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蟲ふるう夜に『スターシーカー』インタビュー
ロックシーンで命懸けの歌を届ける蟲ふるう夜に。昨年末にフィッシャー症候群に罹患した慎乃介(g)が順調に回復し、見事完成させてみせたアルバム『スターシーカー』には、サウンドプロデューサーとして松隈ケンタ(BiS、私立恵比寿中学、でんぱ組inc.ほか)を招聘。表題曲「スターシーカー」はamazarashi全曲を手がける出羽良彰のアレンジ。アルバムの最後を飾る「同じ空を見上げてた featuring GOMESS」はGOMESSをフィーチャリングと、豪華ミュージシャンが多数参加している。
そんな話題作の本質を探るべく、蟻(vo)の本音や本性を引き出すべく、今回は特別にお花見インタビューを敢行。お酒の影響か、若干このバンドのイメージを覆してしまうかもしれない部分もあるが、これもまた今の彼女であり、蟲ふるう夜にということで、温かい目でご覧頂きたい。
飛影&冨樫義博への愛語る~薬みたいな音楽に対する違和感、苛立ち
--本日はお花見インタビューということで、まずは乾杯しましょうか。
蟻:かんぱーい!--かんぱーい!
蟻:花見っていいなー。花見しながらインタビューって最高ですね。--酔っ払ってイメージをぶち壊さないようにしないとね(笑)。
蟻:でも、蟻はニコ生で大体呑んでましたから。--まずは花見っぽく世間話でもしましょうか。サザンの10年ぶりのニューアルバム『葡萄』がリリースされましたね。
蟻:10年ぶり?--今、蟲ふるう夜にが活動休止したら10年後にアルバム出せる?
蟻:忘れ去られてますよ(笑)。でもそういうことやってみたいですね。私、冨樫義博のファンで『HUNTER×HUNTER』が好きなんですよ。『HUNTER×HUNTER』はもはやしょっちゅう出てほしくないというか、むしろ休んでこそ冨樫先生。『HUNTER×HUNTER』を早く書けとか言ってる奴は、本当浅い人間だなと思ってますよ。「おまえはまだ冨樫先生の良さが分かってない」って。--『てんで性悪キューピッド』から読み直せと。
蟻:ハハハハ! 懐かしい(笑)。--『幽遊白書』も好きなんですよね。飛影ファンだったっけ?
蟻:最初、飛影は格好悪かったんですけど、中1では何とも思ってなかったのに中3になったらめっちゃ可愛く見えてくる感じで好きになって(笑)、19巻ではもう愛おしくてしょうがなかった。躯と一緒にいるんですよ。躯を酷い目にあわせた父親がいるんですけど、その父親をずっと刺し殺しても死なないような植物にして、それを「ハッピーバースデー」みたいな感じでプレゼントするんです。あれはシビれたー。私、躯も好きなんですよ! あ、これ、ちゃんと載せてもらっていいですか? 富樫先生に届くように! 私、富樫先生が好き過ぎて『ONE PIECE』も『NARUTO』も読むのやめたんですよ。浮気だなと思って。やっぱり『HUNTER×HUNTER』が終わるまでは……--桜の木の下で飛影&冨樫義博への愛を語っている一方で、気付いたら周りはリア充大学生ばかりですよ。いかがですか?
蟻:私は学生時代にこんな陽の当たる場所にはいなかった。公園にはいましたけど、桜の木の下で花見なんてしてなかったし、必死に衣食住を探してました。生きるのに精一杯で、雑草か私かみたいなところありましたから。--(笑)。まぁでも今は人に心を開くようになって……ここからちゃんとインタビューしますけど、それは前作『わたしが愛すべきわたしへ』から作品にも如実に反映されるようになりました。
※わたしが愛すべきわたしへ / 蟲ふるう夜に (Mushifuru)
--でも大概の大衆音楽はそういうものですよね。
蟻:そうですよね。その中でもとあるアーティストがすごく嫌いで、ムカついたんですよ。「こんな薬みたいな曲出しやがって!」と思って。聴いた瞬間はラクになるけど、またすぐにツラくなる。でも実際にその曲を聴くことによってラクにはなるから、そこに群がる人たちがいるんだけど、そのラクになった人たちの行き着く場所はどこなんだよ? みたいな。アンタたちがその行き場を指し示してくれるの? それっておかしいんじゃないの? って思ったときがあって。それで私は『わたしが愛すべきわたしへ』を書こうと思ったんです。で、まず最初に自分のことを好きにならないと、結局同じじゃんと思って。--誰かの為になんて程遠いわと。
蟻:そう。だからまず自分の為に出来ることを考え出して。で、未完成でも、不安定でも、そんな自分のことを好きになっていいよ、っていうメッセージは本当にみんなに向けたもので。多分、薬出されている人ってみんな自分のことが嫌いだと思うんですよね。嫌いで、それで落ち込んで、欝になって。でもラクになりたいから薬を飲む、そんな自分がまた嫌になる。その連鎖を断ち切りたいんですよね。で、その第一歩が『わたしが愛すべきわたしへ』。「フリーダム!」っていう収録曲なんて何の飾り気もないんですよ。サビで「どうしようもない!」って叫んでますから(笑)。--なんでそういう曲になったの?
蟻:今まで持っていた自分の武器が使えないって思った瞬間から裸になっちゃって、「どうやって戦うんだろう? 私はこれから」って思って。それで「どうしようもない!」って叫んだら、それがオッケーになった(笑)。--『わたしが愛すべきわたしへ』を出せたことで何か変わった?
蟻:変わりましたね。表題曲の「わたしが愛すべきわたしへ」をライブの一番最後にやるようになったし。でもそれを一番最後にやってるってことは、その次を見せなきゃいけないんですよ。その曲の次の自分を見せなきゃいけなくて、その自分ってどんな自分だろうなって思ったんですよね。で、今作『スターシーカー』を作り始めて、「それでも鳴らす」と「二十歳の朝」って曲が最初に出来て。それらの曲では、まず過去の自分を浄化しようと思って。「それでも鳴らす」は、高校生の自分が一人きりになったときに、でも音楽は救ってくれて、「一人ぼっちでも掻き鳴らすんだ、この音を」っていう想いを書いたんですけど、そのタイミングで慎ちゃん(慎乃介/g)が病気になって。- < Prev
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
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