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『Empire 成功の代償』 特集

Empire 成功の代償

TVドラマ史上最も画期的で衝撃的かつリアルなドラマの登場

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 ドラマ『Empire 成功の代償』。ゲットー出身のラッパー、ルシウス・ライオンが築き上げた音楽/エンターテイメント業界の帝国、エンパイア社とライオン一家の野望と愛憎を描いたドラマが今、全米で大きな話題を呼んでいる。


 芸能界の表と裏側、偽善、陰謀、すれ違う家族の愛憎、そして、音楽業界、特に、黒人社会及びラップ・ミュージック界における同性愛に対する偏見等、現代社会が抱えるあらゆる問題をリアルに追求し鋭く描いた衝撃的で刺激的な本作は、あの映画『チョコレート』、『プレシャス』、『大統領の執事の涙』等、あらゆる意味で賞賛と物議を醸す作品を手掛けてきたリー・ダニエルズが制作。パイロット版(第1話であり、その後の制作続行を決定するために重要な意味を持つ)放送後、第2話放送と同時に第2シーズン制作が決定しただけでなく、全米放送開始後たった2か月という、海外ドラマ放送としては異例の早さで日本のFOXで放送が決定した。そのことからも、本作への注目度がわかるだろう。

<音楽>なしでは語れないドラマ

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 TVドラマ歴史上、これまでも音楽と深い関わりを持つ番組は星の数ほど出てきた。80年代には大ヒット映画をTV化しジャネット・ジャクソンも出演したことでも知られる『フェーム 青春の旅立ち』や近年大ブームとなった『Glee』等のミュージカル・テイストのものから、『アメリカン・アイドル』や『The Voice』などのオーディション番組まで、それぞれのTV番組から多くのスター達が輩出されている。


Good Enough (feat. Jussie Smollett) from 第1話Pilot
▲ 「Good Enough (feat. Jussie Smollett)」 from 第1話"Pilot"

 本作の音楽総指揮を務めるのは、常に新しいサウンドを作り出し、ジャスティン・ティンバーレイクやネリー・ファタード、ミッシー・エリオット、アリーヤ等を手掛けてきたプロデューサー、ティンバランド。その彼が本作の各エピソードに登場する楽曲のほとんどを書き下ろし、(現実の世界で)彼のレーベルの所属アーティストで本作にはヴェロニカ役で出演するV・ボーズマンを始め、ライオン家の次男ジャマル(ジャシー・スモレット)と三男ハキーム(プリシャー・グレイ)、女性R&B/Popシンガー、ティアナ・ブラウン(セラーヤ)等が、劇中でレコーディングやショーという形で楽曲を歌っていく。まさに音楽業界のしくみや日常を垣間見るかのように。

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現実と虚像がリンクする世界

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 「自分が先に目を付けた!」と信じたいファンの心理を突くかのように、レギュラー出演するアーティスト達のほとんどが新人だというところも人気に拍車をかけている要因だろう。放送開始直後で、すでに次男ジャマル役のジャシー・スモレットの人気はうなぎのぼり。現実の世界でも本格的デビュー(すでに4年前に自己制作でEPは発表している)が期待されているだけでなく、回を重ねる毎に、彼がエンパイア社のメイン・アーティストとなっている。ほら、ちょっと混乱してきた人もいるのでないだろうか。ジャマルとジャシー・スモレット。同一人物であって、そうでない。そして、初回で見せたパフォーマンスと第8話でのこの姿の違い。アーティストとして着実に、いい意味でも悪い意味でも大きく成長している。


You're So Beautiful
▲ 「You're So Beautiful」 from 第8話"The Lyon's Roar"
(字幕なしで内容がわかる方には多少ネタバレになります。予めご了承ください。)

 またアーティスト達のカメオ出演と準レギュラー陣も豪華だ。アンソニー・ハミルトンやメアリーJ・ブライジ、スヌープ、パティ・ラベル、そしてリタ・オラが本人役でカメオ出演し、コートニー・ラヴ、メイシー・グレイ、ジェニファー・ハドソン等の大物ゲストがそれぞれエンパイア社とライオン家に関わっていく。音楽好きな人達には特に魅力的なラインナップではないだろうか。と同時に、現実と、フィクションの世界であるはずのエンパイア社での出来事が交錯してしまうこともあるかもしれない。そこが本ドラマに思わずのめり込んでしまう魅力の1つではないだろうか。

ドラマ(脚本・劇)の世界ではなく、
現実の世界のドラマ(劇的事件・出来事)

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 ドラマというと、「~~主演!」などと枕詞がつくことが多いのではないだろうか。もちろん本作にも、自らもシンガーとして本当に作品を発表(2008年)したこともあるテレンス・ハワード(『Ray/レイ』、『クラッシュ』、『ハッスル&フロウ』)とタラジ・P・ヘンソン(『ベイビー・ボーイ』、『ハッスル&フロウ』、『Person of Interest犯罪予知ユニット』)という実力派俳優が主演し、その他出演俳優達も様々な映画やドラマで活躍してきた実力派、演技派ばかり。しかし、その事実とは全く別の次元で観る人を虜にしてしまうのがこのドラマの凄いところ。それは、これまでタブーとされてきた問題をただ提議するのではなく、その心髄、醜い部分までも曝け出し、観る人に考えさせるようなストーリー展開、脚本、演出によって、俳優人達の真の、そして、新たな魅力を最大限に引き出し、そうすることでドラマ自体がより華やかに、そしてリアルなものになっているからではないだろうかと思う。観ているうちに、彼らが俳優ということさえも忘れてしまうほど。全米では本作放送中、ドラマに反応するファン達の声がSNSに殺到する。隣の家で起こっていることや何かの事件の実況中継を見ながら書き込んでいるかのように。

 「どうせドラマの世界だから」と言わせないドラマ。それが、この『Empire 成功の代償』だ。

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