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Bonobo 来日インタビュー
UKブレイクビーツの流れを根底に持つエレクトロニック系アーティストとして、いまやイギリスを代表する人気プロデューサーへと成長したボノボ(Bonobo)ことサイモン・グリーン。近年、その人気を着実に高め、いまや収容人数1万人規模のアレキサンドラ・パレスをはじめとするアリーナ級の会場で次々とツアーを行うほどの存在へと成長した。
そんな彼が3月6日(金)、7年ぶりとなる来日公演を行った。もちろん前売りチケットはソールドアウト。当日は、入場規制のため当日券の発売を一旦中止とした後もチケットを求めるファン数十人が集うという驚異的な人気の一端をここ日本でも見せつけた。
7年前と言えば、彼の躍進作となった2010年『Black Sands』のリリースよりもさらに前。まさにこの7年はボノボにとって、アーティストとしての存在感を高める時期と重なっていたはずだ。何故ボノボはこれほどまでの人気アクトへと成長したのか。その理由に迫りたい気持ちを胸に秘めつつ、ボノボに話を聞いた。
300回くらいショーを続けて、18か月くらいはずっとツアーバスの生活だった
??ライブのために来日されるのは7年ぶりとのことですね。
ボノボ:そうだね。この2年間ずっと日本に来たかったんだけど、ようやく来られたよ。(2013年に)『The North Borders』を出したあと、300回くらいショーを続けて、18か月くらいはずっとツアーバスの生活だったんだ。バンドをはじめクルーが沢山いるから、ツアーはいつも楽しいけどね。
??最近では、すごく大きな会場でもプレイされるなど、7年前と比べると、ご自身が置かれている状況も大きく変わったんじゃないですか?
ボノボ:もちろん全然違うよ。アメリカやヨーロッパでもアリーナ会場でプレイするし、シドニーでも大きなところでプレイした。前々作(『Black Sands』)を出した2010年頃から状況が大きく変わってきたね。
??バンドを率いてライブされているのも印象的だったのですが、バンドとのライブは2004年頃から続けているんですよね?
ボノボ:多分そのくらいだと思う。バンドと言っても、毎回アルバムを出すごとにショーの内容も変わるから、バンドも変わるんだけど。毎回ツアー前に、メンバーにレコードを聴いてもらって1週間くらいリハーサルして、バンドでやるためのアレンジを決めてからツアーを回っていく感じで、一つのプロジェクトという感じだね。
??ライブを意識して曲を書くことはありますか?
ボノボ:それはないな。曲を作る時は自分の作りたいものを作っているだけなんだ。だから、例えばアルバムの曲でもライブで演奏出来ない曲もあるし、逆に、ステージでプレイするためにレコードとは全然違うアレンジでやることもあるけど、それはそれで楽しいんだよ。
??2013年の『The North Borders』はハウス・ミュージックからの影響が強くなったと感じましたが、バンドでの演奏はいかがですか?
ボノボ:よりジャズ・バンドっぽくなったと思う。でも、自分としては、テンポとかが変わっただけで、アルバムのサウンドは今までとそれほど変わらないと思ってるけどね。今までも、DJの時なんかは特にハウスの要素はあったから、今回も特段ハウスを意識したってことじゃないんだ。
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15年前から変わらない情熱
??デビュー当時のアルバム『Animal Magic』と最新作を聴き比べると、ビートやリズムの面での変化に対して、和声やメロディの面では共通する部分が多いように感じました。ご自身の和声やメロディの感覚を形作る上で、もっとも大きな影響を受けたものは何だと思いますか?
ボノボ:難しい質問だね。コードやメロディに限らず、色んな人から「ボノボらしい特徴的なサウンドだね」って言われるんだけど、影響源が何かをはっきり説明するのは難しいんだ。誰でも、若い頃から色んな音楽を聴いていて、その種が広がって自分でも気が付かないうちに音楽のパレットが広がっている、ということはあるよね。だから、自分でも知らないうちに色んなものに影響を受けていると思う。
僕が音楽を作る時に気にしているのは、知られ過ぎているものを作らないってこと。その上で特別なにかを意識するんじゃなくて、楽曲全体のヴァイブを考えることが音楽を作る上で重要なことだと思う。
「ボノボ・サウンド」と言われることについては、自分では良いとも悪いとも思ってないよ。ユニークっていうことでは良い意味だとも思えるし、逆に、自分が何か違うものを作ろうとしているのに「ボノボ・サウンド」と受け取られてしまう危険もあるから。それでも、自分らしいサウンドというのは、持っていて嫌な物ではないのかなとは思うけどね。
??個人的には、偉大なソングライターというのは必ずその人らしいユニークな和声やメロディの感覚を持っていて、それはずっと変わらない物なんじゃないかなと思います。
ボノボ:そうだね。『Animal Magic』を出した15年前から変わらない情熱を持って、いまだに音楽を作ることを楽しめているから、それは良いことだと思うよ。
??最近はどんな音楽を聴いていますか?
ボノボ:いっぱい聴いているんだけど、例えば、ネオ・クラシカルとか…ちょっとSpotifyを見てみるね。ネイサン・フェイクに、フローティング・ポインツに、ニルス・フラーム…彼はベルリンに住んでるみたいだから今度一緒に何かやってみたいな。あと、GO GO PENGUINとかBADBADNOTGOODとかが好きだね。
??フライング・ロータスの新作はどうでした?
ボノボ:もちろん聴いたよ。プロッグ・ジャズ・サウンドだよね。彼はいつもやることを変えてくるからすごく面白いよ。
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区切り良く畳まれたことは良いことだったんじゃないかな
??今夜のライブはDJセットということですが、どんな曲をプレイする予定ですか?
ボノボ:もちろん昔の作品からもプレイする予定だけど、そもそもDJのスタイルとして、バックカタログから一晩中プレイするやり方は個人的にあまり好きじゃないんだ。だから今夜も新しいものを中心にプレイしようと思ってるよ。自分がいま取り組んでいる新曲をかけて、フロアの反応が見られるのもDJの良いところだね。
??新作はいま製作中ですか?
ボノボ:イエス! 1年後にバンドと演奏することになるかも知れない曲だね。
??去年の『The Flashlight EP』の延長上のサウンドになりそうですか?
ボノボ:いや、あのEPは自分がツアーバスの中でヘッドフォンをつけて作ってた曲で、それを一回リリースして区切りを付けたくて出したんだよ。今はもう次の段階に進んでるから、新作はそれとは関係ないものになると思うよ。
??なるほど。では最後に。今回7年ぶりの来日と聞いて、今日思い出したんですけど、私もちょうど7年前ロンドンに行っていたんですよ。その時、プラスティック・ピープル(Plastic People)というクラブに遊びに行って…。
ボノボ:うんうん。
??その時も既にクローズの危機と言われていた記憶があるんですが、先日遂にそこがクローズになったと聞きました。(※2015年1月にクローズ。)
▲ Plastic People Closing Party
ボノボ:一回クローズして、また新しくなったんだけど、やっぱりクローズになったね。最後のショウはフローティング・ポインツがプレイしたんだよ。
あの場所は、もちろんブロークン・ビートとかダブステップみたいな音楽にとってすごく大事な場所で、それらの音楽を代表する場所でもあったよね。でも、だからこそ変に無理して続くんじゃなくて、良い時代を代表する場所として区切り良く畳まれたことは、それはそれで良いことだったんじゃないかなと思う。また時代が変わって色んな人が次のものに進むわけで、その時にはまた、その時盛り上がっている音楽や場所があるということは、悪いことではないのかなと思うよ。
??なるほど。あなた自身、あの場所に何か思い出はありますか?
ボノボ:自分がプレイするより、遊びに行った思い出の方が多いな。ジャイルス・ピーターソンとフローティング・ポインツが、ミックスじゃなくて1枚ずつレコードを最初から最後までかけて、終わったらみんなが拍手して…という感じで2人でプレイしてた時があって、あれは楽しかったよ。
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