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アラン・トゥーサン 来日記念特集
アメリカ南部の伝統的なリズムと雄大な自然を彷彿とさせる美麗なメロディー・ライン、繊細で上品なピアノ・タッチ、そしてスウィート&エレガントな歌声でアメリカ・ニューオーリンズの音楽シーンを牽引してきたアラン・トゥーサン。77歳の誕生日を迎える2015年1月に約1年ぶりの来日を果たすレジェンドを5つのキーワードとともに紹介したい。
アラン・トゥーサン × ニューオーリンズ
1938年に“音楽の都”アメリカ・ニューオーリンズで生まれ、7歳の時にピアノをスタート、50年代中盤にはファッツ・ドミノら地元の人気アーティストのセッションに参加していたというトゥーサン。58年にはデビュー作『ザ・ワイルド・サウンド・オブ・ニューオーリンズ』を発表し、ピアニストとして順調にキャリアを積み、知名度をあげていく一方で、数多くの地元アーティストの作曲・編曲を行うことで若くしてプロデューサーとして高い評価を受けるようになっていった。60年代だけでも、アーマ・トーマス、アーロン・ネヴィル、リー・ドーシーと彼のプロデュースにより音楽シーンに大きく羽ばたいたニューオーリンズのアーティストとその名曲は数えあげればきりがない。
そして、当時トゥーサンのセッション・バンドを務めていたのがミーターズである。彼らの名演奏とともに数々の名曲を生み出したトゥーサンは、ニューオーリンズ・ファンクのサウンドを確立。彼自身の代表作であり今も音楽史に残る名盤『サザン・ナイツ』(1975年)も、ミーターズをバックバンドに従えて制作された作品である。
アラン・トゥーサン × 全米No.1ヒット
▲ 「Lady Marmalade (1975)」 / LaBelle
若くしてニューオーリンズの音楽シーンの“顔”となったトゥーサンのプロデュース業は、1970年代に入ると地元ニューオーリンズのアーティストのみならず全国区へとその活動範囲を広げていった。なかでも、彼の代表的な仕事のひとつとして知られているのが、パティ・ラベル率いる女性3人組ボーカル・グループ、ラベルの「レディ・マーマレイド」である。トゥーサンらしいピアノ&ホーンの洒脱でスリリングなファンキー・サウンドが、ディスコ黎明期だった当時の音楽シーンにマッチし1975年3月には全米No.1となる大ヒットを記録している。同曲はこれまでに時代を超えて数多くのアーティストにカバーされており、なかでも2001年に映画『ムーラン・ルージュ』の主題歌となったクリスティーナ・アギレラ、ピンク、リル・キム、マイアのコラボによるバージョンは、全米No.1リバイバル・ヒットを記録している。
来日公演情報
Allen Toussaint
Billboard Live Tour 2015
ビルボードライブ東京:2015/1/21(水)~1/22(木)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2015/1/24(土)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS: アラン・トゥーサン / Allen Toussaint(Vocals, Piano)、ローランド・ゲリン / Roland Guerin(Bass)、ハーマン・ルボー・ジュニア / Herman LeBeaux JR(Drums)、レナード・ポッシェ / Renard Poche(Guitar)
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アラン・トゥーサン × 英国音楽
さらに、トゥーサンのプロデュース業は海を越えていく。英・グラスゴー出身のシンガーソングライター、フランキー・ミラーのセカンド・アルバム『ハイ・ライフ』(1974年)も多くの楽曲がアラン・トゥーサンをプロデューサーに迎えて制作された作品だ。元々ルーツ志向だったミラーが自らニューオーリンズにわたってレコーディングを行ったこの作品は、決して派手さはないが、英国的ブルース・ロックのスモーキーさとニューオーリンズのファンキーさが絶妙にブレンドされた“隠れた名盤”である。
▲ 「Ascension Day」 / Elvis Costello & Allen Toussaint
さらに2000年代に入ると英国音楽を代表するアーティストの1人であるエルヴィス・コステロとの異色のコラボレーションも実現している。2005年に故郷・ニューオーリンズを襲った巨大ハリケーン「カトリーナ」被害の復興支援プロジェクトとして、共作アルバム『ザ・リヴァー・イン・リヴァース』(2006)を発表。共演自体はコステロのアルバム『Spike』(1989年)収録曲「ディープ・ダーク・トゥルースフル・ミラー」ですでに果たしている2人だが、もちろんアルバムの共同制作はこれが初めて。プロデューサーとして一流の手腕を持つ両者ではあるが、アルバムの制作には現在の米ルーツ・ミュージック・シーンを代表する敏腕仕掛人ジョー・ヘンリーをプロデューサーに起用している。また、リリースの際にはコステロとトゥーサン、2人揃っての来日も実現している。
アラン・トゥーサン × ポール・マッカートニー
▲ 「Ascension Day」 / Allen Toussaint
英国を代表するアーティストといえばこの人も。トゥーサンとポール・マッカートニーとの縁は70年代にまで遡る。ウイングスが1975年に発表したアルバム『ヴィーナス・アンド・マース』収録曲の半数がニューオーリンズのトゥーサン所有スタジオ「シー・セイント・スタジオ」で行われており、同作にはトゥーサンもピアノで作品に参加している。
そして今年、ビリー・ジョエルやボブ・ディランなどビッグネームが多数名を連ね、日本盤のスペシャル・ボーナス・トラックに井上陽水が参加したことでも話題となったポール・マッカートニーの最新トリビュート・アルバム『アート・オブ・マッカートニー~ポールへ捧ぐ』(国内盤12月10日発売)にトゥーサンも参加。ポールによるピアノが印象的な「レディ・マドンナ」を、見事トゥーサン節で洒脱に演じているので、ぜひこちらもチェックして欲しい。
アラン・トゥーサン × バラク・オバマ大統領
▲ 「Yes We Can Can」 / Allen Toussaint
長年にわたる米国音楽界への貢献とその功績が認められ、2013年1月にホワイトハウスでバラク・オバマ大統領よりジョージ・ルーカスらと並んでアメリカ最高峰の芸術賞「NATIONAL MEDAL OF ARTS(全米芸術勲章)」を授与されたトゥーサン。オバマ大統領のスピーチの象徴、名スローガンといえば「Yes We Can」だが、トゥーサンが70年代にリー・ドーシーのために書き下ろした名曲のタイトルが「Yes We Can」だ。ミーターズをバックに収録されたドーシーのオリジナル・バージョンのほか、女性ボーカル・グループ、ポインター・シスターズによるバージョン、そしてトゥーサンによるセルフカバー(いずれもタイトルは「Yes We Can, Can」)も有名。そんな所以で同曲はオバマ大統領の応援ソングとして歌われており、トゥーサン自身も過去に彼の支援コンサートに出演したことがある。
ここで紹介してきた彼にまつわるキーワードは、およそ60年間にもおよぶ莫大なキャリアのほんの一角をなぞっただけに過ぎない。彼がこれまでに生み出してきた名曲を一挙におさらいするなら、自身がプロデュースを手掛けた楽曲の数々を演奏・収録した最新ライブアルバム『Songbook』(2013年/輸入盤)をオススメしたい。繊細かつエレガントなピアノ・タッチで繰り出される珠玉のメロディーの数々に改めて感動させられるだろう。そして、今もまったく変わらない歌声とピアノを私たちに届けてくれるリヴィング・レジェンドのスウィート&エレガントなステージをぜひ生(ライブ)で、存分に楽しんで欲しい。
来日公演情報
Allen Toussaint
Billboard Live Tour 2015
ビルボードライブ東京:2015/1/21(水)~1/22(木)
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ビルボードライブ大阪:2015/1/24(土)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
BAND MEMBERS: アラン・トゥーサン / Allen Toussaint(Vocals, Piano)、ローランド・ゲリン / Roland Guerin(Bass)、ハーマン・ルボー・ジュニア / Herman LeBeaux JR(Drums)、レナード・ポッシェ / Renard Poche(Guitar)
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