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Strange Days presents 奥深きプログレッシヴ・ロックの世界

奥深きプログレッシヴロックの世界

 “プログレ”というと一般的にはどんなイメージだろう? 小難しくて気取った音楽、暗い、複雑・・・。こんなところだろうか。しかし、プログレは決して難しくも暗くもない。実に奥が深くて探求しがいのある音楽なのである。つまり聞かず嫌いはもったいない音楽ということ。ここではプログレという音楽が具体的にどんな音楽性や魅力を有しているのか、代表的なアーティスト名なども挙げながら、入門者のガイドとしても活用できるよう留意しつつ、ご案内させていただこう。

◎「奥深きプログレッシヴ・ロックの世界」CDショップ編

“プログレ”とは?

ジャケ写
▲ 『原子心母』 /
ピンク・フロイド

 まず“プログレ”ということばだが、正確には“プログレッシヴ・ロック”の略語である。プログレッシヴとは英語で“進歩的・先進的”という意味で、字義的にとらえるならプログレとは進歩的ロックということになる。そもそもプログレという略語自体、和製英語だ。プログレを代表する英の有名グループ、ピンク・フロイドが1970年にアルバム『原子心母』を出した際、当時の日本の発売元のディレクターが造ったといわれ、これがのちに広まったというわけである。ちなみに先の“原子心母”というのは原題の“アトム・ハート・マザー”をそのまま訳しただけなのだが、これも件のディレクター氏の仕事。当時、洋楽においては邦題をつけるのが慣習になっていて、これは代表的な例として知られるものだ。そしてこのプログレということばだが、現在では国内のみならず海外でも有効的に使用されている。慣用的には“プログ・ロック”もしくは単に“プログ”と使われているようだが、和製英語がある種の音楽を指すことばとして広く流布しているというのは興味深い事実ではあるだろう。

 さて、プログレという定義だが、ごく簡単にまとめてしまうなら、1960年代の終わりころに登場し、主に70年代に隆盛をきわめた、芸術性の高いロックということになる。そこに含まれているのはクラシックやジャズ、そして文学などの要素で、50年代に誕生して以来、基本的にはダンス・ミュージックとして成長してきたロックンロールが、じっくりと向き合えるリスニング・ミュージックとして成熟したかたちということもできる。

ジャケ写
▲ 『サージェント・
ペパーズ・ロンリー・
ハーツ・クラブ・バンド』
/ ザ・ビートルズ

 そこにはサイケデリックという時代背景も大きく、契機としてはビートルズが67年に発表したアルバム『サ―ジェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』が多大な影響を与えたといわれる。ビートルズはこのアルバムでスタジオ技術の粋を集めて、コンセプト的(ロック・アルバムにコンセプトという概念を持ち込んだ先駆ともいわれる)な壮大な世界を展開することに成功したわけだが、この作品に刺激を受けた多くのミュージシャンが意識的に音楽制作やレコーディングと対峙するようになっていったというわけだ。そしてプログレは先に述べたようにクラシックやジャズの要素も濃く、それらのファンにもリスナーがいるのも特徴。いわば“隠れファン”ともいえるこうした幅の広いリスナーを抱えているのは、他のジャンルにはあまり見られない傾向として挙げることができるだろう。

 もうひとつプログレの特徴としては一般的に英米中心に展開されるポップ/ロックなどのメインストリームのポップ音楽と比べて、アメリカ、イギリス以外の各国からもアーティストが輩出している点。フランスやイタリア、ドイツ、北欧、スペイン、さらに南米や豪州、そして日本などからも独自のユニークな音楽性をもったアーティストがずっと現われ続けており、この傾向はインターネット時代を迎えた現代、さらにボーダーレスな拡散をみせている。

 冒頭でプログレは70年代に隆盛と書いたが、決してそこでピリオドが打たれたわけじゃない。もともとロックが抱える雑食性の体現ともいえるプログレは孤立した運動ではなく、より広く多様な音楽と混ざり合いながら今日まで進展し続けているのである。たしかに狭義の意味でのプログレは80年代のパンク/ニューウェイヴ以降拡散していったが、各アーティストたちはその後もさまざまな試行錯誤を重ねながらプログレッシヴな音楽活動を実践し、いまも多様なかたちで新しい音楽を創造し続けているのだ。

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