「あ、私、また怒られてるんだ(笑)?」「すみませんね、そんなことに労力使わせちゃって」みたいな。
--「いちいち嫌悪させちゃって、すみませんね」的な(笑)?
大塚 愛:そうそうそう。「しかも外に向けて発信したいとまで思わせてしまって、ごめんね」みたいな(笑)。「でも聴いてくれたんだ?」って思ったり。
--聴いてないと、知らないと何も言えないですからね。
大塚 愛:あと、私に対しての「ブサイク」とか「歌がヘタだ」っていうコメントには同意見なんで……若干「仲間?」みたいな。
--自分のことを悪く言われてんのに(笑)?
大塚 愛:「そうだよねー。あそこの顔、ブサイク。私もすごく思う」って。だから一緒に呑んだらすごく仲良くなれると思う(笑)。
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Interviewer:平賀哲雄
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