断言しよう。これは売れる。

＜Acid Black Cherryが頂点に君臨した『２０１２』から3年＞

※3rdアルバム『２０１２』

　2012年、Acid Black Cherryの名前をヒットチャートの頂点に君臨させた前アルバム『２０１２』。同作リリース後に出演した【a-nation stadium fes. Charge Go! ウイダーinゼリー】では、自身のファンによる全身全霊のヘドバンと共に50000人を熱狂させ、その実力はヴィジュアル系フリークはもちろん、あらゆる音楽ファンを巻き込めるものであることが改めて証明された。また、年末には『２０１２』収録曲である王道名バラード「イエス」が2012年USEN J-POP年間リクエストランキングで1位を獲得。万人が愛するヒット曲の生まれづらい時代において、老若男女がナチュラルに「聴きたい」「歌いたい」と思える曲を残した功績は大きい。以下、当時の「イエス」レビュー。

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張り裂けんばかりの想い「愛してる 愛してるよ」

※15thシングル『イエス』

　　昨年9月より『ピストル』『シャングリラ』『蝶』『CRISIS』と、毎月欠かさずにシングルをリリース。トリを飾るナンバー『イエス』が、Acid Black Cherry2012年一発目の作品としてドロップされる。

　あらゆる方向性に振り切れたシングルを発表してきたこの5ヶ月連続リリース企画だが、満を持してと言うべきか、今作は多くのファンが待ち侘びていたであろう王道のロックバラードである。バンドサウンドもストリングスも唄声も、すべてが張り裂けんばかりの想い「愛してる 愛してるよ」を表現。しかしその愛はあの人にもう届けることはできず、世界は涙で滲んでしまう―――という、おそらくyasuが最も得意とするタイプの失恋歌となっている。ミュージックビデオで「愛してる 愛してるよ」と唄い叫ぶ姿も実に様になっており、同性であっても思わず見とれてしまうほど。断言しよう。これは売れる。（REVIEW：平賀哲雄）

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＜頂点に君臨した者だからこそやるべきことがある＞

4thアルバム『Lーエルー』

　　この年に「これは売れる」と断言できた曲は他にない。そんなAcid Black Cherryが人気も才能も爆発させた2012年から約3年。音楽シーンの最高峰に君臨する者としての迫力、覇気を痛感させるアルバム『L－エル－』が完成した。この間にリリースされたヒットシングル曲「INCUBUS」「Greed Greed Greed」「黒猫 ～ Adult Black Cat ～」「君がいない、あの日から…」含む全13曲、14トラックを収めた今作は、波乱の人生を送った一人の女性エル。その人生を綴った壮大な物語と絡み合っており、かのTM NETWORKの名盤『CAROL』世代をも唸らせるであろうコンセプチュアルなアルバムだ。

　Acid Black Cherryのyasu本人が「先入観なしで聴いてほしい」という意思を示しているそうなので、ここでも今作におけるエルのストーリーについて言及するのは避けるが、音楽の聴かれ方がシャッフルになった時代に“アルバムを楽しむ”という贅沢な時間の使い方を体験させてくれる、しかもジェットコースターロマンス映画をドキドキワクワクしながら観ているような感覚で楽しませてくれる。そんな有意義な作品を発信してくれたのは、実に感慨深い。頂点に君臨した者だからこそやるべきことがある。彼にその意識があるかどうかはともかく、Acid Black Cherryほどの影響力も持つプロジェクトが音楽の可能性を拡大させてくれたことには、音楽シーンで生きる者として……というか、イチ音楽ファンとして感謝したい。

＜アミューズメントパークで1日遊ぶ以上の満足度を得られる＞

Acid Black Cherry / 4th ALBUM「L－エル－」 告知ムービー

　なお、今作は、Project『Shangri-la』アリーナツアーの日本武道館公演から全17曲のライブ映像を完全収録した［Project『Shangri-la』LIVE盤］と、Project『Shangri-la』全都道府県ツアーにてyasuに完全密着したドキュメントムービーに加え、全61公演分のMCを集めたMCベストセレクション、シングル4曲のMUSIC CLIPを収録した［Project 『Shangri-la』ドキュメント盤］も発売。CD＋DVD盤には「L－エル－」コンセプトストーリー100Pを同梱。CD ONLY初回盤は、yasuの最新撮りおろしビジュアル画像満載、Acid Black Cherry44ページフォトブックレット付きとなっている。

　どの仕様を手に取ってもアミューズメントパークで1日遊ぶ以上の満足度を得られる、しかも何度でも堪能できるアルバム『L－エル－』。今やわざわざ記す必要もないかもしれないが、断言しよう。これは売れる。

TEXT：平賀哲雄（Billboard JAPAN.com編集長）

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