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ジョージ・クリントン&PARLIAMENT/FUNKADELIC 来日記念特集
ファンクといえば、ジェームス・ブラウン、スライ・ストーン、そしてジョージ・クリントンが、最も偉大な3人といっていいだろう。なかでも、ジョージ・クリントンは、Pファンクというコンセプトを用いて、たんなるブラック・ミュージックの一ジャンルだったファンクをさらに深化させ、そして他のジャンルへと浸食させていったことで評価されている。ロックからヒップホップまで含む多くのミュージシャンがその影響を公言してはばからない。70年代にはパーラメントとファンカデリックというモンスター・プロジェクトを同時進行させながらブラック・ミュージックを改革していった彼は、今もなお現役だ。ここでは、まもなく来日公演が控えているジョージ・クリントンの歴史に迫ってみよう。
パーラメント / ファンカデリックの生い立ちと全盛期
ジョージ・クリントンは、1941年に米国のノース・カロライナ州で生まれた。最初のキャリアは14歳の時。1955年にザ・パーラメンツというドゥー・ワップのグループで活動を始める。地道に活動を続けたザ・パーラメンツは徐々にリズム&ブルース色が濃厚になり、1967年にシングル「(I Wanna) Testify」でビルボードR&Bチャートで3位に上昇するヒットを記録。これが母体になってパーラメントへとアップデートされた。パーラメントは、1970年にアルバム『Osmium』でデビュー。ヴォーカルはジョージを含むザ・パーラメンツのメンバーそのままであり、そこにギタリストのエディ・ヘイゼルなどいわゆるPファンク勢が参加したファンク・ロック・アルバムだった。
パーラメントの前に、ジョージはファンカデリックを始動していた。ほぼ同じメンバーで構成された別働隊だが、こちらはジミ・ヘンドリックスに影響を受けたサイケデリック・ロックとファンクの融合を推し進め、新たなブラック・ミュージックを構築。70年にアルバム『Funkadelic』でデビューし、大きく評価された。彼らの作品はいずれもインプロヴィゼーションが多用され、いわゆるサイケデリック・ムーヴメントの匂いが濃厚だ。とりわけ初期の代表作とされる3作目『Maggot Brain』(1971年)では、強烈なギターが鳴り響くタイトル曲が有名で、今もなおPファンクのステージで披露されることが多い。また、『Cosmic Slop』(1973年)、『Hardcore Jollies』(1976年)、『One Nation Under A Groove』(1978年)といった傑作アルバムを立て続けに発表し、ペドロ・ベルが描く奇妙なカヴァー・アートとともにPファンクの世界観を確立させた。
一方、パーラメントは、ファンカデリックが勢いに乗っている1974年に2作目のアルバム『Up For The Down Stroke』を発表。ザ・パーラメンツ時代のヒット曲を猥雑にリメイクした「Testify」で、完全に過去と決別する。そして、『Chocolate City』(1975年)のリリースを経て発表した4作目のアルバム『Mothership Connection』(1975年)が大ヒットを記録。その後も、『The Clones Of Dr. Funkenstein』(1976年)、『Funkentelechy Vs. The Placebo Syndrome』(1977年)、『Motor Booty Affair』(1978年)、『Gloryhallastoopid』(1979年)といった濃密なアルバムをリリースし続け、すべてビルボードR&Bチャートのベスト5に送り込んでいる。これらは、大人数のミュージシャンたちによる圧倒的なグルーヴが特徴で、SF映画のパロディのようなコンセプトのもと、スペイシーでスケールの大きなファンク・サウンドでリスナーを狂喜させた。
来日公演情報
ジョージ・クリントン&PARLIAMENT/FUNKADELIC
ビルボードライブ大阪:2015/4/10(金)~4/11(土)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ東京:2015/4/12(日)~4/13(月)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
ジョージ・クリントン / George Clinton(Vocals)
スティーブ・ボイド / Steve Boyd(Vocals)
ロバート・ジョンソン / Robert Johnson(Vocals)
トニーシャ・ネルソン / Tonysha Nelson(Vocals)
パタヴィアン・ルイス / Patavian Lewis(Vocals)
トレイシー・ルイス / Tracey Lewis(Rap)
カルロス“サー・ノーズ”マックマレイ / Carlos"Sir Nose"McMurray(Dancer)
マイケル“クリップ”ペイン / Michael“Clip”Payne(Keyboards, Vocals)
ダニエル・ベッドロジアン / Daniel Bedrosian(Keyboards, Vocals)
ギャレット・シャイダー / Garrett Shider(Guitar, Vocals)
リカルド・リッキー・ラウズ / Ricardo "Rickey "Rouse(Guitar)
ドウェイン・スティーヴン・マックナイト / Dewayne Stephen McKnight(Guitar)
ライジ・カリー / Lige Curry(Bass, Vocals)
グレッグ・トーマス / Greg Thomas(Saxophone, Vocals)
ベニー・コワン / Bennie Cowan(Horns)
ベンジャミン・コワン / Benjamin Cowan(Drums)
ロン・ライト / Ron Wright(Drums)
関連リンク
- ジョージ・クリントン オフィシャルサイト
Text: 栗本斉
ブーツィー・コリンズを筆頭とした名プレーヤー達
▲ 「P-Funk Earth Tour - Houston '77」
またこの頃のパーラメントは、素晴らしいミュージシャンが多数育ったということでも貴重な存在だ。星型ベース抱えた奇抜なファッションのブーツィー・コリンズを筆頭に、知性派キーボード奏者バーニー・ウォーレル、オムツをはいたイカれたギタリストのゲイリー・シャイダー、ジェームス・ブラウンを支えたホーン隊のメイシオ・パーカーとフレッド・ウェズリー、後にミューティニーを結成する名ドラマーのジェローム・ブレイリーといったPファンクを代表するプレイヤーたちが続々と集結。このファンクの重要人物たちがどのような凄絶なパフォーマンスを行っていたかを知るには、全盛期のライヴ・アルバム『Live: P-Funk Earth Tour』(1977年)を聴けばよくわかるだろう。
パーラメントとファンカデリックは、メンバーもほぼ重なってはいるが、ジョージ・クリントンの絶妙なコントロールによって見事に両立していった。また、それ以外にもPファンクという大きな共同体の中で、多数のユニットやソロ活動も行われた。ブーツィーズ・ラバー・バンド、パーレット、ブライズ・オブ・ファンケンスタインなども、やはりコンセプトや音楽性は多少違うが、Pファンク人脈が深く携わっているという意味において、親密なファミリーといってもいいだろう。
パーラメントの活動休止、ファンカデリックの解散
70年代の混沌とした時代をPファンクの名によって一躍成功を収めたジョージ・クリントンだが、じわじわと押し寄せてきたディスコ・ブームによってファンク・サウンドに翳りが出始める。パーラメントとしては1980年のアルバム『Trombipulation』を最後に活動を休止。ファンカデリックもスライ・ストーンを招いて『The Electric Spanking of War Babies』(1981年)をリリースするが、金銭トラブルなどによってジョージの統率力も失われ、解散してしまった。
その後、ジョージはアルバム『Computer Games』(1982年)でソロ・アーティストとして再出発。シングル・カットされた「Atomic Dog」は、ビルボード・チャートのHot R&B Singlesで1位を獲得し、デジタル時代のファンク・サウンドで評価を得た。また、1983年にはPファンク・オール・スターズを始動。かつてPファンクに参加していたミュージシャンたちがいつでも集まることが出来るチームとして、コンスタントに活動を続けた。
80年代末以降の再評価、約2年ぶりの来日公演
いったんブームが終焉したPファンクだが、80年代末以降には再評価されることになる。その一端となったのが、ヒップホップによるサンプリングだ。デ・ラ・ソウルのヒット曲「Me Myself and I」を筆頭に、スヌープ・ドッグやドクター・ドレー、そしてレッド・ホット・チリ・ペッパーズに至るまで、数多くのミュージシャンがPファンクを引用し始めた。「Knee Deep」、「Flashlight」、「Give Up The Funk」といったファンカデリックやパーラメントが残したサウンドは、ヒップホップの形成に大きな影響を与え続けている。また、サンプリングだけでなく、実際にジョージは多くのシンガーやアッパーとの交流を行い、ファンクの総帥としてブラック・ミュージックを活性化し続けている。もちろん、自身のライヴ活動も精力的だ。4月にはジョージ・クリントン&パーラメント/ファンカデリックという名義で来日公演も予定されている。何度も再生を繰り返し、常にアップデートされ続けているジョージ・クリントンとPファンクのサウンド。今のうちに体感しておいて、絶対に損はないだろう。
来日公演情報
ジョージ・クリントン&PARLIAMENT/FUNKADELIC
ビルボードライブ大阪:2015/4/10(金)~4/11(土)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ東京:2015/4/12(日)~4/13(月)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS
ジョージ・クリントン / George Clinton(Vocals)
スティーブ・ボイド / Steve Boyd(Vocals)
ロバート・ジョンソン / Robert Johnson(Vocals)
トニーシャ・ネルソン / Tonysha Nelson(Vocals)
パタヴィアン・ルイス / Patavian Lewis(Vocals)
トレイシー・ルイス / Tracey Lewis(Rap)
カルロス“サー・ノーズ”マックマレイ / Carlos"Sir Nose"McMurray(Dancer)
マイケル“クリップ”ペイン / Michael“Clip”Payne(Keyboards, Vocals)
ダニエル・ベッドロジアン / Daniel Bedrosian(Keyboards, Vocals)
ギャレット・シャイダー / Garrett Shider(Guitar, Vocals)
リカルド・リッキー・ラウズ / Ricardo "Rickey "Rouse(Guitar)
ドウェイン・スティーヴン・マックナイト / Dewayne Stephen McKnight(Guitar)
ライジ・カリー / Lige Curry(Bass, Vocals)
グレッグ・トーマス / Greg Thomas(Saxophone, Vocals)
ベニー・コワン / Bennie Cowan(Horns)
ベンジャミン・コワン / Benjamin Cowan(Drums)
ロン・ライト / Ron Wright(Drums)
関連リンク
- ジョージ・クリントン オフィシャルサイト
Text: 栗本斉
ベスト・オブ・ジョージ・クリントン&そのファンクな仲間たち
2003/06/18 RELEASE
MHCP-2013 ¥ 1,870(税込)
Disc01
- 01.イフ・エニバディ・ゲッツ・ファンクド・アップ (イッツ・ゴナ・ビー・ユー)
- 02.ファンキー・カインド (ゴナ・ノック・イット・ダウン)
- 03.パーティ・オン・プラスティック
- 04.リーキン
- 05.ラヴ・ハズ・テイクン・ミー・オーヴァー
- 06.ラッピン・アバウト・ラッピン
- 07.ランプ
- 08.ファンクン・ボップ
- 09.ネヴァー・ゴナ・テル・イット
- 10.ブレイクアウト
- 11.フリーク・トゥ・フリーク
- 12.インスタント・リプレイ
- 13.ミスアンダーストゥッド
- 14.ワン・オブ・ゾーズ・サマーズ
- 15.パンピン・イット・アップ
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