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「奥深きプログレッシヴ・ロックの世界」CDショップ編

奥深きプログレの世界

 春に向けてじわりじわりと熱を帯び始めているプログレッシヴ・ロックを特集する企画「奥深きプログレッシヴ・ロックの世界」第2弾は、プログレ愛好家が通うプログレ専門店を訪問。ディスクユニオン新宿プログレッシヴ・ロック館、world disque、Garden Shed、カケハシ・レコードに、それぞれのお店のこだわりや、これからプログレの世界に飛び込む人、すでにマニアの域に達している人に向けたおススメ作品を訊いた。本篇を読む前に「プログレってなぁに?」と思った方は、以前掲載した“Strange Days presents 奥深きプログレッシヴ・ロックの世界”と合わせて是非チェックして頂きたい。

◎Strange Days presents 奥深きプログレッシヴ・ロックの世界


ディスクユニオン新宿プログレッシヴ・ロック館


 まずはロック・ジャズ・ブラック・インディーズ、あらゆるジャンルの音楽を取り扱う首都圏有数のCD・レコードショップであり、音楽ファンにとってもなじみ深い『ディスクユニオン』。店長歴7年の金子店長の話とともに、ディスクユニオンのプログレ専門店『ディスクユニオン新宿プログレッシヴ・ロック館』を紹介しよう。

若い層のお客様が増えている

 2001年にオープン、2013年に現在の新宿本館の3階にやってきた新宿プログレッシヴ・ロック館。約10坪の店内にはCDが約1万2千枚、アナログ盤も約2千枚を取りそろえているそうだ。新宿のド真ん中にあるだけあって、平日の昼下がりにも関わらず店内には次々とお客さんがやってくる。プログレ館の金子店長に話を伺うと、「客層は50歳代がメインだが、近年若い層のお客様が増えている様に感じている」とのこと。


店頭のこだわり

 「ブリティッシュ、イタリア、北欧、南米など国、地域に括ってセールや特集ができる様、考えながら商品を集めています。」お店の知名度も高く、いわゆるプログレ初心者からマニアックな愛好家まで幅広い客層を抱えるお店だけあり、キング・クリムゾンやYESといったメジャーどころから北欧、南米、辺境系など多くのニーズに応える品ぞろえをしている。店内の一角に設けられたアナログ盤コーナーで熱心にディグる人もおり、アナログ盤の需要も「一時期よりも高まっている。」とのことだ。


売れ筋はやはりブリティッシュ

 気になる買い取りについて伺ってみると、「買取はひと月にだいたい5000枚程度、これもやっぱりブリティッシュが多い。」と教えてくれた。売上の90%は店舗で売れ筋もやはりブリティッシュが一番多いそうだ。「メロディック・ロックと形容される聴きやすい作品が売れ筋です。最近では、北欧のムーン・サファリ、英国のビッグ・ビッグ・トレインなど人気です。」

金子店長のプログレへの第一歩

 「KING CRIMSONのREDが最初に買ったプログレのレコードです。リアルタイムでは無いですが、中学生の頃、FMで渋谷陽一氏(現・株式会社ロッキング・オン社長)が紹介していたREDを聴いて衝撃を受けました。少ないお小遣いから厳選して買った大事なレコードでした。」

プログレ入門編、聴くならこの2枚!

『レッド』 / キング・クリムゾン

 "Heavy Metal"と語られた激重なタイトル曲をはじめ、全編を覆う暴虐性と絶望的な美が描きだすコントラストが強烈、かつ美しい'74年作。悲哀を湛えた叙情性からラストへの崩壊までを描ききった名曲"Starless"を収録した一枚(diskunion 商品レビューより引用)

『フランシス・ザ・ミュート』 / マーズ・ヴォルタ

 5曲で77分の壮大なロック組曲で構成された問題作! エッジのたったプログレッシブなサウンドにエモーショナルさも抜群な完成度の高いハイクオリティーサウンド。(diskunion 商品レビューより引用)


プログレ玄人編、聴くならこの2枚!

『HOUSE FULL LIVE AT THE LA TROUBADOUR』 / FAIRPORT CONVENTION

 『リージ・アンド・リーフ』と並んで称されるUKフォーク/トラッドの必携盤。本作は1977年にウェスト・ハリウッドにある老舗クラブ「トロバドール」で行われたライブ盤。

『け~さ~み~の~』 / る*しろう

 ベースレスという特異な編成をモノともしない菅沼道昭の激烈リズムの上に、井筒好治 のギター、金澤美也子のエレピサウンドが ケタタマしくハーモニーと不協和音の狭間を舞う、脳髄をミキサーで掻き回したようなサウンドにノック・アウト。圧倒的に畳み掛ける変幻自在のアンサンブル と、時に流れるように、時につんのめるように展開する楽曲の数々は聴く者の予測を遥かに超えていく面白さ。(diskunion 商品レビューより引用)

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  2. 「プログレ・ライフのベースが揃ってます(笑)。」
    WORLD DISQUE
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WORLD DISQUE


 音楽雑誌『MARQUEE』やプログレ専門誌『ユーロ・ロック・プレス』の出版からベル・アンティークといったレーベル事業を行うマーキー・インコーポレイテッドが運営するworld disque。目白から徒歩5分の場所にある店舗は、誰もが一度は通り過ぎてしまうような、マンションの奥まった場所に存在する。店舗の創業は1987年(通販は82年ころからやっていた)、店長の中島さんはもともとworld disqueに足繁く通っていたところ、そのままアルバイトから入社。94年から20年店頭に立ち続けている中島店長にお店のこだわりを訊いた。

お客様の嗜好に応えていく

 一歩店内に足を踏み入れると、黄色いPOPやポスターが所狭しとびっしりと貼られている。各国の新譜はもちろん、中古、アナログがギッシリと詰まった棚を見ると、ここにないものはないのではと思わせる。店内の在庫はなんと一万枚もあるという。


 「最近はテクニカル系の問い合わせも増えてきていますね。プログレではないけれども、ドリームシアターを聴いてプログレの世界に入ってくるお客様も多い。そういう方に様々なプログレを紹介して広がりが持てるよう幅広い品揃えを心掛けています。」

 とはいえ、プログレッシヴ・ロックという世界もハード・ロックやジャズ、フュージョンとの明確な境界線があるわけではなく広い世界であるため、何を聴けば良いのか分からなくならないよう、中島店長がセレクトした作品を紹介するようにもしているという。店内のPOPは中島店長による手書きのものがほとんど。膨大な知識と文才がなせる職人技である。

 「プログレは元来マニアックで広いジャンルなので、お客様の好みが細分化されていますね。店としては、お客様の嗜好に応えていくようにしている。売れ筋は、ブリティッシュは別格として、次に人気があるのはイタリアン・ロックですね。日本人の嗜好に合うのだと思います。」

 お客様の風貌や手にしている商品を見て、店内のBGMを変えるとそれが見事にハマって「この曲なんですか?」と尋ねられることも多々あるという。常連の場合は入ってきた瞬間におもてなしの意味も込めて、常連の好きな曲をかけることもあるそうだ。名バイヤーであり、POP職人であり、名DJでもある。

ネット上では知り得ないものを探して提供していく

 プログレッシヴ・ロックという音楽がなかなか簡単にやれるものではないのと、リスナーも厳しいので20代くらいの若いバンドはあまり出てこないという。しかし、同人系の自主制作盤の中にプログレの要素を取り込んだものがあり、クオリティを慎重に判断して一部取り扱っているそうだ。幅広く商品を揃えるWORLD DISQUEならではといえる。

 「店舗と通販の売り上げは半々くらいですが、やっぱり店舗での対面販売に力を入れています。世間話をするなかでお客様の好みを聞いたり、逆にお客様から新作情報を聞くこともあります。メジャーどころも置いてはいますが、あくまでマニアックな作品がメイン。ネット上では知り得ないものを探して提供していくのがお店の方向性です。あとライブのチケットも販売しているので、ここに来ればプログレ・ライフのベースが揃ってます(笑)。マニアの皆様のオフ会の場所にしてもらえれば嬉しいです。」

 膨大なカタログの中から、お店のイメージもキープしつつよりよい新ネタを提供していくことは並大抵の作業ではない。お店の奥にはマーキー・インコーポレイティドの『ユーロ・ロック・プレス』編集部やレーベル部門があるので、最新の情報が手に入るのも強さの秘訣かもしれない。最後に、「いちアイテムの販売数は減っていますが、商品の数を増やして、『俺しか知らないだろうな』というものを幅広く売っていきたいですね。」と力強く語ってくれた。


中島店長のプログレへの第一歩

 もともとメタルを聴いていて、大学時代は新宿のレコード屋さんに足繁く通ってたんですけど、アイアン・メイデンを掘り下げていったらプログレにたどり着いたんです。やっぱり最初は5大バンドをまず聴きましたね。当時マーキーもシンフォニック・ロックから幅を広げ始めていて、そこからプログレの世界にのめり込んでいったんです。このお店がプログレへの第一歩と言えるかもしれません。美狂乱の『御伽世界』(レジの背後の棚の一番上に飾ってあった)はここで初めて買ったアナログです。

プログレ入門編、聴くならこの2枚!

『クリムゾン・キングの宮殿』 / キング・クリムゾン

 まぁ、まずはこれですかね。

『フォックストロット』 / ジェネシス

 まぁ、やっぱりこれですかね(笑)。

プログレ玄人編、聴くならこの2枚!

『ウィームス・オヴ・アース』 / エドゥアルド・アルテミフ

 80年代初頭の旧ソ連時代の作品で、映画のサントラを手掛けたりモスクワ・オリンピックの音楽もやっていた音楽家がなぜか間違ってシンフォニック・ロックをやってしまったという…ユーロ・ロックの世界では有名ですけど、超ド級の傑作です。

『ピクチャーズ』 / アイランド

 これもユーロ・ファンの間では有名ですが…スイスのバンドで、ギーガーのイラストのジャケットが特徴的ですね。かなりテクニカルなバンドで、複雑かつミステリアスな感じですが、すごく出来がいいです。

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  2. 「自分が好きな音楽以外のものは人には勧められない。」
    Garden Shed
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Garden Shed


 廃盤レコードの聖地としてロック・マニアがこぞって集まった西新宿。現在は店舗が減ってしまったが、この古き良きレコード街に20年以上に渡ってプログレ・マニアから愛されるCDショップ、Garden Shedがある。お客さんがひっきりなしにやってきて、問い合わせの電話も鳴り響く中、林店長に話を訊いた。


店に置いてあるCDすべてがレコメンド

 雑居ビルの3階。外に看板すら出していない。知る人ぞ知るプログレ・マニアの聖地の扉を開けると明るい店内にはきれいパッケージングされた約5000枚のCDがずらりと並んでいる。
 「看板は10年位前から出さないようにしました。普通のCDショップと思って入って来てしまうと、お互いに微妙な空気になるので、知ってる人だけが来れるお店にしました。昔はアナログ盤とCDが半々くらいで、アナログ盤は買取もやっていたけど、10年前くらいから全部CDに入れ替えたんですよ。」
 正面にディスプレイされている新作&おススメCDも丁寧に陳列され、とても洗練されている印象を受けた。意外なことにそれらは全て新品で、中古、アナログ盤は一切取り扱っていないという。細かいジャンルや国ごとに整理されたCDはほとんど国内流通はされておらず、林店長自らが買いつけをしている。


 「辺境コーナー、いわゆるLEVEL4、LEVEL5なんかは、いまでこそネットがあるから誰でも情報は仕入れられますが、開店当初は『どこから仕入れてくるの?』なんてよく聞かれましたね。」ブリティッシュやイタリアのコーナーを見てみても、誰もが知っているようなバンドは見つからない。しかし東欧、辺境系のマニアックなプログレを扱うお店としては国内随一の品ぞろえを誇っている。


 「自分が好きな音楽以外のものは人には勧められない。ある意味個人的な趣味に近いけど、店に置いてあるCDはすべてレコメンドです。プログレはジャンルの幅は広いけど、ウチの店舗は広いわけではないので、拡大してしまうと取りこぼしてしまう。だから自分の好きなシンフォニック・ロックを中心に置いています。」と語る通り、商品はシンフォニック・ロックを中心に各国のロックが揃えられ、キング・クリムゾンやピンク・フロイドといったメジャーなものは置いていない。開店以来ずっと貫いているお店のスタンスだそう。

日本のプログレ・シーンのパイオニアが切り拓いた、理想の場所

 「中学生の頃からハード・ロックが好きで、その流れでプログレを聴くようになりました。僕の周りもみなさんハード・ロックから入ってきたと思います。いきなりイエスとかから入る人はあまりいないと思いますよ。」いきなりプログレの世界に入る人は少なく、まずハード・ロックやメタルを入り口として、そこからプログレの世界にのめり込んでいく。プログレという音楽は地表の奥深くに潜む、いわばマントルのようなものなのかもしれない。

 何を隠そう、林店長は1980年代に活躍したバンド、夢幻のリーダーで日本のプログレ・シーンを切り拓いた人物。2ndアルバム『レダと白鳥』はフランスでもリリースされ、当時から世界で注目を集めていた。バンド解散後にGarden Shedを立ち上げて以来、ほとんどライブに行かなくなったという。

 「アーティストが来日するときは地方からもお客様がいらっしゃいますし、みなさんギリギリまでここで話してたりするんです。だから絶対店にいなきゃいけない。ライブに関して言えるのは、僕の周りのプログレ・マニアの方々はライブが複数日ある場合、全公演観に行ってますね。1日目は前列でかぶりついて観て、2日目は後列の一番音がよく聴こえる位置で観てますよ。」

 林店長の豊富な知識と経験で選び抜かれたCDと人柄によって、プログレ・ファンが集まるオフ会の場になる。店にとってもお客さんにとっても理想的な場所。これこそGarden Shedが20年以上に渡って愛され続ける理由なのかもしれない。お店に行った際は自分の好みや探したいものを林店長に相談してみよう。きっとあなたにピッタリの一枚を見つけてくれるはずだ。
 ちなみに、林店長がやっていたバンド、夢幻の音源は2013年にキング・レコードのへヴィ・メタル、プログレ専門レーベル、ネクサス・レコードから再発されている。

プログレ入門編、聴くならこの2枚!

『En Concert A Crescendo』 / The Enid

 壮麗なシンフォニック・ロックの洪水が画面から光を導きあふれ出る2014年フランスでのライブ。ダークで耽美な静寂、すべての楽器が高鳴る轟音のクライマックス。エニドの真骨頂と言える壮絶な振れ幅が出ている。
 「先ほどきたお客様も買っていかれましたけど、70年代からやっているバンドで、プログレ好きならこの名前を聞いたことのない人はいないと思います。4月のヨーロピアン・ロック・フェスで初来日が決まって大騒ぎになったんだけど、ロバート・ジョン・ゴドフリーが病気になって来れなくなったのは残念。」

『Celestial Fire』 / Dave Bainbridge

 IONAのリーダーでギタリストのDave Bainbridgeの10年ぶりとなる新作ソロ・アルバム。優美なギターとテクニカルなキーボードも自身が弾き、バンドスタイルで聴かせる渾身の1枚。
 「バンドよりもこの人のプログレッシヴな部分が色濃くでたクオリティの高い力作です。ビルボードでも今後お世話になるかもしれませんよ。」

プログレ玄人編、聴くならこの2枚!

『Kad Bi Bio』 / Bijelo Dugme

 ボスニア・サラエボ出身の旧ユーゴスラヴィア最大のロック・バンドの1974年のデビュー作。情熱的なメロディー、クラシカルなフレーズをパープルやピープ調のハード・ロックに転換させ、ドラマチックに聴かせる。旧ユーゴの歴史的名盤。
 「なんと40周年記念として最近アビーロード・スタジオでリマスタリングされSACDで再発されました。たまに再結成をしているが、ボスニアの人とセルヴィアの人で結成されていたので、ユーゴスラヴィアが内戦になった時に解散してしまいましたね。リーダーのゴラン・ブレゴヴィッチは解散後フランスで映画音楽で成功して、実は日本でもすごく人気がありましたよ。」

『Ispoved』 / ARAKS

 1980年にリリースされた一大コンセプト・アルバムで、旧ソ・シンフォ必聴物のひとつ。オーケストラと合唱をクラシカルに配し、エキゾチックかつシュールな演奏がテクニカルに繰り広げられていく。曲調が最後までバラけず終始プログレッシヴな姿勢を貫き通すのも特筆。
  「国営のレコード会社がコンセプトを出して、アーティストに作らせる表題音楽ですが、アーティスト同士が触発されてトンでもないものが出来上がった。断トツのクオリティです。」

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  2. 「リスナーにロック探求のワクワクを感じてもらいたい」
    カケハシ・レコード
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カケハシ・レコード


 池袋から東武東上線に揺られること1時間半、のどかな山々が広がる寄居にプログレッシヴ・ロック専門のオンラインショップ、カケハシ・レコードはある。独自のセレクトとオンライン・ショップならではのアプローチや特集は、店舗にはない発見をもたらしてくれる。実店舗とはまた違った取り組みやオンライン・ショップならではのこだわりを田中店長に訊いた。


ロックとして紹介したい

 オフィス兼倉庫には、1万枚程度のCDが新品、中古別にずらりと並べられている。
 初めは自分が聴かなくなった数十枚のCDから通販をスタートしたそう。スタート当時の店名はPIPER RECORDS。大学卒業後に別のアルバイトとの掛け持ちで起業し、夜な夜な発送を繰り返していたが、徐々にオーダーが増え、在庫を拡大。「CDショップ店長として生きていこう」と決意を固め、起業から2年後にオンライン・ショップ一本に切り替えた。


 「ニッチなジャンルに絞った方がサイトを見つけてもらいやすい、というマーケティング面と自分の趣味面から、プログレッシヴ・ロック専門にしました。」

 プログレ専門ショップとして軌道に乗ると、そこからロック&ポップスへとジャンルの幅を広げ、カケハシ・レコードとしてリニューアルする。しかし、「専門」色が薄まったことで、リニューアル当初は売上が低迷。逆に「プログレ」と「ロック&ポップス」の両方を販売しているからこその「できること」を考え、あえて「ジャンル」という括りを取り払い、「世界のロック・ミュージック」として伝えていく、という方向性に定まったことで、「おもしろい」と言ってもらえるお客様が増えていったと言う。

 「昔は「プログレ」という括りの中で、「チェコのクリムゾン」みたいな伝え方をしていましたが、今はその国の背景や文化を理解したうえで、チェコという土壌だからこそ生まれた「ロック・ミュージック」として紹介したいと思っています。」サイトを見てみれば分かる通り、ヨーロッパ各国のロックを丁寧に掘り下げ解説している。
  その膨大な特集やレビューの数々に反映された知識は、歴史の本やその国の文学などから日々インプットしているという。売れ筋はスペインのジャズ・ロックやイスラエル・ロックとのこと。

出会いの場としてのショップ

 カケハシ・レコードのウェブサイトには、ジャンル検索やエリア検索はもちろんあるが、特筆すべきはそれら以外の間口の広さだ。
  「京都にある恵文社など、実店舗ならではの発信をされている書店に注目しています。商品を並べる人のセンスや感性、文化や歴史的背景などで本をセレクトし展示する『文脈棚』は、ネットでCDを紹介していく上でもたいへん参考になります。」
 

と語る通り、『From ビートルズ toニッチ!』『ELOやQUEENになれなかった愛すべきB級グループたち』など思わずクリックしたくなるような棚がいくつも作られている。1960年代を図表でまとめたロック資料集『ロック潮流図鑑』は思わずなるほどと唸ってしまう。

 「お客様がソフト・マシーンを買いたいと思った時に、僕らのような小さなセレクトショップは在庫豊富なAmazonには太刀打ちできません。でも、今までソフト・マシーンを知らなかった人たちが、僕らのお店ではじめてバンドのことを知り、興味を持ってもらうことなら、Amazonよりも上手くできるんではないか、と思っています。そういう新たな音楽との出会いの場として特集コンテンツを作り、網の目のようにアーティストを繋げていくことで、リスナーにロック探求のワクワクを感じてもらえればと思っています。Amazonなど大手ではまったく売れていないけど、素晴らしい作品はたくさんあります。そんな作品をきちんと届けていくことが理想です。」

 アーティストとアーティストをキーワードで繋いでいく。サイトに訪れる人は、興味があるアーティストやジャンルからどんどんとユーロ・ロックの世界にのめり込んでいく。ウェブサイトでしかできない陳列はカケハシ・レコードならではといえる。新たな音楽に出会うべく、是非一度サイトを訪れてみてはいかがだろうか?

田中店長のプログレへの第一歩

 「高校生の時に、友達から『ブリティッシュ・ロック集成』という本を借りたのがきっかけです。背伸びしたい年頃の自分にとって、プログレが醸す高尚さにまず惹かれ、キング・クリムゾン、イエスと聴き進めるうちに音楽としての魅力にハマっていきました。」

プログレ入門編、聴くならこの2枚!

【イタリア】『マウロ・パガーニ~地中海の伝説』 / マウロ・パガーニ

 イタリアを代表するプログレ・バンドP.F.M.で活躍したマウロ・パガーニが79年にリリースした1stソロ。イスラム文明とキリスト教文明とが幾重にも折り重なった地中海で育まれたエスニック音楽と、ロックやジャズとが結びついた地中海ロック。その頂点に君臨する傑作!
http://kakereco.com/magazine/?p=11427

【スペイン】『WE ARE DIGGING THE BEATLES』 / PETER ROAR

 この「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」のカヴァー、原曲より素晴らしくないかい!?後にスペインのジャズ・ロック・ムーヴメントを支える名手たちが72年に産み落とした全曲ビートルズのカバー・アルバム。イージーリスニングな感じは微塵もなく、強烈な躍動感とキラメキに溢れた全ロック・ファン必聴作!
http://kakereco.com/magazine/?p=11464

プログレ玄人編、聴くならこの2枚!

【イスラエル】『SHESHET』 / SHESHET

 1950年生まれで、アメリカに留学し、バークレイ音楽大学で学んだイスラエルを代表するミュージシャンShem-Tov Levi率いるグループによる77年の唯一作。プログレやフュージョンからの影響を土台に、バルカン音楽や東洋音楽やイスラエルのフォークのエッセンスも取り入れたサウンドは、英米ユーロを見渡しても屈指と言えるクオリティ。柔らかくもまばゆいジャズ・ロックの大傑作。
http://kakereco.com/magazine/?p=11464

【フィンランド】『TOLONEN !』 / JUKKA TOLONEN

 フィンランドを代表するギタリストで、サイケ/R&Bグループから出発し、ジャズ~フュージョンへとスタイルを洗練させていったところなんか、北欧のジェフ・ベックと言えるかも!?そんな彼の71年のソロ・デビュー作で、キレ味鋭いギターで弾き倒すアグレッシヴなジャズ・ロックから、北欧らしい静謐なアコースティック・ナンバーまで、まだ10代とは信じられない円熟したフレージングが光る名作。
http://kakereco.com/magazine/?p=11464

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