Special
ブンブンサテライツ『SHINE LIKE A BILLION SUNS』インタビュー
必死だった23か月間。
何があろうとも終わらない、止まらないブンブンサテライツ。
ビートレジスタンスが歌を最重要視するバンドになるまで。
なぜ2人は2人だったのか。
ポールダンサーとの共演理由
~「これが最後になるかもしれない」とも思った制作期間
~ビートより歌中心の音楽へ
--昨年末の【COUNTDOWN JAPAN 14/15】。ブンブンサテライツはステージに色気ムンムンのポールダンサーを次々と迎え入れ、前代未聞のアクトを形にしました。あれを実行しようと思った理由は?
中野雅之:たまにはサービスしようと思って(笑)。--サービスですか(笑)。
中野雅之:年末のパーティーだったし。あと、あの日は新しいアルバムから3曲ぐらいやってると思うんだけど、短い時間の中で発売されてないものを3曲プレイするって大変なことで。今ってフェスでロックバンドを観るって言ったら、それの予習がYouTubeかもしれないし、良くてレンタルCDとか、そんな感じじゃないですか。そこで未発表に近い曲を3曲聴かせるって結構ハードルが高い。そういう攻めてる感じとエンターテインメントのバランスを取るのに「ポールダンサーを入れたい」ってなって。 川島道行:前にageHaで何かのイベントのときに、僕らのステージじゃないけど、隣のフロアで踊っていたりして、イメージは出来ていたんです。華が出るとか、表現に幅が出るとか。--デジタルで肉体や感情を表現する試みはずっと続けていらっしゃいますが、ブンブンサテライツの音楽を超人のようなポールダンサーたちが体現する衝撃は凄まじかったです。
中野雅之:僕たちは演奏しているのでちゃんと観れていないんですけど、周りの反応を聞いていると大体イメージしていた通りになったのかなと思います。肉体性の話もそうだし、アート的でもあると思うんです。「DRESS LIKE AN ANGEL」という曲が持っているグルーヴとフィジカルの強さと、ポールダンサーの……端的に言うと女の人の体ということですよね。その組み合わせの妙だと思うんです。曲とバンドとポールダンサー。それ以上説明しきれないんですけど(笑)。--今後のブンブンサテライツはああいう目に解る形でのセンセーション、未だかつてないライブアプローチに力を入れていくんでしょうか?
中野雅之:いろいろ柔軟に考えていこうかなとは思ってます。あのときはLEDのセットが組まれていて、映像素材も創って持ち込んでいるし、やろうと思えば演出はどこまでも追い込められたので、ああいう機会があればいろいろやりたいなと。いつも出来る訳じゃないんですけど、でも考えていこうと思ってます。--そんな今のブンブンサテライツからの提示とも言えるニューアルバム『SHINE LIKE A BILLION SUNS』が完成。世間には“復帰後初のニューアルバム”とアナウンスされています。今作完成までの道程にはどんな感慨を持たれていますか?
中野雅之:道程ですか。険しかったです。ただ、アルバムが出来上がっていく過程とか成り立ちというのは、自然でした。つまりコンセプトありきとか、アルバムを出さなきゃとか、そういうところではない、もっとシンプルな、単純な、歌ってみるとか、作ってみるとか……前回の川島くんの手術後、退院直後から制作が始まっているので、音楽が出来るのかとか、そういうところから検証していくっていう。能力もそうだけれども、モチベーションとかいろんなものをゼロベースで考えて、歌ってみる、作ってみるっていうところから始まって、そこで見出せたことがあって「これだったらアルバムが出来るんじゃないか」っていう順番だったんです。意外なほど良い曲も出来ていくし。--なるほど。
中野雅之:まぁそうは言っても、去年の12月15日までアルバムの作業はしてたので、丸2年に近い……制作を始めてから23ヶ月ぐらいは時間が経っているんで、その間にはいろんなことがありますよね。まずライブがちゃんと出来るのかというチャレンジもあったし、ツアーが出来るのかとか、それもまたひとつひとつやって確認していくような作業なんで、全部あたりまえじゃないんですよ。ライブ1本やるのも、ツアーを組むのも。クアトロ3,4本程度のツアーだったとしてもフル尺のライブが連日出来るのかとか、そういうことを確認しながら、楽曲制作もしていく。僕らの場合はホームレコーディングなので、作曲、デモの録音、本チャンの録音、ミックスまで全部シームレスに繋がってる。なので……修行みたいな感じですよ(笑)。--それが「険しかった」と。
中野雅之:その中で4回目の再発とか放射線治療とか、その直後にはライブやってるとか、結構無茶なことをやってきていたので、気持ちの浮き沈みとかもあるし、音楽に対する集中力を高いところで維持するのは簡単なことではなかった。ただ、一回音楽を、制作を始めちゃえば集中力はすごく高かったというか、むしろ集中力は今までのアルバム制作に比べても高かったです。「これが最後になるかもしれない」と思ったときもあるし、いろんな行為に対して「大切にしなきゃいけないんだ」って思えた。曲を作るのも、レコーディングするのもそうだけど、そういうことを改めて考えさせられたんで、如何に自分が毎日それほど大切に扱っていないかっていうことが分かっちゃうんで、露骨に。時間がないかもしれない=取り返しがつかないかもしれない、なので。過去に戻ってやり直すことはできないし。それはすごく貴重な経験でした。川島くんのそういう境遇からたくさん教えてもらったことがあるんです、今回。--川島さんは、今作完成までの重厚すぎる期間にはどんな感慨を?
川島道行:基本的には……ここ最近起きた出来事ではないので、この17,8年間は死生観を考えながら音楽と共に生きてきたと思う。でもこの数年で改めて自分は「音楽をやってきたんだ」ってことを認識して、今やってることを全うしたいと思ったので、そこに関してはシンプルでしたね。自分が音楽を残していくということ。それ自体がメッセージであるんじゃないかと思った。なかなか厳しい時間も多かったですけど……その中でも良い楽曲が残せたと思っています。--先行公開された「A HUNDRED SUNS」のMVは、その病気との対峙を続けてきた川島さんは歌う姿にフォーカスしています。あのMVにはどんな想いや背景が反映されているんでしょう?
中野雅之:ノーカット編集なしの川島くんのリップのMVは、元々撮ってみたいと思っていたんです。「STAY」(アルバム『TO THE LOVELESS』(2010年5月発表)収録曲)のときも良いんじゃないかと思ったんだけど、結局「STAY」のMVは作らなかったから。そのアイデアがベースにあります。だからドローンを使ったとかよりそっちのほうが重要で。1人で歌っていて、言葉を伝える。それが重要だった。--そもそもソレをやりたいと思った経緯は?
中野雅之:歌がどんどんどんどん重要になってきたからです。歌と川島くんのパーソナリティとその言葉の重要度合いが上がってきているから。特に「A HUNDRED SUNS」はそうなんですよね。ビート感を全面に押し出していくようなMVだったら、リズムのアイコンであるドラマーにアクションさせて、リズムを視覚的に後押しさせる訳だけど、逆にそこにボーカリストがいれば、歌とか言葉とか声そのものとかボーカリストの佇まいにフォーカスされる。なので、必然です。そういうPVを撮るようになったことは。--どんな流れで「歌が重要」と感じるようになっていったんでしょう?
中野雅之:アルバム『TO THE LOVELESS』ぐらいからですけど、ビートのスタイルって音楽ジャンルを表すじゃないですか。そこが大事じゃなくなってきたんですよね、このバンドにとって。例えば、フランツ・フェルディナンドとかラプチャーとか出てきた頃のディスコミュージック、90年代以降のハウスとガレージっぽいロックがくっ付いたような音楽が2000年代に流行るじゃないですか。まだその頃は自分たちも自然にそのトレンドと距離感を保ちながらやれていたんだけど、だんだん「シーンが生まれてきても、それは2周目、3周目だったりする」って感じるようになり、EDMみたいなものに全く関心が持てなくなってきたりとか、「トレンド=刺激的な音楽ではない」っていう傾向になって、自分たちの中で「良い曲を作りたい」っていう想いが高まっていった。ビート中心にアジテーションの強い音楽を創るより、もっと深いメッセージを描いていくのに広い世界観とか深い世界観とか、ピアノひとつで成立する曲とかを目指すようになっていって。それが2000年代後半ぐらい。結局、2000年代って空洞だった気がするんですよ、振り返ってみれば。そういう外的なことと自分たちの内側がシンクロして、だんだん歌とか歌い手のパーソナリティとか佇まいとか、そこから出てくる言葉とか声そのものが重要になっていった感じがします。 川島道行:ロックバンドは佇まい自体が表現であると元々思っていたけど、それと相まって歌、自分の人間性というものに自らフォーカスを当てていきたくなる流れもありましたから、今回は特にブンブンサテライツのオリジナリティっていう部分しか出てこないような状況だったと思います。--その中で川島さんが歌いたかったものは?
川島道行:歌詞を書く上での種みたいなものは前とあんまり変わっていないんですけどね。スキルが少し上がったりはしているかもしれないですけど、歌いたいことはあんまり変わってない。複雑な社会の中で音楽が人の生きる姿勢を後押ししてくれたり、希望を掴める力強さやそのエネルギーになればいいなと。それを悲しい歌であれ、希望の歌であれ、様々な色合いを持った言葉とかフレーズで表現できたらなと、ずっと思っています。- < Prev
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リリース情報
SHINE LIKE A BILLION SUNS
- 2015/02/04
- 初回生産限定盤[SRCL-8688/9]
- 定価:3,780円(tax in.)
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- 初回限定仕様(通常盤)の詳細・購入はこちらから>>
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄
SHINE LIKE A BILLION SUNS
2015/02/04 RELEASE
SRCL-8688/9 ¥ 3,850(税込)
Disc01
- 01.SHINE
- 02.ONLY BLOOD
- 03.COMPLICATED
- 04.A HUNDRED SUNS
- 05.VANISHING
- 06.BACK IN BLACK
- 07.THE MOTH (attracted to the flame)
- 08.BLIND BIRD
- 09.OVERCOME
- 10.STAIN
- 11.EMERGENCE
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