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楽園おんがく Vol.21: “沖縄おんがく”2014

楽園おんがく Vol.21

 旅と音楽をこよなく愛する、沖縄在住ライター 栗本 斉による連載企画。2014年最後となる今回は、今年リリースされた沖縄音楽シーンを象徴する17作品を紹介。

 沖縄音楽豊作の一年だった2014年。本連載でもこの一年で8組のアーティストに取材をさせていただいたが、そこで取り上げられなかったアイテムも多数ある。ここでは、豊潤な沖縄音楽シーンの新作から厳選して17枚ピックアップ。ロック、ポップスからクラブ・ミュージックや民謡までジャンルも様々だが、それだけに沖縄の底力を知ることが出来るだろう。ぜひお気に入りの“沖縄おんがく”を見つけてもらいたい。

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『LOVER』

HY
レーベルを移籍し、心機一転したHYは、2014年にもっとも活動が活発だったといえるバンドだ。2月にリリースした9枚目のアルバム『GLOCAL』に続き、12月に発表した本作はずばりラブソングがテーマ。アコースティック・ギターとストリングスに乗せた切ないメロディが耳に残る「あなたを想う風」や、ゴスペルのエッセンスを加えたソウルフルな「Remember You」、壮大なバラード・ナンバーの「結」まで、じっくりと聴きたい7曲が収められている。

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『800トリビュート ?champloo is the BEST!!-』

V.A.
HYと並ぶ沖縄を代表するバンド、MONGOL800。2013年が結成15周年だったこともあって、その流れでトリビュート・アルバムも登場。交流の深い東京スカパラダイスオーケストラによる「DON'T WORRY BE HAPPY」の軽快なビートに始まり、モータウン風にアレンジされたRIP SLYMEの「あなたに」や、JUJUがしっとり歌う「小さな恋のうた」といった代表曲を網羅。彼らの楽曲が普遍的であることを再確認できる。同じ沖縄出身のBEGINやCoccoが参加しているのも嬉しい。

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『アイランド2』

上江洌.清作&The BK サウンズ!!
そのMONGOL800のキヨサクが、湘南乃風のセレクターとして活躍するThe BK Soundとコラボレートしたアルバム第二弾。ボブ・マーリーが設立したジャマイカのタフ・ゴング・スタジオで録音し、本格的なレゲエやスカのサウンドを聴かせてくれるゴキゲンな作品だ。「スーダラ節」や「ふたりの愛ランド」といった歌謡曲のカヴァーも含めた選曲センスや、伝説のラスタマンであるU-RoyやBEGINの島袋優といったゲストも話題だが、キヨサクのマイルドな歌声がとにかく心地いい。

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『大金星』

かりゆし58
来年で結成10周年を迎える4人組ロック・バンド。BEGINの島袋優をプロデュースに迎えて少しブルージーに仕上げた「生きてれば良い事あるみたいよ」を筆頭に、開放感のあるギター・サウンドが印象的な「Oh! Today」や、メロディアスなギター・ロック・チューン「愛を信じている」、素朴な味わいを盛り込んだ「今ならここに」など、全体的に比較的落ち着いた印象が残る。それだけに、言葉とメロディがストレートに伝わり、結果的にバンドの魅力を最大限にアピールしている。

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『えいしょうか その二』

比嘉栄昇
BEGINのメンバーは個々でも活動していたが、なかでもヴォーカルの比嘉栄昇は2枚もソロ・アルバムを発表した。唱歌を中心に選曲された『えいしょうか その一』に続く本作は、往年の昭和歌謡をピックアップ。堺正章「街の灯」、大津美子「ここに幸あり」、ジェリー藤尾「遠くへ行きたい」、水原弘「黄昏のビギン」といった古き良き時代の名曲を丁寧に歌い込んでいる。演歌歌手への提供曲をセルフカヴァーした「東京てぃんさぐ赤い花」もしんみりとした佳曲だ。

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『洋燈』

石嶺聡子
1994年にデビューし、喜納昌吉の「花」をカヴァーして大ヒットしたシンガー・ソングライター。ここでは彼女のルーツである洋楽カヴァーに専念し、実力派ヴォーカリストの味わいを楽しめる。「おおシャンゼリゼ」や「カントリー・ロード」といった有名曲だけでなく、ミレニアムの「There Is Nothing More To Say」やスティーヴン・フォスターの「Hard Times Come Again No More」といった渋い選曲にも唸らせられる。「花」を英語で歌ってラストを締めくくる演出もにくい。

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『Mellow』

普天間かおり
こちらは邦楽カヴァー集。彼女も本来はシンガー・ソングライターであるが、初めて全編カヴァーに挑んだ。オフコースや大貫妙子といったポップ・スタンダードもあるが、オリジナル・ラヴ「接吻」、加藤いづみ「好きになって、よかった」、古内東子「誰より好きなのに」といった90年代のJ-POPシーンを賑わした楽曲がメインなのが興味深い。アコースティックなアレンジと澄んだ声も優しく耳に残る。ボーナストラックとして自作曲「シンシアリー」と「月夜歌」も違和感なく並んでいるのも見事だ。

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『生まり島』

成底ゆう子
石垣島出身のシンガー・ソングライターによる3作目。BEGINの上地等がプロデュースし、新旧の沖縄の歌を新鮮に聴かせてくれる。琉球王朝時代から歌い継がれる童歌「赤田首里殿内」から、「涙そうそう」、「島唄」、「さとうきび畑」といった近年の沖縄スタンダードまで、飾り気のない伸びやかな声で素直に歌っており、いずれも子守唄のような心地よさ。彼女自身が作詞作曲したオリジナル・ナンバー「生まり島」は、ふるさとを想う気持ちが込められたミディアム・バラードで心に染みる。

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『はじめての海』

上間綾乃
民謡とポップスとの融合で定評のある実力派シンガーが、メジャー3作目にして沖縄にとらわれず自由に歌い上げた会心作。康珍化と都志見隆という歌謡界の大御所が曲提供した「あなたには守ったものがある」や「オキナワのともだち」から、多重コーラスで声の実験を試みた「てぃんさぐぬ花」、井上陽水の名曲カヴァー「海へ来なさい」にいたるまで、新たなトライが詰まっている。ミディアムからスローな落ち着いたナンバーが中心のため、大人びた表情にハッとさせられる。

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『Sail ~帆~』

池田卓
イリオモテヤマネコが発見されたという西表島の小さな集落で生まれ育ったシンガー・ソングライターが、5年ぶりに発表した新作。どこかしら島の香りが漂うメロディや歌声は、おおらかで聴きやすい。高校球児に向けた応援ソング「声援」、愛娘へのメッセージを込めた「君だけの子守唄」、尊敬する父を歌った「いつか…」など、家族をテーマにした楽曲が多いのも特徴だ。中東公演で訪れたシリアでの出会いを描いた「香りの街の少年」も印象的で、風景が見える歌がたっぷり収められている。

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『とぅなか よなは徹 ベストアルバム 2001~2014』

よなは徹
琉球古典音楽の伝承者としても知られる唄者が残した14年間の記録。三線を弾きながら歌うという伝統的なスタイルではあるが、プログラミングを加えるなど大胆なアレンジが施されており、斬新な沖縄民謡の解釈に驚く。とくに冒頭の「北風」や「がぎやで節」は、最新型の沖縄音楽といっても過言ではないだろう。もちろん、「汗水節」や「遊び天川」のようなシンプルなスタイルでは歌そのものも引き立っており、伝統を重んじながらも新しい一歩を踏み出す姿勢に感服させられる。

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『大城美佐子 ベスト ~愛唄~』

大城美佐子
那覇の民謡クラブ「島想い」で、今も歌い続けている沖縄民謡の重鎮による集大成の2枚組。1962年に発表されたデビュー作の「片思い」は、1975年のライヴ・テイクや90年代に録音された未発表ヴァージョンでも収められており、ベテランならではの年輪を感じさせてくれる。また、沖縄民謡の代名詞といってもいい嘉手苅林昌とのデュエットも多数集められることで、沖縄音楽史に大きな影響を与え続けていたのかよくわかる。民謡に興味があるなら必携の永久保存盤。

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『サンサナー4』

サンサナー
ユリエ、アーサ、アイという女性3人によるオキナワン・ポップス・ユニットの4作目。メンバーそれぞれが三線や琉球舞踊の達人ということもあり、キャッチーでありながら本格的なパフォーマンスで楽しませてくれるのが魅力だ。パーシャクラブなどで活躍する上地正昭やりんけんバンドにも在籍していた上地一成が楽曲を手がけ、とにかくアッパーでダンサブルなサウンドに仕上がっている。一方で「綾橋」のようにゆったりとしたメロディを持ったナンバーも聴きどころ。

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『沖縄テクノレゲエ ~Electronic Dance Minyo~』

DJ SASA and ORIONBEATS
「んちゅ」シリーズなどでヒットを飛ばしまくるDJ SASAが、なんとORIONBEATSことRYUKYUDISKOの廣山哲史とタッグを組んだ異色作。題材は、「てぃんさぐぬ花」や「芭蕉布」、「安里屋ユンタ」といった沖縄民謡のスタンダードだが、タイトル通りやテクノやレゲエのビートで料理し、摩訶不思議なダンス・ミュージックに仕立てている。コブシを回す民謡ならではの歌い口がエッジの効いたアレンジに包まれるという違和感を、踊って楽しむ実験作。

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『N1』

NEENEE
同じくRYUKYUDISKOの廣山哲史が、ORANGE RANGEのヤマト、MONGOL800のタカシ、そしてマネージャを兼ねるセイジという沖縄を代表するミュージシャンを集めて結成されたロック・バンドのデビュー作。アグレッシヴなギター・サウンドとクールなエレクトロ・ビーツが合体し、強烈なミクスチャー・チューンが満載されている。ハードコアやレゲエ、ヒップホップといったテイストも混在し、どこにもないオリジナリティを醸し出しているのが面白い。

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『地獄門』

地獄車
90年代に盛り上がった沖縄のインディー・シーンだが、そのなかで引導役としてブレイクしたのが地獄車だ。しばらく活動休止していたが、ラリー(ガーリック・ボーイズ)が主宰するレーベルであるロッテン・オレンジから再録ベスト・アルバムが登場。タブーをものともしない過激な歌詞と、ハードコアなサウンドが一体化したバンドのカラーは健在。「ルチャバカ野郎」、「マッスル・ファクトリー」、「ウンコ哲学」など、強烈なインパクトの中にユーモアと哀しみを秘めた世界観を味わえる。

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『プランC』

Cocco
およそ4年ぶりという通算8枚目のオリジナル・アルバム。サウンド・プロデュースにはお馴染みの根岸孝旨が大半の楽曲を手がけ、ロックやファンクのテイストをたっぷり盛り込んだオルタナティヴなアプローチによって、彼女の歌のスケール感が表現されている。なかには、プログラミングによるテクノ風味を加えた「バスケット」や「3D」、ブルース・ロックのように熱唱する「ドレミ」のような振り幅の大きさも魅力で、完全復活したことが伝わる吹っ切れた傑作だ。

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